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NHKの「みんなのコーラス」
(旧「朝のコーラス」)

 


菅 野 哲 男

2005年5月9日

 

 

 民放から言わせれば国民の金を使って勝手に番組を作っているNHK、不祥事が次々と現れて不払いに悩むNHK、そんなNHKがやることだから何をやったからといってどうってことはないと思いつつも、ある事象に対するNHKの扱いがある種の「世の中」という評価の一つのバロメータになるだろうとは昔から思っていた。
 そのNHKの合唱に対する扱い(認識)がどう変わって来たか、皆さんはどれほどご存知だろうか?

 以前から書いてきたことだが、私の若い頃、35年位前のNHKの合唱番組に「朝のコーラス」というのがあって、日本や世界の合唱を聴かせる、とても勉強になる番組だった。
 日曜日の遅い朝食を取っているころ、正確には覚えていないが午前8時過ぎに30分か45分くらいの番組だった。(その放送からハンガリー軍男声合唱団の演奏でバルトークの「四つのハンガリー民謡」をカセット・テープに録ったものを持っている。)

 NHKの合唱番組を、数年前に気が付いて調べてみたら、「みんなのコーラス」という番組を日曜日の午後11時過ぎと月曜日の朝午前5時のニュースの後の2度、放送していた。早朝の番組を無理して起きて聴いてみたら、NHK学校音楽コンクールの合唱の課題曲の歌い方の内容だったので、それ以後聴くことはなかった。そもそも、サラリーマンが休日明けの月曜日早朝に聴くか、と悪態をついたが、それが合唱に対するNHKの認識、と納得するしかなかった。

 ふと気になって最近、新聞で調べてみたら(なんと、信じられますか)、「みんなのコーラス」という番組は月曜日の午後5時半から15分間の放送になっていた。いったい誰に聴かせようというのだろう。サラリーマンは絶対聴けない時間帯だ。そしてたった15分という時間の短さ、いったい何を聴かせようというのだろう。(多分、今年4月の番組編成で変わったものと思う。)

 さて、こんなことは、合唱団で歌うのが楽しく、歌っているだけで満足している人たちにとっては、どうでも良いことと思われるかもしれない。しかし、大学の合唱団の衰退は相変わらず続き、一般の合唱団が人数は増えても高齢化に悩んでいることを考える時、このNHKの合唱の扱いと合唱が市民権を失いつつあること(私はそう思う)とがよく符合しているように思われて仕方がない。

 自分達が生きがいと思って歌っている合唱が世の中でどう受け止められているか、ということを考えないと、もしくは、世の中の評価を自分達の活動に反映させるようにしないと、合唱活動が単なる自己満足で終わってしまうのではないかと、私はむなしさを感じる。
 趣味なんて自己満足の最たるもの、とは分かっているつもりだが、後に続く者がいなくなっても良い、とは誰も思わないだろう。合唱の将来を見据えてこれらのことをどう考えるか? 皆さんのご意見をぜひ、お聞きしたいものだ。