健康コラム


重症筋無力症について

20〜30才の若い女性に発病しやすい病気ですが、男性でも、またどの年齢でも発病します。 初発症状は眼瞼下垂(まぶたが下がる、腫れる、重い)、複視(物が二重に見える)ですが、症状が進むと四肢の筋力低下、易疲労性(同じ動作を続けるとすぐ疲れる)、言語障害(段々としゃべれなくなる、声が鼻に抜ける)、嚥下障害(食事が飲み込みにくくなる)、咀嚼障害(物が噛みにくくなる)などの症状が出てきます。 女性ではお産後に発病することがあります。 一時的に全身の筋肉に力が入らなくなり崩れるように倒れてしまうことがあります。これを筋無力性クリーゼといい、呼吸も出来なくなることがあり非常に危険です。 アニチレックスを静脈注射すればすぐ回復します。

●病因について
筋肉は神経の刺激で活動しますが、その機序は神経と筋肉の接合部で神経末端からアセチールコリンが放出され、筋肉側のアセチールコリン受容体が反応して筋収縮が始まります。この受容体が減少しているために発症する病気が重症筋無力症です。 アセチールコリン受容体にたいする自己抗体の産生が原因と考えられており、胸腺との密接な関係も存在します。

●病型について
眼筋型:目の症状だけ
全身型:目の症状以外に四肢の筋力低下、言語障害、嚥下障害、咀嚼障害などを伴うもの。

●クリーゼの種類
筋無力性クリーゼ:症状悪化のため急激に全身の筋力低下
コリン作動性クリーゼ:内服治療薬の抗コリンエステラーゼ剤の過剰服用による全身の筋力低下

●クリーゼの見分け方
アンチレックスの静脈注射をして症状が改善すれば筋無力性クリーゼであり、症状が悪化すればコリン作動性クリーゼです、この場合は人工呼吸器を使用して呼吸管理をしながら抗コリンエステラーゼ剤の効果が減弱するのを待たなければなりません。

●検査
採血検査で抗アセチールコリン受容体抗体の測定を行います。 胸部レントゲン、胸腺のCT、MRIで胸腺腫瘍、胸腺肥大の有無のチェック 筋電図検査(連続電気刺激による筋疲労の測定)でこの病気特有の所見の有無。

●治療
内服治療: 抗コリンエステラーゼ剤、副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤 注射

ワゴスチグミン: 外科手術などで内服剤が服用できない場合にも使用します。
アンチレックス: 即効性の注射薬であり、病気の診断、クリーゼの診断、治療に使用します。

胸腺摘出術

重症筋無力症は胸腺(前胸部の真ん中の胸骨と心臓の間にある)と密接な関係があり、多くの患者さんで胸腺の肥大、胸腺腫瘍を伴い、また肥大がなくても胸腺の組織のなかに活発に活動するリンパ組織があります。 胸腺を摘出することによって症状の改善があり、一部の患者さんでは完全に治癒します。手術は発病後早く行うほど効果があります。特に若い女性で発病後すぐ施行する場合は手術成績は良好です。

ステロイドバルス療法

副腎皮質ホルモンを3〜4日、毎日点滴します。 重症患者で症状が悪化した場合に行います。

血漿交換(免疫吸着)

重症患者で症状が悪化した場合に行います。 人工透析と同じような手技で動脈血を器械に通して血液成分の一部(この病気を悪化させる成分を含む)を吸着して静脈に返していきます。1日おきに施行し6回位施行します。効果不十分の場合、しばらく休んで再度試行します。

ランバート・イートン症候群 (Lumbert-Eaton Myasthenic Syndrome)

筋無力症候群ともいわれ、重症筋無力症と症状が似ている部分があります。 筋肉の易疲労性、筋力低下、複視、嚥下障害、発語困難、咀嚼困難等の症状があり、 重症筋無力症と症状が似ていますが、筋肉を継続して収縮させると筋力が改善する特長があります。 肺癌(肺小細胞癌など)等の悪性腫瘍に伴って発症することが多く、40才以上の男性に発症することが多い。

●病因について
神経と筋肉の接合部で神経末端からアセチールコリンの放出が不十分であるために起こります。アセチールコリンの放出に関係する組織(神経終末の電位依存性カルシウムチャネル)への自己抗体の産生が原因と考えられており、一部の研究室で抗体の測定も行われています。

●治療について
肺癌などの癌に伴って発症している場合は、その原因疾患の治療を施行する必要があります。 内服治療の他に、血漿交換療法、副腎ステロイド療法、ガンマグロブリン大量療法などがあります。

●検査について
筋電図検査による反復電気刺激方法が非常に有用です。 低頻度刺激での振幅の著明な低下と高頻度刺激での振幅の著明な漸増現象がみられるのが特長です。


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