作曲家 多田武彦氏による
メッセージ
と 多田メソッド「男声合唱プロジェクトYARO会プログラム」へメッセージを掲載
加 藤 良 一
2003年9月21日
(2009年12月11日再編集=多田武彦〈公認サイト〉へ掲載)
メッセージの依頼
YARO会第1回ジョイントコンサートで合同演奏する男声合唱組曲《富士山》は、多田武彦氏の代表作である。
8冊ある「多田武彦男声合唱曲集」の第1巻第1曲目に出てくることからも、そのことがうかがえる。合唱愛好家には、とくに説明の必要もなかろうが、《富士山》は草野心平の詩に多田武彦氏が作曲したもので、男声合唱の定番となっている。
この曲は、そのスケールの大きさに合わせて歌うほうも大勢いたほうがよい演奏ができることから、今回YARO会でも採り上げることとなった。
現在、プログラムの作成に取り掛かっているが、作曲家ご自身のメッセージを掲載したいという要望が多くの会員から出された。さっそく氏に依頼したところ気さくにお引き受けいただいた。ただし、単なるお祝いの言葉や誉め言葉などは、何の足しにもならないから書きたくない、また、曲の解説もいまさらすることはないから書かない、そんなことより、いま合唱や音楽に必要なことは何か、何をしなければならないかというあたりを書きたいがそれで良いかとのお話だった。
無意味なことはやりたくないという点ではまったく共鳴できるお話であったから、二つ返事でお願いした。じつに合理的で飾らない方である。プログラムのスペースは限られているので、それほど長い文章をお願いすることもできないが、氏の合唱に対する熱意と見識を披露していただけるものと期待している。
<多田メソッド>
多田氏から、合唱講習会で使う『合唱練習の際の留意事項』というテキストを送っていただいた。多田メソッドともいうべきもので、B5版で25頁ある。
主な項目にはつぎのようなものがある。・軟口蓋共鳴の修得
・声区の移動(頭声区、中声区、胸声区の理解)
・音程とリズムの遵守
・パート内ピッチの均一化
・和音感の体得
・フレージングの三つの態様の駆使
・音や言葉の終了部での二つの態様(残響型か持続型か)
・音や言葉の開始部での三つの態様の駆使(ハード・ミディアム・ソフト)
・ソフト系の子音とハード系の子音(母音はソフト系)
・音色の効果的駆使
・演奏に際して(とくに、指揮者にとって大切な留意事項)以上のような内容について、詳細な具体例をあげてわかりやすく説明している。