M-23
 

   関西学院グリークラブを聴いて
 

      森 下 智 晴 (男声合唱団  コール・グランツ


 
コンサートを終え、くつろぐひととき


 

関学グリーの演奏を聴くのは、関西学院と横浜国大の交歓演奏会(だったと思う)

以来なので、ある意味、非常に楽しみであった。

さて、演奏の内容は、「アイヌのウポポ」、「ディズニー・コレクション」、「バ

ーバーショップの世界」、「草野心平の詩から」という4ステージからなる男声合唱

団らしい構成。(わたくし的にはかなり満足であった)。

 最初の「アイヌのウポポ」であるが、この曲はかなり練習をしていたのではないか

と感じられた。「アイヌのウポポ」は男声合唱のなかでも難しい部類に入ると思う

が、指揮者と合唱団の呼吸がうまくあった見事な演奏だった。おそらく厳しい練習の

成果ではなかろうか。

「ディズニー・コレクション」については、私の勝手な思い込みで言わせて頂けれ

ば、男声合唱ばかり
4ステージもやれば雰囲気が硬くなってしまう、それを少し柔ら

かくするために選んだ結果であろうか。
実は、学生指揮者であった私にも経験あるの

だが、だいたい他の3ステージ、先生方がおいしい曲を持っていってしまうんです

ね。そうするとどうしても学生指揮者はいろんな事を考えてしまうものなんです。み

んなに負担が無いように…とか、先生方が選ばない自分たちがやりたい曲をやってみ

よう…とか、さきほど書いたように柔らかいステージにしよう…とか(ディズニース

テージの動きは学生にとってはそんなに負担じゃないでしょう)そんな学生指揮者の

苦労が見られて、「まあ、学生指揮者なりにがんばったな!」と思った次第。演奏と

しては、まあまあでしたけどたぶん練習時間を他のステージに取られていたのだと想

像します。

 
さて、気になるのが最近話題?のバーバーショップである。コール・グランツの中

で(バリトンの私としてはとくに)、どうしても歌いたいと思っている分野である。

(だってセカンドテナーやバリトンが主役になれるし……)

関学グリーの演奏の出来としては、団員があちらこちらに動く分、うまく聴こえて

こなかった感じがある。とはいえ、生のバーバーショップが聴けたのはラッキーであ

った。できたらコール・グランツでもやりたいと思わせるようなステージであった。

4ステはOBの新月会を含めた演奏であったが、もう何も言うことはなかった。

“素晴らしい”の一言に尽きる。出来ればOBの方の歌声を現役の頃の若々しさで聴

けたら最高だなあと思ったのは贅沢だろうか?

総評として、OBのような超エース級の人が何人もいなくても、「アイヌのウポ

ポ」のようなまとまった演奏が出来る関学グリーはやはり一味違うと改めて思った。

そう、これが合唱なんですよね。私が言いたいのは、合唱やりにきて、ソロを歌い

たがる人をよく見かけるし、指揮者をしたがる人も見かける。でも合唱は、プレイヤ

ーとして、皆で合わせるからこそ面白いのではなかろうか。

“ハーモニーを作る”合唱やっている皆さん忘れていませんか? 変に技巧にこっ

たりせず、まずはハーモニーをいかに作るか?です。一人で歌いたいのなら、カラオ

ケでいいじゃないですか? そう思いません?

演奏会のあと、バーバーショップを世に広めている(?!)菅野さんと、所沢メン

ネルコール会長・井花さんとグランツ・加藤さんとで、関学グリーの演奏を酒の肴に

一杯やれたのは、合唱の世界をより深く知る意味で意義深いものだった。

菅野さんの合唱とくにバーバーショップに対する熱意には頭が下がる思いがした。

大学のグリークラブがどんどん消滅している中(私の母校もほぼ消滅)、合唱の市

民権に対し、菅野さんは熱く熱く語っていた。ちょっと熱すぎ。

私は、別に演奏会を何が何でもやらなくちゃいけない、なんて全然思ってない。練

習をして、曲を一つ一つ完成していく過程に、素晴らしいハーモニーが作れて、その

日の出来具合に一喜一憂して、それを肴に一杯飲む。せっかくの休日です。歌うこと

が義務化されるこのごろ、人に聴かせるのなんか二の次である。自分が楽しむことそ

れが第一。もちろんそれに演奏会への道が続くのであれば理想的だが…。

関学グリーの演奏を聴いて、楽しく歌っていた学生時代を懐かしく思い?!(まだ

そんな年ではないはずであるが)、明日への糧とすることができた楽しい午後の一時

だった。


2003年1月25日