11.3.5F(PlanarF3.5)  vs 3.5F(XenotarF3.5)

 さて、せっかくモノクロを結構撮ったので、3.5Fのプラナーとクセノターを、モノクロについてということで再考察してみましょう。

 まず、手水所のカットですが、いやいや、似てますね。「プラナーとクセノターを比べても、違いなんか分からなiい」という方もいらっしゃいますが、こういうカットを見ればさもありなん。これを一目で見破れる方は相当なものと思われます。
 もっと大伸ばしにすると、あるいはプラナーの描写の柔らかさ、クセノターのカッチリ感が出るのかな、と思わないこともないのですが、とりあえず、このような被写体では、キャビネくらいまででは判別は難しいでしょう。

Rolleiflex3.5F(Planar)
f4, 1/15
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f4, 1/15


 次の階段のカットも似てます。しかし、ちょっとピンのズレがあるのか、私の合わせ方が不十分だったのか、クセノターの方が後ろの木や山門が大分派手なボケ方をしています。ピントを合わせたポイントの、階段の手前の方は質感もかなり似たような描写を見せています。強いて言うなら、クセノターの方が黒に締まりがある感じでしょうか。

Rolleiflex3.5F(Planar)
f5.6, 1/15
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f5.6, 1/15


 次の酒樽のカットでも、プラナーよりクセノターの方が手前にピントが来ているようですが、階段の時ほど極端ではありませんでした。やはり階段のカットはちょっと失敗だったかも知れません。スイマセン。
 パッと見ではまず区別出来ないほど似ていますが、ここではやや違いが見受けられます。やはりプラナーの方が柔らかい、悪く言えばコントラストが弱いのです。例えば、上の段の手前から3番目の樽には、銘柄の横に薄く絵が描かれているのですが、クセノターでは一応判別できるものの、プラナーでは注意してみないと見落としそうな程度にしか出ていません。(因みに、ピントはその直ぐ下の樽です)
 「解像度が低い」ということもないと思うのですが(一応、細かいところまで出ていることは出ています)、やはり何となく、一言で言うと「柔らかい」のです。

Rolleiflex3.5F(Planar)
f5.6, 1/8
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f5.6, 1/8


 字ばかりで、しかも平面の看板ではどうでしょう。
 これはスタンダードとの比較でもそれぞれ触れたことですが、「画面中央部から周辺部まで、平均して柔らかいプラナー」、「中央部でよりカッチリしているが、周辺へ行くに連れてやや甘さが出てくるクセノター」という感じです。
 画面のほぼ中央やや下に、「明治十五年」という文字が見えると思うのですが、この辺りはクセノターのクッキリ感が勝ります。しかし、例えば右上の「須佐之男神」という字の辺りを見ると、プラナーは「明治十五年」のあたりと同じような印象であるのに対し、クセノターは明らかに解像感が落ちています。(拡大図

Rolleiflex3.5F(Planar)
f4, 1/8
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f4, 1/8


 次の鳥居の写真は、中央奥の灯篭(ちょっと分かり難いと思いますが)にピントを置いています。
 これも、一目で判別できる方はかなりのものと思いますが、最初の手水所の写真ほどには難しくないかも知れません。やはりプラナーの方が軟調です。
 クセノターは、一番奥の灯篭がクッキリと写りつつ、一番手前の鳥居のハイライト部分も、何となく芯があるボケ方です。対してプラナーは、ピントを合わせたはずの灯篭ももう1つシャキッとせず、手前の方の鳥居のハイライトもモヤッとしたボケ方です。灯篭がキリッとしないのは前ピン気味なのかとつぶさに観察しましたが、やはり「全体に軟調気味」という結論に達しました。

Rolleiflex3.5F(Planar)
f8, 1/8
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f8, 1/8


 「ポートレートならプラナー、風景ならクセノター」というようなことがよく言われますが、話を「女性のポートレート」「人工物を入れた風景」というようなことに限定すれば、この言葉は真理に近いといえるかも知れません。もっと別な言い方をすれば、「柔らかい描写が好みならプラナー、カッチリいきたければクセノター」でしょうか。
 この辺は概ね、カラーでの両機の比較時と同じような感想を持ちました。

 ただ、同じ風景でも「花畑を撮りたいから、全体に柔らかい方がいい」とか、人物でも「社長さんなど、偉い人を真ん中に置いたポートレートを撮るからクセノター」という選択もあると思います。
 また、カラー撮影であれば、どちらでも何となく見られてしまうような被写体でも、モノクロ撮影時には、それぞれのレンズのキャラクターがより活かせる場面がある、というようなこともありそうです。

 レンズ選びって、面白いですねぇ。