<宿題請負業>

Mi先生から聞いた話である。


同居家族の中学生タム君に「助動詞についてまとめよ」という宿題が出た。

参考書から必要と思われるページを開き、コンピュータで編集作業。
例文にふさわしい絵も入れて、印刷し、冊子に仕上げた。

(註) タイでこういうまとめの宿題が出たら、きれいな冊子にまとめ上げて提出するのが普通。
        仕上がりのきれいさが好印象のカギである。


翌朝・・・仕上げたはずの宿題をまたやっている様子。

  「何してるの?」

  「助動詞の宿題」

  「あれ?!昨日もう仕上げたはずでしょ?」

  「・・・・・これ、友達の」

よく見ると、ところどころ変え、絵も差し替えたり消したりしてある。
それにしても、こんなそっくりさんを提出して、先生にばれないのだろうか。

いえ、バレバレである。
でも先生は叱らない。ちゃんとやってあればいいのだし、きれいに仕上がってあれば尚更よい。

ここまでは、Mi先生も私もよく知っている。

 

ところが・・・・



  「これやってあげるとひとり5バーツなんだ〜」

  「エーーッ!!!!!」

Mi先生、この地でもう数年、教師をやってきているが、し、知らなかった・・・


その 夜。

タム君のお父さんもお母さんも学校の教師で毎日忙しい。
平日、タム君は昼の食事用に親からお金をもらって登校しているのだが、その日は皆忙しくてお金を渡し忘れていた。

母 「今日、お昼どうした?」

タム君 「・・・・・・・。」

母 「お金なかったでしょう?」

タム君 「あのね・・・だいじょうぶ。みんなの宿題やってお金もらったから。」

母 「いくらもらったの?」

タム君 「ひとり5バーツ」

母 「5バーツ!」

(宿題やってあげてお金もらうなんて、あんたって子は!)
と想像するのはまっとうな日本人である。

母 「あんた、印刷するには紙だってインクだって・・・」

ここでお母さんに電話が入り立ち消えに。。。


Mi先生が目をくるくるまわして、
「え!?なに、お母さん、5バーツじゃ安いって言いたかったの?」
と考え、頭を抱え込んだのは言うまでもない。


あー、タイにはタイの背景がある。こうしてタイ人はタイ社会でちゃんと生きていけるように育つのだ。

 

*ところで、一言付け加えますと、ここに登場するお母さんは、実に勤勉で弱音を吐かない(タイ人としては少数派の)女性です。

1/22/'06

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