10.Standard(TessarF3.5)  vs  3.5F(XenotarF3.5)

 「ツァイス系の先輩後輩対決」となった前回の「スタンダードvs.プラナー3.5F」でしたが、今回は、同じ3.5Fということで、クセノター3.5Fとも比べてみましょう。
 「ツァイス信仰」の影で、とかく「外様」(?)扱いされることが多いシュナイダー。その代表がクセノターですが、その実力のほどはいかがなものなのでしょうか?

RolleiflexStandard(Tessar)
f11, 1/300
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f11, 1/250


 以前にも述べましたが、2.8Fでは樽型、糸巻き型と対照的な歪曲収差を見せるプラナーとクセノターですが、3.5Fではどちらもやや糸巻き型傾向と似た感じの両者であります。しかも、その程度は2.8Fよりもナチュラルですので、あまり歪曲収差だけを比べて、どちらがどうというほどの特徴は認められません。
 ここでテッサーと比べた場合も、「やや樽型のテッサー、やや糸巻き型のクセノター」という特徴は認められますが、やはり目立つと言うほどではありません。印象としては、前回のテッサーvs.プラナーの時と似たような感じになりました。

RolleiflexStandard(Tessar)
f4, 1/10
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f4, 1/15


 このカットでもやはり、テッサーとプラナーを比べた時の印象に近い感じになっています。
 テッサーとクセノターとの印象の違いということで言うと、コントラストがある中にも、後ろの方のボケ具合がフワっとしている感じのテッサーに対し、階調表現という意味ではテッサーを上回る感があり、あるところからガクンと暗くなっているクセノターという感じがします。別な言い方をすれば、表現できるところは出来るだけ表現して、尚且つ黒は黒として描写しているという感じです。しかし、このカットでのバランスというか、この構図での表現としては、テッサーの方が良いように思います。


RolleiflexStandard(Tessar)
f5.6, 1/10
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f5.6, 1/15


 この階段の写真においても、やはりテッサーの方がコントラストは高いように思います。黒が締まって見えます。石段の感じも締まっていて、適度な「硬さ」を感じさせてくれる描写です。
 対して、クセノターの方はと言うと、よく言えば階調表現的にはテッサーよりやや上回っているというか、別な言い方をすると幾分軟調な雰囲気です。

RolleiflexStandard(Tessar)
f5.6, 1/10
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f5.6, 1/8


 明暗のはっきりしている文字などではどうでしょうか。
 やはりプラナーとの比較でも書いた通り、明暗をクッキリと表現してくれるのがテッサーと言う気がします。画面中央からやや左に、カニのマークが書いてある酒樽があり、そのマークの右下に小さい文字が書いてあるのがお分かりいただけるでしょうか。「井」の字の左です。こういう細かい字まで、クッキリと写っているのはテッサーの方でした。

RolleiflexStandard(Tessar)
f4, 1/10
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f4, 1/8


 更に、文字だけの看板を、ほぼ正面から撮ってみたカットです。
 面白いことに、ある面でプラナーよりクセノターの方が、テッサーに近い傾向が見られました。どういうことかと言うと、「中心でのコントラストより、周辺部に行くに連れて流れていく」ということです。中心部のコントラストは、両者ともクッキリとして、こうしたメリハリのある(文字というのはありすぎですが)被写体の表現としてはかなり優秀ですが、周辺部では解像度がやんわりと、しかし目に見えて落ちていきます。

RolleiflexStandard(Tessar)
f8, 1/25
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f8, 1/30


 カラーで比較すると、比較的、色がニュートラルというか、やや地味目なクセノターと比べても、やはりテッサーは「時代を感じさせる」発色といえるでしょう。レンズのコーティングやバッフル板の有無の影響等々あるでしょうが、結果としてはやはり「モヤッ」とした感じになってしまいます。「モノクロで順光」という条件での撮影と、「カラーで逆光」での「出来」のギャップは、正直感じざるを得ません。

RolleiflexStandard(Tessar)
f4, 1/5
Rolleiflex3.5F(Xenotar)
f4, 1/4


 この夜景については、クセノターの方がかなり明るく写ってしまっているので、ちょっと単純に比較するのも何なのですが、ショーウィンドウの中などに注目していただくと、テッサーのクッキリ感がおわかりいただけるのではないかと思います。もちろん、クセノターもウィンドウの枠や、その上のタイルの境界線など見ていただくとスッキリした持ち味が出ているかと思います。

 今回の撮影で感じた範囲で言うと、テッサー、クセノターとも、プラナーなどよりもクッキリ感が持ち味のように思いました。
 そして、テッサーとクセノター両者の比較で言うと、「クッキリ感」ではむしろ設計の古いテッサーの方が上回り、クセノターはやはりそれよりも後の時代に求められるようになってきた「バランス」で作られているような気がします。
 もし、「よりクラシックカメラらしい描写を楽しみたい」という方になら、「テッサーでモノクロ撮影」などという方が、「ローライフレックスの完成形」と言われるF型などよりも、むしろオススメ出来るかも知れません。年代的により古いものになるので、中々程度の良い物を探すのは難しいかも知れませんが、今回試写させていただいたスタンダードは、非常に魅力的なカメラでありました。逆に、カラーリバーサルなどを使って、ある程度以上の安定度を求めるなら、より「近代的」なE、F型などを選ぶ方が良いのかも知れません。