剣矢句集
(22/05)
若葉光る柿の新芽のやわらかさ
いちょうの木天を指したる枯枝が
一夜で新芽になりにけり
車止め道の駅まで一走り
温そうな新緑濡れていこ
新緑のトンネル続く春の水
(22/04)
4月馬鹿5月6月どうなるか
真夏日や椿桜も四月馬鹿
真夏日や桜満開まだ四月
四月馬鹿異常気温に驚かず
〆切日あって作れるチューリップ
(22/03)
ウクライナ春が戦争連れて来た
光る葉に隠れるように咲く椿
こんなにも咲いていたのか落ち椿
帰り道目をそむけたよべちゃ椿
菜の花を背に梅二万本綾部山
(22/02)
終い湯に急逝の友偲びけり
若き友訃報に暗い会となり
大雪、コロナ、ロシアのニュースに孤独の夜
和菓子粗茶静かに進む老人会
豆腐煮や世話する人の若い声
(22/01)
雪合戦あの子ねらってやわらかく
Xマス カタカナのケーキお土産に
コロナーのおかげで日曜朝寝かな
注連縄や門松知らぬ人ばかり
正月や子供は凧揚げ駒回し
(21/12)
怖がって終る一年欲しい年酒
初雪の予報は白い日本海
雪予報どす黒い空薄い月
椿二輪光る緑に囲まれて
Xマス嬉しオミクロン怖し
(21/11)
石畳み音立てて舞う落葉かな
月欠ける6時3分待つ夜かな
散る木犀見てその立ち位置を探しけり
紅葉の山に一きわ銀杏かな
秋場所や弟子と笑顔の勝力士
(21/10)
立ち止まる10月のこの空の色
秋澄めり海の向うは紀州とよ
玄関に枯れ草袋秋の風
赤トンボ仲間みつけて飛んでいく
ここあそこブルーが目立つ草の花
(21/09)
秋大雨コロナ台風続きけり
秋出水テレビは叫ぶ水の事故
冷ややかや早や早や雨戸閉めており
待ち合わせ息子とうなぎ求めけり
虫の声ききつつメガネ探しおり
(21/08)
やがて死ぬ気配はみせず蝉時雨
空蝉や葉っ葉の先でゆれている
ひぐらしが鳴いたさよなら又明日
文月やテレビで学ぶ熱中症
文月や朝昼晩と違う蝉
(21/07)
太鼓にて出足を誘う盆踊り
太鼓なる早や踊ってる盛上り
浴衣着てからころ急ぐ盆踊り
大雨出水土砂崩れワクチン足らん酒呑むな
老鶯やどこで鳴くのか気にもせず

(21/06)
早梅雨や題梅雨明けに苦しめり
雷鳴やラヂオ大雨告げており
水無月や重たい雲の朝続く
妻なくてどくだみの庭となりはてり
いきいきとどくだみ雨にゆれており
(21/05)
冬鶯散歩の路を導びけり
老鶯や疎林の中をここかしこ
笹鳴や姿は見えず声きこよ
雨近し杖の如くに傘を持ち
老鶯や時計は未だ鳴りもせず
(21/04)
川や池も一度飾る散桜
落椿踏むのを避けて遠まわり
枯枝が目覚めてみれば新芽青
故郷の友病む便り赤トンボ
いちょう落葉落ちきるまでの眺めかな
(21/03)
春めきぬ日めくりで知る月変わり
木瓜の花朱が落ちそうに咲きにけり
名も知らぬ小鳥三羽が花の中
誕生日終い湯に老いの手を延ばし
花の名は木瓜水仙に沈丁花
(21/02)
梅が香や城マラソンのピンク靴
かたまって水仙芽ぶく庭の隅
ストーブ抱き爺ひとり言さあ寝るか
ろう梅の香に誘われて風邪をひく
ひとり者、爺ポリポリと豆を食む
(21/01)
初便り銀色の雪太鼓鳴る
コロナ禍で一日嬉しいコタツ守り
マスクして挨拶された知らぬ女ヒト
銀杏落葉やれやれ今日で終りやな
水仙出たひとかたまりでこの辺り
(20/12)
滝の水はねて氷は玉となる
滝の水玉と散らして祈る人
いきなりの大雪渋滞関越道
初吹雪自動車千台立ち往生
コロナ禍や寒気到来チャンスかな
(20/11)
冬日和居ねむり紅茶チョコレート
冬日和孫のハガキを宝物
冬日和洗濯物を隅に積み
掛けフトン一枚重ね温さかな
花柄のマスクの似合う美人かな
(20/10)
かあさんが手袋あんでるいろりばた
もくもくとおとうは土間で藁仕事
よなべでも気分くつろぐいろりばた
かあさんのあかぎれ痛い春よ来い
よなべとは何の事やと子にきかれ
(20/09)
奥飛騨路すゝき瀬々らぎ高い山
曽爾高原全山すゝき高き空
彼岸花暑さの中に秋来たる
勝ち相撲背中の土も笑ってる
まだ九十もうひとふんばりや赤いシャツ
(20/08)
夏休み危険な程の暑さかな
秋色よし三朝(ミササ)は山と谷の中
秋光や奥津、杉坂、院の庄
三朝の湯、秋の山、谷 光りけり
秋晴れや、山、谷、空、水 輝やけり
(20/07)
キリギリスみたいばくばく夏野菜
夏野菜パンと卵とコーヒーと
食欲がなくても冷えた夏野菜
さわ蟹のかくれる溝や夏の朝
覗くだけ気配に逃げる溝の蟹
(20/06)
鱚・鰆雨戸繰りつつなぞりけり
鱚・鰆呼び名嬉しい春の海
好きな魚しいて言うなら鱚・鰆
コロナ風怖くてステイ・ホームかな
コロナ山勝って夏場所中止かな
(20/05)
ひと仕事終えたる気持更衣
捨てきれずまづたゝみこむ更衣
更衣今日はやめとくしぐれ空
明日こそはやってしまおう更衣
タンス奥半袖にやり更衣
(20/04)
春眠や至福の時よこの温さ
卒寿にて春眠のよさえゝ心地
ウイルスを怖れて桜早や青葉
春眠や生きてるだけで大儲け
ウイルスよ早く過ぎ去れ鬼は外
(20/03)
水温む題見て心春めきぬ
啓蟄やウイルス怖れひきこもり
クリスチャン雑煮のあとの初詣
暖冬の寝床に二つ紙カイロ
新ウイルス地球パニック弥生かな
(20/02)
山茶花は落花の方が目立ってる
山茶花の落花の道や烏鳴く
山茶花の落花を踏まず散歩かな
氏神の広場山茶花とんど焼き
山茶花とたき火の唄が好きなのよ
(20/01)
凍る道登校の列一遊び
寒がりの爺の言い訳転ばない
しばれるが通じ仲間意識出る
寒稽古の凍った床を思い出す
子を殺すニュースに凍る冬の朝
(19/12)
のど痛い鼻水も出る熱はない
風邪予防手を洗ってりゃいいのかな
風邪はやり休校通知待っている
風邪ぐらいひれ酒呑んで寝ていよう
風邪移す相手もいない独り者
(19/11)
初時雨テレビ氾濫報じおり
コンビニをもう一廻り初時雨
早々とストーブ温し初時雨
文化の日子供誘って廻る寿司
坪庭に山茶花咲きて垣となる
(19/10)
朝まだき蝉かと聞けば虫の声
独り者何時何喰う呑む好き勝手
妻逝って小言なくなり白い雲
コスモス田風が奏でる秋の唄
白い雲コスモス浮かぶ赤トンボ
(19/09)
赤トンボひとり浮いてる青い空
草の花つとねころれば赤トンボ
赤トンボ百日紅までついて来い
雨上がるじっと動かぬ赤トンボ
青い空白い雲ひとり赤トンボ
(19/08)
実家消えて灯籠いづこ鰯雲
何となく違う一日終戦日
お盆の日なき実家の前うろうろし
実家にあった灯籠4つ、今いづこ
ベランダを越えて凌霄延びており
(19/07)
団扇の手確めてやや本ねむり
左団扇あいつはもともと左きゝ
笛・太鼓自慢ののどに舞う団扇
囃子鳴る団扇握って走り出し
盆踊り団扇に匂う薄化粧
(19/06)
虹ふわりいつもと同じ散歩路
虹の帯 赤橙黄緑青藍紫
鴬やホットコーヒーやゝ濃いめ
草の庭鴬の声熱きお茶
片づけは後(あと)鴬とコーヒーと
(19/05)
十連休和菓子に新茶やゝ濃目
時々はお茶いれたよと言った亡妻
おーいお茶新茶をどうぞと独り言
出がらしのお茶でもいれて欲しい時
新茶呑む老と壮とを思いけり
(19/04)
水光り鴬鳴きて華花咲く
鴬やはるかにおぼろ遠い山
鴬や畑かすみて風寒し
鴬や鴬やとて耳すまし
鴬に誘われ不覚花粉症
(19/03)
麗ららかや散歩ほかほか大手振り
麗ららかや病いの友が電話くれ
麗ららかや出会いと別れ老い進む
春めぐる出会いと別れ老い病い
下手のまゝだけど楽しい春めぐる
(19/02)
豊後梅の紅が好きと言った亡妻
梅一輪狭庭に咲けど一人かな
梅の香や大手を振って散歩かな
梅一輪見つけた路を又戻り
梅一輪外吹く風のなお寒し
(19/01)
八十九才生きて新年御慶かな
植木屋は来ず荒庭のまゝ年明ける
すべきこと何もぜずとも歳明ける
柚子袋そっと押しやる山湯かな
元旦や予防注射を急がばや
(18/12)
荒れ海や北前船の番屋跡
白い海湯の宿目指し急ぎけり
銀杏落葉落ちるまでは眺めおり
落葉して銀杏は高く天を指し
終い湯に手足を延ばし今日のこと
(18/11)
いちょう並木子等駆け出せり黄金路
広縁で落葉の舞や熱きお茶
里山を野焼きの煙おおいけり
玄関の前だけせめて落葉掃き
都路の走者励まし枯葉舞う
(18/10)
台風去りほっと見上げる高い空
野分あと落葉拾いて一まわり
台風あと有馬富士とやくっきりと
コスモスや今年も風に咲きゆれる
そぞろ寒む更衣など急がばや
(18/09)
昼下がりじじばば笑顔赤トンボ
同じこと同じ返事や遠花火
凌霄花(のうぜん)の咲き継ぐ狭庭荒いまゝ
神信ずガンの娘の木の葉髪
枝折れし尺余の桜切られおり
(18/08)
まづビール軽いつまみと友の顏
ビールのど越して世の憂さ消えにけり
暑気払ビールと友と早帰り
老鶯の夕方に又呼んでおり
水の事故ニュース聞くだに口惜しきを
(18/07)
炎天下災害片づけボランティア
日本が風邪発熱か8度5分
炎天下よもや死ぬ人熱中症
雨災害続く炎天死者200超
炎天やアイス気のま対応策
(18/06)
風ぬけるゆらぐ暖簾に小川の絵
頂いた筍飯を亡き妻に
窓開けるゆっくりゆらぐ暖簾かな
窓開ける吹きぬける風鳥の声
独居に筍ご飯届きけり
(18/05)
悠然と蛙動かず浮かぶ雲
新緑も雨も嬉しい雨蛙
能勢棚田水面の風に蛙鳴く
老鶯や少し離れた樹かげから
田植すみ熱いコーヒー蛙聴く
(18/04)
花水木見上げる空に浮かぶ月
昨日まだ枯木なれしが照る銀杏
初蝶ややっとよろよろ飛びにけり
狭き溝覗けば小蟹固まりぬ
花水木大手延ばして咲き光り
(18/03)
陽炎を求めて空し寒戻る
陽炎の字にそぐわない今朝の冷え
陽炎や地表の湯気のフラダンス
春雨や実家(さと)なき街をふらふらと
故郷のみぞれの街を只歩く
(18/02)
梅一輪三十分の散歩かな
青空に光る蝋(ろう)梅香りけり
散歩路 若木白梅 五・六輪
中山寺宝乙女が豆を撒く
トンネルをぬけると変る雪景色
(18/01)
初詣善男善女にまぎれ込み
初詣ちょっとまじめな顔をして
初詣雑煮消化の散歩かな
柊の実がきれいねとひとりごと
京花背雪が絵描いた峡と村
(17/12)
木枯しや孫の晩成願いけり
銀杏落葉 今日一袋また明日
銀杏落ちて青くて高い秋の空
終い湯に足を延ばして今日のこと
もめたとて九州巡業 大歓迎
(17/11)
立冬や深夜に走る看護婦も
十一月下着一枚重ねけり
終い湯に足指握り温まる
病む身には今年は早き寒さかな
銀杏光る落葉気にせし妻なりき
(17/10)
蝉しぐれ気づけば今や虫しぐれ
青い空浮かぶ白雲赤トンボ
柿喰えば柿好きだった妻のこと
木犀に導びかれ一区巡りけり
朝寒やドングリ二つドアの前
(17/09)
米寿友と来し方行方月見酒
妻偲び熱めコーヒー月見かな
終い湯に足を延ばして虫の声
孫来る日台風も来る鳴るラジオ
荒れはてた狭庭に一つ百日紅
(17/08)
北朝鮮花火のように核実験
家増えて花火中止の宝塚
変る野球点取りゲーム9.10点
炎天下快音白球大声援
甲子園終れど残る暑さかな
(17/07)
猛暑日や日暮らしの声しかと聞く
熱中症注意のテレビ蝉の声
にいにい蝉初啼きの報ニュースかな
怪我休場しきりに続く名古屋場所
あゝ無残九州に大雨続きけり
(17/06)
紫陽花や雨喜んで踊ってる
紫陽花は色・形まで個性あり
老鶯に前ぶれさせて奥の院
扇風機寂しさ少し吹きとばし
棒切れを持てばひと振り花吹雪
(17/05)
花鳥風希望に燃える五月晴
風光散る花びらや延びる腰
川跨(また)ぎ鯉三十が宙を蹴り
バラ公園満開クイン・エリザベス
黄砂来て霾(つちふる)という古い文字
(17/04)
存らえて又出会いけりこの桜
菜の花や少しまばらな出会いかな
君と僕出会いは奇跡ここ 春 今
おじぎされたマスクの人の名が出でず
鴬が呼ぶ片づけを急がばや
(17/03)
春愁や友の入院なお三月
鴬に起れば光る障子かな
教会のホールの隅におひなさま
啓蟄やそろそろやるか草むしり
雪の朝競馬場駅に活気あり
(17/02)
住む人はきれいですまぬ雪五尺
目覚めれば氷はってる孫の声
篠山路 雪路 行けないところまで
初雪や玄関前に靴の跡
山越えるごとに違った雪景色
(17/01)
独り居の爺笑いけり孫年賀
年越して孫初笑いお年玉
おせち食べお腹すかしの初詣
初詣善男善女になりすまし
年頭の決意決まらず早や十日
(16/12)
迷いつつ3年日記買いにけり
しまい湯に温もり今年振り返る
木枯しや残る鈴なり柿一樹
銀杏落葉今日一袋あとは明日
霧の海ハルカス遥か浮かぶ舟
(16/11)
書道展入賞作の字が読めず
白い息男まじめに急ぐ朝
山車かつぎ男発散思いっきり
天高く迷子のように昼の月
夜更けの湯骨まで温め夢も見ず
(16/10)
今年又新酒で祝うノーベル賞
木犀の香に見廻わせり散歩かな
千年の楠樹撫ぜけり拝みけり
月の夜ややたら呑みたい呑めぬ酒
夜ふけ湯にしんまで温め一人寝る
(16/09)
台風の十六号とや荒れる海
台風の進路気がかり婿の郷
秋晴れやスマホ見ている人ばかり
庭隅の捨鉢に木槿咲きにけり
墓参りせよと言うかや彼岸花
(16/08)
ぎらぎらと三十六度虫の声
負けて泣く勝っても泣く人五輪かな
サングラスかければ気分高倉健
百日紅紅白ありて健気かな
花火の夜何も起こらず一人寝る
(16/07)
老人会ビール呑みたいあと少し
決算日部長の顔とビールかな
ビール呑む泡に写った笑顔ごと
大ジョッキ水は無理だがビールなら
いつまでも鳴くな老鶯日は高い
(16/06)
蟻の列つとそれすいと戻りけり
あの声は蛙の唄よ雨よ降れ
老鶯や姿は見せず声高し
裏の溝はたと子蟹の動かざる
麦とろを息子と並びカウンター
(16/05)
菖蒲束五右衛門風呂に火吹き竹
老鴬やひときわ叫ぶ日曜日
道端のバラ追いゆけばバラ公園
堤行く水の流れと桜餅
すゞらんや亡妻(つま)誕生日二十九日
(16/04)
ハルカスもアベノミクスも朧かな
葉もた喰べよ姉が教える桜餅
廃屋の荒庭に咲く大桜
白ピンクふえる街角花水木
濠に落ち花びら隅で行きどまり
(16/03)
朝霞黄砂花粉をおりまぜて
あるだけの蕾掲げる白木蓮
黄色とはこれあざやかなミモザかな
啓蟄やうかがっている穴まわり
かくれんぼ鶯が呼ぶはよ起きな
(16/02)
恋猫の泣き声しきり雨上がる
春光や諭吉登りし有馬富士
予報では日本海側雪達磨
探梅や犬の散歩に追い越され
サングラス・マスクの人に会釈され
(16/01)
カルタ会もっとと泣いた子今や親
冷える夜しまい湯ぬる湯足伸ばす
大寒や甘酒少し熱めにし
丹後路やトンネルでれば違う雪
次の日と温泉きめて別れけり
(15/12)
温暖化師走に山が燃えており
蟹買えと北海道より電話かな
忠臣蔵今年も残りあと少し
但馬路やシルク温泉出石そば
アメフット知らぬがテレビ終りまで
(15/11)
篠山路亡妻(つま)と ねし紅葉寺
植木屋のつゝじ畑の紅葉かな
部屋廊下カレンダー三つ紅葉かな
高々と皇帝ダリヤ風にゆれ
秋深き訃報二通続きけり
(15/10)
秋深き亡き妻恋しはや四年
ホットコーヒー読書にあきて鰯雲
栗かけらおこわパックに二三片
独り居や大の字に寝て虫の声
コスモスや十四、五本でフラダンス
(15/09)
半月や不調の友の電話きく
またっけの初競りの記事読んだだけ
麦トロの夕食二度目母の味
上り坂買物帰り彼岸花
とりかぶと さわるなとあり伊吹山
(15/08)
夜もすがら門火明るしお盆かな
幼子もじじいも嬉し夏休み
八月は野球、戦争、墓参り
九条を読み直したり八一五
盆踊り人あこがれし頃、花々
(15/07)
老鶯のしきりに誘う木下闇
老人のその場しのぎの衣替え
浴衣着て解説涼し北の富士
ノロ台風一日テレビ見てしまい
暑き夜や軍備誇示する国もあり
(15/06)
梅雨入りや小溝の小蟹手をあげぬ
図書館で傘なくなりぬ梅雨の午后
老鶯の一声待てりホットコーヒー
九条は歴史遺産よ梅雨の朝
梅雨嬉し紫陽花 蛙 かたつむり
(15/05)
頂点を目指せ黒田よ鯉のぼり
鯉のぼり遠回りして喫茶店
道の駅嬉し麦飯とろろ汁
薫風や昼寝の孫のごっつい手
春愁や人生は別れ上を向く
(15/04)
うつむいてクリスマスローズ春の風
老ひとり背延ばし仰ぐ椿一輪
春朧帽子マスクの人ばかり
庭の隅咲いた花の名誰に訊く
春愁や桜散る時散る人も
(15/03)
絵教室描いた垂れ目のおひなさま
遺影前今年も出した亡妻(つま)のひな
存らえて三月場所とよもぎ餅
春の宵ぶらり近所を一廻り
三月は区切りの月よ涙月
(15/02)
雪まみれ喜んでいた亡妻(つま)なりき
凍る海に泳ぐ画面をみてふるえ
高点句も一度読めり初句会
胃カメラをすませりあとは炬燵守り
超寒気税申告を先延ばし
(15/01)
注連飾りつけない家の多い街
あの人もこの人も杖初詣
消息のない友憂う新年会
蝋梅は咲いたかと問う子のメール
熊野路やトンネルが縫う山は雪
(14/12)
年の瀬や新築三軒売れ残り
存(なが)らえてはや年の暮忙(せわ)しなや
初雪の多すぎて皆大慌わて
中国道地名鷹の巣山紅葉
電気毛布喧嘩した妻寝て笑う
(14/11)
匂い立つ新米おしんこ日本人
炊きたての新米にふと手を合わし
ふる里に寄る実家(いえ)なくて赤トンボ
亡き妻の実家(さと)から届く柿うれし
会釈してくれたマスクの人知らず
(14/10)
コスモスやまつり・赤飯・おはぎかな
コスモスの里友の郷花野かな
廃屋の前でコスモスゆれており
台風の予報どおりに縦断す
白山道半ばトンネルすゝき道
(14/09)
宇佐神宮全山うなる法師蝉
故郷の友病むたより赤トンボ
名月や人それぞれの想いかな
百日紅といえども白い花も佳し
昼下がり濃めのコーヒーうろこ雲
(14/08)
盆踊りあの子と同じ輪に入り
盆踊り懐かしの唄炭坑節
夏の宿一茶の村を通りけり
夏の山姥捨という地走りぬけ
真夏日や木蔭そよ風白い雲
(14/07)
夏帽子少し若げな友の顔
額の花秩父の宿で地図探る
冨士見えず雨模様なりねむの花
ひとり者トマトといりこ交差せり
妻吊し風鈴残る軒端かな
(14/06)
短夜や足のほてりのやりばなし
あじさいや西行の歌三室戸寺
月かくれふわり浮かんだ蛍の灯
老鶯や声高らかに名調子
薄笑いちょっとおしゃれな夏帽子
(14/05)
夏場所や遠藤の髷光る汗
夏めくや女子高生の白い腕
村中の鯉泳がせり過疎の村
衣替え少し派手目の夏のシャツ
夏立つやホットコーヒーや濃目
(14/04)
ひらひらと花びら一つ庭の隅
生きのびて新緑眩し紅葉坂
花と木を教えし亡妻(つま)や沈丁花
想い出の道一人行く桜かな
落椿上には次の落椿
(14/03)
綾部山年々きつい梅見かな
実家より彼岸のおはぎ届きけり
もう少し飾っておこうお雛さん
ひなあられおーいお茶と呼んでみる
不合格の子に付き合ってハム・ヴァーグ
(14/02)
絵手紙の添え書きうふふ春近し
静穏は孤独に勝る春炬燵
参道に投句箱あり春の雨
死に支度先にのばせり春の雪
春よ来い早く来い今梅一輪
(14/01)
初場所や贔屓力士の勝名乗り
すっきりと散髪をして新年会
旅雑誌広告広げ冬炬燵
冬晴れやお三時クッキーホットコーヒー
雪催い大切れ買いぬ味噌煮鯖
(13/12)
八十四 三年日記を買いにけり
年の暮あれこれできず落着かず
師走の夜仕舞湯熱め極楽湯
水洟や終日塵紙(チリシ)鼻の先
今日からは両ポケットにカイロ入れ
(13/11)
立冬やされど初霜未だみず
十一月町内美化に主人衆
荒れ庭に白菊黄菊咲き乱れ
柿日和今日老友と昼食会
電気毛布極楽寝床羽根ブトン
(13/10)
畦の端野菊ならんで靡きおり
ドライブや三つの里の秋祭
秋の夜やぬる湯長風呂ひとりかな
訃報くる旧き友の名秋の風
柿食えば柿好きだった亡妻のこと(亡妻=つま)
(13/09)
爽やかと言うがまだまだ残暑かな
孫それぞれパフェ注文す敬老日
新蕎麦や味を求めて奥丹波
九月場所髷まだ無しで勝名乗り
伊良湖岬前太平洋彼岸花
(13/08)
敗戦日原爆持てる敵なりき
ダム放水水煙の先虹かすむ
盆踊り中天満月仲間入り
吉野家も土用の丑はうなぎ丼
灼くる路空見上げればいわし雲
(13/07)
空蝉のなおつかみおり乾く泥
あと五分朝寝許せよ蝉時雨
夏休み弾む電話の孫の声
夏場所や夫々熱き力士達
絵仲間に朝顔描きて返事せり
(13/06)
梅雨晴間朝のコーヒーやゝ濃ゆめ
早苗ぶりに合わせ今年も同期会
亡妻(つま)褒めたこの夾竹桃このピンク
雨嬉し隅田の花火笑ってる
ジャスミンの香と振り向けば女高生
(13/05)
惜春や大あくびせり独居かな
老春をどう謳歌せん風薫る
夏場所や勝った力士の顔の汗
巣作りの場を争うか初燕
風通る昔走った路地のこと
(13/04)
実のなきは山吹に似て独居かな
予報きき一枚薄着さくら草
鳰(かいつぶり)どこに浮かぶか待っており
春がすみハルカスはるか確かめり
テレビ観てお菓子つまんで夜長かな
(13/03)
桜鯛字をみただけで春の味
竜金花昨日一輪今日五輪
春かすみ奈良三山は浮ぶ島
旅雑誌二冊並べて炬燵かな
実家(さと)からの牡丹餅届く彼岸かな
(13/02)
好きだった雛を遺影のそばにおき
春めくや庭へ出てきた虫と爺
水洟(ミズバナ)やティシュ遅くて膝の上
凩や姿勢よいのは軍仕込み
春雪や電話で友の愚痴を聞く
(13/01)
正月や良い子三人わが宝
としつむや今年は何で楽しまん
寒椿己一人の天下かな
爺一点若きに交じり新年会
腰痛も笑い飛ばして日向ぼこ
(12/12)
ストーブの部屋でアイスクリームかな
小春日やミルの紅茶とクッキーと
年の暮床屋でわかるしみとしわ
年寄りの犬も老犬寒げなり
数え日やフトン坐ブトン干さんかな
(12/11)
群なして只がむしゃらに鮭のぼる
鮭焼いて新米みぶなお味噌汁
柿食えば柿好きだった妻のこと
黄葉や大きさ示す銀杏かな
ケータイで無事確かめる冬の朝
(12/10)
いざさらば長袖出さん夏果てぬ
故郷の友の絵はがき秋まつり
友一言枝豆くれて帰りけり
二十四の瞳又観て泣きし秋
妻なくも秋海棠は花ざかり
(12/09)
風の音独り寝おどす野分かな
紀州山峡平家の里や法師蝉
秋夕焼図書館帰り急ぎけり
いつのまに雲はすっかり秋の雲
秋晴れや背筋伸ばさん健まねて
(12/08)
終戦日人と蝉との泣きくらべ
空蝉を四つ捕えて皿に乗せ
原爆忌みんな重たい顔してる
孫短パン白さ眩しい太いもも
草引くもぼうぼうも良し俺が庭
(12/07)
紫陽花寺妻の不得手な地理歴史
空梅雨や洗濯よりも昼寝かな
目も鼻も衰え萬事おぼろかな
帰りきてぬぎ捨てながら冷麦茶
時めぐるいざ深呼吸蝉しぐれ
(12/06)
もう一度鳴くまで待とう時鳥
白い花どれも卯の花花音痴
先づ薫風入れてヘルパー動き出し
大合唱雨喜ぶか雨蛙
トンネルを出れば新緑別世界
(12/05)
げんげ田で大の字に寝て雲を見る
鶯をひきつれ上る緑径
休耕田老か政治か草萌ゆる
薫風や草引きせんか腰伸ばし
通天閣まだ上らぬにスカイツリー
(12/04)
永き日や二駅先まで歩きけり
ルルルルル水田に雨と蛙かな
ドライブや桜を追えばここかしこ
帰り坂老いと荷物と花吹雪
妻逝きて一年茫然桜かな
(12/03)
鶯や声きこえたり藪の中
春彼岸実家(さと)の牡丹餅届きけり
八十路じじ手伝いたがる雛かざり
独居(ひとりゐ)やくぎ煮二パックもらいけり
刈り上げて頭も光る風光る
(12/02)
氷点下サンデー・メール待っている
(東京の長男が日曜日にメールをくれるいつしかそれを待っているようになった。)
会釈されマスクの顔を覗きこみ
(目も耳も衰え、挨拶されてもマスクで顔は目だけ、これぢゃ誰かわからない。)
お昼には消えた三田の春の雪
(粉をまいたような雪景色、お昼には三田 の雪は、とけてしまっていた。)
庭掃除今日はやめよう薄氷
(枯葉を拾おうかと思ったが、薄氷だやめとこう風邪ひいたら困る。)
原発は怖い暖房とめ難い
(原発なしでは電力不足とか、安全な原発は難しいのか、電気なしでは暮らせない。)
(12/01)
寒星や孫の受験を祈りけり
大寒やしぶとく耐えし友逝けり
雪の道一人欠けたり去年今年
節分や年の数だけ豆数え
暖房をつけて寝床へもう一度
(11/12)
からからと飛び逃げ惑う枯葉かな
セーターを褒められちょっと妻自慢
山越えや丹波篠山みぞれ雪
貼るカイロ節電効果まとめ買い
降る雪や露天風呂みな目を閉ぢて
(11/11)
誰もみな悩みかゝえて年の暮
寿司買って落葉の道を遠まわり
二つ目の紅葉の寺で日暮れけり
石像か釣客一人うろこ雲
妻逝きぬ痛恨の年年の暮
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