奴隷の昇格

 モニタールームの画面では由希が徹に抱きついて慟哭している姿を映し出していた。

 三枝がそんな物には興味が無い様にそっぽを向いてタバコを吹かしていると留美が後手錠を嵌めた恭子を伴って部屋に入ってきた。

 恭子は他の奴隷たちがするように三枝の前に膝を折ると深く頭を垂れた。モニタールームの三枝の前では常にこの姿勢を取るように教育されているのだ。

 「恭子。お前は随分、素直になったようだ。ここでの生活は楽しいか?」

 恭子は寂しげに首を振った。処女を奪われ、人間性を剥奪された生活が楽しい訳は無かった。

 「留美。そろそろ、一人、昇格させて、お前たちの負担を少しは減らしたいと思うがどうだ?」

 「ええ、それは有り難いわ。松井さんも塩野さんも朝から晩まで働きづめの犯しまくりだからね」

 留美は笑ってそんな事を言った。

 「俺は恭子を昇格させたいがどう、思う?」

 「私だったら恵子を選ぶわよ。恵子は松井さんたちにも評判良いのよ。セックスの時も本気で感じてるし、積極的だって」

 「そうなのか。恭子。お前は昇格したいか?」

 恭子は逡巡なしに頷いた。少しでも人間的な暮らしが出来る、留美の立場は魅力的だった。

 「よし、留美の意見も尊重して、二人がどれだけ他の奴隷たちに冷たく出来るかテストして見よう」

 三枝の心に暗い灯火が再び灯った。三枝の思いついたゲームは少女たちの心を締め上げるには十分な残酷なゲームだったのだ。

 その日の夕食後、恵子と恭子を除いた地上組はアトリエに集められた。アトリエに集められた美加子、麻美、美希の三人は残酷な仕打ちを恐れ、恐怖に慄いていた。

 三枝は三人の女たちを座らせるとトランプのカードを切った。そして、その中から三枚のカードを三人の前に並べた。

 「ここに三枚のカードがある。二枚は当り、一枚は外れだ。赤のカードをを引いた者が当りだ。当った者は恵子と恭子のどちらかとペアを組むことになる。先生から引いてくれ」

 三枝が低い声で美加子に告げた。皆が恐怖を覚えている。ペアを組まされた者がどんな目に遭うのか知らされていないからだ。しかし、悪魔の言う事には絶対服従を言い渡されている彼女たちはカードを選択しなければならない。

 「向かって右のカードを」

 「これだな?」

 三枝がカードを返した。スペードの8が゛そこに描かれていた。外れは決まったのである。

 「残った二枚はどちらとも当りだがペア分けをする必要がある。引いて貰おう」

 麻美からカードを引き、麻美がハートの6、美希がダイヤの3だった。三枝はその二枚を手にすると立ち上がった。

 そこへ、留美に先導されて褌を締めた恭子と恵子が現れた。さすがになれない褌を身に着けているせいか頬を赤らめて、首を垂れている。しかし、三枝の前に進むと二人は顔を上げて締まった表情を見せるようになった。

 「お前たち二人はこれから準奴隷になれるかどうかの昇格試験を受ける。お前たちが仲間を苛められるかどうかがポイントになる。やるか?」

 「やります」

 独裁者のように言い放った三枝の前で二人は大きく頷いた。

 「それではこのカードを引け、6を引いた者は麻美と3を引いた者は美希とペアを組む」

 恵子からカードを引いた。それは3だった。下級生の美希を引いたことで恵子は一歩リードしたと言えた。恭子は仲の良かった麻美を引いたことで一歩苦境に立たされたと言って良かった。

 二人は各々のパートナーの前に立つよう命令された。

 「思い切り引っ叩くんだ」

 三枝の号令と共に肉を叩く音が相次いで起こった。美希は痛さに悲鳴をあげ啜り上げるほどの激しさで叩かれたようだ。麻美は唇を噛み締め、恭子の顔を睨み付ける。

 「生意気なんだよ」

 恭子は心を鬼にしてもう一度、麻美の頬を叩き付けた。

 「そこまでだ。二人とも互角だ」

 三枝の声に恭子は救われた思いになった。嫌いでもない相手を叩き続けることは恭子にも強い抵抗があったからだ。

 「よし、麻美と美希はそこへ仰向けになって寝ろ」

 三枝の命令に麻美と美希がビニールシートの上に寝そべると三枝の悪魔のような声が響いた。

 「相手の顔に小便を引っ掛けろ」

 恭子は信じられないという顔で三枝を見た。しかし、恵子は既に褌を解き、美希の上に跨っている。遅れてはならないと恭子も褌を解くと麻美を見下ろした。

 「やめて、そんな事、しないで」

 麻美は恐怖に引きつった表情で哀願の声を洩らした。恭子はそんな声を無視して麻美の顔の上に腰を落した。

 「嫌、嫌よ。そんなことをしたら、恭子を一生恨んでやる」

 麻美は目を吊り上げ、呪いの言葉を恭子に向かって吐きかけた。

 一瞬、逡巡した恭子だったが隣で悲鳴を放った美希に対して放水が開始しているのを知ると負けてはならないと緊張を解放した。

 「ひ、酷い。こんな事ってあるのー」

 麻美は悲鳴を放って泣きじゃくりながら恭子の放水を浴びていた。恭子の胸は麻美に対するすまない気持ちで一杯になっていた。中学からの親友で恭子は友情以上のものを麻美に感じていたしし、麻美もそれに応えていた。そんな親友を汚水塗れにしている自分に対し恭子は激しい嫌悪感を感じていた。

 ようやっと放水を終えた二人の準奴隷候補が立ち上がると二人の少女も立ち上がり、水滴を滴らせながら泣きじゃくっていた。

 「良くやったぞ」

 三枝は二人の肩を叩いて、ニンマリとした笑みを浮かべる。

 「次は二人に誠意を尽くして、わだかまりを無くさなくてはならない。二人を風呂場に連れて行って良く洗ってやるんだ」

 三枝の試験はまだまだ続くのであった。

地下室の徹

 地下室に下ろされた由希は徹に会えた懐かしさにその首に抱きついて声を上げて泣いているうちに寝入ってしまっていた。

 徹も妹を救えない無力の自分に対して涙を流した。しかし、それとは別の問題が徹を悩ましていた。

 妹の裸の乳房を胸に押し付けられ、柔らかな繊毛を太股に擦り付けられる内に徹の男が目覚め、勃起した状態に陥ってしまったのである。

 なんとか気分転換を図って、興奮を収めようと努力するのだが意識すればするほどその興奮は高まってくる。妹の吐く甘い息が頬に掛かるに及んで徹は進退窮まった。

 妹の身体を無理に外せば目覚めた妹に自分のそんな姿を目撃されてしまう。このままにしておけば他の女子部員にその姿を見られてしまう。いずれにしろ徹はなんとか興奮を鎮めなければならなかった。

 「島原さん」

 徹は喉が締め付けられているために蚊の泣くような声しか出せない。それでも懸命に背を向けて寝そべっている絵里に向かって声を出した。

 ようやっと徹の声に気が付いた絵里が乳房を隠してこちらの方を向いてくれた。

 「妹を何とかして下さい。お願いします」

 絵里はようやっと徹を見舞っている極限状態を察知し、由希の身体を横に退けてくれた。

 「有難う。自分が情けないです」

 徹の目に涙が光るのを見た絵里はにっこりと微笑むと首を振った。

 「こんな状態じゃ仕方ありません。恥ずかしがらないで下さい」

 自分も全裸の絵里は勇気付けるつもりで言った。こんな状態で肉体の変化が遠目でもはっきりと判る男はある意味哀れなのかも知れない。絵里は徹の横顔を見ながらそんなことを思っていた。

 徹は横向きになって目を閉じるとその興奮は徐々に収まり、やがて平常に戻った。

 「島原さん」

 絵里が自分の場所に戻ろうとすると背後から徹の遠慮がちな声が響いた。

 「どうしたの?」

 「おしっこをさせて下さい。申し訳ありません」

 徹は頬を赤らめて訴えた。興奮が鎮まると同時に忘れていた尿意を思い出したのだろう。

 徹用の便器は用意されてない。絵里は仕方なく自分の便器を使うことにした。蓋を開けるとほのかな臭気が立ち上ってきた。自分の匂いを嗅がれる事を絵里は懸念したが、徹はそんな素振りは見せなかった。

 絵里は看護婦にでもなったつもりで徹の垂れ下がった一物を指で抓むと便器に導いた。

 「さあ、始めて良いわよ」

 勢い良く水流が噴出し、便器の中で派手な音を立てている。手を添えている絵里にも脈々と流れ出るそれは感じられた。

 絵里は泣きながら放尿する徹の姿を目にして悪魔たちの残酷さを再認識した感じがした。三枝はこのような事が起こるであろうことを予測して徹をここに閉じ込めたのだ。

 「泣かないでよ。こんなこと位で」

 「死にたい。死にたいよ」

 絵里が再び、慰めの言葉を掛けても徹の涙は止まらなかった。

 不意に別の水音が響いてきた。弘美が我慢できなくて放尿を開始したのだ。

 もう、恥ずかしいなんて言ってられない。とにかく励まし合って生きなくては。責任感の人一倍強い絵里は心に固くその思いを刻むのであった。

最終決戦

 麻美と一緒に風呂に入り、身体を洗ってやった恭子は幾分、気分が楽になった。しかし、恵子は美希に対して罪悪感は感じないらしく、美希は風呂から上がっても涙を流し続けていた。

 元通り、褌をキリリと締めた恭子と恵子は後手に縛り上げられロープに吊るされた。

 「ここまで良く戦ってきた。これまてのとところは甲乙付けがたい。今度が最後の戦いである。これからお前たちには利尿剤入りのジュースを飲んでもらう。最初に失禁した方が負けだ。これは我慢の戦いだ」

 排尿好きの三枝が考えた最後のゲームはやはり、それだった。今度は我慢しなければならない。恭子はごくりと唾を飲み込んだ。

 「さあ、口を大きく開きな」

 恭子には松井が、恵子には留美が悪魔のジュースを注ぎ込んだ。

 しかし、このゲームには三枝も知らない不正が行なわれていた。留美と松井が結託して恵子の水には半分の量しか利尿剤が混入されていなかったのだ。二人は御しやすい恵子の準奴隷昇格を狙っていた。

 三枝は褌姿の二人を描くためにキャンバスに向かい、そんな工作には無頓着だった。

 案の定、十分を経過して恭子の方が先に苦しみ始めた。

 「あら、恭子。もう、我慢できなくなったみたいね。頑張りなさい」

 留美は激しく動き始めた恭子の臀部を叩くと小さな笑い声を上げるのだった。

 恭子は急速に込み上がってきた尿意に身を焼き、歯を食い縛る。こんなことで今までの努力が水泡に帰す事は恭子にとって出来ない相談だった。

 恭子が脂汗を滴らせながらしなやかな両足をぴったりと揃え、じわじわと込み上がって来る尿意を堪える頃に恵にもその感覚が訪れた。

 遂に三枝の思い描いていた二人の褌少女の尿意を堪える構図が実現したのだ。

 三枝は椅子から立ち上がると二人の少女の背後に廻り、腰を下ろした。恭子の臀部は固く締まり、少年のような形をしていた。その亀裂に白い布が厳しく食い込み、モジモジと揺れる様は風に揺れるリンゴを想像させた。

 恵子の臀部は女らしく盛り上がり、桃を想像させた。なよなよと揺れる二つの双臀を目にした三枝は口をだらりと開き、至福の表情を浮かべていた。

 「おじさま。幸せそうね。ここにも一つ、形良いお尻があるのよ」

 留美が三枝の目の前で腰を振って見せると三枝は間近に見えるそれに目を細めるのであった。

 汗を流して苦しむ、無常な女たちの戦いの傍らでいちゃつく男女、アトリエの中には二つの異空間が存在していた。

 「うっ」

 恭子は突き上げてくるような尿意に全身を針のように硬直させてその瞬間が通り過ぎるのを待った。彼女の我慢は限界に近づきつつあった。

 「凄く苦しそうじゃない?もう、思い切って出しちゃったら」

 留美が恭子の愛らしい乳首を抓んでからかうと恭子は激しく首を振った。

 「止めてよ。負けたくない。負けたくないのよ」

 髪を振り乱して訴える恭子の剣幕に気圧されて留美も思わず手を引っ込めてしまう。恭子の思いはそれほど強かったのだ。

 しかし、それから数分後、恭子は遂に我慢の限界を超えることとなった。

 「あっ」

 小さく呻いた恭子の身体に張り詰めていた緊張が途切れ、ロープに支えられだらりと力が抜けた。そして、その頬に悔し涙が伝わり始める。

 「あら、始めちゃったみたい」

 恭子の異変に気が付いた留美が素っ頓狂な声を上げると耐えに耐えていた恵子も恭子に注目する。

 恭子の白い褌にじわじわとシミが広がり始めたのを確認した留美は高らかに宣言した。

 「恵子の勝よ。おめでとう」

 手を叩かれた恵子は喜びに浸る暇は無かった。早く早くと催促して縄を解かせると一目散にトイレに駆け込むのであった。

 もう、精も根も尽き果てたように吊られているロープに身を任せ、ぐったりとしてしまった恭子の傍らに三枝が立った。

 「残念だったな、恭子。しかし、いい絵が描けそうだ。次の機会にまた頑張ってくれよ」

 恭子は挫けそうになる意識の中で次の機会は果たしてあるのだろうか?と思っていた。とにかく、女同士の意地のぶつかり合った昇格試験は終了したのだった。

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