その11

タイの象

夕方になると一番賑わうのがロイエットの惣菜市場辺り。その人手を頼みに象使いが象を引いて現れる。


子どもの象(市場の駐輪場で)

おとなの象を引いている組と小象を引いている組がいるが、たぶん同じ家族が別行動をとっているものと思われる。組というのは、象一頭につき、ふたりがひと組になっているからだ。一人が象を引き、もう一人が手に持ったサトウキビを一束20Bで売っている。サトウキビは象の大好物。象のために餌を買ってください、というわけだ。無論、あの量で20Bは高すぎる。象を維持し、家族が食べていくために設定された値段だろう。タムブン(功徳)になるから、だれかが払って食べさせている光景を見る。昨日は私も始めて20B支払って食べさせた。くるっとさせた鼻の先でサトウキビを受け取って、あうんと口に運ぶ。

バンコクをはじめ都市部に連れてこられた象は哀れだ。コンクリートの舗道を歩くのは辛いだろう。けれど、故郷にいても職がない。大昔は戦闘時にも活躍した象。少し昔は、森林から材木を切り出せば、運搬を担当していた象。今は伐採事態が禁止されているところが多いから、仕事がない。代々の象使い一家も食べていけない。それで、都市部に出てこうして稼ぐ象と象使いが現れる。この行為が違反かどうか定かではないが、現実として各地で見られる。

11月には東北部のスリン県で象祭りが盛大に行われる。スリンは象の多いところで有名だが、それでも数は減っているそうだ。北部チェンマイの南のランパン県には、象の保護センター(象の病院)がある。日本のTV局も取材に入ったことがあるし、そこで学ぶ日本人もいたと聞いた。タイの象たちは、活躍の場が制限されていくとともに、保護の段階に入っているのだろう。

6月末にそのランパン県の象のセンターを訪れたとき、ほのぼのとした光景に出会った。そこではショーもやるのだが、友人と私はずいぶん早く着きすぎ、他に誰も客がいなかったから、ぶらぶら歩いていた。(ほんとうは、ショーはあまり好きではない、やらせられている象を見ているのがあまり好きではない、入場料は保護の資金の一部になるのだろうけれど。)結局、ショーは見ず、そのかわり、もっといいものを見せてもらえた。

象使いのおじさんが、小象がいるよ、と示してくれた。
かわいい!
母さん象と赤ちゃん象。ちょうど10日前に生まれたそうだ。
聞いてびっくり!生まれたときの体重は60kg。10日目のその日はすでに80kg。まだ歯が生えていないから、母さん象のお乳だけで育っている。母さん象はというと、一日に200kgの餌を食べるそうだ。バナナ、さとうきび・・・。

かあさん、赤ちゃんにお乳をあげないの?

と口に出して言ってみたら、じゃぁ、と(言ったか言わなかったか)自分の長い鼻で赤ちゃん象を導いてお乳を飲ませた。やさしい母さん象の目。

ほらほら、鼻をお貸し・・
ここですよ、よいしょ!
おいしいでしょう

11/3/'04

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