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国 民 総 公 務 員 制

 


久賀伸行
 


 

 我が家のトイレには、「暮らしの標語カレンダー」が掛けてある。毎月「今月の標語」とその解説が書いてある、多分ためになるカレンダーなのだと思う。ちなみに「今月の標語」は『より良い伝統を後に遺していくのが今を生きる者の使命である』となっており、解説には『(前段略)勿論、悪しき伝統は論外ではありますが、良き伝統は、それを引き継いでいくために相応の能力や精神力、技術を必要とする為、それらを身に付けようと切磋琢磨し、努力することが、自分自身を向上させる為の糧にもなるのです。(後段略)』とある。
 ところで、瀋陽総領事事件の映像は衝撃的だった。家族が無事韓国へ出国できたから事なきを得たようなものの、あの映像が流れたことによって、日本人の危機意識のなさが図らずも暴露された。どうも、外務省では、論外の「悪しき伝統」が受け継がれ、自分の懐を豊かにする能力と技術、それに国民からの批判にもめげない精神力を身に付けるために、切磋琢磨しているようだ。外務省だけではない。たとえば、桶川の女子大生殺害事件の民事裁判では、埼玉県警が見せたあの反省の無さと無責任ぶりはどうだ。同じ埼玉県に住むものとして恥ずかしい。地方自治体でもこうした体質は基本的には同じ。武庫川ダムというまったく無駄な公共事業(案)は、水害に備え、渓谷を作っている川をせき止め、ダムを作り、そのダムの上に展望タワーを作って渓谷美を眺めるという計画だ。水害が起こったのは江戸時代のことらしいから、もしこの計画を本気で考えたとしたら、気が違っているとしか思えない。公務員の間違った特権意識が、こうしたさまざまな問題の根底にある。
 そこで提案だが、いっそのこと日本人全員を公務員にするというのはどうだろう。議員は任期一年で籤で決める。選挙に金はかからないし、有権者は間違いなく政治に関心を示す。金色の玉が出たら国会議員、銀色は都道府県知事、赤は都道府県議会議員というような具合で。勿論「スカ」は内閣総理大臣である。