ばーん・ぼらーん便り

<その7> ローカルバスに乗る

現住所登録をしに、国境の県ムクダハーンに行くことになった。101=ロイエット県から東へふたつめの県で、ローカルバスで3時間ほどの距離である。エアコンなしの普通バスに乗ったが、おんぼろバスでも田園地帯を走りぬくので自然の風が入って快適だ。

朝7時、バスターミナルまで歩いていく途中でムクダハーン行きのエアコンバスがサーッと走り去った。あー、ついてない・・が、もう少しいくと今度は赤い普通バスがやってきた。手で合図して拾ってもらう。よかった、少しはついてるかもしれない。

ロイエットの街中ではあと2箇所ほどで客を乗せ、それからようやく切符切りとなる。車掌さんは体格のよい青年だが耳が聞こえず口も利けないようで、行く先は筆談で知らせる。書かずに口の動きで通じさせている客もいる。ムクダハーンは「ムク」と書けばよいようだ。59と切符の裏に書いてきたので59B渡す。全部切り終わって車掌さん、前に戻ってきたが、私のすぐ前で女の子に袖を引っ張られる。さっきのお釣りをまだ受け取っていなかったらしい。車掌さん、あ、そうか、とお釣りを手渡す。

ロイエットの町の中心部を抜ければすぐ田んぼばかりの田園地帯だ。そんなに行かぬうちに前方にエンコした青いバスが見える。あら、なぁんだ、さっき乗り損ねたエアコンバスじゃないの・・・普通バスが止まって事情を聴くとエアコンバスの運転手だけが乗り込んでくる。まさかここから3時間のムクダハーンに応援を呼びにいくんじゃないでしょうね・・・普通バスは出発、乗り込んできた運転手はしきりに携帯でしゃべっている。ラジエーターでも壊れたらしい。でも疑問だ、エアコンバスの乗客はどうなったの?放っておかれちゃうの?

またしばらく行くと、前方にソンテウという改造トラックバスが走っていてそれが止まる、こちらも止まる。客が何人かこちらに移って来た、さっきのエアコンバスの乗客でソンテウに乗り換えていた人たちらしい。考えてみると彼らは、「エアコンバス代+ソンテウ代+普通バス代」を払うことになったのだ。前方で携帯片手のエアコンバス運転手はしらんぷり。あらら。そうか、私は今日はついてるんだわ。

やがてガラシンという隣の県の町に着く。20分ほど停車。さっきのエアコンバスの運転手はどうやらここで降りたらしい。私は朝食代わりに、ルークチン(魚団子の甘辛ダレつき)を買って食べる。

ちっちゃなローカルな村々ですこしずつ客を拾いながら快適に普通バスは走る。日曜なので、村の家々では開放した入り口や軒先や木陰や東屋でくつろいだり、もち米とおかずをつまみながらお喋りしていたり・・・。機織機がどの家にも見られる村もあった。イサーンは絹や綿の織物(マットミー織り)が有名だ。

やがてようやく少しは背の高い建物が見えてきた。ロイエットから3時間ほどでムクダハーンに着いた。乗ってきた普通バスは、3−40分ほどすると折り返して、来た道を戻っていく。


朝のメコン川(ムクダハーンにて)

3/1/'04

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