<モーラム>

タイ東北地方(イサーン)独自のリズムと楽器、節回しのイサーン弁の歌をモーラムという。

田舎の暮らしを題材にしたり、都会に出て辛い暮らしをするイサーン人の吐息を歌ったりしている。辛い苦しい歌詞も、つい踊り出したくなるようなテンポとリズムで歌われると、明るく感じる。もちろん、しっとりと歌われる歌もある。モーラムはイサーンの若い人たちにも人気がある。

と解釈していたが、ちょっと気になって、もうだいぶ以前に買った前川健一著「まとわりつくタイの音楽」(めこん)を久しぶりに開いてみた。やはり私の考え違いがあった。

モーラムにもジャンルや歴史がある。初期はイサーンの民話や仏教説話を歌うものが多く、伴奏楽器もイサーン楽器のケーン。モーラムはイサーン民謡ともいえたようだが、欧米音楽の影響は避けられず、またテレビの普及で、「村の寺で夜通し続く祭りの舞台」が「コンサート形式」に変わり、さらにVCDで手軽に家でも楽しめるようになるにつれて内容も変化していったようだ。

現在流行しているモーラムはケーンも使うかもしれないが、主流はキーボードなど現代音楽セット。リズムはアップテンポの流行歌。その内容は、私が上に書いたように、日常の暮らしを歌う詞に変わった。それは、ここ30−40年の変化のようだ。日常の暮らしを歌う田舎の歌は「ルークトゥン」という別ジャンルがあるが、それに近くなったと言われる。

見分ける(聞き分ける?)には、あのテンポ。たったた たったた たったたたーー♪ 踊り出したくなる。

さて、イサーンの楽器で、ヴォートという楽器がある。中心にふくらんだゴムがあり、その周囲にぐるりと並んだ長さの異なる笛を、ゴム部分をあごにあてて回 しながら息を吹きかけることによってメロディーを奏でる。ロイエットはその産地でもあるらしく、街のロータリー、市場の周囲の詰め所などがその楽器の形をしているし、中小の土産物やキーホルダーもある。ミニ版でも、ほろほろ〜といい音が出る。

最近、よく耳にして気に入っている歌があった。それが、そのヴォートの音で始まる。これが欲しくて、CD屋さんで、あごのところに楽器を当ててまわすしぐさをして、これで始まる今流行ってる歌はどれ?と聞いてみるのだが、あまりにも漠然としていてわかってもらえない。で、しばらくして、ようやく歌がわかった。歌い出しが、「フアジャイ・チンチン(真心)〜♪」

今度はCD屋さんにそう伝えて(ちゃんと楽器のジェスチャーも入れて)、だれのどのCDだか教えてもらおうとしたが、またもや失敗。へんだなぁ・・。正月に友人宅での集まりのときに折りよくその曲がかかり、この曲、なんという名前?と聞いたら、友人が「題名はわからないけれど、ターイのだから、探してきてあげる」と言ってくれた。「フアジャイ・チンチン(真心)〜♪」というのは題名ではなく、歌詞の一部だったのだ。

そうしてようやく手に入ったCDは、人気歌手ターイのアルバムだった。

だらだらと書いたのは、興味のある人には聴いてもらいたいと思ったから。お気に入りは7曲目!
都会のジャングルに出て働く若い女性が故郷を思って歌う歌だそうです。

このアルバムは全曲スローな優しい歌い方の曲が多いので、もっと踊り出したくなるようなテンポのモーラムやルークトゥン、もう少し以前のを聴きたい向きには、ちょっと物足りないかも。

色々な歌手を聴き比べてみてくださいね。

そうそう、忘れるところだった。去年後半から大人気の少女歌手「ノーン・マーイ」のご紹介!
こちらはノリのいい「Dek Dooi Jai Dee」という曲がヒット。うちの近くの幼稚園では毎朝流れてるし、運動会のお遊戯にもよく使われ、子どもから若い子まで、カラオケの一番人気になっている。

2/4/'05

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