「テッサー」対決。やっと(?)その第3弾。今回は、スタンダードF3.5と、後のローライの代名詞的機構「オートマット」の名を冠したローライフレックス、そのタイプ2を比べてみましょう。 この2機種のレンズは、どちらもテッサーF3.5です。年代的には、スタンダードの生産終了年に、オートマットのタイプ2が発売されているという、興味深い比較です。見た目もいかにも「オールド」なスタンダードと、その後のローライに引き継がれるデザインのオートマット。描写に差はあるのでしょうか? |
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RolleiflexStandard(TessarF3.5) f5.6, 1/125 |
RolleiflexAutoMat(TessarF3.5) f5.6, 1/125 |
見た目の違いのわりには生産年代が近いため、スタンダードF3.5とオートマットF3.5のレンズの違いはどれほどのものかと思ったのですが、この2台に関して言うと、やはり写り方も少々違って見えます。モノクロで言うと、同じように焼いても、オートマットの方がやや明るい感じです。もっともこれはレンズの違いと言うより、シャッタースピードがこの2台の間で少しずれているのかも知れませんが…。 歪曲についても、むしろ後発のオートマットの方が、少し目立つような気がします。クッキリ感はスタンダードの方が上です。もっとも、モノクロでの印象ですが…。 |
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RolleiflexStandard(TessarF3.5) f3.5, 1/500 |
RolleiflexAutoMat(TessarF3.5) f3.5, 1/500 |
被写界深度に付いては、ほぼ共通した印象です。開放で比べたこの写真では、ピントを合わせた画面真ん中の支柱から手前の支柱までの3分の1、後ろの支柱までの3分の1くらいが、ある程度くっきり見える範囲です。解像度という意味でも、大体拮抗しているように見えます。 ただ、写真としてはスタンダードの方がややクッキリ感というか、メリハリがあるように感じます。微妙に暗めな感じに写っているために、「黒いところがより黒く出ている」ということなのでしょうか。段階露光もしてみましたが、傾向としては同様に感じました。 |
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RolleiflexStandard(TessarF3.5) f3.5, 1/500 |
RolleiflexAutoMat(TessarF3.5) f3.5, 1/500 |
この条件でも、やはりオートマットの方がほんの少し明るめな印象です。 細かいところまで出ているかどうかについては、甲乙付けがたい印象です。ただ、スタンダードの方が黒が締まって見える分、狛犬が金属的というか、硬質な描写になっています。オートマットも金属的ではありますが、「無垢」と、「金箔貼り」のような質感の違いがある、とでも言ったらお分かりいただけるでしょうか? |
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RolleiflexStandard(TessarF3.5) f5.6, 1/250 |
RolleiflexAutoMat(TessarF3.5) f5.6, 1/250 |
この2台、名前は違ってもレンズ構成的にはかなり近い(同じ?)「二卵性双生児」 (???)なので、カラーになってしまうと、ほとんど見分けはつかなくなります。 しかし強いて言うなら、ピントをあわせた中心部などでは特に、オートマットの方がスッキリ(クッキリと言うよりは、スッキリ)見えます。そこから周辺に向けてピントが外れていく度合い(ボケていき方)は、ほぼ同様と言っていいと思います。 |
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RolleiflexStandard(TessarF3.5) f3.5, 1/500 |
RolleiflexAutoMat(TessarF3.5) f3.5, 1/500 |
このカットでも、あまり目立った差は見られませんでした。 ただ、細かく見ていくと、やはりオートマットに比べると、スタンダードは微妙に薄皮一枚(極薄い、といった程度ですが)かかっているかなぁ…、という感じがします。別な言い方をすると、やや白っぽい感じです。コーティングの有無や、バッフル版の有無といった違いがないことを考えると、微妙な経年変化の違いでしょうか。2台ともレンズ自体は、少なくとも目視では至ってクリアなので、あるいは素材に多少の違いがあるということも考えられるかも知れません。この写真は、逆光ではないですが、かなり強い日差しを受けた金色の狛犬を撮っているので、差が出易いのかも知れません。もっとも、気になるレベルではなく、黙って見せられたら気がつかない程度です。 色々な色が入っている写真ですが、色目の傾向としてはほとんど同じに見えます。 |
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RolleiflexStandard(TessarF3.5) f8, 1/125 |
RolleiflexAutoMat(TessarF3.5) f8, 1/125 |
スタンダードF4.5、F3.5の比較では、ボケ方の違いが良く見えたこのカットですが、F3.5テッサー同士の比較では、よく似たボケ方が確認できました。ピントを合わせた中央の鉄塔の中腹部分から足元、あるいはてっぺんへのボケていき方、隣、更にその隣の鉄塔のボケ方など、かなりそっくりです。 色目については、この鉄塔の白い部分において、スタンダードの方が僅かによりイエローよりであることが見てとれますが、それでも発色については概ね同じ傾向と言っていいと思います。 |
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RolleiflexStandard(TessarF3.5) f3.5, 1/1 |
RolleiflexAutoMat(TessarF3.5) f3.5, 1/1 |
同じ露出値で撮ったはずなのですが、クラカメの難しいところで、スローシャッターのこのカットでもややオートマットの方が明るくなってしまっています。 が、その辺を差し引いてみると、このカットでもあまり差は出なかった、と言っていいでしょう。小さいながらも光源の入っているところなどに、多少なりとも違いが出るかとも思ったのですが、分かりませんでした。 名前も見た目も違うこの2台のローライですが、どうやら「戦前モノテッサーF3.5」というレンズの共通した特性を持っていると言っていいようです。撮影の結果には、それほど大きな差が出ないように思います。 あえて傾向を言うなら、「モノクロのにおいてコントラストがやや勝るスタンダード。カラーのクリアさでやや勝るオートマット」というところでしょうか。 もし「実用的なテッサーを手に入れたい」と思うなら、この2機種のうち、年代的にもより程度の良いものも手に入れやすいオートマットを狙う、という選択はアリだと思います。一方、モノクロに軸足を置き、「クラカメ」としての「味」を少しでも多く味わいたいと思う人なら、スタンダードを選んだ方が楽しめるかも知れません。 |