M-38

  

シャンティクリア
An Orchestran of Voicesを聴いて〜

〜2003年の合唱感想、総決算〜

 


森 下 智 晴
 

 

 1112日(水)に東京オペラシティホールにおいてシャンティクリア(CHANTICLEER)を聴いてきたのであるが、とりあえずこれで、いろんな合唱団を聴くのは2003年としては締めくくりとなる予定である。

 1月の関西学院グリークラブの演奏から始まって、アクースティクス(バーバーショップコーラス)、スヴァンホルムシンガーズ、ヘルシンキ大学男声合唱団・・・と耳が良くなるコーラスを聴けたのは意義深い。
 関西学院グリーの演奏会は、このHP管理人、加藤氏に誘われてのものであったが、そのときに、バーバーショップ普及に力を入れておられる菅野氏とお会いできたことが、今年の充実した合唱ライフの始まりであった。今ではバーバーショップはお気に入りのI−POD*1で頻繁に聴く部類の曲の一つになっている。

*I−POD…コンピュータ会社アップル社が出したハードディスク内臓型携帯プレイヤー。最近はソースを公開して、サードパーティから外部録音用の装置(オプション)も発売される予定

 *********************************************

 さて、今年の総決算とも言うべき演奏会はシャンクティリアである。今年最後としてはすばらしい締めであった。

 まずは、シャンクティリア(アメリカ)がどんな合唱団かプログラムより紹介しよう。

@     12名の男性のみの男声合唱団である。が、パートはソプラノ・アルト・テノール・バリトン・バスからなる混声といもいうべきメンバー構成である。

A     彼らは最高の助成及び奨学金を連邦政府およびカリフォルニア州から保証されており、日々レパートリーの拡大・完成度の維持・向上を目指している。(暮らしに追われることが無い)

B     レパートリーが豊富で、ルネサンスから現代曲まで、何でもやる合唱団で、何でもやるが、その演奏全ての完成度が高い。発声法もあらゆる方法を使うまさにプロフェッショナル集団である。

    

   演奏会を聴いた感想…

 演奏プログラムは2部構成になっている。また、今回の日本ツアーは計10回であったが A/Bと2種類のプログラム構成にしている。
 東京オペラシティホールはBのプログラムであった。但し、A/Bどちらとも前半はクラシック・後半はポピュラー的なものにしてあり、とにかく客を楽しませるということにかなりの重点を置いている感じの構成であった。

 また、演奏形態の基本は馬蹄形を取り、曲によって変えていた。見せる・魅せる合唱団である 。とくに(ピアノ)を生かして、優しく、きれいな歌のときは、東京オペラシティホールの響きとあいまってか、こう今流の癒しの音楽というべきか、言葉でいうのは難しいが、湖の湖面で船を浮かべて聴き入る、透き通る感じですかね。 アルファ波が大量に降り注いでいる感じでした。

 

    プログラム〜(内容はプログラムより抜粋させていただきました)

<前半>
@グローリア(ウィールクス作) 

A主よ、我らの躓きを思い出させないで下さい(パーセル作)
 どちらも16・17世紀の作曲家による曲である。教会音楽(賛美歌)の部類に入れられる曲であるが、彼らの忠実な表現力はまさに絶賛である。高音域の表現が素晴らしい彼らならではある。が、何分、聴く私の宗教感が大いに勉強不足な為、それを理解するキャパシティがなかったのが残念であった。(彼らに申しわけない)

Bシャルル・ドルレアンの3つの歌(ドビュッシー作)
 これはドビュッシー唯一のア・カペラ合唱曲だそうである。 このころの曲はだいぶ技巧的な要素がかなり入ってくる感じをもっており、内容もかなり難解である。まあ、余談であるが、ピアノを習っている人なら大抵の人がこのドビュッシーさんから近現代的な技巧・表現を学ぶのではないでしょうか?

 プログラムには、“1曲目はサスペンションと9thコードを使い、ハーモニックなエクスタシー とノスタルジックな魅力を持っている…2曲目は伴唱のダンスのような「ラ・ラ・ラ」の音型によるパターンを巧みに使用してタンバリンを模倣し…“とこの歌を解説している。難しい…

Cタッソーの3つの詩より“消え去れ、悲しみよ”“唇は朱に美しく”(ホウリィ作)

D冬ごもり(ヒル作)
 Cは、シャンティクリアの委嘱作品、Dはシャンティクリアの為に作られた作品である。

 

<後半>

E天満の市は(間宮芳生作)

F日本の歌から(信長貴富作)さくら・江戸の子守唄・ずいずいずっころばし
 最近よく聴く?信長貴富氏の作品。彼らは最高レベルで演奏する。

G草競馬・金髪のジェニー・ネリー・ブライ(フォスター作)
 もう説明いらないでしょう(笑)。シャンティクリアの演奏はその演奏形態の多彩化に妙がある? ここまでフォスター作品を極めれば…。

 アンコールはまた圧巻でした。かれらのボイスパーカッションや、混声音域にいたる演奏!  日本の中には残念ながらここまでの演奏&技術&表現を持ち合わせた合唱団を私は知らない。世界でもあるのか?

 締めくくりは荒城の月でした。もう何も言うことはなかった。

******************************************

今年は実に充実した合唱の年であった。体調を壊し、埼玉県合唱連盟の記念式典で歌えなかった事は悔いが残るが(笑)。より来年はステップアップしたい。

(2003年11月18日)