南圃句集

(24/01)
今年又昨年よりも良い年に
焼き餅の香り絶えない三ヶ日
今日一輪又一輪と梅の花
山茶花の花鮮やかに雨の朝
ろう梅の香り微かに風を知る
(23/12)
裸木に残る柿の実二つ三つ
年の瀬を迎え時間の早く過ぎ
山茶花の白く淋しき花の色
紅葉の淋しく残る細き枝
年の瀬も平時の如し何もなく
(23/11)
干し柿の長さを変えてドラミファソ
山茶花の香り求めて蜂の飛ぶ
音もなくすすきのゆれて風を知る
二つ三つ葉際にみえる残り柿
つわぶきの花の黄色目を覚まし
(23/10)
竹竿の先を開いて柿をもぐ
風さやかツルベ落しの日の沈む
残り蚊の音も淋しき秋の夕
虫の音の静かにひびく宵の入り
風もなくソヨと動くはすゝきの穂
(23/09)
蚊やり火の微かに揺れる秋の夕
秋風に紋白蝶の影遠く
冷蔵庫アイスクリームのまだ残こり
そよと吹く樹下の影もうすくなり
黒蝶のヒラヒラと舞う彼岸花
(23/08)
両親を想い今年も門火焚く
くまぜみの声にぎにぎし樹下(こした)蔭
庭先の植木の緑濃く青く
天の川妻と眺める宵の入り
波静かカツオ水揚げ都井岬
(23/06)
雨蛙今年も2匹池の縁
刈り込みのツツジの紅の鮮やかに
窓を明け緑の風のさわやかさ
新ジャガを掘る鍬の声軽やかに
蜜蜂の群れ飛ぶ羽音春の風
(23/05)
籐椅子を庭に並べて柿若葉
蝶も舞う庭のつつじの鮮やかさ
農作業ひと休みする若葉蔭
庭中に紅(あか)のツツジの咲きほこり
そよと吹く木蔭(こかげ)の風の心地良さ
(23/04)
藷植うる畑の準備鍬軽るく
うす緑風にゆらゆら柿若葉
梅の実の丸く揃いて若葉蔭
デンドロの花は可憐に咲き揃い
エンドウの莢(さや)も膨らみ実は丸く
(23/03)
卒園の子供等の手にスイトピー
雨上がり庭のつつじの花開き
雨傘をさしてやりたし若みどり
梅の実も若葉の陰で丸くなり
若緑胸を開きて深呼吸
(23/02)
早春の日向(ひむか)の海の波静か
えんどうの花をみつけて竹を立て
菜の花を見て思い出す千葉の里
白梅の散りても赤い萼(がく)残り
沈丁花香りもとめて蝶の舞い
(23/01)
賀状みて今年も友の無事を知る
初打ちの球の行方に夢はせる
感に耐え白き花びら梅の花
霜柱踏む足音に冬を知る
ストーブの赤き炎に気を休め
(22/12)
干し柿を今年も吊るす二十連
秋ジャガも霜にうたれて甘くなる
風もなく音も消される冬の月
カレンダー来年用に掛け替える
知事選は朝の散歩の通り道
(22/11)
襟をたて一人眺める冬銀河
つわぶきの花鮮やかに野を照らし
子供等と話のはずむ夜長かな
朝起きてエアコンのボタン暖を押す
秋深し孫の手を出し背中かく
(22/10)
棚田では今年も優に稲を刈る
冬野菜苗を揃えて畑作り
柿の実も残り少なく空高し
子供等に送るミカンに文を添え
晩秋の庭の木の葉に陽を透かし
(22/09)
竹竿の先二又にして柿をもぐ
台風の過ぎて鮮やか天の川
虫の音を聞きたくて窓そっと明け
運動会応援席も大人しく
栗のイガそっと開いて実を拾う
(22/08)
盆休みコロナ騒ぎで賑あわず
夏草や住む人もなく茂り濃し
茄子漬の色鮮やかに磯部焼き
紫陽花を短く切って仏花
蝉の声例年になくおとなしく
(22/06)
夏至の日に畑の草を抜く仕事
自転車の鈴チリリンと麦の秋
菜の花やディーゼルカーの窓の外
薬草を刈り込み束ね軒に干す
梅干してひとつつまんで軒に干す
(22/05)
夏至の日に畑の草を抜く仕事
自転車の鈴チリリンと麦の秋
菜の花やディーゼルカーの窓の外
薬草を刈り込み束ね軒に干す
梅干してひとつつまんで軒に干す
(22/05)
風さやか支柱補強の夏野菜
農作業ひと休みする若葉蔭
陽を浴びて五月の色の鮮やかさ
コロナ禍に一喜一憂数を観る
ドクダミは白く十字にツンと咲き
(22/04)
柿若葉日毎に色の濃くなりて
夏野菜苗植え付けも種まきも
雨に濡れ八重の山吹き下を向き
筍の子を掘る山鍬の重くなり
宝くじ大当りの夢四月馬鹿
(22/03)
作業服袖まくりする春日和
早咲きの桜の便り風ゆるむ
菜の花や黄色の波の風さやか
甲子園高校球児の声はずむ
柿若葉ゴボウの種を蒔く時と
(22/02)
白梅の散りて赤い額残り
立春や撮影会の案内あり
白菜を陽に干す妻の笑顔かな
白梅に鳥呼び寄せのミカン挿す
カーリング乙女等の笑顔春を呼ぶ
(22/01)
誰も来ぬ我家の門(かど)にも注連飾り
目白来て椿の花の揺れており
数のこもカマボコも添え年酒かな
白梅の開きて朝日柔らかく
震度4蒲団を被り目を閉じる
(21/12)
コロナ去り妻と二人の年酒かな
ヒヨドリにつつけと残す柿ひとつ
初霜のおりて白菜甘くなり
息白く三ヶ月映けす露天風呂
雑炊はつついた鍋の後始末
(21/11)
初霜にうたれ白菜甘くなり
つわぶきの花鮮やかに里の道
夏草も終わり草刈り楽になり
早咲きの椿の咲きて妻を呼び
年賀状予約に時期だと知らせあり
(21/10)
秋晴れに大根の種蒔く準備
草刈りも夏草ほどの苦労無し
新米が穫れたと友人尋ね来る
柿の実をついばむ小鳥2羽3羽
早生ミカン運動会の香りかな
(21/09)
草原の風そよと吹き茜舞う
14号九州を逸れ安堵する
柿の実も少し色付き秋茜
友人が新米穫れたと尋ね来る
彼岸花田の畦紅く空に映え
(21/08)
茄子漬の色鮮やかな朝餉かな
クマゼミの大合唱に目を覚ます
園児らの声にぎにぎし鰯雲
彼岸花青田の土手の縁(ふち)飾り
クーラーの部屋にこもりて夏知らず
(21/07)
夏の夕日向(ひなた)の香り薄くなり
蚊遣火の煙はゆるく宵の入り
カタツムリ角半分を出しており
朝顔の花の開きて二つ三つ
紫陽花の色に染まりて風静か
(21/06)
柿の実も若葉の陰に二つ三つ
梅雨明けを待ちて草刈り鎌を研ぐ
ブルーベリー摘んで楽しい梅雨晴れ間
夏野菜支柱の数を増やす朝
梅雨晴れ間低空飛行で鳥の飛び
(21/05)
ドクダミは白く十字にツンと咲き
うぐいすの声つたなくてホーケキョと鳴き
楽しみは梅雨の晴れ間の農作業
青梅に塩をまぶして荷重する
豊作の枇杷の実をもぎジャムにする
(21/04)
畦に立つ農夫の姿青嵐
沈丁花風を誘いて匂いそめ
つくし摘み妻と二人の里の道
空蒼し花を求めて鳥の舞う
梅の実もまるまるとなり陽は温し
(21/03)
車座で語る老女の語尾長閑
高齢者百円会費の花見かな
啓蟄や鍬の手入れも抜かりなし
えんどうに竹立てかけて白き花
菜の花の蜜は豊と蜂の群れ
(21/02)
早咲きの花見弁当道の駅
白菜を陽に干す妻の顔緩む
夏野菜植える予定地鍬裁き
ニョッキリとツクシも伸びて風温し
鶯の鳴き声未だ幼くて
(21/01)
成人を迎える孫への初便り
サクサクと踏む音楽し霜柱
侘助の花じゅうたんに鳥の声
蝋梅の香に身を寄する目白かな
山際の明(あか)く染まりて初日の出
(20/12)
懐かしき祭の夜のかき氷
北風に我が家のもみじ散りおさめ
いい風の吹くを待ちわび大根干す
山鳩の葉もなき枝に群れており
朝の月かすかな明かり山眠る
(20/11)
懐かしき祭の夜のかき氷
北風に我が家のもみじ散りおさめ
いい風の吹くを待ちわび大根干す
山鳩の葉もなき枝に群れており
朝の月かすかな明かり山眠る
(20/11)
縁側に布団を干して冬日和
エンドウもソラ豆も蒔き時を待つ
残し柿カラスノ群れて賑やかに
澄み渡る秋空に浮く白き雲
早朝の散歩の靴の露に濡れ
(20/10)
夜なべする母の姿の懐かしく
間引き菜を引いて友への土産とす
風もなし山の上なる鰯雲
名月をカメラに収め小丸かな
御馳走とお頭付きの秋刀魚かな
(20/09)
さわさわとすすきの泳ぐ野道かな
萩の花花の重さに枝を垂れ
蝶を呼ぶ棚田の畦の彼岸花
大根の種三粒づつ並べ蒔く
長雨の続く庭にも萩の花
(20/08)
夏休み今年も刻む背丈かな
波静か高根の花となる秋刀魚
蝉の声暑さのせいか覇気もなし
朝顔の今朝はどの色いくつあり
草刈りを一休みする木陰かな
(20/07)
手を入れて朝採り楽し夏野菜
真夏日が続けど今日も梅雨明けず
山百合に群れるアゲハを追うカメラ
散歩道エノコログサの群れており
梅雨明けを待たず賑わう蝉の声
(20/06)
鱚フライ並べて二人の夕餉かな
草伸びて刈っても刈ってもすぐ伸びる
柿若葉若葉も過ぎて鳥の声
山吹の咲きて表に傘を干す
ブルーベリー赤紫の実を採りて
(20/05)
女子高生紺から白へ衣替え
気が付けばアットいう間の緑風
草刈りの丸歯の音の響きおり
琵琶の実の丸みにさわり味を見る
蜜蜂も仲間になりていちご狩り
(20/04)
春眠やもう後五分の至福かな
子供らの声にぎにぎし花曇り
種蒔きし畑の土の柔らかく
陽を浴びて妻と二人の茶摘みかな
三密は新型コロナのいろはのい
(20/03)
鳥の声色とりどりのつつじかな
啓蟄や耕耘機の音軽やかに
早乙女や御田植え祭の水温む
寒椿小鳥の群れて飛び去りて
土の香や植える準備の夏野菜
(20/02)
木蓮の蕾の綿毛陽に映えて
山茶花や妻と写真の腕比べ
大根を友への土産と抜く朝
つわの花市の花として楚々と咲き
紅と白競い香りて沈丁花
(20/01)
穏やかな令和の年の初日の出
七草を集めて二人粥を炊く
水仙の香に誘われる武家屋敷
この道を今日も散歩のすみれ花
暖冬で凍てることなき郷の道
(19/12)
早々に予防注射で風邪ひかず
初霜の降りて手袋探す朝
残し柿目白の群れて後僅か
誰も来ぬ古き我が家も大掃除
千両と万両の実の鮮やかに
(19/11)
鉄橋を渡る列車や初時雨
芒野を逆光にして視るレンズ
つわぶきの花を求めて蝶の舞い
畑仕事終わりて妻とのむかご飯
子供らの並びて歩む秋桜
(19/10)
木まもりをつつく小鳥の愛らしく
掛け干しの穂先に光る朝の露
静けさや草むらに鳴く虫の声
半袖の腕ひんやりと秋の声
コスモスのサワと動きて風を知る
(19/09)
赤とんぼ泳ぐ棚田の空蒼く
台風の余波で長雨陽も恋し
彼岸花児童生徒の通う道
朝夕は涼しくなったと友に文
空澄みて夕餉の支度うす煙
(19/08)
クマゼミに混じりツクツク鳴き始め
ぼんやりと古刹の灯篭灯を灯し
台風の過ぎて畑を観て廻り
早朝の窓を開ければ虫の声
夜明け前空赤くして今朝の秋
(19/07)
大阪城秀吉も聴きし蝉の声
六甲山霧にかすみて額紫陽花
粋ですね浴衣の腰に挿す団扇
足元は下駄カタカタと日傘かな
梅雨明けて眩し懐かし陽のひかり
(19/06)
虹の端は何処のあるのと孫は聞き
紫陽花の色いろいろと里の道
朝採りのトマトの味のまろやかさ
万緑や妻と二人の汽車の旅
陽の射してキラリと光る茄子の花
(19/05)
茶摘みして皆で楽しむ新茶かな
葉桜の影濃く成りて子等の行く
谷あいのダムを彩る鯉のぼり
洪水の警報も出る豪雨かな
夏野菜畑整いて旬を待つ
(19/04)
鶯や縄張り競う声高し
今日はここ昨日はあそこの花見かな
田植え済み水緩やかに満ち満ちて
春過ぎて夏草伸びる季節かな
清らかな春の小川の音しずか
(19/03)
山桜散りて我が庭雪のごと
草を刈るエンジンの音春うらら
雨上がり木の芽ふっくら山笑う
チューリップ黄よりも赤の先に咲き
春ジャガを植えて芽立ちの雨を待つ
(19/02)
息軒の苔むす庵白き梅
厨房の妻の鼻歌春近し
熱燗に酔いたる己下戸の夢
桜島霞む妻との二人旅
鬼は外己の声のまだ太し
(19/01)
鳥の声椿の花の一つ落ち
母命日水仙の花墓に挿す
初詣神主の御慶恭し
朝露にキラリと光る仏の座
白菜を陽に干し塩し重石する
(18/12)
冬の海鉛色した波しぶき
年の瀬に今日は朝から窓掃除
白菜を四つ切にして盆に干す
千両の赤い実ついばむ小鳥かな
菊を挿し先祖の墓に手を合わす
(18/11)
つわぶきの花鮮やかに野も明かし
カサカサと落ち葉掃く音軽やかに
早生ミカン炬燵もなくて尚甘し
露けしやレンズに移る夢の玉
満月に甘えすり寄る子猫かな
(18/10)
遅蒔きの大根の芽や秋うらら
岬馬群れて草食む天高し
ほっこりと妻と二人の零余子飯
目印の色糸頼り種を採る
秋茜ゴルフボールの後を追い
(18/09)
敬老日妻と並んで自撮りかな
鮮やかに棚田の縁の彼岸花
落ち葉掃き昨日もそして今日もまた
朝方の冷気に思はず足ちじむ
秋刀魚焼く今年の煙やけに濃く
(18/08)
スタンドで野球肴にビール飲む
夏野菜今年も豊作妻も褒め
送り火に来年も待つと手を合わせて
夏草も茂るにまかせ八十路過ぎ
空港に着けば故郷百日紅
(18/07)
梅雨空に記憶にもなき豪雨かな
炎天下雑草(くさ)は負けずに伸び放題
ボランティア復旧阻む猛暑かな
クーラーの働きぶりに感謝の日
暑いとの言葉言い切る極暑かな
(18/06)
城下町飫肥(おび)の街並み夏暖簾
庭を掃く箒の先の薄暑かな
大梅雨に避難促す広報車
浮草の隙間に光るメダカかな
雨上がり紫陽花の色鮮やかに
(18/05)
青田にも蛙の声の遠くなり
初蛍今年も里に客を呼び
不如帰鍬打つ朝の早く明け
万緑やゴルフの朝の峠超え
斑猫の水先案内何処まで
(18/04)
風もなしおぼろおぼろの春の月
夢かとも吉野の山の花千里
夏野菜支柱の数ほど夢多し
蕗の薹春の香りもほろ苦く
よもぎ摘み団子の色の鮮やかさ
(18/03)
ハグをする15の春の恥ずかし気
陽炎を追うて野の道七曲り
久しぶり孫と楽しむ花見かな
例年(いつも)より十日も早い開花かな
サガホノカ妻と二人のいちご狩り
(18/02)
紅梅も白梅も散り雨温し
雄大な野焼きの煙阿蘇の山
甘き香の満ちるハウスのいちご狩り
湯たんぽの温もり残る朝寝かな
花こぼす目白の番チチッと飛び
(18/01)
初詣振る舞い汁粉に暖をとり
極寒に水道管も凍る朝
学校も職場も遠し今朝の雪
凧揚げの親子の奮闘ままならず
蝋梅は何処の庭か鳥も鳴き
(17/12)
木枯らしの吹きて背中の丸くなり
年の瀬の慌ただしさは我が家にも
歳暮にと故郷の味送る妻
冬晴れ間老人二人の大掃除
白菜も霜にうたれて甘くなり
(17/11)
今年また冬至名のみの陽の温さ
二人して四日も続くおでんかな
つわぶきの花鮮やかに虫を呼び
手拭いを広げて包む零余子かな
干し柿を今年も吊るす15連
(17/10)
暗闇を歩めば虫の音はたと止み
柿を剥く手元が怖いと妻は云う
長竿の先に挟んで柿を採る
コスモスの風に揺られて汽車の窓
台風は予報ほどには荒れもせず
(17/09)
同窓会話は尽きず月見酒
夏布団冷気の朝は丸くなり
風吹けばイガを気にして栗拾い
風に揺れゆーらりと舞う秋茜
夏草の勢い何時しか陰りおり
(17/08)
シワシワといつまで続く蝉の声
遠花火15秒もして音の鳴り
省エネに西側の窓竹簾
万緑や空気も青く地も青し
夏草の十日も待たずまた伸びる
(17/07)
浮草を一つ買い足すメダカかな
朝一番今日も元気に蝉の声
十薬の花の茂りて木陰かな
光跡をゆらゆら残し蛍かな
緑陰や作業の合間水補給
(17/06)
紫陽花や街道の縁賑々し
父の日と言われ妻との二人酒
今日も又トマトの熟れて二つ三つ
子供等に自前のトマト送る朝
夏草を茂るにまかす八十路かな
(17/05)
山の端の雲の白さや夏兆す
農作業俺の心は五月晴れ
今年また妻と二人の茶摘みかな
ジャガイモの思いのほかに多く穫れ
枇杷の葉に薬効ありと重宝し
(17/04)
夏草の伸びる速さに追いつけず
この春は妻との出会い五十年
窓を開けつつじの香り通り抜け
肉厚の春椎茸を篭に干し
げんげ田の蜜蜂の群れホバリング
(17/03)
家訪えば香りはひろし沈丁花
春愁や旅立つ孫の荷を眺め
すずしろの花も夕餉の膳にのり
山明し日向(ひむか)の国の山桜
春ジャガや畝の割れ目の芽も育ち
(17/02)
小春日や小さき鳥の声静か
南国の子供に雪の宅配便
あられ降る仏の座にも二つ三つ
今日も掃く風吹く路の落ち椿
豆を撒き一人で拾う福は内
(17/01)
けあらしの波間に光る初日の出
孫からのライン年賀で初笑い
箱膳に向う二人の節料理
若水は蛇口の下の去年今年
書初めや妻の手本の真似もよし
(16/12)
行く年や年中行事窓を拭き
語らいの輪をひろげおり玉子酒
冬至だと妻に言われるゆず湯かな
吐く息の白さも白し冬銀河
霜柱昔ほどには長くなし
(16/11)
カラカラと走る紅葉やプラタナス
初霜を気にして鉢を軒下に
TVの気象予報は霜注意
コスモスの花を眺めて汽車の旅
山茶花の白とピンクの競い咲き
(16/10)
よろよろと足を取られて今年酒
腕相撲孫にも負けて秋の夜
台風の後の桜の狂い咲き
そよと吹く風に身を振る草紅葉
腕を組みバージンロードの照れくささ
(16/09)
母想う零余子ご飯の香りかな
シャッターの音心地よく鰯雲
彼岸花蝶の乱れて飛ぶ夕べ
台風の去りし朝の爽やかさ
芋掘りの園児泥の手気にもせず
(16/09)
母想う零余子ご飯の香りかな
シャッターの音心地よく鰯雲
彼岸花蝶の乱れて飛ぶ夕べ
台風の去りし朝の爽やかさ
芋掘りの園児泥の手気にもせず
(16/08)
秋立つや草刈り鎌を研ぐ準備
ナイターも延長戦の長夜かな
甲子園もオリンピックも終わり秋
あの人の垣は燃ゆるか凌霄花(のうぜんか)
リオ五輪メダルメダルの星月夜
(16/07)
缶ビール賞味期限が気になると
紫陽花の色七変化傘模様
夏草の伸びて捻挫の尚癒えず
出来立ての夏の暑さの身に堪え
雨傘と和服の似合う花菖蒲
(16/06)
明けやすし目覚ましの音まだ聞かず
行く先を誰が決めたか蟻の列
薫風や妻と二人の障子張り
紫陽花の遠くに青く親子馬
老農の耳を癒して若葉風
(16/05)
鍬打ちで汗ばむ額夏兆し
亡き父母を思い出すなり菖蒲の湯
夏草の伸びるを見ては鎌を研ぎ
陋屋の窓を開きて風薫る
つばくろも低空飛行で梅雨近し
(16/04)
島影に小さき舟の海おぼろ
掛け声は部活の子等か花ぐもり
雨上がり滴の光る若葉風
夏野菜早く育てと水を撒く
エンドウの莢膨らみて妻を呼び
(16/03)
陽を浴びて開花宣言気もはやり
畦道も通学路となり朝霞
菜の花と桜の花のコラボかな
そよそよと山櫻も散る朝かな
桜餅土産だという友来たり
(16/02)
人も世もはばからず鳴く猫の恋
岬馬野焼の煙嗅ぐ如く
どこそこに春の香りや万歩計
豊作を願い手にする春の鍬
白梅も散りて今宵の雨温し
(16/01)
椿咲く父母亡き家の広さかな
椋鳥の何とも忙し街並木
子供らはふる里カルタ嬉々として
年賀状一年分の便りあり
手を休め皺に見とれる餅とり粉
(15/12)
年の瀬や何もせぬのに気忙しく
お歳暮にお元気ですかの文を添え
干し柿の十日目試食まだ渋く
カレンダー新旧交代気も新た
煤払い今年も感謝無事に過ぎ
(15/11)
高速で遥か遠くの紅葉狩り
コスモスのゆれて微かな風を撮る
虫食いの跡も鮮やか柿紅葉
カタカタと揺れる車窓の秋桜
鳥たちもつつけぬままに実むらさき
(15/10)
採りたての菜も里芋もみそ汁の具
秋ふかし今年も増えたつんどく書
鍬捌き草叢の陰チチロ鳴く
炊きたてのむかごの香り母の味
ピラミッド孫の笑顔の運動会
(15/09)
月影のゆらゆらと揺れ露天風呂
草叢に蝉の抜け殻朝冷気
ウォーキング背筋伸ばして鰯雲
賑わいの後の静けさ虫の声
今日もまた日課となりし栗拾い
(15/08)
孫たちと語る先祖に門火焚く
十薬の葉と白き花陰に干し
水馬(あめんぼう)波紋ひろがり池静か
斑猫(はんみょう)は我が行く先を知るごとし
台風の進路気にして雨戸繰る
(15/07)
七夕の願いは同じ去年今年
鍬を置き冷たき水と木下闇
エルニーニョ台風の又近づきて
熱中症街の会話の主語となり
うな重に財布も体も軽くなり
(15/06)
アジサイが数万本と色の波
どの夢も続編もなく明け易し
梅雨明けはまだかと今日も空を見る
五月雨や指の痛さに悩まされ
うぐいすや近く遠くで競い合い
(15/05)
梅雨晴れ間草刈る鎌の手際良さ
初孫の名も凛々しくて鯉のぼり
台風が例年(いつも)より早く気をもませ
小さき子五月病だと笑いおり
山つつじ登山禁止も解除され
(15/04)
わが庭の三春の花は既に散り
青葉風我颯爽と胸を張り
老木の今年も見事山桜
シャッターを向ける霞の花吹雪
昨日(きのう)今日また違う緑眩しくて
(15/03)
子も孫も遠くの我が家の雛祭り
気嵐の波間に浮かぶ海鵜かな
遅霜が気になる畑じゃが芋の芽
山の端もほのかに明かし山桜
春草の伸びる早さに気もせわし
(15/02)
寒暖の差激しくも春近し
低気圧太平洋沿いで雪を呼ぶ
紅梅も白梅も散り雨温し
春を呼ぶ畑の草の芽吹きかな
落ち椿番の目白飛び立ちて
(15/01)
健康に感謝と祈念の去年今年
道祖神注連飾りして春の旅
山の端にレンズを向けて初日の出
大根(おおね)抜く今年の農業事始め
大寒の過ぎて朝日のやや温し
(14/12)
列島を丸ごと冷やす寒気団
年の瀬に選挙カーの気ぜわしく
道行けど行けども続くつわの花
冬の月冷たき影の通夜帰り
行く年の無事に感謝し墓参り
(14/11)
野辺の道地蔵の顔は冬浅し
冬枯れの草食む音や岬馬
新米を食して腹は十二分
潮風を受けて鮮やかツワの花
人想う古き日記や柿紅葉
(14/10)
鍬打ちも一休みして鰯雲
(疲れを吹き飛ばす爽やかな眺めです)
台風の進路確かめ雨戸繰る
(今年は台風が多かったですね)
コスモスの揺らぎて風のあるを知る
(風がないと思っていたのに、、、)
窓開けしとたんに止まる虫の声
(ソット開けたつもりなのに)
健やかにジョギングシューズも露しとど
(早朝の運動公園、気持ちの良いものです)
(14/09)
今日もまた日課となりし栗ひろい
老い二人音はただただ虫の声
敬老会やや気の重い招待状
爽やかな空とコラボの彼岸花
秋あかね夕日を浴びてホバリング
(14/08)
飛び入りて手足揃わぬ盆踊り
ハンミョウが道はこちらと先に行く
夏休み怠けた代償草の丈
農作業一区切り付き法師蝉
星空を孫と眺める夏休み
(14/07)
風鈴の短冊古し音は涼し
(去年から吊るしっ放し、、ゴメンナサイ)
孫帰省ジジババの顔シャキットし
(まだまだ元気だぞ!)
梅雨明けて熱中症に気を配り
遠花火光の後の音微か
葉桜の陰濃くなりて蛍舞い
(14/06)
短夜の夢の続きはまた明日
梅雨晴れ間トマトの色のみずみずし
七変化野里の道も生き返り
梅雨明けを楽しみにして鎌を研ぐ
大雨に被害気になる梅雨末期
(14/05)
妻笑顔友の持ち来し初鰹
農耕の合間の憩い若葉風
山坂を超えて一望麦の秋
脇芽摘むトマトの茎のまた伸びて
草茂る高校球児の声高し
(14/04)
柿若葉日ごとに濃くて春惜しむ
神棚に八重の山吹明(あか)くなり
鶯やケキョケキョケキョと名調子
親馬の足元を行く仔馬かな
港町干物の網と猫の恋
(14/03)
朝霞墨絵の如し山薄く
うぐいすの声幼くも風光る
春の風洗濯物に見る家族
(軒先の赤い小さな洋服、可愛い女の子がいるんだろうな)
紅き葉は花より先に山桜
水を引き田を鋤く後に鷺の群
(14/02)
県美展選外のはがき春遠し
(例年応募の県美展、今年は入選を逸す。難しいもの
だ。)
農機具をこまめに手入れ春近し
(もうすぐ忙しくなる。)
甘き香を仏間に広げ沈丁花
(部屋全体に匂いが広がる。)
新人は春のキャンプに夢を乗せ
(キャンプを覗いてみると新人の動きは初々しい。)
花辛夷番の目白の散歩道。
(ほぼ同じような時間に飛んでくる。食事の時間なのかも
しれない。)
(14/01)
冬ゴルフ凍結注意の路を往く
爆睡や何も残さず初寝覚め
初場所の横綱の夢砕け散る
鴨の群飛び立つ河原冬ざるる
風もなし椿の花の一つ落ち
(13/12)
新しき暦も届き年の暮れ
行く年や今年の文字の輪を思う
軒雀羽膨らませ日向ぼこ
葉を落とし風通し良く冬来る
カメラ手に放射冷却海の霧
(13/11)
大根引き洗って乾す手凍えおり
初霜に園児の姿見え隠れ
ひよどりも目白もついばむ柿の実を
ストーブを焚いて朝刊開きおり
おはようと並ぶ子供等息白く
(13/10)
温室の作業に菊の香漂えり
逆光に透かして揺れる花薄 (秋ですねー、、)
掛け干の棚田の縁の彼岸花
神輿担ぐ揃いのハッピ男意気
台風の進路気になる旧家かな (雨漏りが気になって、、)
(13/09)
来年を目指す球児の声残暑
(来年こそ甲子園だあ、、、)
青紫蘇の実をしごく夜の静かなり
(紫蘇の実の塩漬けを作る)
敬老の会七度目の喜寿の宵
(地域の敬老会に招待されて)
道の駅農家の顔見ゆ彼岸花
(農産物に付いている生産者の名前、元気な顔がみえる)
コスモスの微かに動き風を知る
(無風だと思ったのに、、、)
(13/08)
機影なし空晴れ渡り敗戦日
(久し振りに穏やかな日だった)
クマゼミの声けたたまし目も開けず
(目を開けると夏のギラギラが飛び込んできそう)
ソーメンを流す大竹孫と切り
(孫のリクエストで先ずは竹きりから)
向日葵の丈も伸びずに日照りかな
(今年の極暑、向日葵の生長もストップ)
洗い髪今年の孫の女めく
(久し振りに会う孫が大人びて見える)
(13/07)
山開き世界遺産に列をなし
(この歳では登山は無理、下からジックリ眺めたい)
いつの間に古城の杜の蝉時雨
(今年の夏の暑さは異常)
空蝉は長き旅路の夢の跡
(土の中に7年、どんな夢を見ていたのか)
草丈の茂るに任せ喜寿の夏
(加齢とともに夏の作業が身に応える)
簾にも打ち水をして涼を呼ぶ
(ナントカ涼しくならないものか)
(13/06)
パタパタと布団を叩く梅雨晴間
夏野菜菜園の色華やかに
軽やかに夏うぐいすの声響き
南端の佐多の岬の夏を行く
母の日も父の日もあり子等遠く
(13/05)
夏めくや草丈長し鎌を研ぐ
ペダル踏み額の汗に春惜しむ
あざみ咲き球児の声の弾む朝
(新入生の朝練の声が清清しい)
初孫に思いは強し鯉のぼり
(待望の初孫、十数匹の鯉のぼりが青空を泳ぐ)
梅雨入りも間近だよと布団干し
(13/04)
杖をつき友訪ね来て柿若葉
(友人の体力回復を祈る)
一叢の八重の山吹陽に映えて
カーナビで新緑の森目指す朝
(方向音痴もカーナビで安心)
豊作を想わせるほどの木の芽吹き
天気図を見て夏野菜の苗を植え
(今夜は一雨ありそうだ、、)
(13/03)
陽を浴びた土筆の味のほろ苦さ
(年に一度は食したい味)
瀬戸内の賑わう港桜鯛
誰も来ず雛を飾りて妻と観る
ゆーたりとレンズ覗きて春薫る
桜花夜半の嵐の夢の跡
(明日ありと 思う心の仇桜、、、)
(13/02)
畦焼きの親子の背中かすみおり
弓を引く乙女の姿春浅し
春耕を邪魔するほどのいぬふぐり
例年になく早咲きの山桜
山鳩の飛び立ち石蕗の綿毛舞い
(13/01)
三寒をこらえ堪えて四温待つ
日溜まりは自然の恵み地の宝
若人はセンター試験春隣
(良い知らせを聞きたい)
着膨れて肩も回らず冬ゴルフ
やぐら組み西風に向け大根干す
(12/12)
せせらぎの音も静かに草紅葉
待望の震災復興選挙後に
筆をとる子に陽は当たり山眠る
来客に日向(ひなた)の香布団干す
一人居る枯野の風は音もなし
(12/11)
墓洗う父母の名前の白く映え
紅き身の鮭も浮かびて鍋笑う
秋耕のときに見上げる空遥か
日馬富士奮闘するも秋深し
菊白き花挿す人の気も和み
(12/10)
夏の香を丸めて仕舞うすだれかな
柿をもぐ農婦の背中丸くなり
秋蒔きの種揃えるもはかどらず
草を食む野生の馬に天高し
すじ雲の湧きいずる丘見晴るかす
(12/09)
浮く如くゆーたりと舞うあきあかね (トンボの仲間でホバリングが一番上手)
三脚も役に立たずの野分かな (三脚も強い風にあおられてピントが合わない)
法師蝉声聞きおれば灯のともり (秋の日はつるべ落とし)
櫻葉を掃いて又掃く朝かな (落ち葉の掃除が毎朝の仕事)
哲学の煙か今宵の秋刀魚焼き (炭火で焼く秋刀魚の煙が目にしみる)
(12/08)
青葉陰鳴き尽すのか蝉時雨 (汗が滝のように流れる)
陋屋(ろうおく)も子等賑々し夏休み (何時もは老夫婦二人だけの我が家も、、、)
新盆の家を巡りて笠踊り (地方の風習、残したいものだ)
大輪の花火賑わう港町 (町中の人で賑わう港祭り)
空港に孫を送りて夏終わる (ホットするような寂しいような、、)
(12/07)
熱中症気にしながらも草を刈る
子供らの賑わう声の海開き
梅雨明けてアッと言う間の蝉時雨
賑やかな音と光の大花火
妻と観る利尻の初夏の赤き富士
(12/06)
雨止みて水かさの増す半夏生
文才もなく戯れに不如帰
波風の激しさ増して梅雨狂い
夏草も伸びて錆鎌砥ぐ朝
紫陽花の七色の露虹の露
(12/05)
妻と行く旅の準備のメモを取り (準備万端、、、)
あの種もこの種も蒔き五月晴れ (豊作を想像する瞬間)
雨静かあっという間の柿若葉 (自然の変化の早いこと、、)
柔らかく野蒜出そろい母偲ぶ (年に一度は季節の山菜を食したい)
蒲公英の綿毛飛ばして子等走る
(風に乗って飛んでゆく綿毛、来年はどかかで又新しい命が、)
(12/04)
波静か春の光の磯模様
(朝早くゴルフに出掛けたときの海の模様。一日の穏やかなスコアを願う。)
土の香を楽しみ植え込む夏野菜
(冬の間に土作りした畑に夏野菜の苗を植え込むときは夢がいっぱい。)
黄畑に乱れ飛び交う白き蝶
(菜の花畑にモンシロチョウが乱舞する。農業の手を休め気持ちが安らぐ。)
重たげに背中に光るランドセル
(一年坊主。体より少し大きめのランドセルが微笑ましい。)
そよと吹く風静かなり柿若葉
(新緑の間を吹き抜ける風には薄緑の色が付いている様な気がする。)
(12/03)
子供らの傘も重たき菜種梅雨
(今年の菜種梅雨は長かった)
雛祭り祖母曾祖母の世をつなぎ
(時代は変わっても女の子の気持ちは変わら
ない)
若人の顔晴れやかに卒業歌
(明るく元気が一番)
遠目にも色の変わりて草萌える
(いよいよ春本番)
木蓮と辛夷と桜の三春かな
(我が家の春、桃源郷の気分)
(12/02)
豆まきや二人で鬼と福の役
湯たんぽが迎えてくれる寒夜かな
春立つも日本列島氷点下
日記帳三日も空きて春うらら
鶯の幼き声に雨静か
(12/01)
カラフルな放水もあり出初式
寒星や襟を正して手を合わせ
七草に三草も足りず熱き粥
義兄偲び日の出に向かい黙祷す
大寒の朝(あした)の散歩背を丸め
(11/12)
何もせず気だけせわしき師走かな
対岸の陽光(ひかり)眩しき時雨かな
南天の実を啄ばみて鳥の行く
水仙は父母の好みと手向けけり
白鷺の飛びて川霧なお白し
(11/11)
柿干して昼間の軒の赤くなり
来る春を楽しみに待つ木の葉髪
新蕎麦や珍しき友の長電話
雨寒くほのかに香るむかご飯
朝もやに川の流れのゆるく見湯
(11/10)
御崎馬群れて草食む天高し
優美なり枝もたわわに実紫
柿熟るる山鳥の声二羽三羽
夕映えに負けじと紅し烏瓜
ファインダー覗きもせずに鰯雲
(11/09)
招かれて敬老の日のおしゃれかな
行く夏や簾の隅の蝉一つ
騎馬戦の大将の汗鰯雲
亡き父に好物の糸瓜供える日
子供らの赤白帽子曼珠沙華
(11/07)
耳元でささやくほどの蚊の羽音
雲海のたなびく朝父偲ぶ
夕焼けに球児の声のまだ響き
台風の過ぎし青田の農夫かな
猛暑日は70過ぎだと鍬を置く
(11/06)
雨重く行く当てもなし青田かな
香水や胸に秘めたるほの香かな
雨しきり青葉日毎に濃くなりて
紫陽花や穏やかな人住むらしく
朝採りのトマトの色に和まされ
(11/05)
落葉に併せ煌めく楠若葉
万緑や赤白帽の子等走る
梅雨寒の城址訪ねて砂利の音
弟を迎え懐かし茶摘みかな
青梅も枇杷も李も果実酒に
(11/04)
豊作を祈るお田植え神子の舞
自粛して寂しくもあり花見かな
筍は掘る苦しさと食う旨さ
苗植えも種蒔きも済み柿若葉
鶯は縄張りを取り声競う
(11/03)
灯油なき避難所の夜のみぞれかな
東北の春未だ浅く大津波
放射能浴びて廃棄の春野菜
避難所で卒業証書受ける子等
飲み水に混ざるヨウ素の春遠し
(11/02)
初雪に孫の手赤く犬走り
昨日今日草焼く日和風を読む
咳払い一つ二つの生姜酒
白菜を漬け込む妻の手塩かな
間もなくね声明くして冬木の芽
(11/01)
枯野行く七十路の妻細く見え
メタボには散歩一番日脚のぶ
葉は偲び写真めくりて白椿
沐浴の番の目白陽は温し
大根干し妻は漬け時曲げて見る
(10/12)
口てい疫師走の街は賑わいて
あの暑さその反動かこの寒さ
餅つきの声につられて子等集う
ヒヨドリのけたたましさに時期(とき)を知る
冬空に皆既月食夢残り
(10/11)
七十路は秋の夜長も早寝かな
冬野菜妻と二人の農繁期
薄原微かな風を目に覚え
紅葉葉に逆陽の差すを透かし観る
白鷺の見え隠れして草紅葉
(10/10)
赤白と競いて土手の彼岸花
虫喰いの本を出し灯火親しめり
石橋を巡りて重き稲穂かな
何処より漂うこの香金木犀
葉が二枚大根の芽の出揃いて
(10/09)
ヒーローも田の畦に立ち鳥威し
朝方の冷気に体丸くなり
孫帰京まとめてつける日記かな
台風も進路を迷うこの暑さ
新米が出来たと持ち来る友の顔
(10/08)
竹を割りソーメン流し孫の顔
飛び入りの盆踊りの輪振り合わず
孫帰省蛙鳴蝉噪年行事
プールの子海の泳ぎに慣れもせず
残暑とはかくも厳しき熱射かな
(10/07)
梅雨明けの猛暑七十路身に応え
収穫は流した汗の対価なり
七夕の星に願いは月並みに
物干しの白さまぶしき梅雨晴れ間
何事もなく今年又蝉の声
(10/06)
紫陽花の色鮮やかに七変化
朝採りの色目にしみる夏野菜
咲き終えしツツジの花の後始末
筍は思わぬ所に顔を出し
パソコンのキーを叩きて梅雨深し
(10/05)
御崎馬雲流れゆき春惜む
種牛も死なざるを得ず朝霞
柿の実の青葉の陰に見え隠れ
青梅を漬け込む塩に母の味
ベニシジミ去年の草葉に止まりおり
(10/04)
筍を掘る山鍬に歳をみる
夏野菜植え込む土の温さかな
宵の雨菜花の散るを気にしおり
シャッターを切る度に見る春の色
柿若葉今年も夢の一つ増え
(10/03)
遅霜にやられた朝畑を見る
温き雨三日も続き山笑う
鶯は朝のしじまを破りおり
トラクター田起こす後の鷺の群
草もちの味は秘伝と嫁姑
(10/02)
山鳥の里に降り来て梅二月
新人の春のキャンプに老いの夢
鳥去りてされど明るき椿路
廃屋に想い廻らす梅日和
まどろみを邪魔せぬほどの春の雷
(10/01)
風もなし鍬打つ汗に淑気かな
青空に虹の際立つ出初式
粉雪に南国の子等嬉々として
三が日一年分の便りあり
風寒く五時のサイレン陰長し
(09/12)
海霧の揺らぐ朝日に手を合わせ
寒に向け妻と二人で大根引く
七十路の歳晩の街走りおり
鳥群れて目白一羽の小陽だまり
陽に透かし宝石の如樹の氷
(09/11)
ひよどりの蒼き空より渡り来る
一叢の里の川原の草紅葉
朝もやを透かして白し川の風
藁こづみ光と影の棚田かな
誰も来ぬ盆に飾りし柿紅葉
(09/09)
ヒグラシの声に急かされ鍬捌き
お隣も今宵のおかず秋刀魚かな
若人の声に誘われ体育祭
連休に近くの里の案山子かな
岬馬草食み残す彼岸花
(09/08)
夏休み今年も刻む背丈かな
朝顔の頼りの釣瓶今はなく
甲子園球児顔のあどけなし
蝉の声例年になく少なくて
夏休み孫に釣られる魚おり
(09/07)
夏草は楽しき旅の夢の跡
空梅雨も終わりて恋し時の雨
猫二匹知らぬ存ぜぬ昼寝かな
北欧の白亜の城の雷雨かな
シャッターの音千回の日焼けかな
(09/06)
紫陽花の色七変化傘模様
お田植えの神事の乙女頬を染め
雨しずか未だ真っ直ぐ稲穂かな
朝獲れのトマトをかじり頬ゆるむ
しとやかな和服の似合う花菖蒲
(09/05)
二人して今年も茶摘笑顔あり
たおやかに和服の裾の若葉風
真夏日と告げるTVまだ五月
春駒の駆け回りおり都井岬
紫陽花の蒼き莟に雨を待つ
(09/04)
ドライブの車の数ほど山笑う
シャツ1枚脱いで鍬打ち柿若葉
花吹雪夜半の嵐に春惜しむ
ファインダー覗く日毎に緑濃し
里芋の植え付け去年より多くなり
(09/03)
春雷にパソコンの電源を抜く
花冷えに備えて冬着出したまま
春の音をマクロレンズの中に聞き
例年になく早咲きの桜かな
すずしろの花紫に風もなし
(09/02)
立春を過ぎて農園事始め
ヒヨドリの目白を追いて春浅し
草の芽の息吹たしかに土香り
いぬふぐり蒼き星空夜もなし
在りし日を偲びて手向く白椿
(09/01)
大寒を過ぎてまどろむ日向ぼこ
青竹の酒を温めるどんど焼き
健康と幸せ祈る初日の出
冬眠の虫驚かす野焼きかな
蝋梅の香に誘われて顔を上げ
(08/12)
陽に干して日向くささの布団かな
寒暖の差も落ち着かず冬浅し
足湯して友の笑顔と草紅葉
鉄風呂に柚子を浮かして冬至かな
電飾の空に空に輝くオリオン座
(08/11)
銀杏葉を撒いてはしゃぐ子陽に映えて
雲もなく笛の音冴える秋祭り
ジョギングの靴もしとどに露の道
ファインダー覗きつかれて紅葉狩り
傘もなく墓を詣でる菊日和
(08/10)
妻と来て歩幅の違い里の秋
孫からのメール楽しみ大根蒔き
濁り酒あるという宿訪ね行き
天高く若きラガーの声弾み
あきあかね飛んでは止まる同じ竿
(08/09)
里の田に並ぶ案山子は世を映し
リバウンド秋の味覚につい負けし
台風の予報に合わせ雨戸繰る
遠き友久しく訪ね彼岸花
コスモスは微かな風に撮れもせず
(08/08)
目隠しの子等嬉々として西瓜割り
現代(いま)の子は線香花火に飽き足りず
蝉取りの篭持ち係りジジの役
孫去りて部屋広々と晩夏かな
朝顔の花も少なし冷気あり
(08/07)
身にこたえ夏の暑さのはしりかな
ふーわりと乗れそうに思う夏の雲
難病の友を見舞いて夏木立
部屋に居て首うなだれて大暑かな
網の目に透けてトンボの羽根の見え
(08/06)
珍しく坊主の土産雨蛙
カタカタと線路は軋む青田かな
シャッターの音重なりて花菖蒲
花嫁の父佇みおり額紫陽花
吊橋を映す川面にさみだるる
(08/05)
席を譲られる歳になり春の旅
張り紙に粽有ります里の茶屋
赤白の体操帽に薫る風
青臭きトマトの脇芽欠く朝
ナスの花親父の笑顔懐かしき
(08/03)
ここそこの野里は明かし山桜
しちりんを出して待つ旧友(とも)初鰹
早々と羽未だ寒し白き蝶
菜の花を飾りて明かし宵の膳
菜の花の黄を染め抜きて棚田かな
(08/02)
今宵また鉢を倒して猫の恋
ふる里は遠くて近し温め酒
北風の肌刺す朝に大根干す
鳥鳴きて椿の花の一つ落ち
春浅し地上の星の咲き始め
(08/01)
十五年母を偲ぶ日白椿
新春の思い新たに陽を撮つす
沢庵を漬け込む石の重きかな
うぐいすの鳴くばかり待つ梅古木
久々に妻と出掛ける冬帽子
(07/12)
七色の光の波の師走かな
定番の卵雑炊鍋の後
木漏れ日に葉を敷き詰めて山眠る
気もせいて投句締め切りつわの花
露天風呂凍てつく月を揺れ映し
(07/11)
大根の種蒔き過ぎて間引く手間
コスモスに優しき風のソヨと吹き
干し柿の皮剥く長さ競う妻
去年今年霜月の霜見もやらず
朝採りの柿デザートにコンチェルト
(07/10)
秋茄子を喜ぶ妻も歳をとり
薄野を迷うが如く風の抜け
柿もぎの青竹長く茜空
落日を透かして明かし芒かな
書を習う公民館の後の月
(07/09)
新涼やパジャマの袖も長くなり
七十路の祝いの帰路の法師蝉
陽を浴びて散歩の道の露しとど
土打ちの鍬の手休め秋あかね
知る人もなき運動会の席をとり
(07/08)
波状岩望みて白き夾竹桃
精霊を流して明かし宵の川
孫の丈刻む柱に蝉の声
あっ熊だ今度はうさぎだ雲の峰
誘蛾灯孫集まれど虫は無し
(07/07)
台風の予報を聞きて雨戸繰る
降りますね降り過ぎですよ半夏生
夏休み孫待つ祖父母あと幾つ
孫たちの声嬉々として蚊帳を吊り
ニガウリのイボイボ青くほろ苦し
(07/06)
あじさいの花尚蒼し今朝の雨
草伸びて大汗をかく梅雨晴れ間
雷を遠くに聞きて鎌を置く
箱根路の友今いずこ額の花
茄子漬の色鮮やかに織部焼
(07/05)
小筆持ちカボチャの受粉今日三つ
深呼吸二度三度する五月晴れ
蔓薔薇を見事ですねと愛でる客
薊咲き蝶の宿るを待つカメラ
白川の屋根に眠たき春の雨
(07/04)
葉脈を透かして明し柿若葉
昨日とは又違う緑雨上がり
脇芽欠くトマトの丈の又伸びて
微かなりミカンの花の何処にか
万歩計はるか遠くの土筆つむ
(07/03)
陽春の光と影の花を撮る
七十路を祝う桜も未だ五分
木蓮の花啄ばみてヒヨの去り
田起こしの支度進みて水ぬるむ
花見待つという友の声張りのあり
(07/02)
早春の園児の列に陽は温し
おばばあの集いて語る冬木の芽
白梅も散ってしまいし冬嵐
日向ぼこ血圧計の軽く見ゆ
春浅くサーファーの背の波荒し
(07/01)
陽を浴びて紅白の梅揃い咲き
水仙の香も連れて行く墓参かな
大根を漬け込む樽の塩加減
鏡餅黴の香残す汁粉かな
椿落ち花絨毯の木下陰
(06/12)
月めくりラスト一枚気のせわし
三年の早さも早し日記果つ
咳少し今この時期に卵酒
日向ぼこ本をめくる手ぱたと止み
目の覚める空紺碧に大根干す
(06/11)
悠々と古希を迎えてムカゴ飯
柿紅葉盆に並べておもてなし
山茶花の紅(あか)に誘われ回り道
立冬と言えど日差しのまだぬるし
ハラハラと銀杏の舞いて日の短か
(06/10)
コスモスの茎しなやかに花の揺れ
朝夕の冷気を友に書き送り
古女房愛のしるしの温め酒
ヘチマ水瓶に集めし農婦かな
スクラムの声揃いおり鰯雲
(06/09)
豆台風去りて長月又二人
草の丈伸びに伸びたり秋茜
来年を妻と語る夜ちちろ虫
草叢の虫の声止み人の行く
叔母逝くも庭のあそこの実紫
(06/08)
水虫を眺めてみたし金魚鉢
日焼けした農夫の腕の稲重し
蝉取りが上手くなったと孫の笑み
秋立ちて飛行機雲の峯に入り
夕焼けを映す小石に打ち水を
(06/07)
コーヒーの香り微かに梅雨晴れ間
今日もまた体に良いと冷奴
半夏生田見回りの老農夫
力士名を染め抜き涼し藍浴衣
デパートの涼を求めに妻と吾
(06/06)
梅の実の熟して雨の多くなり
秋想い菊の挿し穂の日和かな
物干しに止まりてトンボ知らぬ顔
初採りの赤きトマトに笑みの漏れ
紫陽花の色いろいろに静寂に
(06/05)
青梅にそっと触れてみる雨静か
茶を摘みてホットプレートでの製茶かな
菜園の追肥作業に夏の風
ビロードの肌かと思う薔薇赤し
初孫の生まれたらしき鯉のぼり
(06/04)
朝霞墨絵の如し野道かな
楠若葉大樹に風のそよと吹き
風船の紐はなれ飛び緑濃し
畑打ちて豊作の夢膨らませ
鍬さばき腰伸ばし見る柿若葉
(06/03)
山薄く墨絵の如し春霞
陽を浴びて花見の酒の倍に利き
セーターを薄手に替えて彼岸かな
田を返し水ひたひたと山逆さ
孫の手に頬ずりをする初節句
(06/02)
草の芽の伸びて野辺にも春立つや
名も知らぬ鳥集い来る椿蜜
草焼かれ虫いずこにぞ難を避く
三寒と四温の挟間いぬふぐり
認知症の苦縄解かれて椿花落つ
(06/01)
大鍋のしるこ賑わう注連飾り
サクサクと踏む音深し霜柱
老いの道梅開けども季節(とき)知らず
凍て土も春待ち草の芽をもたげ
忘られし里の椿の紅く映ゆ
(05/12)
一人逝きふたり逝く仲間喪中の書
風乾き大根を干す手も震え
寒に耐えホーレン草の甘み増し
ファインダー覗き見つける冬の風
何もせず何も変わらず12月
(05/11)
遅蒔きの大根間引き夜の菜
大銀杏ひかりて遥夕焼けす
義経の菊人形も時の人
雨傘を逆さに受けてむかご採り
おはようと吐く息白く孫のおり
(05/10)
朝の露藍より蒼し蛍草
名月は曇りて出ずも空明かし
芋ほりの妻と二人に大き空
落ち葉掃く掃いた後には又落ち葉
部活動声響かせていわし雲
(05/9)
停電にやる事もなし長夜かな
はたと聞くつくつくぼうし今盛り
柿の実を一つ残さず嵐(かぜ)の行き
野里路の縁(ふち)鮮やかに彼岸花
いわし雲ながれて峰に夕焼けす
(05/8)
さわさわと夏草揺らし雲の行く
一昨日(おととい)も昨日(きのう)も今日も蝉時雨
芋の葉を食して思ふあの日かな
孫去りて虫取り網も軒に立つ
肌掛けをそっと引き寄せ今朝の秋
(05/7)
つばくろの低く飛び交い宵の木戸
新梅をざるに広げて土用干し
梅雨明けて子等の歓声水しぶき
名古屋場所国技何処に外国勢
夏帰省姑(はは)と嫁との仲のよさ
(05/6)
から梅雨に学童たちは傘もなし
蛍火を探せど見えず去年今年
朝採りの初夏の香りに笑みのもれ
梅雨空に青田の稲の穂も揃い
雨をよびあじさい花の又青し
(05/5)
嬉々とした声響きおり衣替え
朝に咲き明日を知らずニワゼキショウ
柿若葉透かした空の蒼さかな
朝露も慶良間つつじの朱に染まり
風に揺れ泳ぐが如し樟若葉
(05/4)
散る花を集めて描く淵模様
静かなりミラーレイクの山笑ふ
雑草という草はなし春の野辺
戦没者合祀の淵に花の舞う
ウグイスの声凛として目覚めかな
(05/3)
春駒の歩みもどかし都井岬
拍手を打って今年も籾を蒔き
不安げに息子の門出送る母
西日差し百花繋がる花馬酔木
堰を開け代掻く田には鷺の寄
(05/2)
春立ちて虫をいざなう高菜花
今日の雨あしたの先の春を呼ぶ
鍋続き昨日も今日も又豆腐
風を読み畦焼く農夫襟を立て
鳥たちて椿の花の一つ落ち
(05/1)
小雀の羽根膨れおり霜柱
はこべらとすずなすずしろ粥に入れ
満天の星も凍てつく露天風呂
ワクワクと運を試しの福袋
大寒の月冴え冴えと蒼蒼と
(04/12)
被災地の重たき空に雪の舞う
真っ直ぐに水仙の咲き五つ六つ
歳末の商店街に酒の市
誰も来ぬクリスマスイブ星ひかり
エンドウに支柱立ておる農夫かな
(04/11)
今感謝先祖の墓に菊を挿す
朝霧の川面にうすく草紅葉
抜ける蒼冷気の軽くアドバルーン
鍋の具は旬の野菜のてんこ盛り
山あいに透かして映えるいろはかな
(04/10)
夕焼けと競いて赤し里の柿
コスモスの揺れて微かな風を観る
稲刈りも捗るほどの蒼き空
大根の発芽に露のこぼれおり
咲き乱れ褒められもせず泡立ち草
(04/09)
里芋の花めずらしく月まろし
台風の過ぎて青空高くなり
実り田に通潤橋の水豊か
霧深し阿蘇の棚田の稲穂ゆれ
秋雨に由布岳けむり露天風呂
(04/08)
くま蝉や日の出を告げる大合唱
夏草の勢いに負ける我が菜園
桜葉の散り始めるや秋立つ日
精霊に迎え火を焚き墓は留守
カブトムシ持ちし孫の手震えおり
(04/07)
青葉陰暑さ凌ぎて蝉時雨
蚊遣火を焚いて浴衣の裾も揺れ
ハンミョウの模様鮮やか道を問う
素麺の薬味にみょうが加わりて
鮮やかに熟れしトマトの青臭さ
(04/06)
百本の金糸のおしべ花未央
紫蘇を揉み手を赤く染め梅作り
夏野菜夫婦の絆覚えたり
白鷺の舞いて青田に穂の近し
台風の予報厳しく雨戸繰る
(04/05)
柿若葉マイナスイオンと露天風呂
そよそよと蝶の舞うかやゆきのした
十薬の白き十字に初夏の雨
振り向けば青田に鷺の二羽三羽
夕焼けと白き波風つばな花
(04/04)
草の芽も木の芽も伸びて春爛漫
記念日に妻と手作り蓬餅
こでまりは品品として丸く咲き
若駒の草食みており春の昼
ありんこの行列何処へ春うらら
(04/03)
啓蟄に虫も驚く寒戻り
山桜ひむかの国の海蒼し
開閉の往ったり来たり春の窓
山の端もかすかに明く春霞
錦絵を観るごとくなり山桜
(04/02)
水神のはり紙白く初神楽
七草に四温の雨の音しずか
ここあそこ野里に白き梅模様
重きほど咲き乱れおり梅の花
足もとに小さく蒼き犬ふぐり
(04/01)
年毎に賀状の数の減っていく
等圧線縦縞に混み冬嵐
七草に今年の無事を祈る妻
大寒の露天の風呂に星近し
かじかんだ指もどかしく初日撮る
(03/12)
雲海に日向(ひむか)の国の夢師走
とらふぐの鰭威張りおり酒二合
北風の吹きて襟立つ星降る夜
境内で寒きに耐えて注連作り
蝋梅の斜陽に淡く冬至かな
(03/11)
七五三玉砂利を踏み薄化粧
日の短か炊き上がりたるむかご飯
山茶花の花絨毯と鰯雲
秋菊の黄に染まりおり地蔵道
南極の白夜の夢か皆既の輪
(03/10)
柿熟れて丹波の雨のつづら折
飽食に鳥もつつかず烏うり
カラカラと日暮れの庭の秋を掃く
巫(かんなぎ)の口紅ひかる村まつり
夕暮れを熟しに透かし石地蔵
(03/9)
夕焼けに染まりて群れる秋あかね
七輪の秋刀魚煙て友来る
雨止みて里の棚田の彼岸花
里芋の葉を転びおる朝の露
彼岸過ぎ毛布一枚足す朝
(03/8)
夏休み久しぶりねと孫に会い
蝉時雨おさまりており秋立や
夏嵐ビューヒューヒューバラバシャン
精霊を迎え仏間の賑わいて
クマ蝉の喧騒もなし萩の咲く
(03/7)
夏休みラジオ体操一、二、三
クマ蝉も慌て羽化する大暑かな
たゆたうと風のおどるや稲穂道
新梅の紅鮮やかな土用干し
子供らの夢叶えたき笹飾り
(03/6)
新ジャガの収穫50K有機農
朝に咲き沙羅の香りの宵に消え
蹲(つくばい)の吾唯足知に禅の坊
ファインダー覗きて古都の夏椿
俳せんも雨に濡れおり虚子館
(03/5)
タンポポの綿毛まぶしきランドセル
あの花もこの花も咲き若葉風
脇芽かきその香なつかしトマトかな
照葉樹ブロッコリーに似るその新芽
ニギニギと愛想ふりまき鯉のぼり
(03/4)
木の芽和えどの酒飲もおぞ下戸の吾
筍を掘る手休めて涼を呼び
山吹の黄金に勝る黄金なし
白球を打てば新緑(みどり)に吸い込まれ
蜜蜂の羽音凛々ミカン花
(03/3)
啓蟄に土の香もよし鍬捌き
薄紅の葉に交じりおり山桜
八十路すぎ記憶もどかし老いの春
遅霜に首すくめおり犬ふぐり
菜の花の黄の波寄せて風温し
(03/2)
陽を浴びて土手のつくしの背くらべ
天空に倍の星在り凍てつく夜
老い二人ショートコースに春霞
ひよどりの群れて飛び行き落ち椿
手をつなぐ春の園児の散歩道
(03/1)
除夜の鐘ひびき古札の燃えつづけ
賀状きて年に一度の友を読む
青首を抜いて洗って寒に干す
寒に耐え百花繚乱梅古木
初詣百円玉に祈り込め
(02/12)
直会に頬染めし宵獅子の舞う
豊年を祝うか畦の親子獅子
獅子舞いていにしえびとの夢や今
寒空の月を落として露天風呂
孫に手を引かれて遥か雁の竿
(02/11)
夕暮れを透かして紅きいろはかな
残し柿ひよどりの来て三つ二つ
白鷺の羽を休めて川の霧
朝焼けの空紅に金色(こんじき)に
腰折れも上手い上手いと老妻(つま)は誉め
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