K-16



 


文字・活字文化の日
 


加 藤 良 一
 




 2005年7月29日、文字・活字文化振興法という法律が公布された。管轄はもちろん文部科学省である。
 この法律は 「文字・活字文化が、人類が長い歴史の中で蓄積してきた知識及び知恵の継承及び向上、豊かな人間性の涵養並びに健全な民主主義の発達に欠くことのできないものであることにかんがみ、文字・活字文化の振興に関する基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、文字・活字文化の振興に関する必要事項を定めることにより、我が国における文字・活字文化の振興に関する施策の総合的な推進を図り、もって知的で心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与する」 ことを目的としている。

 振興法が制定された背景には、読書離れ、活字離れ、国語力の低下などがあるのは容易に推測がつく。振興法についてテレビなどでは、あまり大きくは取り上げられないように思うが、文字・活字文化の脆弱さは看過できないほど深刻なものがある。

 学校では学年が進むほど本を読まなくなる傾向にあるという調査結果があるそうだ。そのまま育ってしまえば、大人がもっとも本を読まないことにならないだろうか。それが杞憂でない証拠に、文化庁の調査によれば、月に1冊も本を読まない人の割合は4割近いというではないか。ここでいう本に何が含まれているか明らかではないにしろ、周囲を見回してみれば本に類するものを読まない人は、4割どころではないというのが実感である。

 振興法は、法律の施行に合わせて10月27日を 「文字・活字文化の日」 と定め、国や自治体が関連行事を実施するよう求めている。ちなみに10月27日は、読書週間の初日である。11月3日の文化の日を中心にした10月27日から11月9日までの2週間が読書週間とされている。

 私の住んでいるところにある埼玉県立久喜図書館へは毎週足を運んでいるが、埼玉県では過去に4つあった図書館を整理し、川越を閉鎖して3つに集約してしまった。たまたま久喜は生き残ったので助かったが、そうでなかったら浦和か熊谷へ行かねばならないところであった。

 データによれば、日本では人口当たりの公立図書館数が、G7各国に比べて3分の1程度しかないという寂しさである。また半数の市区町村には公立図書館がないし、多くの学校図書館には専門職員がおらず、図書館が使える経費も減る傾向にあるという。そんな状況にもかかわらず、最近の市区町村の合併で、それまで図書館がなかった地域が図書館のある地域と一緒になると、名目上 “図書館がある” ことになってしまうという許せない現象が起きている。文字・活字文化のもっとも身近な支え役である図書館の充実を望みたい。

 

2005年8月25日)

 




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