2.2.8F(PlanarF2.8)  vs 3.5F(PlanarF3.5)

 往年のカメラマン達には、「2.8Fを取るか、3.5Fを取るかで非常に悩んだ」という方は多いようです。その「悩みのタネ」は、単に明るさのことではなく、「画角5ミリの差」であったようです。
 絞り値の1/2段の差の方は、実は実用上、思ったより大きな差ではないように思います。というのも、共にシャッタースピードが1/500までしかないため、開放絞りで使うためには結構場所というか、撮影条件を選ぶからです。絞って使うなら、開放値の差は小さくなっていきます。
 また実用面から言えば、わずか5ミリの差であっても画角の広い3.5Fの方が融通が利くことも多く、レンズ径が小さいことからシャッターも軽快です。


Rolleiflex2.8F(Planar)
f2.8, 1/125
Rolleiflex3.5F(Planar)
f3.5, 1/125


 歪曲については、樽型がやや目立つ2.8Fに対して、3.5Fは非常に素直でほとんど目立ちません。強いて言うならやや糸巻き型傾向です。例示した写真では、3.5Fがやや暗く写っていますが、これはその1/2段分の差でしょうか?それを考えても、この3.5Fはやや今回試した他の個体よりもアンダー目に写るようです。

(注:「この3.5Fはアンダー目に…」と、この比較の時点では思ったのですが、更にローライを撮り比べていったところ、そういうわけではないことが分かりました。こちらもご覧下さい。)


Rolleiflex2.8F(Planar)
f8, 1/500
Rolleiflex3.5F(Planar)
f8, 1/500


 2、30年が経過しているカメラだからなのか、その当時の技術の限界なのか、どうも何台かのRolleiを並べて、同じ(はずの)露出値をセットして撮影しても、かなり違った結果になることがあります。下の写真もかなり3.5Fの方がアンダーに見えますが、セットしたのは同じ絞り値、同じシャッター速度です。もっとも、自分が買ったカメラの「クセ」を覚えていけばいいというレベルではありますが。
 色調的には、今回プラナー3.5Fは、プラナー2.8Fよりむしろクセノター2.8Fに近い感じになりました。全体的に言えば、プラナー2.8Fがマゼンタ寄り、クセノター2.8Fがイエロー寄りに対してシアン寄りな感じです。このカットでは、ちょっと空が青く写りすぎて、やや沈み気味な気がします。しかし、ルーペで細部を見ると、細い線のクッキリ感はプラナー3.5Fが一番あります。


Rolleiflex2.8F(Planar)
f5.6, 1/125
Rolleiflex3.5F(Planar)
f5.6, 1/125


 この花畑の撮影では、あまり色調の差といったものは目立ちませんでした。露出がかなり違ってしまっていますが、これは3.5Fで撮影しようとしていた時に、急に雲が出てきてしまったからです。「ややアンダー傾向の個体」とはいえ、条件が揃えば、さすがにここまで差は出ないと思います。
 細かい花なので分かりにくいと思いますが、ピントは中央左よりの少し大きめのオレンジの花です。その後ろの花をつぶさに観察すると、2.8Fの方が一見華やかなボケ味に見えるのですが、やや色収差が見えます。その意味でも3.5Fの方が素直なボケ方といえるように思います。


Rolleiflex2.8F(Planar)
f4, 1/250
Rolleiflex3.5F(Planar)
f4, 1/250


 こちらの花畑の写真でも、やはり1/2段ほどの差が出てしまいました。
 私のパソコンのモニターを基準にして言うと、真中の花の赤については、実物のポジはどちらのカメラももっと良好な発色をしています。黄色の花については、2.8Fは実物の印象より薄めで、レモンイエローといった感じ。3.5Fはちょっと実物より濃い目の印象です。後ろの植え込みの色は、3.5Fはちょっと濃すぎで、2.8Fの方が実際に近いです。自分のモニターを基準にご説明しても、とは思いますが…。
 ディテールに関しては、3.5Fの方が表現できているように思います。「影を影として写している」という感じでしょうか。


Rolleiflex2.8F(Planar)
f4, 1/30
Rolleiflex3.5F(Planar)
f4, 1/30


 この神社の写真でも、やはり3.5Fの方が暗めに写っていますが、結果として見れば3.5Fの方が全体的に好印象です。露出値は単体の露出計を使用して算出していますが、その値でより現場の雰囲気を再現しているのはどちらか、というと3.5Fの方だと思います。
 やや傾き加減の日差しを半逆光に受けた状態での撮影なのですが、門の間からこぼれている光の色がより実際の色に近いのは3.5Fの方です。画像自体のしまりも、3.5Fの方があると思います。


Rolleiflex2.8F(Planar)
f5.6, 1/1
Rolleiflex3.5F(Planar)
f5.6, 1/1


 夜景の撮影でも、しまりのある画像が得られたのは3.5Fの方でした。昼間の空の色ではやや地味な発色という印象もありましたが、このモニュメントの描写ではむしろ好ましい再現になりました。もっとも、2.8Fもあと1/2絞り落とせばもう少し違ったとは思いますが。

 「2.8Fにするか、3.5Fにするか」はある意味、「プラナーにするか、クセノターにするか」よりも大きな問題かも知れません。画角がどうであるかということは、例えば一眼レフなら「何ミリのレンズを選ぶか」ということとイコールだからです。レンズ交換が出来ないカメラですから、80ミリを選ぶのか75ミリを選ぶのかということは、自分の創作の軸足をどこに置くのかという問題と直結してくるので、大いに悩むところであります。
 ただ、個人的には「迷ったら3.5F」という気がします。クルマを買う時に、「2ドアか4ドアかで迷ったら、とりあえず4ドア」というのと同じレベルの話かも知れませんが。また、「これが気に入って、また予算が出来たら、今度は2.8」という楽しみもとっておけますし、ね。