由里の反乱
翌朝、留美はいつもより早く起きたため、恵子を誘って洗濯をしていた。
朝の高原に吹く風は心地よい。二人は溜まっていた洗濯物を裏庭に干しながら話をしていた。
「三枝さん。何、買ってくれるのかな?」
恵子は無邪気に笑って、約束のプレゼントを考えていた。
「さあ、クリトリスピアスかもね」
「嫌だ。痛そう」
恵子は首をすくめた。
二人の娘は未来のことなど考えずとりとめのない話に花を咲かせていた。
二人は新たな洗濯物を求めて地下室の入り口の有る倉庫に向かっていた。
倉庫に行くためにはモニタールームを通り抜ける必要がある。さすがに三枝の姿はこの時間では無かった。
何気なく見たモニターを覗いた留美はそこに映し出されている光景に驚きの表情を浮かべた。
「何?あれ」
留美に言われた恵子もその光景に口を開けてしまった。なんと、由里が徹の上に跨って腰を振っているのである。
「信じられない。皆が居る前であんな事をやってる。昨日、松井さんにきつく言われてたのに」
恵子が声を掛けても留美は怖い顔をしてモニターの光景に見入っている。他の者は見て見ぬ振りをしているのだろう。皆、目を背けている。
留美はスピーカーのスイッチを入れた。由里のくぐもった喘ぎ声が断続的に聞こえてくる。
「恵子。三枝さんを呼んできて、このままじゃ、済まされないわ」
恵子がモニタールームを出て行くと留美は再びモニターを見つめた。由里は喜悦の表情を浮かべて腰を上下させている。勝手な行動は許せないと留美は思っていた。
由里は徹に対する愛情は冷めていた。しかし、女たちの裸を始終見させられている徹の一物は時折、勃起を見せる。由希が諌めてその興奮を収めるのが常であったがそれを見ているうちに由里が欲情してしまい、腰を埋め込んでしまったのである。
それを刺激しても徹は表情を変えなかった。それにも由里は腹を立てていた。この環境に生きる気力さえ失っている徹の唯一の行動を見せる生殖器官。由里は徹をそれだけの存在だと思うようになっていた。
腰を大きく捻って徹の情欲を搾り取った由里は満足げな表情を浮かべて腰を上げた。
由希が無残な兄の姿を見て涙ぐんでいたがそんな事など由里はお構い無しに、後始末を終えると自分の場所に戻ろうとした。
「困るわね。先輩。勝手なことをされては」
声に振り向くと留美がゴンドラで降りてきたところだった。
「私の男なんだからどう扱おうと勝手でしょ」
「駄目よ。先輩。奴隷なんだから勝手な行動は許されないわ」
留美は不満顔の由里に近づくと両手を手錠で拘束した。
「どうするつもりなの?」
「三枝さんに判断して貰うわ。いらっしゃい」
足枷を外した留美は由里をゴンドラへと誘導した。
モニタールームでは三枝が不機嫌そうな色を浮かべて由里を待ち構えていた。
由里が椅子に座っている自分の前に跪かされると三枝は一つ咳払いをして口を開いた。
「由里。お前は恵子に言われたにも関らず徹とセックスしたそうじゃないか。何故だ?」
三枝に重々しい言葉を掛けられた由里は不貞腐れたように下を向いた。
「あんなとこに押し込められて気分がむしゃくしゃしてたからやりました」
「禁止されていてもするのか?」
「もう、しません。許してください」
由里から殊勝な言葉が出てきたので三枝は意外な感じを受けた。勝気な由里が自分の非を認め、詫びを入れたからだ。
「これからむしゃくしゃしたらどうする?」
「自分でします」
「なら、そこの椅子に座ってやってみろ」
由里の従順さを試すつもりで三枝は命じた。
由里は臆することなく、椅子に浅く座り、自ら女陰を寛げると指を差し入れ始める。
浅く深く指を送り込むうちに由里の全身は色づき始め、甘い吐息を洩らすようになった。
「おっぱいを揉んでくれる?」
とろりと蕩けた視線で訴えた由里の求めに応じ、恵子が乳房を揉み始めると由里の喘ぎはますます拍車が掛かって来た。
生々しい吐息を響かせながら由里は頂点へと駆け上ってゆく。それを三枝は声も無く見守っている。満たされぬ欲望を自ら慰める女が一匹の牝と化してゆくような印象を与えていた。
「うっ」
小さく呻いた留美は全身を針のように緊張させ、頂点を極めた。
全身から力が抜けて、中身の無い人形のようにぐったりとなった由美は閉ざしていた目をゆっくりと開いた。
「よし、よく見せてくれた。おしゃぶりすることで今朝の事は水に流してやろう」
三枝は由美のオナニーに上機嫌になり、自らの股間を指差した。
膝立ちになった由美が三枝の股間に顔を埋めたことで一件落着とばかりに留美と恵子が部屋を出ようとしたとき、三枝の怒号が湧いた。
「な、何するんだ。離せ」
留美が振り向くと何と由美が椅子ごと三枝を押し倒し、その玉袋を渾身の力を込めて握り締めている光景があった。
押し倒されているため三枝は抵抗も出来ず足をバタつかせるだけで、急所を握られ、罵声を浴びせるだけであった。
「動くなよ。潰しちまうぞ」
恵子がドアに向かって走り出そうとすると三枝のひときわ大きい悲鳴が沸いた。
「先輩。逃げられる訳ないよ。あきらめな」
留美が説得を試みても由里は言う事を効かなかった。捕われの環境で自分の行動を咎められた由里は破れかぶれになって思い切った手に打って出たのだった。
「あんたち、地下室に下りな。言う事を聞かないとこいつの悲鳴を聞かせるよ」
またぞろを力を込めそうな由里の態度に怖気づいた二人は言われた通りに地下に降りた。
それを確認した由美は三枝の尻を思い切り蹴飛ばすとモニタールームから駆け出した。
モニタールームから出た由里は逃亡経験の有る美希から玄関には鍵が掛かっていて出られないことを知っていたので浴室に向かった。
浴室のガラス戸を開けると松井が朝風呂の支度をしている最中であった。
「なんだお前は?」
血相を変えて飛び込んできた由里を見ても松井は逃亡してきたとは夢にも思わない。だから、入り口に立てかけてあったデッキブラシを手にした由里が自分に向かって来た時に十分な体勢を取れなかった。
ブラシに押された松井はそのままの形で湯船の中に頭から転落した。
松井の身体に更に一撃を加えた由里は敏捷な身のこなしで浴室の窓から身を躍らせて戸外に脱出した。
逃亡の顛末
悪魔たちの態勢は完全に後手に廻った。塩野は寝ており、松井がモニタールームに戻って三枝を助け、留美と恵子を地下室から上げてようやっと追跡態勢が整った。
松井から由里が裏庭に出たことを知った三枝はほっと胸を撫で下ろし、松井と塩野に庭を見張るように指令した。
この屋敷の裏庭は急斜面の山に続いている。辺りに民家はなく、敷地の境界線は鉄条網によって仕切られている。全裸の由里がそれを越える事はまず不可能な状況だった。
だから表に出られる木戸さえマークしておけば由里は山の潅木の中に身を隠すしか手立ては無いのである。
「由里。出て来い。出てこないと後が酷いぞ」
裏庭に出た松井が山に向かって叫んでいる。湯の中に転落し、全身ずぶ濡れになっている松井の怒りは凄まじかった。
「ねえ、これで拭いて」
留美に差し出されたバスタオルで松井が水気を拭っていると恵子に支えられて三枝がようやっと姿を現した。
「木戸は開いてなかったか?」
「ええ、閉まってました」
松井の言葉にやはりと三枝は頷いた。
「長期戦になるぞ。塩野、朝食を頼む。ここが前線本部だ。お前たちもその格好じゃ寒いだろう。何か着て来い」
留美と恵子が家の中に消えると三枝はいまいましそうにテーブルを叩いた。
「由里の奴、捕まえたら骨身に堪えるほど折檻してやる」
三枝の頭の中は既に由里に対する私刑で占められていた。それは松井も同じだった。
季節は夏でも朝の高原に全裸は辛い筈だ。ゆっくり時間を掛けて捕らえる事も奴隷に対する刑罰になると三枝は考えている。由里の逃亡に対する折檻は既に始っていたのだ。
由里は闇雲に山に走り込んだ事を後悔していた。潅木を抜けて辿り着いた場所は鉄条網が厳重に張られとても抜け出ることは出来ない。由里は鉄条網に沿って歩いていたがどこまで行ってもそれは続いていた。
由里は裏庭を見た。三枝たちが食事を始めていた。留美と恵子もジャージを穿いている。それに引き換え、自分は一辺の布も許されぬ全裸の上、手錠も嵌めている。今更ながら、激情に駆られ、何の考えもなしに逃亡を謀った自分の愚かさを思い知らされていた由里であった。
高原に日が差し始め気温が上がってきた。しかし、由里のいる潅木の隙間には日は差さない。相変わらずの地面の冷たさが素足を伝わって由里の身体全体に広がっている。
「暇だな。おい、留美。ここでセックスしてみないか?」
家の仕事も出来ない手持ちぶたさな松井が唐突に尋ねたが三枝や恵子が見ている前ではと、留美は返事を躊躇ってしまう。
「面白い。やってみなさい」
三枝に言われた留美は仕方なく芝生の上にシートを敷くとその上に横たわった。三枝の命令には逆らえない留美であった。
「俺は誰かに見られる方が燃えるんだ」
背後に取り付いた松井はこんなことを口走ると、留美の乳房を性急に愛撫し始めた。
そんな光景を目にした由里は急に緊張が途切れてしまった。自分を探そうともせず留美とのセックスに耽る松井、悪魔たちが自分への追跡を諦めてしまったかのような印象を由里に与えたのだ。
緊張が途切れた由里は急に尿意を催してしまった。全裸でいるため腰が冷えることは当然のことだった。
いつもはみんなの目と耳を気にしているため何かと遠慮がちな排尿に止まってしまう由里は勢い良く排尿している心地よさに浸っていた。
その背後に塩野が近づいていることなど由里は夢とも思わなかった。松井と留美のセックスも由里を油断させるため三枝が仕組んだ事だった。由里を捕らえるためあらかじめ鉄条網越しに塩野を放っていたのだ。
塩野は放尿を続けている由里の背後に近づくとスタンガンをその背中に押し付けた。
あっという間も無く、由里は気を失ってしまう。しかし、由里の股間からは相変わらず水流が噴き上がっていた。
奴隷法廷
由里は下半身に不快感を感じて覚醒した。素っ裸後手に括られ、アトリエの天井から爪先立ちに吊るされた由里の股間を松井が弄くっていたのだ。
「何、するんだよ」
由里は激しく腰を動かして松井の指を弾き飛ばすと射るようなな視線を目の前に悪魔に向ける。
「暴れだしやがって、只じゃすまないぞ」
松井は薄笑いを浮かべると由里の硬化させた頬を叩いた。
アトリエの中には由里の正面にどっかと腰を下ろした三枝を始め、徹以外、全ての奴隷までもが集められていた。由里の大罪に対する処刑を見せて、奴隷たちに恐怖心を植え付けようとする三枝の考えだった。
「小室由里」
三枝がアトリエ中に響き渡る大きな声を出した。
「これより、お前が犯した罪に関する裁判を開く。まず、お前の罪状について読み上げる」
三枝が言葉を切ると松井が紙に書かれたメモを読み上げる。
「小室由里の罪状。一、三枝氏に対する欺瞞行為、及び暴行行為、二、準奴隷である留美と恵子に対する脅迫行為、三、俺に対する暴行行為、四、逃走行為以上だ。何か言いたい事があるか?」
「無いわよ。勝手にすればいいじゃない」
松井の言葉に即座に反応した由里は不貞腐れたような顔をしてソッポを向いた。
「全部、認めるんだな」
「ええ、認めるわ」
由里は吐き捨てるように言った。この連中には何を言っても無駄なんだという思いが由里には溢れていた。彼らの考え付く刑罰には恐れはあったが自分の人生をめちゃめちゃにした悪魔たちに対して捨て鉢な気分に陥ってる由里であった。
「松井、お前たちで刑罰を考えろ。俺が判断を下す」
三枝の言葉で松井と塩野そして、留美と恵子が額を寄せ合って会談した。
彼らの言葉の端々が由里の耳にも入ってくる。おぞましい言葉を耳にしても由里は表情ひとつ変えなかった。俎板の上の鯉のように由里は悪魔たちが下す判決を待っている。
松井たちが考え出した刑罰をメモにか書きとめた三枝は一つ咳払いをすると口を開いた。
「小室由里、お前に対する刑罰を発表する。一、私に対する欺瞞行為の刑罰、後手錠、尿道チューブ挿入二日、刑は明後日より執行される。二、私と松井に対する暴行行為の刑罰、強制浣腸及び排泄、刑は即日執行される。三、留美と恵子に対する脅迫行為の刑罰、剃毛、刑は即日執行されれる。逃走行為に対する刑罰、陰核抉り出しの上、磔一日、刑は本日午前0時に執行される」
由里は判決の途中から頭を激しく振り始めた。おぞましい刑罰の羅列に由里は気が狂いそうになる自分を感じていた。
「殺して、死刑にして」
「当法廷の刑罰に死刑はない」
由里の哀願に三枝はきっぱりと言い切った。
「よし、剃毛から始めるぞ」
三枝の一声で由里への処刑の幕が切って落とされた。