絵里無残
「さあ、近くに行ってよく見てみろ」
既に筆を取り始めた三枝に言われた大野はフラフラとした足取りで絵里の無残に開かれた股間に近づいた。
抉り出された絵里のそれが赤く充血しているのを目にした大野はにんまりとした笑みを浮かべ、苦しい息を吐き続けている絵里を見下ろしていた。
額に汗を浮かべ、苦しそうに眉を寄せ、目を閉ざした絵里の乳房は大きく弾み、血管を浮き立たせた太股は中心点をから発する痛みに耐えかねて不規則な痙攣を示している。
自分の長年の夢が叶っている大野は身体中から沸き起こる震えを押さえつけることが出来ないほど興奮していた。
「おじさま。これであそこをなぞって上げってね」
油で湿らせた筆を渡された大野はしばらくそれに目を注いでいた。そして、決心を固めた大野は筆先をそれに近づけ、ゆっくりと上から下になぞった。
「うっわー」
その感触にむずかるような反応を見せた瞬間、激しい痛みが頭の芯にまで伝わった絵里は屋敷中に響き渡る悲鳴を上げたのだ。
「凄い反応ね。私にもやらしてね」
留美も筆を取るとそれに近づけた。
「留美。お願いだから止めて。痛いの、苦しいの」
絵里が必死な眼差しを自分に向けても嗜虐の悦びを覚え始めた留美は聞く耳を持たない。
「くっくくく」
再び、その部分をなぞられた絵里は身悶えを必死に堪えている。
女の微妙な神経が集中している箇所を極限まで剥き身にされ、筆で弄ばれる不気味な感触に身体が反応すると痛烈な痛みを感じる。絵里は身悶えを封じてこの難局を乗り切ろうとしていた。
「やるわね。絵里。こっちも意地になってやるわ」
留美が再び筆を触れさせてきた。絵里がその感触を堪えると絵里は意地になって筆を動かせ始める。
「あーーっ」
糸を引くような長い悲鳴が絵里の口から洩れた。意地になって筆を使い続ける留美の執念に敗れたのだ。
既に絵里は全身水を被ったように汗に塗れ、荒い呼吸を繰り返している。しかし、悪魔たちはまだ絵里を許そうとはしなかった。
大野が目をぎらつかせて再び筆を取った。
絵里は宛がわれた筆の感触を必死に堪えていた。しかし、それにも限度がある。絵里が腰を左右に打ち振った瞬間、痛烈な痛みがそこを襲ったのだ。
遂に絵里は号泣の声を放った。
「こ、殺して、殺してよ」
泣き声に混じり、狂ったように叫び続ける絵里を目にして三枝はもう十分だろうと判断した。
「待ってくれ。写真を撮らせてくれ」
仕事柄、いつもカメラを持ち歩いている大野はカバンからそれを取り出すとシヤッターを押した。
絵里は無残に抉り出された姿を三枝に絵に描かれたばかりではなく、フィルムにも収められてしまった。しかし、絵里にそんなことを気にしている余裕は無かった。その部分から生じる痛みに半狂乱になって喚き続ける絵里であった。
朝の騒乱
美加子は久々に柔らかなベッドの上での目覚めた。部屋の中に朝日が差し込み、小鳥の囀りも聞こえる。今までのことが悪夢であって欲しい。そんな思いで伸びをした瞬間、美加子は自分の臀部が湿っているのに気が付いた。
「あっ」
美加子は思わず声を上げて股間を探ってみた。
(濡れている)
美加子はまず悪魔たちにこの事実を告げなければならない恐ろしさに身を竦めた。蛇のような執念を持つ彼らのことだ必ず何かお仕置きされる。美加子は胸を抑えて震えだしそうな自分を必死に抑えていた。
しかし、このままでは状況は変化しない。とにかく美加子は麻美を起こすことにした。
「漆原さん、漆原さん。おきて」
美加子は床の上で毛布だけを身体に巻きつけて寝入っている麻美に声を掛けた。
「何んなの?、先生」
麻美は眠いのか目を擦って起き上がった。麻美にとっても広い空間で眠るのは久々でゆっくりと寝ていたのだ。
「あの、困った事になっちやったの」
美加子は頬を染めて麻美に恥ずかしそうに言うと布団をめくって見せた。
「あら」
シーツの上に鮮やかに描かれた地図を見て麻美は驚きの声を上げる。
「気持ちよく眠れたもんだから、きっと、緊張が途切れたのよ」
美加子は両手で顔を覆って溜息混じりに言った。しかし、麻美にはどうする事も出来ない。足は鎖に繋がれ、客がいるために声も出せない。ただ、美加子を不快感から逃れさせるためにベッドから下ろし、湿ったパジャマを脱がすことくらいだった。
全裸に戻った美加子に麻美は何も着せてやることが出来ない。松井の衣服はあるのだが勝手にそんなものを使って怒られては割に合わないと麻美は思っている。取り敢えず自分の使った毛布を身体に巻きつかせて腰を下ろさせた。
「まだ、熱があるみたい」
額に掌を当てた麻美が言うと落ち着きを幾分取り戻した美加子は自分もそれに気が付いたらしい。今まで失態を犯した思いに苛まれ、その事に気が付かなかった美加子であった。
誰かが階段を上がってくる音がした。麻美はドアまで近づくと思い切りそれを叩いた。
「何よ。うるさいわね」
現れたのは恵子であった。今日も黒の褌にハッピという勇ましい姿であった。
「先生が・・・」
「先生がどうしたのよ?」
恵子は毛布を着て床に座り込む美加子を見た。そして、空っぽのベッドに目を移した。
「あら、やっちゃったのね」
恵子はそこに広がる湿った地図を見て口を押さえた。
「ごめんなさい」
小さい声で詫びを入れる美加子を無視して恵子は隣の部屋で寝ている松井を呼びに行くのだった。
ドアを何度か叩くと眠そうな顔をした松井が全裸で現れた。
「今日はまだ、早いぜ。客人が帰るまで仕事は休みだ」
昨夜は絵里の身体を塩野と二人係で堪能した松井はまだ眠り足りない様子だ。塩野は朝食を作るために既に台所に行っている。
「先生がオネショしちやったのよ。松井さんのベッドだから教えようと思って」
「オネショ?」
薄笑いを浮かべた恵子の言葉に松井の眠気は一気に吹っ飛んだ。
手早く衣服を身に着けた松井が部屋に駆け付けると美加子は毛布に包まって啜り上げていた。
「ごめんなさい。松井さんのベッドを汚してしまって」
消え入りそうに訴えた美加子にそれまで怒りを覚えていた松井の胸が軽くなった。美加子の表情が余りに幼く見えたからだ。
「いいんだ。まだ、熱があるじやないか。身体が普通でない時は仕方ないぜ」
松井は美加子の背中を撫でながら優しい声でなだめるのであった。
松井がベッドから布団を引き剥がし窓に干し、振り向くと膨れっ面をした恵子が待ち構えていた。
「お仕置きはしないの?するべきだわ」
「先生は病気なんだ。そんな時にお仕置きなんか出来るわけはないぜ。お前、台所にでも行って塩野の手伝いでもしてろ」
松井にすげなくされたと思った恵子はもやもやした思いを引きずりながら階下に下りた。
食堂では三枝、大野、そして、昨夜、大野の相手を務めた留美が楽しく食事をしていた。
「恵子。お前も食事にしなさい」
「はーい」
三枝に誘われ、恵子も今までの不機嫌が一辺に吹き飛んだような笑顔を見せてテーブルに着いた。
大野は昨日、見た光景を何度も思い出しては飽きることなく話し続けている。彼の長年の夢を三枝がいとも簡単に実現させたことにも何度も礼を述べていた。
そして、話が留美の事になると大野の舌はさらによく回りだし、昨夜の性戯の一部始終を語り始めた。
「嫌だわ。おじさま。朝からそんな話をするなんて」
口では嫌だと言いながら留美は満更でもなさそうに色っぽい視線を大野に送っている。
「いや、これはすまん事をした。これは心ばかりのお礼だ。とっておいてくれ」
大野は封筒に入れた紙幣らしいものを留美と恵子に押し付けた。
「こんなもの貰う筈じゃなかったのに」
戸惑いながら留美が三枝を見た。
「貰っておきなさい。お客様からの心づくしだ」
三枝は豪快に笑って大野を見た。大野の顔は少年のように輝いている。この男にとって生涯最良の朝だったに違いなかった。
昼前に大野は三枝の作品を自分の車に詰め込み帰っていった。昨夜の作品が心残りだった大野は近いうちに再訪を約束して行った。
三枝は肩の荷が下りたようにどっと疲れを覚えた。しかし、心地よい疲れだった。実際、何人もの奴隷を抱えていると出て行く金も半端ではない。作品を売るためには手段を選んでいる訳には行かないのだ。
「お前たちもよくやってくれた。ご苦労様」
三枝は玄関先まで見送りに来ていた留美と恵子の肩を抱いて労を労った。
「はい。おじさま」
留美と恵子は揃って封筒を三枝に差し出した。
「これ、私たちが持ってても使い道はないわ。おじさまが使ってね」
「そうか、これでお前たちにアクセサリーを買ってやろう」
三人はまるで親子のようにじゃれあいながら屋敷の中に消えていた。
地下室の嵐
昨日から便器の清掃も行なわれなかった地下室に松井と恵子が降りて、大きなバケツの中に汚物を入れて回収している。ここの仕事の中でもっとも嫌われている仕事であった。
続いて新しい便器が下ろされ、奴隷たちに配られる。
二人が出て行こうとするのを弘美が引き止めた。
「先生は、美加子先生は大丈夫ですか?」
「先生なら俺の部屋で休んでる。明日の朝にはここに戻ってくると思う」
松井の言葉を聞いて、弘美は幾分、安心した。自分を守ってくれそうな絵里と美加子はおらず、恭子は以前とは打って変わって塞ぎこんでばかりいる。自分を勇気付けてくれる相手を失って弘美は心細かったのである。
「絵里先輩はもうすぐここへ戻ってくるよ。ちよっと今度のお仕置きは辛かったみたいだけどね」
恵子が皮肉めいた口調で話しても弘美の表情はパッと明るくなった。
「絵里を下ろすよ」
上から留美の声が響いた。
やがてゴンドラが降下して、前手錠をされ、がっくりと項垂れた絵里が姿を現した。
昨日からの無残なまでの所業と男たちの肉欲の餌食にされた絵里は見る影も無いほどやつれ果てていた。
「先輩」
声を掛けた弘美は思わず息を飲んだ。絵里の下半身の翳りがすっぽりと失われていたからだ。女の縦筋を露わにした絵里の姿はいかにも哀れっぽい印象を弘美に与えている。それにこの落ち込みようでは恭子の二の舞になってしまうと懸念した弘美は自分が勇気付けてやらねばと健気に思うのだった。
手錠を外され、足枷を付けられた絵里は目の前にいる弘美の胸に顔を埋めると声を上げて泣き始めた。
「先輩、辛かったでしょう。好きなだけ泣いて下さい」
弘美は精一杯の言葉を使って髪の毛を震わせて号泣する絵里を慰めた。
しかし、由里はそんな姿の絵里をせせら笑っていた。
「部長さんがおいおい泣いてちゃ、話にならないよ。島原さん、もっとしっかりしなさいよ」
由里の思いやりの欠片も無い言葉に反応したのは弘美の方だった。
「いくら、OBだからって辛い目に遭った先輩にそんな言葉はないでしょう。謝って下さい」
「私は絵里に言ってるんだ。一年生の胸に縋ってオイオイ泣くのが恥ずかしくないかってね」
勝気な由里も一年生に意見された事に腹を立てている。
「ごめんなさい。先輩。私が甘えてたの。とにかく、静かにしましょう」
絵里は泣いてはいられないと由里に声を掛けるとがっくりと膝を落した。
「部長さんも下の毛を剃られると子供みたいになっちゃうんだね」
由里が笑い声を上げたので弘美は我慢できなくなり、いきなり由里に近づくとその頬を引っ叩いた。
「何するんだよ」
言葉よりも手の方が早く出る由里の平手打ちをまともに食らった弘美は地下室の隅にまで跳ね飛ばされた。
「やめなよ。止めないと懲罰を受けるよ」
恵子が再び起き上がった弘美を制し、由里に向かって言った。
「ふん」
馬鹿にしたような笑みを浮かべた由里は腰を落とすとそのままごろりと横になった。
目の前に徹の一物が力なくぶら下がっているのを見た由里は淫猥な笑みを浮かべ、恵子の方を向いた。
「腹が立ったらしたくなっちゃった。やってもいいだろう?」
由里の指差す先に徹の一物を発見した松井は渋い顔になった。
「勝手にセックスすることは許されない。オナニーなら構わないぞ」
「ふん。勝手だね。じゃあ、そうするよ」
由里は自分で秘裂の中に指を差し入れると大きくそれを広げて見せた。
「見たかったらそこで見ていけば。おにいさん」
由里の羞恥の欠片も見せぬ態度に松井は胸糞が悪くなり、地下室から逃げ出した。
「なんだ?見ていかないの?」
松井が消えると由里は激しく指を使い始め、喘ぎ声さえ洩らし始める。それを目にした由希は心が凍る思いがした。以前の由里は自分にも徹にも優しく接していてくれた。少なくても人に喧嘩を売るような真似はしなかった。目の前で自棄になったように股間を掻き毟る女が由里とはとても思えなかった。劣悪な環境が人を荒んだ心に変えてしまう。由希は身動きの出来無い兄を守るのは自分しかいないと心に誓うのであった。