暑気払い


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シュンポシオン



加 藤 良 一 (2004年9月5日)




 改装なったわがシュンポシオンにテニス仲間が集まった。電気工事の遅れなどでのびのびになっていた暑気払いがようやく実現した 9月4日は雨模様で、気配はもう秋になっていた。こうなると暑気払いとでもいうよりしかたない。まあ、名目はこの際何でもいいのだ。
 シュンポシオンとは、ひらたくいえば、ただの部屋であり、何にでも使えるスペースである。ここには、「たじま桜庵」ケンチャンこと新道健吾氏より 引き継いだ記念のものがいろいろある。もとをただせば大宮にあったビアホール「ビアシェンケ」と、たらば蟹専門店「氷雪の門」(ゆかり)の品々である。
 右の写真のように、まず玄関を入ると鮮やかな色彩の大きな額入りのポスターが目に飛び込んでくる。このポスターは、以前ビアシェンケの壁を飾っていたミケランジェロの「聖家族」である。新道氏がイタリアのウフィッツィ美術館で求めたもの。縦1メートル横70センチもある。ポスターはこのほかにレオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」ともう1枚いただいた。

 新道氏とのおつきあいは、じつは男声合唱プロジェクトYARO会の旗上げパーティをビアシェンケで開いたときにはじまっている。2002年12月のことだった。それまで何かにつけてビアシェンケを利用していたが、いつも 「みなさん、お歌いにならないのですか」 と気さくに声をかけてくれる店の方がいた。ここはビアホールだからどんどん歌ってかまわない、にぎやかに楽しんでくれ、ほかのお客さんも聴きたがっていると、よくけしかけられたものだった。その初老のマスターが、じつは社長の新道氏だったというわけである。
 ひょっとして旗上げパーティのときの写真にポスターが写っているのではないかと、あちこち探したところ、小さいながら写っているのが1枚出てきた。それはダ・ヴィンチの「受胎告知」で、小高秀一氏の指揮で歌っている場面に写っていた(写真下左)。中央奥の壁に貼られているのがそれで、いまそのポスターはわがシュンポシオンの壁に掛かっている(写真下右)。
 余談だが、ビアシェンケの太い柱に巻きつけてあるオレンジのフラッグは、いまやJ2からJ1入りを狙う勢いのJリーグの大宮アルディージャのものである。 わが愚息は、アルディージャのJ1昇格を夢見つつ、私設応援団に加わってあちこち遠征している。

  

 

 さて、将来シミになる心配もものかと健康的に日焼けした連中が集まれば、にぎやかなシュンポシオンのはじまりである。小麦色などという生やさしい焼け方ではない連中がまだまだほかに たくさんいるが、今回の暑気払いには残念ながら参加していない。



 ビアシェンケゆずりのビアグラスを傾け、料理に箸を運びつつ、仲間と語らうひととき、話題はいつしかテニスへと移りゆくのはとうぜんの成り行きである。ああでもない、こうでもないと、技術論からコーチの良し悪しまで話しは尽きず、いつしか夜が更けていった。
 筆者は、合唱という音楽芸術と、もうひとつテニスというスポーツの世界に跨(またが)って活動している。 どちらも本気でやっている。合唱を静的な活動とすれば、テニスはかなり動的なものであり、両者の隔たりはけして小さくない。そして、そこにいる人びともまた 合唱は芸術志向型で、テニスは根っからのスポーツマン(ジェンダーを意識するとスポーツウーマンといわねばだめだろうか、それとも中性的にスポーツパースンか)それぞれの特徴をもっている。
 この両極端の分野を筆者は行ったり来たりして、それぞれのちがいを楽しんでいるわけだが、自分のなかでは、合唱とテニスを同時に やることで、いちおうのバランスをとっているのではないかと思っているが、いかがだろうか。







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