1.2.8F(PlanarF2.8)  vs 2.8F(XenotarF2.8)

 ご存知の通り、Rolleiflexは何度ものモデルチェンジを経てきました。その歴史の中でも、「完成形」と言われているのが1958年に発売された「3.5F」というモデルであり、その「贅沢バージョン」が後の1960年に発売された「2.8F」であります。
 更に、それぞれの「F」にも仕様の異なるいくつかのモデルが存在し、輸入国によって多少異なる呼称で呼ばれているようですが(Type1とか2とかだったり、前期型後期型だったり)、大別すればやはり「2.8か、3.5か」、そして「レンズがプラナーか、クセノターか」ということになり、限られた予算の中、どれを選ぶかで大抵の人が悩むわけです。
 一般に、日本では「プラナー人気」が高いようで、中古市場では、同じ仕様、同じ程度のモデルでもクセノター付きよりプラナー付きの方が数万円高い値で売られているようです(発売時の値段も高かった)。しかし、果たしてそれだけの「実力差」があるのでしょうか?
 結論から言うと、撮り比べてみての私なりの感想としては、「好みと気分の問題」という感じでした。


Rolleiflex2.8F(Planar)
f2.8, 1/125
Rolleiflex2.8F(Xenotar)
f2.8, 1/125


 いくつか例を挙げてみましたので、ご覧下さい。
 まず、「対照的」という意味で面白かったのは、歪曲収差の出方です。プラナーが「樽型」であるのに対し、クセノターは「糸巻き型」です。よく、「プラナーの方がポートレート、特に女性の写真を撮るのにはいい」などと言う人がいますが、確かにある意味、プラナーの方が「優しい線」の描写にはなり易いかも知れません。逆に言えば、クセノターの方がシャキッとした感じの描写になり易いかも知れません。(ポートレートでも、スマートに写りたい人にはクセノター!?)


Rolleiflex2.8F(Planar)
f8, 1/500
Rolleiflex2.8F(Xenotar)
f8, 1/500


 どうも今回試し撮りしたクセノターの2.8Fは、ビューレンズと撮影レンズのピントがずれていたようで、せっかくのシャキッとしたレンズ特性が活きていませんが、参考ということで勘弁してください。
 下の鉄塔の写真を見てもやはり、クセノターの方が気持ちほっそり写っています(まあ、スキャナーの性能も多少影響があるかも知れませんが)。
 色目に関して言うと、「空の色でプラナー、鉄塔の色でクセノター」という感じです。ホームページ上では完全に再現することは不可能ですので、お分かりにはなりにくいとは思いますが、プラナーは「きれいな空」という表現では好ましい発色をしていますが、実は鉄塔の白い部分にまで、青がかぶっています。クセノターは、「白いところは白」と、クセのない(シャレではないですが)描写をしています。その代わり、空の色はちょっとくすんだ感じです。どちらかと言えば全体にマゼンタがかったプラナー、イエローがかったクセノターというところでしょうか。


Rolleiflex2.8F(Planar)
f5.6, 1/125
Rolleiflex2.8F(Xenotar)
f5.6, 1/125


 この花畑の撮影では、あまり目立った差は出ませんでした。強いて言うならやはりプラナーの方は全体にマゼンタ寄り、クセノターはイエロー寄り、といった感ではあります。
 細かいところの描写力については、ルーペでつぶさに観察しても甲乙つけがたいという気がします。


Rolleiflex2.8F(Planar)
f4, 1/250
Rolleiflex2.8F(Xenotar)
f4, 1/250


 こちらの花畑は、あまりきれいな絵ではないのですがご勘弁ください。
 手前の黄色い花の部分にピントを合わせて、バックのごちゃごちゃした部分がどんなボケ方をするかを見てみたかったのですが、これもそれほど差があるとは思いませんでした。


Rolleiflex2.8F(Planar)
f4, 1/30
Rolleiflex2.8F(Xenotar)
f4, 1/30


  この神社の写真を見ても、やはりプラナーには紫がかる傾向があることがお分かりいただけるでしょうか?クセノターもやはりイエロー傾向です。しかし、現場の雰囲気により近い、素直な描写なのはと言えば、私はクセノターの方だと思います。
 「解像度」という面からは、やはり甲乙つけ難いと言えるでしょう。


Rolleiflex2.8F(Planar)
f5.6, 1/1
Rolleiflex2.8F(Xenotar)
f5.6, 1/1


 あまりRolleiflexで夜景を撮ることもないかも知れませんが、ちょっとやってみました。
 周囲のネオンの影響もあってか、同じ露出値で撮影したにもかかわらず、やや印象の違う写真になってしまいました。クセノターのピントが甘いのは勘弁してください(そのせいか、今回はクセノターの写真の方が太って見えます)。
 前の項で、「プラナーは紫がかる」と書きましたが、ここではその傾向が幸いして、人工光のみの描写としてははまっています。逆にクセノターは、イエロー傾向とやや甘いピントのおかげで、ちょっとネムイ感じになってしまいました。ただ、近くのビルのネオンにうっすらと照らし出された後ろの木が、闇に飲まれずに描写されているのは流石です。


 私としては、プラナーもクセノターも魅力的なレンズだと思います。
 一般論で言うなら、やはりよく言われるように、「ポートレートが主ならプラナー、スナップや風景が主ならクセノター」という選択法は間違ってはいないかも知れません。発色、収差特性とも、そうした適性があるように思えるからです。特に女性モデルを撮るような場合、概してプラナー2.8の方が、結果的に優しげに写りやすいと言えそうです。しかし、逆に男性をスッキリと、あるいはキリリと写したい場合、または女性でもほっそりと写したい(写りたい?)場合、クセノターの方が目的に合っているということもありえると思います。

 いすれにせよ、アマチュアがなけなしの予算で購入を検討する場合、もし両者に「人気」による価格差が何万円もあるようなら、レンズにどうしてもこだわるほどの意味があるかと言えば、どうでしょうか。