<洪水>

12月、北部や東北部はすでに乾季に入っているが、南部は・・・。

「タイの季節は3つある、3−5月の暑季、6−10月の雨季、11ー2月の乾季だ」
と大雑把に分けられるが、「南部には乾季はない、あるのは暑季と雨季だけだ」とも言われる。

今年はどこも雨季明けが遅かったように思う。
12月5日は王様のお誕生日、各地で盛大な式典が行われる。
その日私は南部トラン県にいたが、地元の人は
この王様の誕生日に雨が降るのは滅多にないことだと言っていた。

その南部、たまに晴れる間隙はあるものの、うんざりするほど降っているらしい。
うんざりだけならまだしも、ついにひどい洪水になってしまった。

11月末からの記録的豪雨による被害の様子を毎日テレビで放映している。
なかでも、パッタニー県やソンクラー県、パッタルン県は深刻で、
洪水の水深が1ー2m位の地域がかなり広がっている様子だ。

上空からヘリコプターで写した映像では、土色の湖と化したところに屋根だけ見える家が沢山あり、
木々は上部だけが突き出し、道路はところどころ顔をのぞかせている。

タイでは、家々より幹線道路の方が土地の高さが高いのが普通だ。
洪水になっても道路が一番高ければ、水はそれ以外の地域に流れ、道路機能は麻痺しないで済む。
が、そのままなら家々には水が入ってしまう。
(うちも古くて低いところに建っているので、去年は10cmほど水が入った。)
で、新しく家を建てる人々はお金をかけ、せめて道路と同じか、できたら道路より高く、土盛りして予防する。
昔ながらの高床式の家屋は、この土地の気候にあった建築工法で、洪水でも住居部分は守られる。
だが、今はチーク材伐採禁止による高騰もあり、外観の新しさもあってか、白い壁のモルタル(?)の家が多い。
土を持って高くした土地に、そういう家を建てる余裕のある人たちは、ある程度の洪水はそれで回避できる。
余裕のない人たちの家や古い家は、かなり低い位置に建っている。

だが、今回の南部の長期にわたる多量の雨による洪水には、
少しばかり高くした土地にある家も太刀打ちできなかった。
ましてや、低い土地に建っている家は大変な被害だ。
煮炊きにも支障が出るし、だいいち断水したところもあるようだ。
救援物資をトラックで、といっても道路が分断されるくらいの洪水の地域では無理だ、
ヘリコプターで空から各戸に一袋ずつ投下している様子も映し出されていた。
(それで充分行き渡るのだろうか・・とも思えたが。)


ところで、タイの現首相は、北部チェンマイ県出身の中国系タイ人である。
チェンマイも今年の雨季にはかなりの洪水で、観光客が足止めを食らったりした。
そのときの迅速な救援振りは大いに報道されたが、今回の南部の洪水は
それ以上の規模なのに、救援活動が遅れ、非難を浴びている。
地元で支持者の多い地域と、問題多く支持者も少ない地域に差がついた。
これに非難の声も上がるが、タイのテレビは政府系、軍営が多く
手厳しい批判の姿勢は見せない。
今回のことのみならず、国の政すべての面について、である。
ここ2−3ヶ月、真っ向からタクシン体制を批判してきたS氏と関係者は
テレビ放送から締め出され、バンコク都内の大きな公園で公開番組にし、
多くの支持者が参加しているが、一方、お膝元の北の県からそこへ
妨害せんという相手方応援団がやってきて揉め事になりかけたりもしたらしい。

外国人としては、外野から物見高く眺めるばかりで、タイの観察ということになる。

なかなか言いたいことを言い合ってはいるが、改善へと導かれるかどうかは・・・

参考HP:「タイの地元新聞を読む

12/24/'05

メニューに戻る     次へ