伸平句集

(24/01)
すまし汁味噌汁あずきと三が日
三が日神社仏閣マリア様
年明けに津波衝突大災害
北朝鮮日本に贈る見舞状
一人咲く枯れ木の中の寒椿
(23/12)
信号も車もさかす年の暮
空一面雲一つなく寒い朝
人の癖あるようでないようで
稜線が切れる切れるかのよう冬の山
人々の癖も年越しどこまでも
(23/11)
春は花秋は枯葉の桜かな
落葉踏み杖を頼りの山のぼり
さざんかもきんもくせいも秋の花
爆雷に似たかみなりで眼をさまし
遠い日の栗のおやつを想い出す
(23/10)
梨?それとも柿?食後に元気な妻の声
静けさを拡げる六甲山便り
いらいらと国勢調査に目を向けて
池のはた蝉のあいさつ消えたまゝ
イスラエル去った我が国沖縄も
(23/9)
無人機を飛ばして喜ぶあとけさな
おほえても拾われて喜ぶ年となり
物憶えも医者の試しのかてとなり
台風のあぜ道残すすだけとなり
だまされることだけ避ける姿かな
(23/8)
いつか原子力で冷やすことも
公園の蝉のプレーはよく続く
6号は盆又に何チェーン?
旧盆の台風リレーは国事業?
池の端良くも悪くも伸び放題
(23/7)
橋立の夕凪を忘れる人はなく
夏花の一番乗りはあじさいぞ
小学生なぎのつりこそ宝島
何よりの夏の馳走はこうやどうふ
(23/06)
水田に聴こえたかわづの声もなく
田舎道も小石で追ったかわづかな
忘れずにと思った矢崎の失念が
いけのはた“あし”と“よし”との攻ぎ合い
人様のことも次第に失念し
(23/05)
選ばれて開花を知らせる枝となり
花を見ても飲食に及ばずと張り紙し
入浴の裸も感じず春の園(その)
花風にかざして見せるトーチかな
葉桜に居残り見せる意地一つ
(23/04)
眼間(まなかい)にたおやか陽(ひ)や朧かな
花が散りわれらの出番とぶよが舞う
人の世の美しきかな春に負けずに
窓の外の陽光親しむ齢を重ねて
つつじでも蕾の鋭さ見せて咲く
(23/03)
忘れまい河津桜の生きの良さ
信濃川の盥ボートや懐かしき
我が前を飾るか箱根富士の山
ひと時の通学道中中津川
満開はしだれ柳が先を行く
(23/02)
マイナンバー個性を捨てる一里塚
あの道もバルーンロードに早変わり
世界大戦名義も定義もなしのママ
3年も続く疫病歴史的
子守歌も僧の読経も遠くなり
(23/01)
雑煮とは言えど可笑しな言葉かな
世の中はコロナコロナと云うばかり
諦めて良いのかこんな対策で
世の中に露葉のこんな光あり
冷たさを襟の奥まで運ぶ風
(22/12)
冬銀河二重の月食と重ねたし
一面に歌留多カードや秋落ち葉
二重蝕宇宙の見せるミラクルか
新時代無人機爆弾眼にコロナ
窓繰りて額縁に見る痩せる月
(22/11)
冬銀河二重の月食重ねたり
枝ごとの枯葉ステ−ジ桜の樹
一面に歌留多のステージ秋深し
二重蝕宇宙の見せるミラクルか
新時代無人機爆弾眼にコロナ
(22/10)
人参は晩秋食のエースかも
晩秋の一足先はクリスマス
晩秋は朝夕の暗さが永くなり
晩秋の刈られる草の気負いなく
晩秋に香りぞ強し金木犀
(22/09)
古の武者もあがめた天の川
天の川秋の夜空に橋不要
天の川に笹船浮かべて薄の帆
天の川遠く遥かな夢の跡
天の川嵐に泣いて居れもせず
(22/08)
年寄りの杖にも似せて百合が咲く
時折の雨を逃げての盆踊り
ただ熱く記録更新の猛暑かな
盆休みコロナへの新手もないがまま
新と旧けじめも薄れた盆休み
(22/07)
昼寝して目覚めて一人留守居役
往年の社友懐かし昼寝の座
なかなかの家路に迷う昼寝かな
大宇宙昼寝の座にも顔を出す
蝉が鳴く私も夏の風物詩
(22/06)
紫陽花のブルーに想うウクライナ
味気ない歌に聞こえる昨日今日
あると云い本当か宇宙の有機物
国々の理由で世界が成り立つと
蠅も蚊も去って居残る今日の夏至
(22/05)
満開の花が若葉の隧道へ
たおやかに雲空山も庭先も
幼子を預かりました休業日
音もなく大業に咲くつつじかな
五月晴れ雲一つだけ置き忘れ
(22/04)
たわわなり花の王者と人の云う
ジョギングの汗に花びら付いてくる
4月馬鹿許さるるとか馬鹿を言え
4月馬鹿馬鹿のまんまでまた1年
散る花にしゃぼん玉まじえておおはしゃぎ
(22/03)
かすむ空開花しますと花の云う
年度末納税申告算定書
薄着して小春日和のランニング
雨に落ちた椿を並べる女房かな
寒さとは寒冷前線の寝姿か
(22/02)
幼子の引くに任せて地凧かな
先駆けて己に一枝咲かせおり
用心は餅蒟蒻に姿替え
鎌倉は13人の武者揃え
春立ちぬチョコを賜りテーブルに
(22/01)
小さくとも元気3倍寒椿
枝先に残りし柿は烏(からす)の餌(え)
寒空の陽に舞い落ちる小雪かな
水炊きの湯気に包まる魚たち
手を変えて品を変えてのコロナ術
(21/12)
例年の落ち葉居座る頃となり
痛む程の水温感じる昨日今日
整形の医者の世話受く齢(よわい)なり
プリンターのインク調べる師走かな
山ならし丸い落ち葉が走り出す
(21/11)
年の瀬やコロナ6波におびえつつ
秋深しブナの葉色も重くなり
汁ものの夕餉に箸も泳ぎよる
奥方の夕餉支度について行き
止むを得ずヒアルロン酸の世話になり
(21/10)
十五夜を楽しみにして雲まかせ
いつの間に季節となりぬ彼岸花
軽やかな飛行機雲と陽の光
小さくとも滑空巧みな赤とんぼ
紅葉にも色の深さは色々と
(21/09)
六甲を枕に雲の昼寝かな
日を追うて背伸びしている稲穂かな
意味もなき戦に散った父想う
鳩からすにわとり雀雲の舞
蒸し暑さしだいに薄れ覗くあき
(21/08)
連日の酷暑にみゝずはい上り
CO2季節のけじめも無視のまゝ
種なしのぶどうに踊る指の先
ビニールの傘間違て叱られて
佛事まで参集出来ずこのコロナ
(21/07)
シルバーの草刈り剪定生き生きと
梅雨明けを待てずに勇む蝉の声
二番蝉幾分本気かと評価する
天空に寒気が宿るとの報せ
雨戸繰り陽射しの強さあえて知る
(21/06)
梅雨明けを知らせに来たか紋白蝶
一片の雲なし池面にゆるみなし
生垣の電動の音勇ましや
ワクチンの腕前頼みやコロナ戦
梅雨明けを待つか大輪額紫陽花
(21/05)
蟄居とは庭に鎮座のつつじかな
春秋の溢れんばかりのつつじ咲く
ファクチン順電話口へと殺到し
花びらに囲まれて楽(たの)し新入生
春秋や五輪の所在さんざめき
(21/04)
選ばれて開花を知らせる枝となり
花を見ても飲食に及ばずと張り紙し
入浴の裸も感じる春の風
花蔭にかざして駆けるトーチかな
葉桜に居残る花のもの想い
(21/03)
コロナ禍に怯えもせずに梅開く
短夜に向かう早春の朝寝かな
すこしばかり早いが口に桜餅
捨て場所に迷うて十年汚染水
花便り聞くだけになりこの春も
(21/02)
チカチカと小さな霜の小春かな
冬陽さす障子に影や家族フォト
食べきれぬ程に嵩張る恵方巻
冬帝の機嫌や斜め高速道
バレンタイン今年も忘れず孫女から
(21/01)
7日過ぎて点火に手間取る締め飾り
小春日やしばしの友と孫談議
小寒の声に繰り戸の手が止まり
年明けも見合わせにした初詣
漏れ泣きの如くに似せてみぞれ降り
(20/12)
踏切の枕木に見る薄き霜
師走なりジョギング1枚厚着して
なにわさて賀状書き上げ春を待つ
「密」という今年の漢字意味三つ
賀状書き障子繕う年の暮
(20/11)
衣替えに乗って顔出す古日記
歩みたる道今一度や古日記
片膝の痛み齢(よわい)の印かも
落ち葉踏み朝の陽溜り遊歩する
石段の窪みは落葉の仮苫屋
(20/10)
妻や子を内地に残して散った父
細き腕を苦にして逝った母想う
夜なべして皮むき串刺し吊るし柿
明日までと夜長夜なべの若き頃
六甲の峰を枕に秋の雲
(20/09)
敗戦の真の謂れは消えたまま
愛おしや無きに等しい夏休み
敗戦の影に薄れる無鉄砲
東亜戦無策の屑と捨てられし
敗戦の真の源消えたまま
(20/08)
取り立てのトマト自販で売られおり
父の日や我父なるかを問うてみる
遠き日の蝉取り恋しコロナ無く
年ごとに自然に帰る自然かな
折角の田植えも豪雨に持ち去られ
(20/07)
半ズボンの季節嬉しや衣替え
ウイルスにも梅雨にも蟄居されたまま
梅雨明けに一足早い蝉の声
ジョギングの出で立ち真向薄着して
葡萄の皮食べられるのかと聴く親父
(20/06)
風光る緑の袖を泳がせて
春愁やウイルスを連れての去るを待つ
衣替え胴回りだけ別人に
烏大王蝶に追われて追いかけて
雨に咲く雨が育てたがくあじさい
(20/05)
見るもせず見られもせずに花の散る
健やかに傘寿入りする春嫁ご
ずずずいと雲ひとつなく五月晴れ
花影を空は上から見下ろして
逃げるように春過ぎてゆく追うウイルス
(20/04)
初めてのコロナに出会う桜かな
ウイルスには花もお酒もお預かり
人類の歴史をゆするコロナ風邪
お花見も取り上げてゆくコロナ風邪
春眠に預けも出来ずコロナ風邪
(20/03)
水温むコロナの限りが読めぬまま
庚子の水も温みて先見えず
水温む流行り病の雲重し
樹々の間に微笑む春の雲愛し
水温む濡れて行くかの雨が降る
(20/02)
ふうわりと風花が舞う掌に
鱈(たら)鍋に付き合うている花キャベツ
クルーズの運ぶ肺炎労(いたわ)しや
この季節朝日斜めに這い上り
日脚伸ぶ開ける雨戸も軽くなり
(20/01)
大根は肩いからして背伸びして
年内の障子手直し陽や眩し
木枯らしに乗って転がる山ならし
冬の陽に蝋梅落葉音もなく
枯草の露にまします初日かな
(19/12)
草刈し地肌は雪の降るを待つ
季節超えて香港傘の意義深し
木枯らしに与(くみ)する蟻よけ換気扇
首里城は思わぬ災禍で年を越す
木造りの家に住み居し寒に入る
(19/11)
山地でも平地でも暴れる雨嵐
年ごとに勢いを増す雨嵐
生業も一夜の水に持ち去られ
逝きし友の影偲ばせて葉が落ちる
黄々として秋を勤(いそ)しむプラタナス
(19/10)
控えめな残暑に替わる嵐蓮
台風の進路迷路か迷惑な
菜園の世帯が替わる野分かな
たけなわの秋に居残る蝉の声
焼夷弾と見紛う秋雨大暴れ
(19/09)
紺碧に居座る雲の高さかな
ひねくれた雨が邪魔する盆踊り
身ぎれいに切り立つ様や秋の雲
口角にビィオロンの秋とばしけり
夏草も早朝の露を抱いており
(19/08)
両耳も頭の中も蝉時雨
氷水に泳ぐそうめんの心地よさ
ジョギングは鳩と競う程となり
起き抜けの大気にいささかの秋を知る
炎天に散りし亡父の文を読む
(19/07)
背に指した団扇がもの言う盆踊り
ばたばたと団扇ではたく風呂上り
小座敷の鴨居に忘れた団扇あり
夕涼み下駄に団扇に将棋盤
遅れ梅雨紫陽花も聴く走り蝉
(19/06)
紺碧を仕分けているのか雲の腕
夏風呂は短く浅く浸かるだけ
山霧は里も小雨か気にかかる
菜園の種々様々の棚作り
五輪花が揃って咲かず百合無念
(19/05)
春風や新元号の麗かさ
政争の他国の姿花の蔭
花吹雪「令和」残して立ち去りぬ
温暖化年々早まる衣替え
存(ながら)えて三つの御代に生きてゆく
(19/04)
ポスターに舞う花びらの暗示かな
花ビラは玄関先への尋ね人
浮雲や風に言伝(ことづて)花の舞
石段に花びら仕立てのカーペット
春風や万葉の舞偲ばれる
(19/03)
春小花植える膝元鳩の寄る
枯草の蔭に生まれた新芽かな
風花や春を知らせる舞姿
春ごよみ初春早春春一番
きららかな池面の輝き春の風
(19/02)
白鷲の小春日に立つ水辺かな
眠たげな猫の昼寝の邪魔をする
いささかの土の温みを駆け抜ける
探梅がウイルス汚染で遮られ
春愁は鳩や烏に進ぜよう
(19/01)
山黒く凭れる雲の色重し
陽が落ちて老いの夕餉や鰤大根
毛編み帽被りて噴き出す寒の汗
烏には外套さえも不用なる
御代替わり最後の新珠惜しむ朝
(18/12)
ふうわりと山茶花我が家にも咲きにけり
蜘蛛の糸に枯葉1枚ぶら下がり
清流に流れて旅する紅葉かな
賀状書き思わぬ疲れか朝寝坊
一葉をも残さずに待つ年替わり
(18/11)
風に舞う落葉にも似て雀の子
石段の日向に昼寝の落葉かな
古本に鎮座の落葉と再会し
追いかけてまた逃げてゆく枯落葉
天高く広重の富士そのままに
(18/10)
すさぶ風樋を持ち去り行きにけり
輝くは小さき寺の彼岸花
吹き荒れて木の実小枝の路を行く
公園に嵐残せしごみの山
晩秋や野菜畑に蝶の舞う
(18/09)
眼で追うて手でまさぐりて盆踊り
平成の終わりに駆け行く雨嵐
日が落ちて勢いいや増す盆踊り
野の風を身近に憶ゆ夜長かな
嵐風改めて知るその強さ
(18/08)
かなかなの声やいささか早すぎて
朝戸繰り大気に涼を忍ばせて
山風(やまかぜ)の来たるを憶ゆ処暑近し
夏が行く酷暑豪雨の置き土産
読経する写真の親に感謝して
(18/07)
静けさや緑陰まじかの蝉を待つ
地方より地帯というべき梅雨豪雨
プラタナスの大きな葉陰に涼求め
酷暑なりあわれ蚯蚓の行き倒れ
暴れ梅雨愛しき山河を掻きむしり
(18/06)
五月晴れ忖度風は葉の蔭に
屋根上にいや五月の空に鯉幟
緑風の蔭に誘わる登校かな
代かきや映る雲間に脚すすぐ
梅雨の朝あの揺れ抱く一刹那
(18/05)
大きくも霞みに抱かるや明石橋
渦潮を遊ばせている初夏の風
衣替えシャボンの香りも遠くなり
桜餅が柏餅へと春の行く
草むしり小さな虫は逃げ回り
(18/04)
春うらら残雪富士の晴れ姿
今昔の花を語るや富士の山
仰いでも足元見ても春満つる
時折の風に誘われ花の舞
咲きに咲け今を昔の桜花
(18/03)
陽炎は春の眠気の誘い主
陽炎や幼き春の夢うつつ
門先の陽炎恋し日向ぼこ
浮雲や子らの背を押す春の風
風花や赤いポストに戯れて
(18/02)
南国の「泡盛」どしりと福は内
枯草の霜の衣や陽に映えて
天空に身を隠したり寒の月
一面の早霧の海や春近し
少しだけ春を交えて耕運機
(18/01)
「そう」と云う寒き日中(ひなか)の柔らかさ
北海の蟹一巡り年始酒
少しづつ枚数の減る年賀かな
俳句なる小文を結ぶ竹矢来
隣家よりの蝋梅一枝年明けて
(17/12)
葉の幕を落として新芽の見せ口上
晩秋の繰戸を覗く残り月
年の瀬や身の来し方を顧みん
旧艦に残るや寒き海の底
一葉をも残さぬ木立の冬ごもり
(17/11)
黄や赤の栞を落として冬支度
秋深し忘れ去られた忘れ物
鰤大根昔のままの味姿
秋色の日の出構えて待ちにけり
木枯らしは裸木立を素通りし
(17/10)
野分空汗もわづかな日となりぬ
名月も解散ICAN唖然たり
名月は見て見ぬふりかミサイルを
ランドセルに小さき手足やてんと虫
十五夜の殊更白きを追うカメラ
(17/09)
音だけの骨箱 亡父(ちち)の日は遠く
子孫(こまご)来て子孫帰りて盆閉じる
溜池を囲む葉桜野分呼ぶ
拙さは棚に上げての展示会
夏仕舞い撥の裁きや盆踊り
(17/08)
跨線橋から団扇片手に遠花火
続く続くどこまで続くこの暑さ
豪雨なれば虹の橋さえ消し流す
太鼓撥笛に続けや盆踊り
尻を見て見よう見真似の盆踊り
(17/07)
梅雨明けを待たずに聴こえる蝉木立
光る雲あの敗戦の夏が来る
屋根と雲を映して涼し青田かな
うたかたの少年の朝夏休み
山村の豪雨被害や凄まじく
(17/06)
代掻きや蛙(かわづ)新居のご挨拶
1茎に10花の勢い百合見事
短か夜の白き障子の寝覚めかな
手習いや硯の渇きに気をとられ
見間違うて何方(どなた)と尋ねる初夏の朝
(17/05)
五月晴れ隅から隅までずずずいつと
これがかの勿忘草か愛おしや
五月晴れ沖縄戦後の空に問う
春風や犬に追われし幼き日
風薫る蓮華蒲公英五月晴れ
(17/04)
満開を待って手を振るゆきやなぎ
静けさと温みの道や花の影
時折の風に一服花の舞
雨模様やおら蚯蚓も思案かな
大きめの学生服や花の路
(17/03)
雛節句飾らぬままに桜餅
桜餅誰(た)が知恵なるやつぶし餡
それぞれに天突く芽吹き春の風
春めくや池面輝きさんざめく
かいつぶり水ぬるみての談議かな
(17/02)
初場所や満身堪(こら)えて綱を取り
友の逝く妹御の文は雪の朝
寒中の刹那のゆるみ日脚伸ぶ
天上のごみ捨てなるか雪の様
山茶花は溜息一つまた一つ
(17/01)
寒来襲白一色の化粧かな
健康を尋ねる年賀が多くなり
年玉も最後ですよと初笑い
寒空は青く輝き小雪舞う
今一茶初日(はつひ)に遊ぶ雀の子
(16/12)
行く年を星に進呈致すべし
行く年の人それぞれの仕舞い方
行く年の2度の顔見世ままならず
行く年に惜別感謝の辞を贈る
行く年もあと1日のガラス拭き
(16/11)
木枯らしに乗って帰還や空の人
夢を見て見果てて落ちたやこの木の実
秋深し厚着嫌うて風邪をひき
大根鰤(だいこぶり)煮付や美味し秋深し
けぶる空喪中便りの昨日今日
(16/10)
山の端の切り立つ朝や秋深し
パソコンの解説読み解く夜長かな
年来の土壁修理か天高し
鰯雲あの人もがと見舞いけり
幾星霜同窓人(びと)の笑顔あり
(16/09)
シルバー展ひねり俳句の立ち談議
列島の土砂運び去る雨嵐
台風の一夜に逝きし人のあり
間違った選択の後の七十年
嵐去るも尖閣四島核実験
(16/08)
故郷の山・川・雲の夏景色
通いたる里の小道の日照りかな
飛ぶ穂波色まだ青く陽は暑く
朝蝉の少し静かな盆の入り
立秋と言えども酷暑知らぬ顔
(16/07)
芋の葉に露球踊る梅雨晴れ間
蛙から蝉に替わるや季当番
繰り返す汚職管理の暑さかな
故郷も豪雨に勝てず姿変え
久方の顔見世なりや千切れ雲
(16/06)
代掻きを知らせるしじまのかわずかな
ゆうかりの葉先映えおり雪のよう
万緑は雲に臥せ寝や風もなし
藤時雨八十路に遊ぶ筆習い
雲浮かべ家は逆さの水田(みずた)かな
(16/05)
五月雨の靄(もや)に顔出す遅れバス
菖蒲湯の思い出深し子より父
鰆(さわら)鰤(ぶり)魚名談議の夕餉かな
五月雨は池にけぶりて輪を描き
春暁に夢砕かれて大地揺れ
(16/04)
寺の鐘入日を追うておぼろなる
山霞花影遠くおぼろかな
幾年の花もおぼろに我が人生
おぼろなる故郷の田の蓮華草
猫程の犬連れし人背やおぼろ
(16/03)
冷たさも寒さも消えて山霞(やまがすみ)
幼子の絵本の如き春来たり
寒いような温かいようなと挨拶し
春まじか寒気暖気のせめぎ合い
ぶっきりの飾り飴にも春心地
(16/02)
八十路入り人生寒中山登り
寒風に蝋梅健気に空仰ぐ
大寒や隙間だらけの梢かな
小椿は春一番に目覚めけり
春菊を洗う女房早や雨水
(16/01)
寝処を温水器の上と決めた猫
冬の陽の廻る温みに脚をやり
元旦や街角に人の影もなく
軍神の玉砂利包む雪化粧
寒中や傘寿祝いを受け候
(15/12)
明けやらぬ空、洗面の小窓から
夕焼けの色一色の木立ちかな
旧友を3人(みたり)も失う年の暮
祭壇は菊花溢れて笑顔あり
散髪の椅子に伝わる臼の音
(15/11)
少しだけ木枯し混ぜて野分吹く
イラストに枯葉使って便りする
道端にひしめき居座る落葉かな
明日散るか明後日かの枯葉かな
霞み立つ落葉時雨の明けた朝
(15/10)
名月に船頭乗せたや雲の波
秋清か江戸一望はツリーから
金木犀歩みを止めての香りかな
ガレージに菊棚作りの翁あり
プラタナスの枯葉流れて秋も行く
(15/09)
二の腕の涼しき朝や残り月
夜半清(さや)か月を背にして窓灯り
災害の連鎖気づけば秋深し
残暑の座一日もなく早や白露
灯をかざす姿や愛し彼岸花
(15/08)
バス停の1つ向こうは通り雨
主なく五輪は暑さに呆けており
昨日今日夕時狙いの雷雨かな
安保法熱中症かさも似たり
蝉の声早や空耳か盆の入り
(15/07)
雲立ちて一番蝉や夏来る
梅雨明け報台風見送る後ならん
洋ランの茎のみ挿して再生す
紫蘇の葉を刻んだ小味に舌鼓
あらためて亡父(ちち)の絶筆終戦忌
(15/06)
絵日傘に似て大輪の額紫陽花
緑増す木陰やしばしの雨宿り
玉ねぎを送りし友の余命知る
夕闇に代田蛙の声しきり
手にするは茄子の味噌汁芒種かな
(15/05)
澄みわたり耳に緑の風遊ぶ
昨夜来の雨後の草取りミミズ跳ね
紫陽花の年々背丈も伸びており
池の面が盛り上がるほどの鯉の群れ
傘寿前の最後の五月雨濡れるまま
(15/04)
此処ですと鳴いて誘うか花の陰
(桜に鶯はあまり聴かない)
煙る雨もの言いた気な花姿
(喜ばれしや春雨は)
咲き揃う翁大関艶女形
(花の姿は歌舞伎に似たり)
踊り手も衣装も舞台も花爛漫
(花一色花のほか何もなし)
春の海雲戯れのサンライズ
(英語の俳句もあるという)
(15/03)
春霞山を隠して知らん顔
自転車が大欠伸して春駆ける
寒戻り陽射しばかりが春の顔
水温み差し延べている河津花
早春は豆チョコあられの家庭から
(15/02)
境内の雪とシャベルで滑り台
ケーキにも見立てて椿の雪帽子
巣立ちゆく子等を見送る窓の雪
竹藪のしじまに雪を払う音
掌に六角形を見る寒さ
(15/01)
菜園に朝しばらくの薄化粧
明けて春淡雪小枝に花咲かせ
素足の子長ズボンの子冬の朝
鉛雲重なる梢に透けてあり
風花は陽に輝いて蝶に似て
(14/12)
師に替わり馳せるバイクや四騎五騎
それぞれの樹々興行の秋舞台
呼応して紅葉時雨に陽の光
師にあらず走る候補の拡声器
暮(くれ)十四日票を目指して陣太鼓
(14/11)
一面の芒が原や風軽し
自転車風に舞った落ち葉が追うて行く
山裾に霞み沿わせて明けた朝
晩秋や子等寄るを待つ落葉かな
深まりて日々足早に染む木立
(14/10)
秋長けて転移報せる友の文
中秋や大地の影に月のショウ
青き空に何の怒りぞ御嶽山
故里の地に見送りし彼岸花
天高く草笛吹くや池の端
(14/09)
デング熱アフリカエボラに呼応する
土石流南洋の雨の太刀まわり
もの問わむ秋穏やかかちぎれ雲
軒下に豪雨闇夜に立ち寄りぬ
蜩の消えた木陰の広さかな
(14/08)
「耐えがたき」玉音未だの暑さかな
山霧に溶け込む読経の自若かな
熱中症土砂流年々荒くなり
光る雲蝉と蛙の応援歌
岩陰にやんま立ち寄る一人旅
(14/07)
大振りの紫陽花覗く縁の部屋
場違いの蛙にも花の水を遣り
朝顔や洗顔したのか一つ咲き
梅雨明けを待たずに柔き蝉の声
風鈴は幼き昭和の風を呼び
(14/06)
風呂上り梅雨より先の団扇かな
紫陽花に呼びかけられて衣替え
大腕を揺する木陰や日中道
紫陽花は日々花紅の色を増し
逃げもせで撒き餌に預かる雀の子
(14/05)
餅の木に似て咲き並ぶ八重桜
蝶のごと花弁池面に踊り行き
故里の大人花を追うて逝き
一下り物語して花の行く
ジョギングは薫風木漏れ日千切れ雲
(14/04)
咲きに咲きたわわに咲けと春の風
飛行雲遮る柔き浮かれ花
花びらが郵便受けにも二つ三つ
春愁は華やかな花の陰ならん
微笑を新調学徒に花隧道
(14/03)
堅き芽の樹皮に紅指す小春かな
休田に蒲公英一つ春を問う
笑う山招くかのよう千切れ雲
紫陽花の芽吹く朝(あした)や春の陽や
光る雲光る池面や風寒し
(14/02)
堅き芽の梢に遊ぶ寒の風
朝の陽は梢を透かし春未だ
木枯しを背にして遊ぶ池の鴨
降る雪に隠れているかやたがらす
水潜る鴨の冷たさ思いやる
(14/01)
小寒に蕾や硬し庭椿
木枯しは小枝ゆさぶる冬座る
鱈鍋の夕餉を囲む二人酒
干柿の小皺に遠き里の日々
成人の孫の晴れ着やそぞろなる
(13/12)
冬支度日々急ぐのか黄落葉
行く年や耳に木枯し落ち葉踏む
行く年に早や山茶花は無垢に咲き
一面に黄葉脱ぎ捨てて年が行く
行く年や花芽堅くして黙示録
(13/11)
木枯らしに暮れた調べや古河メロディ
点描に色を競いて秋深し
夫婦して五十路迎える鍋の湯気
丹精の菊に入庫を遮られ
昨日柿今日は林檎を剥く手見る
(13/10)
街明かり抑えて冴える秋の月
霜降の静けさが座る池面
秋深し急かれるように畳替え
風嵐枯葉立たせて走らせる
美味と聞き一切れづつの鯖を焼く
(13/09)
地球破壊気象破壊のことと知り
秋風に浮いて蜻蛉のトランポリン
水漏れと五輪の処置が交錯す
かかり湯と浸かり湯に迷う残暑かな
公園の松葉ぼっくり蹴る小道
(13/08)
幼子の手を庇いつつする花火
突然の黄葉鉢替えを強いられる
古枝で背の汗を掻く夏わづか
蝉去りて尚も居残る酷暑かな
心なしか天高く見ゆ送り盆
(13/07)
紫陽花に似た政党の色替わり
子ばったの道行き連れは親ばった
酷暑をも尻で蹴飛ばす古女房
突然の梅雨明け蝉も遅刻する
酷暑なら冷やしうどんの他になし
(13/06)
庭畑の東の幸や宅急便
代掻きの宵は蛙の恋宴
早苗田は園児のように並びおり
いつの間に早苗に寄り添う浮き藻あり
蒼天に諸手を挙げる初夏の樹々
(13/05)
幾年の幾度の花夫婦して
一生に一期の花や歳を経る
幾度の新たな花や経る齢
春雨の池にメタボの鯉あまた
春雨(あめ)上がり金婚祝いの花求め
(13/04)
満を持して連れ立って咲く桜かな
諸々を虚空に飛ばせ花吹雪
ビバルディの「春」を踊るや花吹雪
散る花を仰いで乾杯陽の光
立たされし廊下や遠き花の陰
(13/03)
大戦を耐えて彼岸に逝きし母
公園の風も温みて道普請
春光に踊る池面や瞬きや
あじさいの芽吹き確かな春の音
煙る雨濡れて花蕾は控えおり
(13/02)
寒風を逃げ帰りての鍋の湯気
戸を繰れば覗きこむやに寒の月
恵方より北の四島南尖閣
菜園に寒さ見立てて薄化粧
陰り陽に白きの舞いて春浅く
(13/01)
元旦や人影途絶えて鳥の声
木々の芽は早や元旦に息吹あり
少しばかり寒の戻りや友の酒
歳重ね粋なハットの若さかな
防災の法被園児も出初式
(12/12)
己が影踏めずに追うて師走かな
大掃除骨折厄年去年さらば
焼き鳥の串の姿や銀杏の木
鰤大根煮て煮返して五日経ち
お隣の山茶花優し寒狭間
(12/11)
錦繍の舞鮮やかに秋日和
夕日より真っ赤に染まる楓かな
見上げれば紅葉時雨や虹の橋
又暫くお願いするよと冬支度
桜葉は一番早く店仕舞い
(12/10)
天高しレンガ駅舎の往時映え
苅田藁こすずめ来るを待つ風情
羊雲梢に野分を吹き降ろし
碧空や日々染め変わる楓かな
朝まだき明星仰ぎ枯れ葉蹴る
(12/09)
葉桜の漏れ陽に遊ぶ野分かな
たちまちに雷を鳴らしてしぶく雨
少しだけ小首傾げる稲穂かな
重ね雲野分の行方追いかけて
足元を互いに労る墓参路
(12/08)
陽は高く野分けと蝉と眩しさと
軒影を帽子が歩く人連れて
鳩でさえ木陰にたむろす暑さかな
高々と輝く白雲終戦忌
行く夏に待ったをかける蝉時雨
(12/07)
墨染めの扇麗し仇未練
糟糠の妻にせめての蚊遣り灸
往年の妻への不孝に梅雨按摩
殴り雨堤を切って市街飲む
終章に暴れを残して梅雨が明け
(12/06)
解像度を水面に落として浅緑
仏の座溢れるように百合の花
衣更え己が若さに感謝して
衣更え居るも歩くも寝につくも
浮雲に頃合問うて衣更え
(12/05)
春愁や池面突き上ぐ葉先かな
泣く如し姿かすむや春の山
浅くとも去年の明日の緑かな
煙る傘に見知り顔なりバスを待つ
新緑やベビーカートに犬を乗せ
(12/04)
進学の孫の自転車銀色に
春嵐西から北へと掃き散らし
簪にして欲しそうに椿咲く
遅々遅々と遅々と咲き出す桜かな
羽二重に似てたわわなり花姿
(12/03)
温水器の毎朝の猫顔なじみ
早一年がれきのままの北の国
陸奥(みちのく)の津波ケ原に春遠く
ランドセルの子らにも何故か遅い春
啓蟄の様(さま)の思案や南風
(12/02)
温暖化を叱る張り手か大寒波
風花とたわむる樹皮や艶を増す
千切れ雲小春を問うや池の面に
大輪に笑みて沈むや暁けの月
薄化粧銀輪連ねる子等の朝
(12/01)
十二月八日を知らぬ他人(ひと)あまた
在りし日の母にかざした寒椿
それぞれの暮らしを語る年賀状
雪雲に肩をあずけて山眠る
寒星に涙浮かべた愛彼方
(11/12)
ふうわりと季節を閉じるプラタナス
黄一色箒ポプラが天を掃く
錦繍の木の葉名残の冬支度
枝開き枯葉の別れ今日明日
枯れ落ち葉風と箒のせめぎ合い
(11/11)
白風の報せや葉落ちの静かなる
いつの間にたわわの柿や今朝はなく
紅葉の人出にブラス弾みをり
蕎麦よりも自然薯ですよと親父言い
風冴えて入り日短かく子らの声
(11/10)
嵐去りて滝の導師に威風あり
霊峰を夜明けの友に外湯して
嬉しげにコスモス揺れて咲き揃う
父ちゃんの虫網弾む大根畑
刷く雲に泳ぐ様あり忘れ月
(11/09)
金魚では食にならずと泥鰌言い
泥鰌をも押し流してか雨台風
何事も知らぬと嘯(うそぶ)く野分雲
名月は隣家の屋根に微笑みて
大白鳥に似た雲が行く秋を行く
(11/08)
蝉しぐれ続く樹立ちのシンフォニー
幾条の閃光踊り夏がゆく
ダグアウトに逃げて見つめる雨の足
炎天に南へ征きし亡父(ちち)の盆
遠き日の玉音入道雲の上
(11/07)
短か夜に陽を昇らせて女子サッカー
深緑濡れて艶なり雨上がり
門柱に奇しく留まるか鬼やんま
湧く雲に地照りの暑さ送りたし
忘れる日忘れない日の夏帽子
(11/06)
田植え機にうまくいくでっしゃろと人の声
桜葉を庇にベンチ人を待つ
代掻きにはや居座りてかわづ鳴く
じゃがいもがくさらぬようにと床の上
新田は雲を浮かべる大画面
(11/05)
菜の花が迎えてくるるや故郷(さと)の道
薫風が小耳をたたく夏近し
様々の濃さや緑の初夏嬉し
倒壊の灯篭緑下に閉眼す
俳聖の知らぬ五月雨黒き雨
(11/04)
二分咲きがやっと来たねと山笑う
北国の瓦礫に希望の花よ咲け
小椿は亡母(はは)にかざした髪飾り
瓦礫ケ原に想い出探す春の傘
花びらに遊ぶ陽光(ひかり)を潜り行く
(11/03)
あの朝の答辞の誤読今もなお
薄紅の梢は春を招き寄せ
浅き春津波の爪に影もなし
卒業の窓に津波の魔手馳せり
子の巣立つ日は遠き日の我が姿
(11/02)
寒一枚剥ぐを念じて恵方食む
凍てをとり寒さ温さの早春賦
早春を一足戻して雪化粧
恵方巻きとチョレートとで春を待つ
故郷の和尚あぐねて雪便り
(11/01)
戸を繰れば居残りあるや寒の月
幾十年今や二人の雑煮かな
凍てる空呟くような星一つ
初日さえ仰ぐや紅の飛行雲
風花は寒大名の奴なり
(10/12)
残る葉はわずかな日々の名札なり
落ちた葉も落ちる葉もなく冬来たり
見上げれば寒風温し新たな芽
国中が暑と尖閣で暮れにけり
日を数え老わきまえず春を待つ
(10/11)
パソコンとがぶり四つに組む夜長
暫くの色輝かせ樹々終章
脱ぎ捨てて素手一本の冬支度
ささやかにもみじ葉揺れて陽も揺れる
秋深し湖畔のカメラ日の出待つ
(10/10)
短冊の切れた風鈴秋静か
仲秋の旧き灯火や宵の筆
柿色の夕日にはずむ子等の声
金木犀の甘き香りや母子づれ
湯けむりを斬るかのように冴える月
(10/09)
朝蝉の声なく夏のゆくを知る
膝を立て叱るかのよう雲入道
向日葵の海に漂う白い傘
四・五日で急転夜寒の朝来たる
木蔭でも日傘差しゆく婦人(ひと)のあり
(10/08)
明けるなり今日も酷暑と蝉の声
突き上げるポプラ支えて蝉が鳴く
宿題に能書き不要と嫌われる
あの遠き猛暑の玉音も我が人生
妻の手にお盆休みを提案し
(10/07)
水禍の報知らずのままや蝉の声
水害を報じて一転梅雨が明け
割れ苔もつながる程の雨続き
嵩高の濁水が行く夏近し
黒雲と輝く雲と初夏の空
(10/06)
一隅の代掻き蛙も夜明けまで
花追うて脚絆の旅や故郷(さと)の人
梅雨雲に爆音隠して去る機影
紫陽花は濡れた素顔でガラス窓
手作りの団子と見紛う柏餅
(10/05)
平城の古都麗らかに雲雀立つ
小糠雨浴びてつつじの春が行く
花扇広げたように咲くつつじ
公園に靴残されて春送る
緑増す木陰に小さき宴あり
(10/04)
誘われて散る花少女の片笑窪
風に耐え雨にもめげず咲き集う
寒と暖迷い併せて花歩む
濡れた陽に終章飾る花たわわ
花から葉日追うて替わる立ち衣装
(10/03)
寒緋桜春雨に逢い一人咲き
春雨(あめ)あがり鳥の音梢を透き通る
曾祖母の琴譲られて孫娘
日についで梢の蕾膨らめり
春待たず巨漢の去るを知る朝(あした)
(10/02)
風花や童の日々を連れ来たり
早春やあと5分だけの寝床かな
後掃除嫌って豆は撒かぬという
大寒と三寒の差が見え始め
守護札の恵方睨むか鰯の眼
(10/01)
風花や素足下校の子等を追う
学校で習ったからと歌留多とり
添え書きを二度読む年賀懐かしき
指芸に似た影落とす枯木立
鉛雲既に恩師の影やなく
(09/12)
遠い人遠きを伺い贈る賀詞
歳晩や茜に浮かぶ杉木立
暮れ暦好まずながら重ね寝着
寒空に星一つだけ瞬きぬ
風呂吹きは耳の寒さを労わりて
(09/11)
紅葉の朝(あした)に居残る月さやか
いづくまで落ち葉数えるわが人生
絹の雲早や木枯らしを呼び寄せる
葉が落ちて柿は赤々丸裸
ものや問う葉陰に寂びし白椿
(09/10)
碧空に和らぎ沿えるか金木犀
百歳(ひゃくとせ)の学舎(がくしゃ)寿ぐ菊立ちて
ざるに持つ栗艶栄えてレシピ聞く
刈株田競うて背伸び細き稲
落ちる陽に影の先行く家路あり
(09/09)
池の面に色にじませて遠花火
浮雲はもう秋だよとしたり顔
小雀に似て舞う落ち葉二つ三つ
遠き日の唄声のごと羊雲
山霧の昇る速さや駒ケ岳
(09/08)
雨雲と入道雲とが睨み合い
迎え盆胡瓜細工の馬立ちて
陽は高く人気少なく蝉遠く
朝まだき霧たちてゆく経の声
供書き陽射しや強し義姉の盆
(09/07)
特大の胡瓜にレシピひと弱り
鬼百合も耳傾ける蝉の声
高々と立ちて向日葵笑いおり
取り水の音色軽やか稲涼し
前線の上下知ってか蝉鳴きぬ
(09/06)
代掻き田蛙の新居ご挨拶
空豆の宅急便はかさをはり
代掻きの田面に浮かぶちぎれ雲
新田の座標に輪を描く走り梅雨
蔓伸びて携帯記録に収められ
(09/05)
春風は蝶もマスクも呼び集め
待ってよと追う子に微笑む紅つつじ
新緑は瀬音にタクト振りつづけ
夜半の春山湯の灯り包みおり
嬉しきは剪定の後の新芽たち
(09/04)
菜をもらいどうぞ食べての笑顔あり
若木でも八重それぞれに咲き競う
そよ風に誘われてゆく花の旅
菜の花は子らともどもに水遊び
風呂上りゆるり筆持つ春の宵
(09/03)
おそまきに怒ったように咲く椿
耳鳴りの風音ぬくし背伸びする
いつの間に紫陽花小さき葉を広げ
洗面の湯を水にしていよよ春
春雨の雲を睨んで墓参り
(09/02)
具沢山妻とあぐねる寿司2本
起こし田の荒々しさや春息吹
朝霜の枯れ田に鴉もの想い
池の面に陽光鱗に似せて映ゆ
菜園の色緑色雨の色
(09/01)
初春は陽光静か人もなく
年賀状一筆にあり懐かしさ
年始め孫の背丈を確かめる
しめ飾り初春も行くはや七日
手袋の中なお冷たき指の先
(08/12)
三日月は明星連れて寒の空
吹き寄せた枯葉布団を踏みはせる
黄葉捨てて枝先だけの冬支度
大根煮の重き厚みに暖をとる
亡き人が招いて集う百合の花
(08/11)
睨むごと葉陰の蕾寒椿
岩に散り秋風にのる波しぶき
長袖を尚長く引き子の走る
青ばった脚千切れたり不服顔
木枯らしに急かされてゆく枯葉達
(08/10)
明々と芋名月は涼やかに
千切れ雲眉間をよぎる秋の月
さわやかな野分を追うてコンバイン
佐渡の秋うみねこ風にのりつづけ
へい越しにこぼれる程のななかまど
(08/09)
天をつく穂もこうべ垂れ招くよう
ほうづきを突くかと妻に問いかける
月明かり射し込む朝にかけ具引く
墓石を里に移せと古坊主
迷走の嵐墓参も惑わせる
(08/08)
蝉一つ地に這うて鳴く夏がゆく
手洗いに蝉も御用かまようたか
畦ゆけば稲穂揃うて天を突き
苦瓜の葉は浴室を覗きおり
蝉の音のあいを受け持つ鈴の音
(08/07)
枇杷の実も落ちよと雷鳴なお続く
雨足は道に湯気呼び夏来たり
天気図に示されぬままにわか雨
傘の先恐れ覚える稲光
六月の暦梅雨雲既になく
(08/06)
梅雨雲の姿見上げて傘選び
走り梅雨首持ち上げてゆり開花
額紫陽花走る花火に似て候
街中に残る田からもかわず声
残雪にざくり踏み込む山の朝
(08/05)
白樺にかくれて鳴くやほととぎす
ほととぎす湯気の向こうに山の春
残雪に陽を輝かせ滑る人
軒先の遣り水ぬくし春の花
緑雨バスに遅れた他人(ひと)一人
(08/04)
児とともに薫風待つか鯉のぼり
向き向きはてんでてんでのねぎ畑
散るものか散ってなるかと咲くさくら
花と空名残りの人の宴あり
宮人の盃ならん黄水仙
(08/03)
花まじかベンチ静かに人を待ち
少しだけぬくもりの風帆を押せり
ぬるむ水まどろみの中瘤白鳥
小椿は子ら見送りて春の風
春雷がたたく板戸や音ぬくし
(08/02)
光る雲淡雪舞うや蝶のごと
くつくつと湯気暖かく寒の鍋
鬼は外と言わなくなったと寿司を食む
一色にひと朝だけの雪景色
あじさいは冷たき朝に葉を捨てり
(08/01)
いつになく山茶花大きく白く咲き
様々の賀状の続く幾十年
人もなく寒さに煙る小ぬか雨
それぞれに一言づつの賀を送り
脳外科に人多かりし霜の朝
(07/12)
人々の喪中葉書や年の暮れ
声もなく姉旅立ちて冬の朝
明けぬ空寒さ比べる昨日今日
小さき湯に肩の痛みを沈ませる
手のひらに豚汁重し暖かし
(07/11)
いにしえの清泉の面や枯葉浮く
枯れ芝に懸崖の菊降り注ぐ
白砂に映えて秋の陽紫宸殿
木枯らしは暮れた家路を近くする
セザンヌの秋の葉色を掃き集め
(07/10)
枯れ落葉野露に濡れて静まれり
ボール投げ興じる子らの影長く
家々の秋灯静かやわらかく
空高く白い機影も高くなり
コスモスや彼岸を過ぎて墓参り
(07/09)
高き空の風に広がる飛行雲
枯れ松葉夜来の雨の流れ痕
まだあつき陽射しは蝉の置きみやげ
池の面にたむれてゆく夕の風
周遊路だんまりのまま日除け帽
(07/08)
陽をよけて乞われて作る風呂網戸
朝駆けや尻手にまわる蝉の声
孫の手の果実供えて後れ盆
空に雲一つだになくバスを待つ
夾竹桃幼き日照りの赤きまま
(07/07)
浮き草の稲株に沿う昨日今日
菜園は緑葉濡れて梅雨の朝
新じゃがの甘さ嬉しき橙(だいだい)酒
雨雲の暗さ見測る傘思案
ストーブの薪背負いし夏休み
(07/06)
葉桜を覗いて浮かぶ真綿雲
紫陽花に検診結果の良を告げ
枝払い雫や軽し梅雨の午後
深々と雨傘素足に子らの朝
軒下の紫陽花雨滴に打たれおり
(07/05)
つり橋は人待ち顔で風に揺れ
茶畑に蒸気を撒いてSL車
羽衣を濡らして去るやにわか雨
峡谷の緑に微笑む五月晴れ
草花の三つ四つ求め植木市
(07/04)
三輪の小椿矢来の雨に落ち
浮かぶ雲華やぐ花や酒支度
それぞれに咲き競いてや子と花と
花や花幾年の想いたわわなり
年々の花に薫るや遠い人
(07/03)
坪庭の椿に妻を寄せて撮り
足並みの揃わぬ開花気を揉ませ
寒戻りぶりとだいこの味や濃し
学童の声や雨戸の外寒く
暖冬は開花の足並み乱れさせ
(07/02)
ふくらみは足踏みせく足織り交ぜて
寒風にたたかせている湖岸かな
白太の葱毎夕の膳にのり
ぬくもりを少し配るやちぎれ雲
枯木立ベンチ従え冬陽受け
(07/01)
暖冬は椿咲く日を延ばしけり
樹々の芽はぬくもりの空にはや息吹き
駆け抜ける少年の背に初日あり
年の瀬のけじめとなりぬ〆飾り
善哉にしばし一息初詣で
(06/12)
五〇年も変わらぬ人への年賀状
去る人をあらためて知る喪の報らせ
どすどすと餅つきの音地を這うて
つるべ井戸吐く息白き遠い朝
それぞれの写画持ち寄りてカレンダー
(06/11)
早霜と見える静かな朝霞
掃き寄せたかの如くなり黄落ち葉
日の暮れの早さは灯りも早く呼び
朝霧に濡れた歩道や子らの足
通勤の人の温みにくもる窓
(06/10)
首かしげ墓石に寄りて彼岸花
カレンダーの柿に小瓶の黄菊あり
地に降りて霞はビルの顔を出し
一足に跳ねたバッタの遠き道
虫の音も去りて灯りの懐かしき
(06/09)
山肌に爪傷残し嵐去り
ふうわりと一葉が落ちる秋静か
どんぐりが笊ごとのごと落ちにけり
子らの数減りて続ける墓参り
雨上りしじま変わらぬ虫の声
(06/08)
遣らず雨ベンチに待てば妻の傘
靖国の暑さいやます小石かな
蝉の音を逃げて小橋のどんこ船
外輪の野山いとしき阿蘇の夏
山霧を素肌に浴びる朝湯かな
(06/07)
長雨や土色にさわぐ川面かな
番傘の音想い出す空けぬ梅雨
降り込めて浴衣素足の影もなく
並木樹の葉陰首ねに大雫
長梅雨に履物思案きのう今日
(06/06)
若草の堤を駆ける犬と人
梅雨雲に明けて雲雀の声遠く
音もなく水面に輪を書く昼しぐれ
いつの間に広げた葉陰に雨宿り
天からの禊ぎに浮かれ神輿行く
(06/05)
有珠山に抱かれて芽ぶくふきのとう
春浅く街の灯函館山の宵
春先の着合わせ思案北の旅
春風はバス回数券を飛ばしたり
曳舟は川面の霧のシルエット
(06/04)
彼岸より花を愛でての墓詣り
今日までか明日までかの桜かな
抱くように散らさずに咲く花ざくら
一杯に散りもやらずに咲くさくら
野の道に幾千年のつくしかな
(06/03)
菜の花と梅に添わせしチューリップ
うらゝ陽や幼な児二輪の嬉々の声
小走りの傘に淡雪春間近か
枯れ溝にかすかな音や春の水
街路樹の芽ぶくあしたに遺らず雨
(06/02)
寒暖をまじえて今年も豆料理
マンションはひばりの空を奪いたり
陽光と寒風頬に雪の朝
ぬるむ空烏一声多く鳴き
春暁に四羽てんでにビルの屋根
(06/01)
雪害のゆるみを見下ろす鰯雲
人もなく枯れ木に添いて傘1つ
陶工の指先紅く春遠し
繰り返すどか雪に絶え春を待つ
雪の花満開にして街木立
(05/12)
ぶうわりと楓一枚枯れ落ちる
冷たさは朝陽さえぎるビルの角
夕まぐれ落ちぬ枯葉の2枚あり
寒風は隅田の川面ひとまたぎ
高々に冴え許さじと寒の月
(05/11)
黄ばみつつ葉が下を向く街も秋
残り葉を透して高く月澄みぬ
霜雲にマスク手袋急配便
足元の黄葉ふくよかに銀杏立つ
種無しの心もとない柿を食む
(05/10)
虫の音としじま抱いて月やさし
小嵐のあと追う枯葉の旅姿
高々と済んだ陽射しに座る街
寒気団間近かを聞いて軒しぐれ
眼を上げて早や陽の落ちる秋を知る
(05/9)
風澄みて子らの駆け足押しやりぬ
立つ筆に似せてすすき穂生けてあり
蒸し暑きしじまにいどむ虫の声
涼風と潮目に船は身をまかせ
椎の実を拾いし山や今遠く
(05/8)
通り巾いっぱいに打つ水涼し
打ち水や柄長ひしゃくのきめの良さ
立ち雲を泳がせて富士の隠れん坊
しるし旗変らぬわらぬままのかき氷
日照り道通るは車ばかりなり
(05/7)
板の間に涼を求めて大に寝る
戸の隙間押し分けて鳴る夏風(かぜ)の笛
梅雨明けを待てぬとみえる蝉1つ
それぞれに向けて土用の舳先かな
天空の花火娘に浴衣着せ
(05/6)
大二輪向日葵部屋に笑み落とす
空梅雨か傘持ち歩くだけになり
穴あきのゴム長恋し遠き梅雨
人を見て行き先決める蝸牛
梅雨の間に雨漏り探る留守居番
(05/5)
それぞれの薔薇の姿に人を見る
風遊ぶつつじ葉と花競い合い
陽こぼれは繁りとともにつとになく
緑樹に見え隠れしてバス行きぬ
暑く寒く夏を真近かの緑かな
(05/4)
駆け抜ける即配バイクの春の音
花や花花トンネルの花吹雪
物干しの陽だまりゆれて声音なく
寒戻り新芽煙霧に縮みおり
街路樹の色日々に濃く春の雨
(05/3)
芋粥の芋を数えた里の早春(はる)
子ひばりの跳んだむら草今はなく
陽炎に小寒(こさむ)を交えて春を待つ
春嵐樹の芽ゆすりて駆け抜ける
春宵や小窓を泳ぐ浮かれ唄
(05/2)
福は内念じつあらたむ加護の札
雲あつく氷雨に座る屋形船
梅一輪ややの手に似て咲きにけり
新興地人待ち顔の狭霧かな
生けられて菜の花は語る春の延野辺
(05/1)
舞い上がる小雪を泳ぐ都鳥
突然のしづく冷たき寒の風呂
冷たさは屋根にも上り霜化粧
年の瀬に津波アジアに師やいづこ
若者は遠く夫婦の鍋静か
(04/12)
ひいやりと居並ぶ小船に陽の光
家々の臼打つかすかな音を聴く
寒風に千切れて消える波頭
年の瀬はともづな固く泊り舟
再びの年の瀬告げる寒椿
(04/11)
山茶花のつぼみ庭師の日をずらし
遠霞瞬いて来る通勤車
葉を落とす木立包むや朝霞
冴え渡る月に映るやはなれ妻
一人二人の重ね着を見る霧の朝
(04/10)
干し柿の歯ごたえ遠くなりにけり
谷川の洩れ陽紅葉を偲ぶ里
彼岸花菊人形のかんざしに
嵐去り泥一色の川面かな
ふるさとの水害の報友思う
(04/09)
湯の音に虫の音清く入り混じる
先ほどの雲消え去りぬ秋の空
月澄みて星かとまごう航空機
朝風に野分を混ぜて庭仕事
大風に落ちたリンゴが届けられ
(04/08)
巻き雲に戦に去りし父の顔
これでもかなおこれでもの暑き日々
とびとびの日蔭に逃げる道暑く
閃光の雷雨に濡れて子ら走る
飾り菓子灯り巡りて母思う
(04/07)
窓々を開け放させる早朝(あした)の陽
向日葵は唐きびの背に負けて咲き
にがうりのすだれの向こうは蝉しぐれ
風鈴はクーラーの風に泳がされ
空梅雨のあとに豪雨の置き土産
(04/06)
降り残る緑の雨や梅雨間近か
梅雨の間にビルの谷間の祭り笛
走り梅雨濡れて祭りの足袋姿
春嵐過ぎて水面の船軽く
梅雨空に葉先の露の輝ける
(04/05)
変な様言い合いて笑む枝はらい
空青くビルと初老が立ち並ぶ
かすみ空に誘われてゆく夫婦づれ
春嵐過ぎて葉漏れの五月空
冬木立今や見まごう葉の繁り
(04/04)
春風はパン工房の香をのせて
そよ風にゆれて手を振る花すみれ
さわやかな新芽の下を駆け抜ける
朝露に陽を輝かせつつじ咲く
風に散り川面にゆれる花の旅
(04/03)
ビル壁に枝陰強く冬の朝
吐く息は里の竈の鍋の湯気
寒戻り足のかゆみもお付き合い
ふくらみのささやきを聴く春明日
からす殿嘴高く春を行く
(04/02)
なにがなし隣家のさざんかより紅く
休畑の霜輝いて春近し
汲み置きの水桶杓も凍てつかせ
人もなくただこんこんと筧水
桜草水やる人の春姿
(04/01)
寒風は立ち飲み酒を恋しがり
寒風の吹き溜まりなり街酒場
屋根一面薄化粧なり陽の光
寒梅は吐く息よりもなお白く
引船の波寒やかな朝(あした)かな
(03/12)
小野菜と酒にほろ酔う師走風
経る歳を風に送って立つや樹々
葉が落ちて逆さ茶筅の街並木
年の瀬は少し手暇な屋形船
寒空を突く陽光(ひ)を受けて急ぎ足
(03/11)
からすさえ喰べ残してか柿一つ
走り去る汽車を見送る柿一つ
渋柿をむいた母の手今はなく
ビールより枡酒をいう冬支度
夜気入れて仕種潜めてしまい風呂
(03/10)
山あいのせせらぎ陽落ち急ぎ足
たわわなりリンゴ腕木に実りおり
静かなリ湖面に座る朝霞
暮れなずみ白く残るか滝の塔
火焔山の向こうをはってもみじ山
(03/9)
道端の捨てた小枝や秋の風
街中に涼風おろす鰯雲
草むらの葉ずえ黄色く風凉し
野分たつ雨を葉陰の墓詣り
水の面の野分見送るもやい船
(03/8)
ひまわりは畑畦に立ち自主警備
涼風を呼んでやさしきうろこ雲
ブルースもワルツもタンゴも汗を呼び
眼を閉じて緑葉の下駆け抜ける
とうきびを倒して嵐過ぎにけり
(03/7)
花びらが胸にこぼれた日は遠く
かつぎ手もぶらさがり手も三社祭
盛り花のゆりの香にむせる朝かな
さえずりはかすみと陽射しに隠れおり
草むらと空を結んで雲雀たつ
(03/6)
遠い日の乙女の胸に散る桜
進学の日を想い出す桜影
陽は斜め桜宴が待ち遠し
夜桜を雪洞に見てくぐり抜け
白雲と花がすみとの水面
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