K-8

 
   ハングル語!?


加 藤 良一
 

 

 

先の日韓共催ワールドカップのお陰で「テーハンミングッ」が、大韓民国を表わす「韓国語」であることを知ったという日本人はたくさんいるのではなかろうか。著者もその一人である。あの不思議な記号のようなハングルをいったいどう読んだらよいのか。アルファベットならばどこの国の言葉であっても何とか読む手がかりがあるが、ハングルにはまるでそれがない。
 韓国語あるいは朝鮮語がハングルではないことを知ったのは、つい最近読んだ『韓国がわかる。ハングルは楽しい!』(金裕鴻キム・ユホン)などの本に出会ったからである。長いあいだ正しく理解せずにいた不明を恥じなければならない。
 以前このホームページのSPORTS欄に書いた『日韓サッカー 日本の勝率18%』に登場するボーボーちゃんは「朝鮮人」としておいた。子供の頃には韓国という呼び名はほとんど聞かなかったような気がするし、実際朝鮮人という言い方がふつうであったからだ。

 さて、ハングルはあくまで「文字」であって「言葉」ではない。日本語が、ひらがな、カタカナ、漢字でできているのと同じように、韓国語/朝鮮語はハングルと漢字で構成されている。韓国の人が「ハングル語」という言い方を聞くと奇異に感じるというのは、日本語に対して「ひらがな語」と言われるのと同じことだからだ。
 ハングルは、15世紀半ばに創られた新しい文字である。「ハン」は「ひとつの」または「大きな」、「グル」は文字という意味で、合わせて「偉大な文字」となる。北朝鮮ではハングルとは言わず「チョソンクル」(朝鮮文字)と呼ぶ。横道にそれるが、「北朝鮮」は正式な呼称ではない。正しくは知られるとおり「朝鮮民主主義人民共和国」である。
 日本人が韓国語/朝鮮語のことをなんとなくハングルという言い方をしてしまうのには、それなりの理由があるともいわれている。韓国語か朝鮮語かどちらかいっぽうに偏ってしまう言い方を避けたい場合に、とりあえずハングルと言っておくのである。著者の場合はそれ以前のことで、そもそもちがいを知らなかっただけである。
 NHKの語学講座は「ハングル講座」であり、ニュースは「ハングルニュース」である。日本語にあてはめれば、「ひらがな講座」、「ひらがなニュース」である。これを奇異ととらないほうがおかしい。
 これらの矛盾の裏には、朝鮮半島(この表現もよろしくない。韓国では韓半島と呼ぶ)の悲惨な歴史が大きく横たわっていることを見逃してはならない。北朝鮮はあっても「南朝鮮」はありえない。なぜならば、1950年に勃発した朝鮮戦争(韓国では韓国動乱という)ののち半島が南北に二分され、南が韓国と変ってしまったからである。
 南北分断の影響は、国籍のうえにも複雑に現れている。もともと朝鮮半島から日本へ強制連行されてきた人たちには日本国籍がない。在日「朝鮮人」は外国人であって、連行当時は「朝鮮」に国籍があった。しかし、日本に連行されたのち故国「朝鮮」が消えてしまったのである。韓国は日本と国交があるから「韓国」が国籍としてみなされるが、朝鮮民主主義人民共和国を日本は承認していないため「朝鮮」は、国籍ではなくたんなる用語だということになる。
 南北が統一されてしまえばこのような混乱は起きなくてすむはずだが、韓国と北朝鮮のあいだには、ほかにも多くの問題が積み重なって現在の状況になっている。ことはそう簡単ではないようである。

 ハングルは、意図して創り出した文字だけにかなり合理的にできている。ハングルに詳しくない方のために、あの不思議な形が何を表現しているか簡単に紹介しよう。もちろん偉そうに紹介するほど深くは知らないことをお断りしておく。
 ハングルの特徴は、一見わけが分からないように見える文字が、じつはパーツの組み合わせで成り立っているのである。それも母音と子音の組み合わせで構成されている。ここでは韓国語/朝鮮語講座が主旨ではないので、詳しいことは成書に あたっていただくとして、エッセンスだけを汲み取っていただければよい。

 下記のハングルは、「美しい韓国語」という意味であるが、これを例にどう構成されているかを分析してみよう。著者のパソコンではハングルが表示されるようになっているが、読めない場合も想定し、画像として表示する。

 ハングルはこのように合理的ではあるが、覚えるには一苦労しそうな文字である。

 (うえの紹介に誤りがあったら教えていただきたい。)

 




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