S-11





あれから4年 FIFAワールドカップと男の独り言

 

島 崎 弘 幸

2006年7月13日


 

 2002年、日韓で開催されたFIFAワールドカップで、はじめて男はサッカーというスポーツを面白いと思った。あれから4年、男はしかし、まだ一度も競技場に出かけてナマのサッカーを観ていないし、J-リーグのファンにもなっていない。「オシム」という代表監督(現在は候補者)の名前も、テレビで、川淵チェアマンが明かすまで知らなかった。ただ、ジーコ監督の率いる日本代表の試合は、この4年間すべて、テレビで観戦してきた。それらの観戦を通して、男の目に映る日本代表は確実に強くなっていた。多くのサポーターと同様、男もFIFAワールドカップ2006(ドイツ大会)では、一次リーグを突破して、ベスト16(以上)に進むものと思っていた。

 前評判の高かったブラジルが早々と破れ、ジダンが頭突きで涙の退場となり、大会直前のごたごたで、出場すらあやうかったイタリアが優勝となった。サッカー大国イタリアにして24年ぶりの優勝とのこと。容易ではない。ジダンもあそこで退場しなければ・・・フランスの優勝は・・・あったかも知れない。もちろん、許せない(許しちゃいけない)ことは、我々の日常にだってある。それがあの時だったのだろう。何があったかは、知らないけれど・・・。それにしても、改めてテレビの報道でみると、サッカー選手らしく、彼の頭突きは力強く決まっている。少し悲しい引き際だけど、ジダンの頭突きは絵になる。よかった、パンチじゃなくて。他にもベッカムやカーンは、観ている男の心にさわやかな思い出(プレイ)を残して去って行った。
FIFAドイツ大会を通して、改めて、サッカーは面白いと男は思った。

 日本代表について、何も触れないのは不自然だから、言わなくても良いことを一言述べる。選手も監督も一生懸命戦っていたと思う。ただ、日本代表はその実力を発揮できなかった。いや、封じ込められた。
FIFAワールドカップの対戦相手(選手)の動きは、男がこの4年間、日本代表の試合を通して観てきたどのチームとも違っていた。彼らはワールドカップという舞台に立つとき、顔つきが変わり、動きが変わり、疲れを知らないモンスターに変貌していた。前回、2002年の大会では、気づかなかったのだが、あれから4年間、日本代表のサッカーを観続けた男に、はじめて、FIFAワールドカップのものすごさが分かった。勝ち進むことの大変さが理解できた。とてもとても、ベスト8、ベスト4、決勝戦で観た彼らに比べたら、失礼ながら、日本代表は、まだまだ赤子同然。だから、今回、改めて、サッカーは面白いと思った。

 蛇足ながら、もう一つ思ったことを付け加えると、サッカー選手は意外に伸びないのだなということ。お相撲の世界では、4年あれば別人になる。最近では朝青龍で、横綱になろうとする頃から急に強くなって、横綱になってからも磐石の強さを維持している。幕内に上がってきたときとは別人である。相撲の世界では、よく見かけることで、「化ける」という言葉も使われる。2002年の大会に比べて、今回、化けたサッカー選手はいなかった。「化ける」ということは、生まれ持った素質、天才的な人にのみ与えられたものだろうか? それともサッカーというスポーツが、そのような変化を生む性質のものではないのだろうか。また、監督によって、選手の運命が大きく左右されることも、前回と今回のワールドカップを通して良く分かった。前回、2002年のワールドカップ(日韓大会)では、ベンチで悔しい思いをしていた選手が、今大会で活躍し、逆に前回、フィールドで活躍した選手が今回はベンチに座らされていた。もっともこれは、われわれの社会でも同じで、男などは、いつも冷や飯を食わされていて、重々、身にしみている(実力も無いのだが)。監督の采配は、試合の勝敗だけでなく、選手一人ひとりの人生をも左右する。どんな不遇な扱いであっても、それをばねにして伸びるようでなければいけないと、陰ながらエールを送りたい。

 それにしても、ドイツの監督さん(名前は知らない)は、好きだな・・・。ドイツにとってのワールドカップ最終戦、三位決定戦に、引退表明をしているカーンを登場させたこと。カーンも与えられた花道で、十分な実力を発揮していた。観ているこちらまで、心あたたかく嬉しくなった。

 

 エピローグ

 2006年の
FIFAワールドカップ(ドイツ大会)を、それでも、男は楽しんだ。「それでも」という意味は、もちろん日本代表がもう少し勝ち進んでいたら、もっと、楽しい大会になっていたはずだから。
 次回は2010年、南アフリカで開催される。それを今から楽しみに待っているかって?
 いや・・・、もういい。あと4年もしたら、男の年齢(とし)は、いくつになると思うのです。次回の南アフリカ大会を観るよりは、このまま、若くいたい。

 




          コラムTopへ 
      Home Pageへ