鵜雪句集

(24/08)
干天に花壇の色の消え去りぬ
神の如く雨もたらして台風去る
終戦日老婆の思い出文とせり
草むしる蚊取り線香友とする
目覚めれば敷布よれよれ熱帯夜
(24/06)
紫陽花の坂上り詰め灯台へ
芋づるを植えて早々入梅(つゆ)を待つ
ご先祖へ初のトマトを供えけり
睡蓮にヤンマ留まりて波紋立つ
ありがたく掘り残し薯頂けり
(24/05)
菜の花やこれが最後と春惜しむ
卯の花に虫集まりて夏を知る
取り出せば最早レトロか衣更え
擁壁の穴にスズメが戻来る
この季節着るか着まいかこの一枚
(24/03)
桜散り山の主役は新緑へ
足元の新芽気遣う春の山
初薔薇や蕾を虫に食われけり
議員とは天下を語り私事忘る
この谷戸で新入学はただ一人
(24/03)
水温む魚の息づく水面かな
薔薇の芽や赤子の如く育ちゆく
鎌倉の大仏思わすホトケノザ
宇宙より地球を見ればイヌフグリ
山笑うかすむ彼方に白波が
(24/02)
水温む浮き草揺れるぴくぴくと
春早し乙女の如く山の色
啓蟄や庭のふくらみじっと見る
赤椿白い椿とリス渉る
山椿咲く避難路の藪を刈る
(24/01)
山茶花や今日もスマホに収まれり
裸木にトンビ留まりて睥睨す
年の瀬や歩行者天国に聖歌あり
冬薔薇季節を忘れ咲き誇る
値上がりに小さいミカンをかごに入れ
(23/12)
山茶花や今日もスマホに収まれり
裸木にトンビ留まりて睥睨す
年の瀬や歩行者天国に聖歌あり
冬薔薇季節を忘れ咲き誇る
値上がりに小さいミカンをかごに入れ
(23/11)
奥庭に菊咲く家を訪ねけり
菊薫る良きも悪しきも昭和かな
山茶花や踏み場を探し立ち止まる
実石榴や割れ目の一粒味わえり
靴下を二足重ねる高齢者
(23/10)
狭庭は赤のまんまで粧えり
日々悩む豊作の茄子抜くべきか
宅造地一番の客泡立ち草
未だですかといわれハッと締切日
新装の知らせ床屋へと急ぎ行く
(23/09)
この頃は秋晴れ酷暑が同居する
稲刈ってばらの添え木を稲架(はざ)とせり
秋茄子や漆仕上げの艶やかさ
何事もなく敬老の日過ぎ去りぬ
韮の花にセセリチョウ寄り季節知る
(23/08)
終戦日百日紅の花盛かる
秋立つや気になるたい肥の出来具合
天高しに似合わず残る暑さかな
台風の予期せぬめぐみ蝉の声
秋ナスが七つ八つと花をつけ
(23/07)
朝採りのトマト色添え夕餉とす
凌霄花オレンジ色の夏招く
白なすに茄子紺思わす花が咲く
夏の陽に耳を澄ませど蝉聞かず
コロナ明け祭りの夕べ西瓜食う
(23/06)
山百合の薫り漂う坂の上
水辺より一足跳びで豆蛙
色濃きをもって良しとす茄子の花
梅雨明けずされどトマトは我を超す
歳重ね晴耕雨読の人となる
(23/05)
旅立ちのカエル彼方に跳び去りぬ
柿若葉椅子置き休み場所となり
五月半我が家に日常戻りけり
夏来るされど長袖身にまとう
芋苗を子らに手ほどきして植える
(23/04)
子どもらと列整えて藷植える
コロナから花粉に代わるマスクかな
花冷えや思わず襟を立てにけり
賃上げと政府が声を張り上げる
鶯の初鳴き季節の藪となる
(23/03)
晴着の子式典終えて盛り場へ
苗代の種まき済めば菜種梅雨
卒業の喜び示す晴着かな
春の雨に送られ鳥の北帰行
人生の卒業控え暇がなし
(23/02)
早春やメダカが群れて浮き沈む
ほどほどにバレンタインの贈り物
避難路を梅見ついでに辿りけり
早春の日差しに目覚める若芽かな
エネ高騰ソーラーパネルをわが狭庭
(23/01)
ラインにて寒梅見ごろの知らせあり
消息を知り安心の賀状かな
蝋梅の香りスマホを引き寄せる
さびしさや今年限りとある賀状
変革の年門松と共にあり
(22/12)
農園に天の恵みの落ち葉積む
寒月を忘年会の友とせり
木枯らしのひと吹き狭庭を明るくす
異国より来る冬鳥休み給え
年毎に数減らし行く賀状かな
(22/11)
エコ園に一輪のバラ咲きにけり
亡き父母はあそこにいるか冬銀河
黄葉を背に 朝どりの野菜売る
腰痛やパソコン被害歳忘る
早くから客並びいる朝の市
(22/09)
秋の蚊は遠慮という字を知らぬよう
秋場所や横綱大関総崩れ
苗育つされど秋雨降りやまず
蔓引けばずるずるずるとやぶがらし
豊年か狗尾草の茂るさま
(22/08)
パソコンを息子が直す盆休み
これ何と問われる先に女郎花
天高し飛行機雲が三筋行く
百日紅楽しい夏を呼び覚ます
枝豆や今日か明日かと触れてみる
(22/06)
夏至の花沙羅双樹かあじさいか
厚い雲にホトトギスの声こだまする
クチナシの薫り引きずりごみ捨てに
夏至の頃政治の季節となりにけり
近頃はワクチン打ての声聞かず
(22/05)
昨日と今日色変わり行く若欅
紫陽花を促すように走り梅雨
第四次と終わりを知らぬこの病魔
卯の花の咲く路児童が通る路
木曽路来て女優を偲ぶひとつばたご
(22/04)
唇を上げるといわれ四月馬鹿
タンポポを摘む子等ありて平和知る
老いの目に我ここにありと立浪草
天守台に所を得たり山桜
山吹の山で元気を確かめる
(22/03)
若葉色の中に紅ボケの花
水温む小エビそろりと動き出す
朝市や三寒四温に悩まさる
三分が貴き時間春の朝
花散れば傘持つ日々が直ぐそこに
(22/02)
青春や日ごと色づくミモザかな
オロシアという北の怪物動き出す
ピラカンサ一日で実を失えり
脱炭素学べば短き一日よ
桜餅と花見を共に伊豆の道
(22/01)
去年今年気分新たにしめ飾り
蠅が寄る花アブ親しむ花八つ手
雪掻きはこうするものと年配者
コロナ禍や回周遅れで初詣
雪かきや隣近所のコミュニテイ
(21/12)
冬晴れや大根畑が海に落つ
痛風や猪口一杯の年酒かな
風向きを見計らいつつ焚火する
霜枯れの花切り詰めて温室へ
冬日受け野菜シャキッと戻りけり
(21/11)
蘭草のほのかな香りスクワット
初霜や名残の草に別れ告ぐ
柿の葉の落ち行く様に我重ね
狭き庭をブロッコリーが占領す
コロナ去る吐く息白く朝の市
(21/10)
コスモスを切って老婆のかごに入れ
コロナ禍が遠のき気分は秋日和
秋雨や三日延ばして藷を掘る
駅前で声張り上げて赤い羽根
コロナ禍が去りて秋晴れ市(いち)開く
(21/09)
穏やかに何事もなく敬老日
台風も世代代わって新コース
柿みのる人とリスとの知恵比べ
頬濡らす赤い涙か秋海棠
稲稔る程に安らぎ豊かなり
(21/08)
木槿咲く夢多き日は過ぎ去りし
水遣りも未だ日課の残暑かな
自粛して聞く蝉の声自粛なし
長雨の去りて厳しき残暑有り
秋雨や今日も休みか甲子園
(21/07)
後一点テレビにすがる夏の夕
宣言を待たず酷暑で梅雨明ける
マスクして息つく人に夏来る
自粛して小缶で過ごす夏の夕
満身に創痍の横綱誕生す
(21/06)
いんげんの蔓上り詰め梅雨明ける
梅雨に入り手帳に記す梅雨の明け
草刈りを梅雨の晴れ間の仕事とす
ホトトギス声遠くして梅雨の空
ワクチンの接種やいかに梅雨の明け
(21/05)
庭ごとに我が家のバラと誇らしげ
鶯を聴いてしばらく鍬を置く
卯の花や虫の三密作り出し
体調を整えワクチン会場へ
前線が下れば上る梅雨近し
(21/04)
支え木を折って昨夜の青嵐
山藤を愛でればそこは無住の地
健気なりばらの芽つぼみを抱いており
春の山萌黄草色深みどり
花びらの漂う池や水温む
(21/02)
避難路の巡視楽しや山椿
どこそこに紅梅咲くとラインにて
巣箱掛けてほっと一息天長節
早春の香りは淡しマスク越し
春風を知るや知らずや魚浮く
(21/01)
合格とただ二文字の初便り
臈長けた熟女思わす?梅花
風向きを熟慮してする焚火かな
枯れ庭に凛としてありバラ一輪
マスクせど端より漏れる息白し
(20/12)
年の瀬やあれもこれもで日が暮れる
コロナ禍や皆手洗いで風邪ひかず
よかったらと頂く柚子で湯治とす
小松菜が大きく育ち朝市へ
コロナ禍の年越し行事は大掃除
(20/11)
坂のぼる見上げる山は紅ヌルデ
コロナ後は画面を向いてこんにちは
宅造の空き地に紅葉収まれり
コロナ禍や歓迎せざる右上がり
秋晴れやマスクの陰に笑顔有り
(20/09)
秋風や人目盗んでくさめする
赤マスクしてさっそうと街へ行く
仏前に稲とススキを飾りけり
無花果や熟すを待てず採りにけり
米ナスや力士の如く実りおり
(20/07)
コロナ禍や無事を願ってウナギ食う
梅雨寒や長袖どこと妻に問う
夏野菜日差しが欲しいと嘆く如
梅雨長く草に埋もれる野菜かな
夏野菜こんな高値と空を見る
(20/06)
マスクするあの人誰と妻に聞く
ホトトギス初鳴きトマト初収穫
免疫が最後の砦と心得る
街中の垣にひっそりイワタバコ
おはようとマスクを通し声をかけ
(20/04)
コロナ禍を怖れて引けず春の風邪
緑増す日々行く人の影淡し
倒木の登山路残し山笑う
春眠や日差しを受けて飛び起きる
啓蟄や今年も嬉し蛙来る
(20/03)
水温みメダカも学校閉鎖解き
春分をパンベミックで迎えけり
咳をする脇に札あり入荷なし
三国の戦跡に咲きしか諸葛菜
散歩道マスクを通しご挨拶
(20/01)
どんど焼風なき良き日煙立つ
凍知らず正月にバラ花盛り
初詣行列怖れ遥拝す
一月や霜を忘れて蟻動く
暖冬に氷を知らぬ一年生
(19/12)
主逝きて枯葉の積もる屋敷かな
冷水の摩擦効いてか風邪知らず
斜光射して季節外れのバラ盛る
飯分けて野良ネコと老婆共に生く
年の瀬や重い腰上げ枝を切る
(19/11)
庭の隅に小さな紅葉花水木
公園にパンジー植えて冬に入る
立冬やまだサルビアの赤盛り
コンビニで買い物増やす初時雨
何もって虫を誘うや花八つ手
(19/09)
嵐去って万物斜めになりにけり
サンマだよと小さな魚が皿にあり
秋場所や小兵力士の勝ち名乗り
秋草をオンブバッタが家とせり
台風や空襲の如絶え間なし
(19/08)
鳴く蝉を聞かずひっそり酷暑往く
台風に尻を叩かれ急く墓参
炎天下働く蟻のたくましき
熱き夜は寝返り百度敷布よれ
蝉の声梢に響く敗戦忌
(19/06)
陽が差すも梅の実ころがり梅雨に入る
走り梅雨東の空に虹を見る
喜雨上がり子らが群がり藷を掘る
長らえて長寿と祝うは何時までか
緑豊か一人暮らしの庭木かな
(19/05)
古き友新茶と共に訪ね来し
母の日に記録残せり万歩計
植え付けを前に嵐も喜雨となり
梅雨近し昨日長袖今日半袖
新茶薫るご近所の絆深まれり
(19/03)
平成にさよならイチロウさようなら
うたた寝の眠気を覚ますボケの赤
期が代わり七人迎え五人逝く
麗らかな春平成の四月かな
白木蓮麗らかな空碧く冴え
(19/02)
菜の花を摘んで夕餉の彩りに
植え付けの時迫り来て鍬をとる
ヒヨドリの後より椿落ちにけり
まどろみを日課となせる春日かな
水温む日ごとに魚影色を増す
(18/12)
夕凪や船一艘の冬の海
今日明日とまだ手につかぬ大掃除
台風に思わぬ恵み冬の薔薇
赤い羽根足早に行く人の群れ
焼き芋を買ってきたよと妻の声
(18/11)
全山を茶色に変えて嵐去る
落ち葉掃くあの老婆見て安堵せり
諫言を聴きしか有りしかゴーン去る
年の瀬を知らせる訃報今日もあり
毎日が下着を探す11月
(18/10)
天高し南へ帰る鳥の群れ
若芽食むオンブバッタの憎きかな
台風にあおられ防災訓練す
人は皆何時か行く先天高し
山の色を茶色に変えて嵐去る
(18/09)
敬老日何事もなく過ぎ去りぬ
あの酷暑今日の冷雨が流し去る
稲稔る庭に雀の家族あり
敬老日いまさらと四人卓囲む
酷暑去りあわてて探すチョッキかな
(18/07)
紫陽花や千紫万紅谷戸の道
炎天に声出しそびれ油蝉
太陽の申し子の如紅トマト
蔓ボケのカボチャに雌花やっと見る
ツワモノのはかなき命凌霄花
(18/06)
遅刻した訳をアジサイのせいにせり
今日五つ明日は八つとミニトマト
半梅雨や忘れた傘は三本目
ジャガイモを掘る子供らに明日を見る
翌朝は虚ろなまなざしW杯
(18/05)
入梅を連れて今年もホトトギス
豆蛙また会おうよと声かける
ハナアブはバラ色よりも卯の花に
年寄りと呼ばれなくなる高齢者
緑陰にほっと一息銀ブラす
(18/04)
桜草の一房花あり草の中
総会を終えてようやく草むしる
醜聞を鵜の目鷹の目週刊誌
春の月にさよならをいい雨戸閉じ
タンポポが居場所を得たる空家あり
(18/03)
菜の花や屋形船より見てみたし
花だよりぼちぼち咲くは許されず
紺碧の空にモクレンそこにあり
かげろうや昨夜の酒の名残かな
春分に雪降りやまず選挙カー
(18/02)
先駆けて春を呼び込む冷雨かな
ごみ捨てを梅観る朝の楽しみに
花菜採り子ども食堂のテーブルに
平昌の空に跳んでる十六歳
自治会で健康に良いと観梅行
(18/01)
遠き人千枚漬けを持ち来る
餅つきや今年はこれとかまど番
年男初詣して気を入れる
早朝の雪かき今日の元気知る
雪降りて南画となりぬ冬けやき
(17/12)
木枯らしが織りなす色を消し去りぬ
年の瀬や特養ホームでコーラスす
年追うて賀状書く手に念がいる
年の瀬や今日も喪中の知らせあり
木枯らしに礼を言いつつ堆肥作る
(17/11)
山茶花の絨毯ありて遠回り
盲目の恋を冷ますや石蕗の花
目覚めては布団引き寄す冬来る
万歩計ありて遠くのポストまで
虫誘う不思議な姿花八つ手
(17/10)
虫が言うこの長雨に出番なし
赤い羽根急ぐ知人に貼り付ける
敬老日大講堂も満席に
秋雨にお願いしますも湿りがち
コオロギや夜店の強い応援歌
(17/09)
ミサイルを肴に妻と月見酒
百歳を生き抜く秋となりにけり
彼岸花寂しい街に人の波
雀来ず稲の実りの美しき
気が付けばとうに過ぎけり敬老年
(17/08)
閃光の水面に落ちる花火かな
埼玉に花咲かせけり甲子園
長雨に店じまいする浜辺かな
右を見て左見て右見て道わたる
長雨に草伸び伸びて八月尽
(17/07)
耳鳴りも蝉と思えば心地よし
凌ぜん花咲いて鎌倉の怨思う
これからを日野原医師を手本とす
ヒアリ来て毒蜘蛛の昔思い出す
夏の雲綿菓子の如流れゆく
(17/06)
深緑の山から山へホトトギス
アジサイの赤紫は化学の粋
父の日や何事もなく過ぎ去りぬ
燕の子駅改札を使用止め
母の日やご苦労様と酒を注ぐ
(17/04)
春の蕗苦い思いで苦い味
職につく孫の出会いはいかばかり
乗っ込みの鮒連休のハイウエイ
新緑や左を見ても右見ても
ほどほどにすれば許すぞバラの虫
(17/03)
春愁や隣の猫のやかましき
山茱萸や古人目覚ます黄金かな
医院跡白木蓮を残すのみ
春愁やトランプ一言株上下
蛙合戦命をつなぐ彼岸かな
(17/01)
お年玉数え違えて笑い初め
餅つきに見えぬ媼の戸をたたく
トランプに一喜一憂乱高下
麗人に席譲られて初笑い
花満ちて椿に鳥の集いけり
(16/12)
年の瀬や気になるあの家吹き溜まり
ゆく年を戻らぬ歳と受け止める
昨日テロ今日もどこかで年暮れる
冬のバラ当たり前だと咲き誇る
ワンちゃんが取り持つご近所両隣
(16/11)
初雪や紅(あか)と白とで衣替え
孫育つ左下がりのお年玉
雀の子戸惑いながら雪の上
時流れ緑増えゆく紅葉山
年の瀬や助け合い募金に声嗄らす
(16/10)
朝顔を見上げて千代女の秋を知る
我慢してぐい?み一つの今年酒
薯掘りの元気に親子の区別なし
平安の貴人想わす藤袴
一山を覆うが如く葛茂る
(16/09)
秋雨を思索読書の糧となす
秋の野や膝を抱えて花愛でる
長生きが健康寿命と置き換わる
台風が空家の庭をなぎ倒す
長雨にシャベル取れずに作句かな
(16/08)
作新の優勝怪物よみがえる
日の丸が南の国にはためけり
立秋や風吹きぬけて臭木咲く
昨日一本今日一本の胡瓜かな
珍しいコースで台風押し寄せる
(16/07)
梅雨明けの喜び瞬時酷暑待つ
蜻蛉の水面をたたき梅雨明ける
去年よりさらに小缶夜のビール
ビール手に妻の解説おかずとす
あの人がはんてん姿夏祭り
(16/05)
菖蒲の湯気分は昭和双葉山
ホトトギス初鳴きで知る梅雨近し
病院の行きと帰りは万歩計
菖蒲湯に入りて干支一巡の若返り
バラの花客人待てず散りにけり
(16/04)
緑陰に引き込まれゆく我が身かな
不祥事やオダマキ思わす社長あり
新緑が飛び込んでくる朝かな
草刈れば立浪草の波豊か
おぼろ月遠回りする家路かな
(16/03)
トンネルを過ぎればほのか沈丁花
朝霞花大根の中に消ゆ
擁壁を被せるように雪柳
花びらを数えて辛夷の講釈す
先見えずどこまで続く今日もテロ
(16/02)
肉食の熟女相手か猫の恋
世の中はキリあってこそピン光る
いぬふぐり一花十花と咲きはじむ
うるさいと陋屋の主猫の恋
三寒のあと四温ありミモザ咲く
(16/01)
歌留多読む声高らかに傘寿びと
初雪の色づく庭に雀群れ
ストックをついて探梅谷戸の奥
金柑をかじってこの冬風邪ひかず
鳥群れてピラカンサスの朱消え去りぬ
(15/12)
暖冬や剪るをためらう薔薇の花
年の瀬や共同募金の声たかし
ゆず湯入りかぼちゃ食らうて齢重ね
短か日や一日延ばしの庭仕事
冬至近く喪中の知らせに困惑す
(15/11)
黄葉の山一木の紅葉はぜ
霜月や果穂たくましく踏まれ草
コスモスを見本にせよと識者いう
歩を緩め小菊はみ出す通勤路
ままごとの赤のまんまは鳥食わず
(15/10)
社長悲しこうべを垂れて秋深し
逝きましたのファックスを見る秋の暮れ
五年たち荒れ地にコスモス盛りなり
秋深し空き家に虫の声繁し
地域自治というには遠し住民力
(15/09)
白の中赤点々と曼珠沙華
敬老日特養ホームで歌いけり
被災地のテントの空に月まぶし
昨今は秋刀魚も痩せ身となりにしか
蜂や蝶花から花へと秋盛り
(15/08)
無花果が熟しおるかと散歩道
朝どりの胡瓜かじって独居かな
陽落ちる頃蝉鳴きはじむ酷暑かな
在りし日の父母想わする百日草
黄金虫がよってたかって夏のばら
(15/07)
果てしない蟻の行列見つけたり
梅雨明けの空高々と小枝焼く
カブトムシそろりそろりと木下闇
いつの間にと思う間もなし梅雨明くる
シンボルの花咲はじめ夏となる
(15/05)
鎌倉へ谷(やつ)駆け下る青嵐
紅ばらのくずれんとして香り立つ
道迷ふ武蔵の丘の新樹光
闇の夜の香に影たつは牡丹かな
職人の技が躍らす手書き鯉幟(こい)
(15/05)
来春の嬉しい堆肥夏落ち葉
特養の空いっぱいに鯉のぼり
遅咲きの薔薇を待たずに梅雨入りか
我にかえる一声高しホトトギス
緑陰と呼べる程度に夏椿
(15/04)
桜餅食って無心かうたたねす
パラパラと掌の上薔薇の虫
校門に一歩踏み入れ新入生
山道に数輪の花すみれ咲く
春嵐去って静かな朝迎え
(15/03)
喜寿近く妻喜々として雛飾る
鶯の初鳴き聞くや寒明ける
枯れ枝に諦めたころ山椒の芽
青空となれ木蓮の花のため
山茱萸は黄金の滴古家の庭
(15/01)
注連飾プラを外してドント焼く
万歩計遠回りして買い物へ
マスクしてバンダナ被り餅を搗く
蝋梅の香にまどろんでメジロ二羽
注連飾そのまま焼けぬ時節かな
(14/12)
冬の川小魚集い何語る
年の瀬やお願いしますの声うつろ
十二月八日を知らぬ世となりぬ
新築の庭に真白な霜柱
木枯らしが薔薇の肥やしと吹き溜める
(14/11)
名優の逝く知らせあり時雨降る
白菊を愛でる婦人に根分けせり
パンジーを植えて花壇の年終わる
新米や飢餓の世代の香りかな
避難路や声掛けあって紅葉踏む
(14/09)
耳鳴りも命の証し虫の音も
苦吟する脳に何やら虫の声
山を越え野を越え今年もあきあかね
昼法師蝉月光に虫の声
減災や大丈夫ですかと戸を叩く
(14/08)
盆踊り輪に入りそびれおでん食う
鳥が食う無花果数個残しおく
ハンミョウやいつの間にやら坂の上
盆明けや静けさ戻り我に返る
娘らは裾まくり上げ盆踊る
(14/07)
見上げれば天に近しと凌霄花
綿棒で蕊にたっぷり花粉かな
風鈴が湿った空気を払いけり
サルビアの赤ささやけり梅雨の明け
大雨のニュース聴きつつ雨望む
(14/06)
朝どりの胡瓜かじりて独居かな
短夜が更に短しワールドカップ
駆け上がり頂にありのうぜん花
百合の香をそろりそろりと湿り風
みじか夜を楽しむ齢となりにけり
(14/05)
薔薇の香に触れて一日元気なり
メール開くはっと気が付く締切日
落ち葉掃く若葉の梢かわがこうべ
暗雲や近づく梅雨に足早し
去年より高きにいずる若葉かな
(14/04)
矢車草咲いてドイツリート聴く
春愁や遅刻の多い子を思う
擁壁に雀巣造る菜種梅雨
春愁や退職をして何をする
春の日や笑顔美し草とる人
(14/03)
大雪の翳を残して桜咲く
旧き友くにへ帰ると訪ね来し
春なずな一人前の畑となり
知らぬ間に春一面のいぬふぐり
子を残す戦いのため蝦蟇集う
(14/02)
大雪の解け行くさまや春近し
雪かきが示す地域の力かな
眠る山赤みを指して二月尽
春を待つ草の芽雪と陽のあいだ
雪折れて白い椿も紅も
(14/01)
早春と呼ぶにふさわし山萌ゆる
ヒヨドリの羽音烈しく椿落つ
あの人がなぜと驚く都知事選
春の風地表に光鳶が舞う
蝋梅に佳人顔寄す広場かな
(13/12)
年の瀬やおきなおうなを訪ねけり
樹を伐って心安らぎ年を越す
行く年や八十路に至る一里塚
年の瀬や施設をはしご合唱隊
行く年や祖国の明日を俯瞰せり
(13/11)
紺碧に融け行く皇帝ダリアかな
白菊の伏せて歩道へ拡がれり
コスモスが荒地いろどり人和む
ふかし芋食って子ども等おとなしく
冬近しふと庭見ればジョウビタキ
(13/10)
台風に仁王立ちする案山子かな
復興の海からの幸秋刀魚焼く
焼き鳥の煙目にしむ菊日和
台風を追いつ追われつ運動会
主婦集う路傍に嫁菜咲きにけり
(13/09)
非常食を無理やり試食震災日
敬老の日を台風が先送る
蜘蛛の巣を払えば陰に秋海棠
台風の積み残したる残暑かな
これ何と幼児指差す鶏頭花
(13/08)
夏の薔薇あえぎあえぎて咲きにけり
灼熱の太陽の下敗戦日
家焼けて十日の後に国破れ
ジープ往く嬌声聞こゆ夏の街
教室に兵の藁允つ敗戦日
(13/07)
投票を済ませて仰ぐ夏の空
やませ去れば熱中症の襲い来る
水打てど打てども去らぬ暑さかな
空蝉の周りに羽虫群がれり
パネル載る家の車庫には電気カー
(13/06)
球児らの喚声響き梅雨晴れる
十字路で四方を睨む山の百合
子どもらの小さい手袋薯を掘る
梅雨晴れ間ようやく覗き薔薇を剪る
梅雨明けを待たずに都議選自民勝つ
(13/05)
惜春や育毛剤を友とする
干し物が風になびいて梅雨近し
母の日を孫と一緒に祝いけり
卯の花や猫の通路を塞ぎおり
日めくりを二日遅れでめくる日々
(13/04)
青虫をちぎって飛ばせ春嵐
山藤の咲く山里に人を見ず
学校へ行く子の朝寝春の夢
新緑が隣家の窓をおおいけり
飯食えば一睡さそう春の昼
(13/03)
桜咲く負けじと下に雪柳
水ぬるむ深き淵より魚の浮く
薔薇の芽が日ごとに育つ弥生かな
巣作りは擁壁の穴子沢山
桜咲くと思えば散るの便りあり
(13/01)
蝋梅や色なきこの世を黄に染めぬ
初臼の柔らか大福餅配る
この年も宝を求めて初詣
雪かきやまだら模様がやがて線
門前でおうな受け取る配り餅
(12/12)
年の瀬や訃報の筆の休まらず
一年の枯れ木焚き火で庭広し
各党が待望叫び年行けり
黄葉が育む如し蝋梅花
待望のスマホを買うも棚の上
(12/10)
子どもらはほお膨らませふかし芋
我よりもリスお先にと柿を食う
尖閣の文字踊る紙芋包む
柿紅葉隠しておくれ赤い実を
初百舌の鳴き声一閃冷気裂く
(12/09)
水足りず恵みもたらす野分待つ
胡瓜もぐ一日遅れの太さかな
尖閣に波高くしてオスプレイ
連日の雷が連れてこし秋日和
野田再選日馬富士勝ち巨人勝つ
(12/07)
これトマトと新種のトマト孫がいう
シャツの襟妻夜なべして裏返す
節電の年はゴーヤと蝉の声
すててこの脛日一日と茶色づく
梅雨明けの知らせか梅の実転がれり
(12/06)
新じゃがやサラダに変わり帰り来る
大空の高さを知るやホトトギス
梅雨空に歯を削る音がりがりと
曇天に山から山へホトトギス
万緑の列島台風駆け抜ける
(12/05)
薔薇咲けば藪から庭へ変わりおり
卯の花が頭を垂れて庭の隅
万人の見上げる空に金環食
新緑の境内に熱き太極拳
卯の花や待つホトトギスまだ鳴かず
(12/04)
山桜の花を透かして自衛艦
牛はこべいつの間にやらもとのまま
リス飛んで最後の椿落ちにけり
野の草に艶然として桜草
ハイカーは足を休めてすみれ撮る
(12/02)
春の香をうけて早々と犬ふぐり
ラニーニャが季節をとめて梅遅し
大都会餓死の記事見る氷点下
山並みにようやく赤み二月尽
水ぬるむメジロの群れの休み処
(12/01)
初雪に押されてうれし把瑠都勝つ
白鷺が片足で立つ冬の川
餅つきやあの老人の姿見ず
訃報聞く空見上ぐれば寒の星
風向きを確かめそろり焚き火する
(11/12)
災害をわが事と思う年の暮
薔薇を剪るはさみに時雨容赦なく
年の瀬に立ち退きせまらる人のあり
体験の避難路行けば初時雨
悲しみより驚き多き訃報あり
(11/11)
現代史明治は遠し菊薫る
わが庭によく来てくれた赤とんぼ
樹上高く枝を落とせば秋の風
博多場所桟敷に島田並びおり
春咲きの苗植え込んで冬に入る
(11/10)
塩害や木々茶に染まり紅葉去る
天高くびりとなっても孫走る
万歩計万歩を超えて天高し
あきあかね千里を飛んで訪ね来し
秋の日に蟷螂待ち伏す花の上
(11/08)
君たちも震災の子か初秋刀魚
子どもらは裸で夕立迎えおり
大小を蚊取りに変えて胡瓜採る
夏去りぬ鶏頭の赤色あせて
古竹や蔓インゲンの巻き登る
(11/07)
訓練に人だかりする震災後
節電を早寝で凌ぐ年金者
雲海の向こうに明日の俺がいる
見守りのない夏休み持て余す
梅雨明けの早きに過ぎて蝉なかず
(11/06)
山百合の香どくだみの花の中
古寺やアジサイの列人の列
ホトトギス山から山へ啼きわたる
香水に振り向く元気ありがたや
マイクロに一喜一憂放射能
(11/05)
万緑の山から山へほととぎす
あちこちに芥子粒の如バラの虫
自治会も熱い討議の大災害
万緑の山避難路の鍬を振る
ばら会や過ぎし月日の無事を賀す
(11/04)
震災が絆という字掘り起こす
チャンチンのピンクに染まり四月尽
総会を終えて今年の無事祈る
鶯の日一日と大人ぶり
新緑の森に避難路の鍬を振る
(11/02)
目白群れ紅から白へ渡り行く
方便で議員が群れし党ありき
薔薇園の春を迎える焚き火かな
初雪やへっぴり腰で乙女行く
鶏糞をたっぷり入れて薯植える
(11/01)
菓子店の繭玉ととも孫を撮る
餅搗きやあの老人の姿見ず
日脚伸ぶ座敷に上がりお茶を飲む
この歳で新たな祈り初詣
いつもの痛み様子見ようと医者がいう
(10/12)
大銀杏を冬の嵐が消し去りぬ
今日やっといい風向きに焚き火かな
旅支度三度四度と戸締りす
隣人は第九ゴルフの師走かな
年の瀬や独り住まいの戸を叩く
(10/11)
秋の蚊の我にささやき頬叩く
苦吟してまだ仕上がらぬ夜長かな
株一つ竜胆の咲く古都を行く
月は西風に背を向け櫨紅葉
ワイエスアール失言つづき秋深し
(10/10)
色付いてリスの来ぬ間に柿をもぐ
特養の祭にむなし秋の雨
子どもより親の熱入る運動会
参道の落ち葉を散らし児童行く
球根を植えて一息秋惜しむ
(10/08)
人知れず百歳超えて酷暑あり
雑草のしとねに胡瓜ぶら下がる
代表選霧湧き出でる峠かな
生か死かわからぬままに秋は来ぬ
むなしさや新涼のない避暑地かな
(10/07)
蝉鳴かず不思議な夏を迎えけり
甲子園汗とほこりのあと涙
夾竹桃も遠慮しがちな酷暑かな
炎天や珠追う人に栄光あれ
打ち水も風鈴もかなわずこの暑さ
(10/06)
寝酒飲めどブブセラ響き眠れぬ夜
雀群れ椿の外に羽虫散る
繁る草抜けば手に染む十薬臭
ブブセラの轟くスタンド星満天
一時の梅雨の晴れ間や薯を掘る
(10/05)
新政権我慢も限度五月尽
公園の草を残して春惜しむ
孫の名の薔薇咲いてると友を呼ぶ
山藤はここだと香り漂えり
買い物の往きと帰りと薔薇を見る
(10/03)
啓蟄や波紋広がる水面かな
せせらぎに虫を探す子山笑う
候補者の立て看花をかくしおり
花冷えや出るに出られぬ蕾かな
ばらの芽を掻けばトゲ我を睨む如
(10/02)
春の雪紅い椿を友とせり
おみくじを吊るして見あぐ梅の花
谷戸深く梅を求めて老夫婦
早咲きの桜に鶯尻を出し
ジャガイモを植えて今年の農始め
(10/01)
すずしろを入れて七草粥とせり
餅搗きや昨日の敵も友となる
正月や久しぶりだね大家族
雑煮食い屠蘇を含んで初詣
餅搗きの掛け声谷戸にこだまする
(09/12)
改革だ改革やるぞと年も暮れ
寒風と共に第九の便り来る
ありがとうと口ずさみつつ薔薇を剪る
風向きを気にする焚き火の時節かな
内閣の腰定まらず風寒し
(09/11)
初霜や切れ味いかに仕分け人
秋深し普天間の空ヘリ響く
薔薇園も赤のまんまの草紅葉
菊日和今年着初めの背広かな
絵画展終えて見上げる秋の空
(09/10)
時至ると公園の隅菊薫る
風を受け泪止まらず鳥焼き人
子どもらはスタンプラリー秋祭り
切られても又切られても強い菊
日の光山陰にある苅田かな
(09/09)
一声で人だかりする初秋刀魚
秋刀魚焼く妻の姿に母想う
蜘蛛の巣をくぐれば膝に秋海棠
秋の蚊や三匹五匹とたなごころ
秋刀魚の香思わず急ぐ家路かな
(09/06)
田植する児童の思い泥遊び
父の日や梅雨の合間に薔薇を切る
梅の実やころころころと藪に消え
父の日よとワインを持つ手妻の皺
鎌倉や蟹つぶされて梅雨盛り
(09/05)
幾つかの花を残して豆を抜く
ほととぎす啼くや卯の花梅雨近し
筍やのびのびと伸び天を突く
梅の実の去年と同じ墓前かな
酔い覚めの窓を開ければ若葉風
(09/04)
美しくえんどう咲けど実のならず
ジャガイモの虫つぶすたび春惜しむ
田植機のあと苗の筋弱よわし
田の隅に残れる早苗拾いくる
総会が終われば忘る胃の痛み
(09/03)
去る子にも送る子ともども笑顔あり
花冷えの日南より孫来る
昨日今日花見の前に春嵐
春の日のゆらゆらとして魚の浮く
小枝挿しえんどうの蔓からませり
(09/02)
ジャガイモを四つ切にして雨水かな
てっせんとばらと新芽を競い合う
立春やひよどり樹間をくぐりぬけ
豆まきの声遠くから近くから
枯れ蔓や剪ろうと見れば新芽あり
(08/11)
秋祭り鉦と太鼓でまちおこす
夏咲いて種から二度の鳳仙花
鉢植えにハコベの緑冬近し
鳥兜咲いて昔の姿かな
背伸びして色濃き薔薇に秋惜しむ
(08/09)
敬老の日何事もなく過ぎ去りぬ
墓前祭みずひきそうの路を行く
今様の台風テレビでやってくる
あの人はどうしてるやら秋海棠
秋晴れやこの程度かなと薔薇を切る
(08/08)
太陽もテレビも暑き五輪かな
朝顔に着物姿の母を見る
冷西瓜分別もなく腹が冷え
五輪熱し知らず終わりし甲子園
炎天にしおれしなびて雨を待つ
(08/07)
耳鳴りと思えば遠くせみの声
夏雲や大きな乳房闊歩する
空腹の幼い記憶夏の雲
見守りのない夏休みトマト採る
夏雲や戦跡に草生い茂る
(08/06)
蜘蛛の糸払いはらいて百合の花
雨蛙葉の青さより青くなり
どくだみを刈ればマムシの出るような
急く人も一息入れてゴデチャかな
山行けば雨に漂う百合の香
(08/05)
薔薇に云う今年も会えてよかったね
進学の孫の手土産粽食う
沢渉るへっぴり腰に山笑ふ
親に似ぬ神の童か春の薔薇
生き延びて再び遇おうちび蛙
(08/03)
一瞬の春の歓びヒキガエル
神前に愛を誓えば春うらら
山桜咲いて球児の涙あり
柔らかい春の光にカランコエ
早咲きの桜と園児花時計
(08/02)
雪かきやこの階段もあの坂も
大寒や魚身を寄せて流れ行く
老人の町のしじまに猫の恋
棒持てど知らぬ振りして恋の猫
子どもらは掻き寄せた雪伝い行く
(07/12)
親も子も見知らぬ人も火を囲む
雑炊にセロリの香り新時代
焼き芋や子らいそいそと落葉掻き
菊の香は祖父母の汗の匂いかな
雑炊を改めて食む孫たちと
(07/11)
木枯らしの置き土産かな柿たわわ
句を作るひとときの間の夜汽車かな
異郷の地死場を求め鮭のぼる
冬薔薇に魅入る男に明日の夢
旅慣れぬ人何回も戸を閉める
(07/10)
香りしてここに木犀ありと知る
川筋に狙う鷺あり秋彼岸
芒原バブル紳士の夢の跡
黒薔薇の一輪部屋を充たしけり
開発の傷跡深し芒原
(07/09)
刈り入れは未だかまだかと案山子立つ
散りはじむ萩涼しさを呼び覚ます
秋めくや息吹き返す人もばらも
稔る秋御免ごめんと頭垂れ
ひまわりに戦争無きを祈るべし
(07/08)
被災地に夾竹桃の陰うれし
孫去りぬ静けさ戻り夏の朝
刈羽村に熱き血潮と暑さかな
味噌汁にきのうとうがん今日明日も
のうぜんの蔓楠を這い上がる
(07/07)
長梅雨にプール開けず夏休み
半年の無事ありがたく夏祭り
神棚に初物供え夕餉かな
見守りも暫しの休み夏休み
池の端カメラの列に蓮開く
(07/06)
落ち梅の転がり転がり溝に入る
睡蓮にわずかの梅雨が残りけり
下町の女将想わすあじさい花
一瞬の輝き薔薇に玉宿る
梅雨のときホームページで友と会う
(07/05)
さまよえばはまなし香る浜辺かな
つる薔薇を透かして見上ぐ五月晴れ
薔薇咲いて井戸端会議盛り上がり
花を採る乙女ら薔薇の香をまとう
宿命と赤い一重の薔薇咲けり
(07/03)
托鉢の勧進春の戸を開く
春光や臨月近き窓辺かな
白妙に光を浴びて雪柳
春と共展覧会の知らせ来る
目白集う椿の下に木瓜の花
(07/02)
倒木の山肌に春未だ遠し
春節や關羽も笑う人出かな
あぜ道に通せんぼうの仏の座
遡上する稚魚の大群春を告ぐ
園児遊ぶ古刹に花の早や咲けり
(07/01)
蝋梅がしんしんの寒さ引き寄せる
初詣とまどう鳩は屋根の上
着々と公園らしく春近し
餅つきや一年ぶりの姥の顔
目白飛んで梅一輪の路地の奥
(06/12)
この社銀杏黄葉に知る歴史
冬霞彼方に偲ぶ栄華かな
尋ぬればダリアですよと冬の庭
キリタンポ焼く囲炉裏端歳忘る
盛り場も足早になる師走かな
(06/11)
大根や一望千里緑なり
狭霧消え釣り船水面を滑り行く
魚売りの掛け声熱し冬の市
若き血に銀杏並木が黄と燃ゆる
遠き友話題は尽きずちゃんこ鍋
(06/10)
秋雨や菊坂行けば明治の香
食卓に青いばらあり温め酒
雀群れて種籾のみを残しけり
秋晴れや少女縄跳びばら香る
秋うらら喜樹の木陰に人集う
(06/09)
秋草にズボンの裾の濡れるまま
海岸の小屋壊されて秋本番
台風の余波サーファーを吹き流す
花のない花園ひとり草をとる
実る秋を人と雀が分かち合う
(06/08)
みんみんの一声梅雨を吹き飛ばす
水虫や嫌われながら去らぬ友
携帯で作柄を聞く農夫笑む
秋立つといえども滝の如く汗
腰折れのきゅうりを食めば残暑かな
(06/07)
サッカーに負けて田んぼを覗き込む
睡蓮のぴくぴくぴくと魚遊ぶ
浴衣着る少女まぶしく古希となる
もろもろの業を背負いて梅雨長し
梅雨晴れや睡蓮さえも午睡かな
(06/06)
靖国に父母想う梅雨の空
山百合や光を透かし白く咲く
黒薔薇の香りを残し梅雨に入る
歳を古るゆりのき並木何を知る
紫陽花やドレスアップで里帰り
(06/05)
親と子の安らぎの浜南風吹く
老人の里にたなびく鯉のぼり
ばら咲けばさつきの空が戻り来る
夏場所や明日を夢見る浴衣かな
喧騒の都会にみどり帰り来る
(06/04)
里桜伐られて山に桜あり
野道行く一年生の後に母
しぶき立つ春爛漫の川面かな
りんご咲く今年も元気な子供あり
赤い葉と緑の花に青い空
(06/03)
孫と雛メールに乗ってやって来る
白球が緑を超えて富士の中
わが庭に乙女の姿桜草
薔薇の芽も一人前の彼岸かな
がま蛙ささやき庭に春来る
(06/02)
赤々と炭火を囲み人と餅
立春や光と風がせめぎあう
春や春木の芽日に日に増す緑
樹の股でリスうずくまる寒さかな
野の道に新しい命いぬふぐり
(06/01)
あかぎれの足で踏みつけ霜柱
年の瀬はボーナスもらう人強し
正月や無人の校舎エリカ咲く
大寒や凍てつく路に腰泳ぐ
霜柱を見れば麦踏懐かしく
(05/12)
年の瀬が第九の声に乗ってくる
冬鳥に残せし薔薇の恵かな
白髪の仲間集えば冬の花
年の瀬や燃えて天城に日が沈む
行く秋や天空高くばらが咲く
(05/11)
流鏑馬や富士に向かいて矢を放つ
大根の緑野の果てに海がある
秋の陽の光を透かしばら咲けり
菊咲けば父の祝いし明治節
山路来て花らっきょうと草紅葉
(05/10)
ととき咲く主婦の会話も小半時
落ち栗を拾わんとすれば曼珠沙華
箒木の桃色の肌昼の酒
言いたげに苅田の案山子我を見る
かわせみの身を躍らせて秋の川
(05/9)
敬老と声も掛からず馬齢かな
いわし雲の消えかかる頃投票へ
彼岸花咲かず彼岸に入りにけり
蜘蛛の糸化粧繕い吾を待つ
色づきて心静まる稲穂かな
(05/8)
雲流る皆老い行きて敗戦忌
テロップに事件の続く夏となる
ぐらと来て腰浮かせけり夏の夕
直ぐ果てる青年の如夏の薔薇
寒川で神の声聞く大暑かな
(05/7)
うぐい群れ川面にしぶき梅雨明ける
海の日や遊覧船に人だかり
虚子の墓に百合の花あり梅雨と知る
蓮茂る鴨所在無く昼寝かな
北総に古代の香り大賀蓮
(05/6)
父の日やたんすの奥のシャツを着る
薔薇咲けば過ぎ去りし日の香りかな
蛍火がふーわり義朝館跡
加茂川の夏柳ゆれ阿国立つ
初啼きのほととぎす天に薔薇薫る
(05/5)
のいばらの白き花弁に夕日射す
新緑や展覧会で友と会う
敗戦の涙を隠す更衣室
メーデーや福祉の里で祭りかな
鳥巣立つ衣更えする木々の中
(05/4)
宮仕え忘れてそこに春がある
六十年鉄路に木々の生い茂る
上と下鳥語らひて山笑ふ
咲いてると孫走り来る花林檎
古池に昔も今も木五倍子咲く
(05/3)
大谷石崩れて春の花の上
膝ついて背中丸めてけまんそう
川面では鯉あくびして二月尽
椿咲く樹ごと樹ごとに花相あり
仁王立つ横綱の如初蛙
(05/2)
もののふの如駆け抜ける冬の風
大寒や網を繕う漁師あり
湯豆腐に卵豆腐の夕餉かな
目白飛んでもう直ぐそこに春がある
青春は早春に似て綿帽子
(05/1)
低気圧去って元旦富士仰ぐ
福袋買うて気分は福となる
初釣りや大島に向け竿投げる
薔薇剪って心と体新たなり
初夢や茜の雲に明日を見る
(04/12)
雪を待つ廃校の里で労働す
酒酌めばはや日の暮るる冬至かな
踏み込めば真砂の露にびしょとなり
冬麗の海一瞬の日の出待つ
秋空にクライマーの一歩又一歩
(04/11)
山路遥か笹竜胆を求め行く
冬近し北国よりの使者来る
鍋つつきし友の一人逝き又一人
釈迦堂に風吹き抜けて草紅葉
朝寒や蜘蛛の巣一つ路地の奥
(04/10)
ようやくに天高くして薔薇薫る
故里で名月を見る嬉しさよ
ばらの実の赤い面より雨滑る
名月に見とれ仲間に遅れけり
石仏も葛の香りを楽しむや
(04/09)
五輪旗や亀競泳の真似すなり
媼来て川面波立つ日の盛り
嵐去りて観音の笑む白露かな
トップでもびりでも走れ運動会
鈴なりの実り枝垂れる槐かな
(04/08)
蜻蛉も羽を休める大暑かな
よく見れば祭り太鼓を孫敲く
墓石灼けそそぎし水は湯気となる
真夏日の続く限りは百日紅
秋立てば友と稲穂の便りかな
(04/07)
芸術と友とうなぎと昼の酒
ランタナの色変わりする大人びる
幸せか不幸か蚊帳を知らぬ子ら
路地裏に花色々と古都の夏
鎌倉や梅雨に咲く萩人知れず
(04/06)
父の日に絆と思うメールかな
我の如あじさいの色定まらず
人旧れど花に変わらぬ思いあり
木漏れ陽を得て咲くばらのけなげさよ
珊瑚樹の花梅雨空に溶け入りぬ
(04/05)
母と子にようやくの春母子草
旧邸の芝生に子等の影見えず
禅寺や色を晒してなつろうばい
雨を含む薔薇重たげに悲しげに
もっこうのばららしからず優しさよ
(04/04)
通り過ぎふと振り返る香の垣
野菜苗買うて待たるる穀雨かな
ハーケンの跡過ぎ去りし春の夢
山藤の香に微笑むや磨崖佛
萌ゆるとき落葉が隅に吹き溜まる
(04/03)
さぎごけや石の間にはづかしげ
一坪に馬頭観音草萌ゆる
椿山の木洩れ陽の中紅一輪
老人も若人も緋寒桜かな
あと十日海棠の花開くまで
(04/02)
わびしさに嬉しさわずかゼロ申告
水温む光の中にめだか見る
老船も化粧直して春を待つ
立春や仁王の如くのげしあり
春立つも暮れて海風肌を刺す
(04/01)
船上の落暉今年も暮れんとす
年毎に賀状が変わる若さかな
探梅や山越え来たる瑞泉寺
光透く冬紅葉見てお神酒かな
うたかたの少年の夢飛行雲
(03/12)
鰭酒や仕事鞄を重ね置く
席を変え鰭酒のこと電話せり
もののふの残照の如紅葉燃ゆ
泰然と白き衣の富士おわす
年の瀬や第九の中に友の居り
(03/11)
化粧せる子等嬉々として武者行列
りす飛んで三つ四つと椿落つ
流鏑馬やサーファーの海駆け抜けし
一陣の風天空に紅葉舞う
さわさわと猫の踏み行く落葉径
(03/10)
味噌うまし田舎まんじゅう秋祭り
竜胆を求めて四たび山路かな
百舌啼くも季節の果実そこに無く
鳴く虫と呼びたくもありきりぎりす
薄の穂揺れて月見のワインかな
(03/9)
土留めて横綱のさま力草
ちぢみ笹大河の如く広がれり
色づきぬ今年は平年作なりや
蚊帳吊草蚊帳って何と孫が聞く
香漂う唐梨の実のこぼれけり
(03/8)
再会や頭髪減るも口減らず
出むとしてすくむ冷夏の稲穂かな
孫来たり休むを知らぬ夏となる
海嘯のうねりの如し明けの蝉
夏の日といえども寒し百舌啼きぬ
(03/7)
南国や蝉五月からと娘いう
蓮池や永き命を底に秘め
読経沈む梅雨空の下はや桔梗
梅雨明けを待ちきれずして蓮開く
夏来る感ずる朝や蓮の風
(03/6)
浴衣着し新妻なりしか花菖蒲
紫陽花の紫はあの女将かな
ほととぎす天空飛びて啼くはなぜ
梅の実や坂転がりて藪に入る
父の日か数輪の花妻の手に
(03/5)
啄木鳥の鼓の音は霧の中
石垣に立浪草あり春惜しむ
がまずみや緑の海に波の花
食卓に子らよりの花飾られし
下草に隠れしのばら花咲かず
(03/4)
山鳩よ見逃してくれその種は
こつこつと鑿の音沈むなたね梅雨
山桜山を背負いて咲き誇る
雪柳媼の髪の如くなり
山吹は傘無き我に似合うよし
(03/3)
遡るめだか見初めて春を知る
余寒とはかくも寒きかいぬふぐり
坂のぼる老女佇み諸葛菜
山に数珠木五倍子たれ居る彼岸かな
雪柳の白さ慎まし余寒かな
(03/2)
昨日一花今日は十花の椿かな
目白吸いヒヨドリ突きリスが食う
薬撒く臭き匂いも寒行事
外に出る今日か明日かと君子蘭
毟り取る老い葉の下に若芽あり
(03/1)
初詣にぎり頬張る時世かな
内孫の誕生祝い蝋梅花
町会の餅つきうれし初会話
妻出かけ長き冬夜の読書かな
小春日に豊作願い土起こす
(02/12)
木漏れ陽の蟷螂の背に柔らかく
里山の天の恵みか落ち葉掻き
冬枯れにサルビアの朱の鮮やかに
ぬかるみもたたきに変わる寒夜かな
ナナフシの墓場か朝の通い道
(02/11)
栗の実をくわえてリスの冬支度
故郷や稲穂に変わりあわだち草
千歳飴の季節か懐かし孫の声
木漏れ日に主役となりぬ蓼の花
つわぶきの花盛りなり古都の垣
(02/10)
立ち止まり香り辿れば葛の花
コンテナの稲穂に集う街すずめ
秋茄子や土に口付け天高く
バラの香に誘われ蝶の舞い納め
二桁に戻りて想う旧職場
(02/9)
萩日陰座敷に長く伸びにけり
海老形に母の老い見る秋胡瓜
のぼたんの儚き紫紺雨に落つ
診察の後足取りの軽やかに
サルビアの舗道に人の急ぎ行く
バラ挿木ついてくれよと祈り水
炎道に生きる嬉や自然草
芋堀や我老いを知り手を休む
秋茄子にお疲れ様と言葉かけ
おんばこに心やすまる夏舗装
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