18.Rolleicord ArtDeco(TriotarF4.5)  vs  RolleiStandard(TessarF4.5)

 F4.5からのローライコード、トリオター対決と一緒に、「F4.5つながり」ということで、同時代を生きたスタンダードのF4.5も試写させていただいておきましたので、見比べてみましょう。

 因みに、いわゆる「アールデコ」のローライコードは1933〜1936年、ローライフレックススタンダードF4.5モデルは1932〜1938年の製造ということになっております。


RolleicordArtDeco(TriotarF4.5)
f8, 1/100
RolleiStandard(TessarF4.5)
f8, 1/100


 う〜ん…、こう並べてしまうと…、やっぱりテッサーの方が1枚上手かなぁ…。(笑)
 どちらも若干の樽型傾向ですが、中心部が盛り上がったような感じを受けるトリオターに対し、スタンダードはいたって素直な樽型“傾向”で、1本1本の目地もキリッと写っているように思います。

 普通の被写体ではどうか、見てみましょう。


RolleicordArtDeco(TriotarF4.5)
f4.5, 1/100
RolleiStandard(TessarF4.5)
f4.5, 1/100


 これもやはり、大分印象が違いますね。
 トリオターが、かなり柔らかめな印象で、優しい光に写っているのに対し、テッサーはやはりカッチリとした描写です。歩道の敷石も、トリオターではソフトな感じ、テッサーではいかにも「石です」という感じです(石なんですけど(笑))。ネットの支柱もまた、変な例えですが、トリオターがけっ飛ばしたら凹みそうなのに対して、テッサーは足の方が痛そうです。(笑)


RolleicordArtDeco(TriotarF4.5)
f4.5, 1/25
RolleiStandard(TessarF4.5)
f4.5, 1/25


 うわぁ、やっぱり…。
 トリオター同士の比較では1番、中心から周辺まで解像力の破綻の少なかったF4.5トリオターですが、テッサーと比べてしまうと、圧倒的にというほどではないものの、やはり分が悪いようです。中心部では中々善戦していますが、端の方まで比べてしまうと、やはりテッサーのしっかりした描写性能が光ります。大きく伸ばせば、かなり目立ってくるだろうというレベルの差です。


RolleicordArtDeco(TriotarF4.5)
f5.6, 1/100
RolleiStandard(TessarF4.5)
f5.6, 1/100


 この山門の写りに関して言うと、総合的にはコードも決して悪くはないのです。多分、何も言わないでこれだけ見て、「これ、ローライなんだよ」と言われたら、「へぇ、ローライフレックスなんだ」と勝手に思ってしまうでしょう。でも、やはり比べてしまうと…。

 色のノリ具合もそうですが、解像度も差が出てしまっています。真ん中の屋根の軒部分には、ハト避けと思われるネットが張ってあるのですが、その影がその下の青い額に落ちているのです。しかし、ここまで3台のコードを比べている段階では、私はそれを意識していませんでした。スタンダードの画像を見て、初めて「あれ?」と気が付いたのです。よく見てみればコードでも写ってはいるのですが、何となく「モヤッ」とした感じで、ハッキリしていません。


RolleicordArtDeco(TriotarF4.5)
f8, 1/50
RolleiStandard(TessarF4.5)
f8, 1/50


 これはコードの方をカブらせてしまっていますので、必ずしも公平な比較はできませんが、やはりスタンダードの方がキリリと写っています。
 このカットでは色目の傾向として、コードがややイエローがかっているのに対し、スタンダードはややシアンがかっていますが、どちらもあまり目立つものではありません。



RolleicordArtDeco(TriotarF4.5)
f8, 1/25
RolleiStandard(TessarF4.5)
f8, 1/25


 う〜ん…、つぶさに観察しなければ、やはりこのどちらも、「へぇ、ローライかぁ…」と思ってしまうかも知れない出来なのですが…。

 ここでは、色目についてはかなり近いように思います。しかし、解像感ということで言うと、やはりコードの方がどこか「ホワン」としているのに対し、スタンダードは「キリリ」としているんですねぇ…。例えば、真ん中の金色の狛犬が、コードは「光を反射している」感じなんですけれども、スタンダードはただ「光っている」んです。「微妙」といえば「微妙」なんですけれども、いわゆる「カメラの基本性能」として、どういうものが「“良い”と言われてきたか?」というものさしで言えば、明らかにテッサーの方が「上手(うわて)」と言わざるを得ません。
 もちろん、それぞれの特徴を「味わい」と解釈すれば、それぞれに活かせるシチュエーションもあるとは思うのですが、あくまで「基本性能は?」と言えば、やはりテッサーに軍配が上がるでしょう。



RolleicordArtDeco(TriotarF4.5)
f8, 1/25
RolleiStandard(TessarF4.5)
f8, 1/25


 ここではそれほど差が出なかったと言えそうです。ですがやはり、このそれぞれを見せて、「よりクッキリとした写りなのはどちら?」と聞けば、多分間違いなくテッサーを指し示す方が多いでしょう。


 資料によれば、発売時のお値段は、アメリカでアールデココードが58ドル、スタンダードが125ドルだったそうです。
 実に倍以上という価格差があったわけですから、描写力についてもそこはそれ、それなりの説得力のある差がなければ誰も買わなかったでしょう。…と言ってしまえばそれまでですが、やはり、こうして比べてみると、特に職業で写真を撮っていたような人にとって、この描写力の差は、かなりの説得力を持って受け止められていたのではないか、と納得できるだけの違いがあるようです。

 しかし、当時のように、「カメラなどという贅沢品は、せいぜい1家に1台」だった時代は別として、今のように複数のカメラを所有して、「描写力の差」や「レンズの良し悪し」などを比べてみたり出来る時代になってみれば、こうした差もまた「楽しみの種」でありましょう。