14.Standard(TessarF4.5)  vs Standard(TessarF3.5)

 「テッサー」対決。やっとその第2弾。スタンダードのセカンドモデル「F4.5」とサードモデル「F3.5」であります。

 「セカンドモデル」と「サードモデル」とは言いながら、どちらも1930年代のお生まれです。ところが、今回試写させていただいた2台は、実に良いコンディションで、実に「矍鑠(かくしゃく)としたオジイチャン達」でした。それぞれのオーナーでいらっしゃる、れんずまにあさん、ニコニコカメラさんのカメラに対する愛情のほどがうかがえます。

 さて、ではスタンダード3姉妹の次女と三女を比べてまいりましょう。

RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f5.6, 1/100
RolleiflexStandard(TessarF3.5)
f5.6, 1/125


 テッサー系について、毎度書いてしまいますが、本当に歪曲が少ないですね。F4.5、F3.5とも、定規をあててみても、「おお!」と感心するほどタテ、ヨコとも限りなく真っ直ぐに近い、という感じです。ビルの谷間などで風景写真を撮っても、違和感は感じないでしょう。

 こうした格子状のものを撮っても、F4.5、F3.5ともにキリリと引き締まった写りで、「カメラのレンズって、この時代にもう完成してしまっていたのでは?」と思ってしまいます。

RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f4.5, 1/300
RolleiflexStandard(TessarF3.5)
f3.5, 1/500


 被写界深度に付いて見てみると、F値1.0分の違いは、このカットで比べた限りでは、「F3.5では、ピントを合わせた画面真ん中の支柱から手前の支柱までの3分の1、後ろの支柱までの3分の1くらいが、ある程度くっきり見える範囲。F4.5では手前の支柱までの3分の1、後ろの支柱までの2分の1くらい」といった感じでした。微妙ではありますが、絞りを使った表現にこだわる方には、差を感じるところかも知れません。更に、後ろの方の木のボケ方も注目してみてください。
 またこのカットでは、ピントが合っている範囲の締まりは、F3.5の方が上のように思います。

RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f4.5, 1/300
RolleiflexStandard(TessarF3.5)
f3.5, 1/500


 日差しの強いところで、それぞれ開放で撮っているために、F3.5の方がややハイライトが飛び気味になってしまっていますが、それを勘案してもこのカットではそれぞれの特徴が出ているように思います。描写の傾向として、F4.5はよりマッタリとしていると言うか、ちょっと重厚な描写。対してF3.5はすっきりとコントラストが高い感じ。別な言い方をすると、F4.5の方が、中間調が出ている雰囲気で、F3.5は白黒ハッキリと言う雰囲気です。

RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f5.6, 1/300
RolleiflexStandard(TessarF3.5)
f5.6, 1/250


 これはちょっと意外な発見がありました。
 上の方のフェンスのカットでは、F3.5の方が「締まりがある」と書きましたが、このビルの写真を見ると、必ずしも全てにおいてそうとも言えないようです。というのは、確かにピントを合わせた中心部ではそんな感じもするのですが、周辺に行くに連れて、同絞りにも関わらず、F3.5の方がボケが大きくなっていく感じがするのです。斜めに見上げているので、ピントを合わせたところから距離的に外れていっているのはもちろんなのですが、そのボケていき方がF3.5の方が大きいのです。
 「あら?」と思いながら、平面を写している1枚目のタイルのカットなども見直してみると、やはりF4.5の方が中心から周辺まで解像度が平均しているように思えます。「中心部の解像感はF3.5の方が高いが、画面全体ではF4.5の方にやや分がある」というように見えます。

RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f4.5, 1/300
RolleiflexStandard(TessarF3.5)
f3.5, 1/500


 F3.8は、狛犬に後光(?)が差してしまっていたこのカットですが、この2台は開放でもきっちりと撮れています。
 違いとしては、やはりF4.5が画面全体にスッキリと描写されているのに対し、F3.5は中心はクッキリでも、ちょっと外れると急に大きくボケています。変な表現ですが、「ボケていき方が極端」な感じです。たったF値1.0分の違いではないように思います。
 もう少し具体的に言うと、F4.5ではピントを合わせた狛犬はもちろん、その後ろの梁の飾り、上の方の鳥避けの金網などまで合ってしまっている感じですが、F3.5では、すぐ後ろの柱からしてボケています。


RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f8, 1/100
RolleiflexStandard(TessarF3.5)
f8, 1/125


 さて、この鉄塔で、やはりピントの合い方の違いが見てとれました。
 ピントを合わせた画面中心部では、甲乙付けがたいしっかりした写り方を両者とも見せていますが、F3.5では、その足元、鉄塔の土台の方がもうボケてきています。対してF4.5では、真ん中の鉄塔は上から下までほぼきっちりと描写されています。そのくせ、右から2本目の鉄塔上部のボケ方には、あまり差がありません。どうやら、やはり「周辺解像度はF4.5がやや勝る」と見て良さそうです。


RolleiflexStandard(TessarF4.5)
f4.5, 1/1
RolleiflexStandard(TessarF3.5)
f3.5, 1/1


 この夜景は、それぞれ絞り開放で、同じシャッタースピードで撮っているので、ややF3.5の方が明るくなっています。
 その辺を考慮すると、このカットでは描写に目立った差は感じられなかったと言っていいでしょう。ただ、真ん中の獅子(?)の像の質感は、暗めに写っているためか、F4.5の方が重厚感もあり、よく出ています。


 「F3.8の廉価版」と言うF4.5ですが、「描写性能」と言う面では、むしろ上位機種、後継機種を上回る場合もあるように思います。もちろん、F3.8、F3.5それぞれにも「味わい」というか、特徴はあると言えるわけですが、その安定した写りに、F4.5の完成度の高さを感じました。
 一方のF3.5ですが、後継機らしく、F3.8、F4.5よりも「より現代的な描写に向かって進化している」とは言えるでしょう。「開放でポートレート、絞り込んで風景写真」といった表現力の幅では、改良の成果が出ていると思います。

 あえて大雑把にまとめるなら、「質感の表現力ならF4.5、コントラストならF3.5」という感じでしょうか?これにF3.8を加え、「スタンダードを3台揃えて使い分け」なんて出来たら、贅沢ですね。