19.Standard(TesserF4.5)  vs  Original(TesserF4.5)

 さて、F4.5比較シリーズでもう1つ行きましょう。F4.5でしかも、テッサー同士。そう、「スタンダード」ともう1台は、なんと「オリジナル」であります。オリジナルの作例なんて、中々ご覧になったことのある方も少ないのではないでしょうか?こんな比較、世界中捜したってこのサイトくらいでしか見られない…、かな?(笑)

 F4.5のスタンダードは、発売順から言うとスタンダード3兄弟の「次男坊」でありましたが、F4.5オリジナルは長男。つまり、正にローライ2眼(6×6)の「オリジナル」なのであります。フィルムは、幅は120フィルムと同じですが、スプールの太さが違う117フィルムです。後に、120との共用モデルも出たようですが、今回試写したのは元々の117専用タイプだったので、120フィルムのスプールを調整し、ちょっと無理して使用しました。というわけで、使用フィルムは共通です。

 さて、これまで本サイトに登場した中でも、「最高齢」のローライは、どんな写りを見せてくれるでしょうか?

RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f8, 1/100
RolleiflexOriginal(TessarF4.5)
f8, 1/100


 スタンダードのテッサー達について、これまでも「古い設計にも関わらず歪曲がよく補正されている」とご紹介してきましたが、更に古いオリジナルのテッサーに付いてもやはり、「1920年代によくぞここまで…」と感心させられます。コンピュータなど影も形もない時代の設計なのですから、本当にすごいことだと思います。
 強いて言うなら、どちらもやや樽型かなという傾向。特にオリジナルの方は、同心円を描いたように、ややクセのある歪方をしているように見えます。

RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f4.5, 1/100
RolleiflexOriginal(TessarF4.5)
f4.5, 1/100


 被写界深度を見てみようとしたこのカットですが、感じとしては良く似ていると思います。やや、より古いオリジナルの方がコントラストが甘いというか、軟らかいかなという気はしますが、傾向としては似た印象です。
 ただ面白いことに、オリジナルの方が一見柔らかめに見えるのにも関わらず、ピントを合わせた真ん中の支柱に付いているボルトの頭の部分にある刻印が見えるのです。スタンダードでは殆ど分かりません。「全体としてスッキリ見える方が、細部が見えない」という、不思議な結果となっています。(?)

RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f4.5, 1/25
RolleiflexOriginal(TessarF4.5)
f4.5, 1/25


 こちらの看板の写真では、ちょっと違いが出ました。スタンダードの方も少し中心部と周辺部で解像度に差が見受けられるのですが、オリジナルの方が明らかにその差が大きく出ています。ここでは、何故か両方とも中心より周辺の方がキリッとしているのですが(ピントの合わせ方が悪かった?)、スタンダードではあまり気にならないレベルなのに、オリジナルではかなり気になる差になってしまっています。もしかすると、撮影時に何かまずかったところがあったのかも知れません。
 ただ、どちらもF8まで絞ると、全体の画質も、中心と周辺の差もかなり改善しました。。

RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f5.6, 1/100
RolleiflexOriginal(TessarF4.5)
f5.6, 1/100


 色目について言いますと、オリジナルの方は若干シアンに転び、スタンダードは微妙にイエローに転ぶようです。が、どちらもそれぞれに比べればという程度で、気になるほどではありません。

 この山門のカットでは、僅かにオリジナルの方がエッジが立っているような感じに見えます。モノクロの時とは反対に、オリジナルの方がクッキリ感があるというか、輪郭がハッキリしている感じです。一方のスタンダードは、「質感の表現」という点で、僅かに後発ならではのアドバンテージを見せているように思います。これは、意図された「進歩」の跡なのでしょうか?

 最初のタイルのところでも触れましたが、微妙にクセのある、四隅に引っ張られる感じは、やはりオリジナルの方が強いようです。

RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f8, 1/50
RolleiflexOriginal(TessarF4.5)
f8, 1/50


 このカットでは、その差は微妙でした。
 それでもやはり、強いて言えばオリジナルの方がややエッジが立った感じというか、輪郭がハッキリしているように思います。一方、スタンダードはややエッジは甘めに見えるものの、階調、質感のバランスという点では、より好ましいように見えます。
 しかし、その差は非常に「微妙」で、基本的な「造り」の部分ではなく、硝材の違いといったような要素によるものなのかも知れません。


RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f8, 1/25
RolleiflexOriginal(TessarF4.5)
f8, 1/25


 こちらの神社の山門の撮影結果では、どちらもテッサーらしい、スッキリとした描写となりました。
 しかし、ここでもどちらかというとオリジナルの方がややエッジが立っていて、一方、全体のバランスという意味ではスタンダードの方がいいように思います。例えば、ピントを合わせた真ん中の金色の狛犬ですが、スタンダードでは表面の金色が目立ち、より「金無垢」的な感じがしますが、オリジナルではより細かい「スジ」や下地の凹凸までが描写され、その意味で「木工品を金色に塗ってある」という感じがしてしまいます。同じカットを3枚ほど段階露光してみましたが、オーバー目、アンダー目のカットも含めてそうした印象です。もちろん、「ということは、どちらかより実物の質感を表しているのか?」と言えば、意見が分かれそうな気もしますが…。


RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f8, 1/25
RolleiflexOriginal(TessarF4.5)
f8, 1/25


 こうした、あまり色のない状況では、その差はあまり感じられません。ピントを合わせた看板の文字からも、解像度の差はあまり感じられません。細かく見ていくと、中心部から周辺部へのボケていき方、解像度の落ちていき方に若干の違いが感じられる気もしますが、あくまで「比べてみれば」というレベルで、どちらか1枚を見て、それがどちらかを判別するのは困難でしょう。


 今回の比較では、モノクロでの傾向とカラーでの印象がちょっと違ったので、感想をまとめるのが難しいのですが、カラーを中心に見ると、大雑把には「コントラストのオリジナル、階調のスタンダード」と言えるでしょうか。もっとも、その差は微妙であります。

 とはいえ、微妙な差というものは感じました。基本設計が同じ「テッサー」であると言っても、年代の違いにより、硝材の違いもあるのかも知れませんし(まあ、比較的近い年代のものではありますが)、同じ開放値ではありながらレンズ径も違います。その辺のところで、「どちらも傾向としては確かにテッサー。でも細部に差はある」という結果になったのかも知れません。

 それにしても、どちらも「御年70余歳」というカメラです。手書きの設計図で作られたカメラにこれほどの描写を見せてもらうと、何だか顔がほころんでしまいますね。