わたしのいえは5にんかぞくです。 おとうさんとおにいちゃんたちとおばあちゃんとわたしですんでいます。 おかあさんはいません。 おとうさんはだいがくのじょきょーじゅで、いつもたばこをすっています。 このまえおとうさんのたばこをわたしもすおうとしたら、おとうさんからおこられました。 『さかさおしおきのけい』をされているとおばあちゃんがたすけてくれました。 おばあちゃんはやさしいです。 ばぁちゃんはあまいから…といつもおとうさんはもんくをいいます。 でもおとうさんもおばあちゃんにはあたまがあがりません。 それはおばあちゃんがおとうさんにもあまいからだとおもいます。 おにいちゃんたちはわたしよりもおおきいので、あんまりいっしょにあそんでくれません。 でもいろんなことをおしえてくれます。 わたしたちにおかあさんがいないのはおとうさんが『おんなきらい』だからだそうです。 しりませんでした。 でも『おんなきらい』ってなにってきいたら、おにいちゃんたちにもわからないそうです。 おにいちゃんたちにもわからないことがあるとしって、わたしはすこしあんしんしました。 ときどきうちにおとうさんのともだちもやってきます。 そのひとがやってくると、いつもわたしたちはおばぁちゃんのところでねます。 おとなのじゃましたらいけないとおにいちゃんたちが言うからです。 すこしつまりません。 そのひとがくるといつもあそんでくれるおとうさんがあそんでくれないのです。 おとうさんのおともだちもあそんでくれるけど、わたしはおとうさんにあそんでもらうのがいいです。 それにいつもそばにいくとあたまをなでてくれるのに、そのひとがくるとなでてくれません。 ずっとそのひとをなでてあげてるのです。 そのひとのことをきらいじゃないけど、おとうさんをひとりじめするなんてひどいとおもいます。 「…………なんだこれは」 パソコンを立ち上げ現れた画面に火村は眉を寄せた。 「おい、有栖これはなんの悪戯だ?」 起きろ、とまだベッドと仲良しになっている恋人を起こす。 しかし当然聞こえているはずの彼は何の反応も返さない。 そんな彼に焦れて手荒くその頭を叩くと、薄く眼を開いた彼は不機嫌な表情で顔をあげた。 「なんやうるさいなぁ…」 「お前かこれ書いたのは?なんだよこの『わたしのかぞく』ってのは…」 「………話 ……んなもの書いとらへんわ。昨日は何もする暇なかったんで…誰かさんのせいで」 恨みのこもった半眼を恋人に向けられるが、如何せんそんな視線に慣れ切っている。構わず言葉を重ねた。 「しかしお前以外誰がいるんだ、まさか桃がこれ書いたとでもいうのかよ」 「うるさい、いい加減にせぇ…」 そううめくなりまた枕に沈没する恋人の姿にやれやれ、と肩をすくめる。 「まさかな」 呟いた火村の足元で、擦り寄ってきた愛猫がごろごろと喉を鳴らした。 ほんとうはおとうさんはわたしたちのほんとうのおとうさんではないんだっておにいちゃんはいっていました。 おにいちゃんもそうだそうです。 でもわたしはおとうさんもおにいちゃんもおばあちゃんもみんな大好きです。 |