倍音のボリュームはとても小さいものですが、聞くことはそんなにむずかしいことではありません。つぎの二点がコツでしょうか。

たとえば、鍵盤楽器ヴァージナルのか細い音を聞くのはお好きですか? まず、このか細い音を聞き分けられるとOKかな! ボリュームのあるピアノの側で弾いているかそけきヴァージナルの音が聞ければ尚よろしいでしょう。つぎに、倍音の物理の理論はさておき、ピアノの擬似倍音を聞くことができますか? これはピアノで倍音に当たる弦が共鳴して振動するのを聞くことです。つまり倍音そのものではなく、間接的に聞く倍音です。

以上の二つができれば、大丈夫です。これができれば倍音を聞き分けられる耳をお持ちですよ。あとはじっくりと聞きたい音を何度も聞く練習をすることです。

コーラスをやっている方なら、人の声で作る倍音を聞きたいものですよね。そのためにはお仲間に協力していただきましょう。
  倍音がなりやすい場所(ドーム形の教会、洞窟、トンネル等)で、倍音が鳴りやすいベースさん(ソロが聞き取りやすいかと思います)に、ヘ音記号のハ長調の「ド」をずーと歌っていただきます。歌ってくださるベースさんの好きな言葉でどうでしょうか。ド、ド、ドばかりでは歌うベースさんも楽しくないでしょうから、同じ音程ですが楽しく声を出す工夫をしてみてください。
  そして、ベースの音源の倍音がはね返ってくる場所に位置取りをし聞き続ける事です。このとき、声を出しているベースさん以外の他のパートは声を出さないでくださいね。とりあえずオクターブ上の「ド」の音が聞えればしめたものです。一度やってみてください。倍音、一回で聞えなくても何度か試してみてください。
 オクターブ上の「ド」が聞えたら、今度はバリトンさんにご登場いただいて「ソ」の音を追加してベースさんといっしょに、ずっと出しつづけていただければ、倍音「ミ」も聞こえてくるようになるはずです。
 一番肝心なのは、倍音を聞きたいと思う人が、継続して一心に聞き続ける練習をすることです。

 なお、私の所属する合唱団でピアノの擬似倍音を鳴らしたとき「私、耳悪いの。倍音なんか聞えないわ」と言っていた人もすぐに擬似倍音が分かるとおっしゃってくださいました。色々と音を聞くことの体験を多くする事が肝心かと思います。試してみてください。

                              (2008年8月26日)




 私の書いた拙文「合唱創発」(M-80)に呼応して、さらに具体的に倍音を聴く方法についてにこにこポジチブババこと佐古眞理さんが一文を認めて下さいました。彼女は愛知県の混声合唱団「豊川コール・アカデミー」に所属していて、Salon de Baba ババの部屋なるホームページも開設している方です。ベースのソロを聞いていてつぎつぎと倍音が聴こえてきたという経験をお持ちです。
                                          加 藤 良 一


倍音を聞く
佐 古 眞 理