幸いにして、すぐに戻ったために京一と葵は捕まえることが出来た。京一と二人だけだと、告白前に挫折することは分かり切っているので、同行者は必要だ。しかし、多すぎたら今度は告白もなにもあったもんじゃない。丁度そこへ出くわした小蒔と、途中で行き会った醍醐を更に巻き込んで、龍麻が訪れたのは旧校舎。 後方支援二名と、主力三名。内一名は機動力に難あり。こうくれば当然、前線で忙しく動き回るのは残り二名の役割だ。情けない話だが、これなら人目を確保しつつのふたりっきり状態を確保できる。 異形の者の跋扈する場所でふたりっきりもなにもあったものではないが、戦闘中はともかく、全部片づけた後などには二人で話す時間もできるだろう。そういう時に、さりげなく話に出る―――これならばきっと、上手く行くはずである。戦闘中の京一とは言葉が無くても通じるものがあるし、その雰囲気を引きずった状態でならば、醜態を晒さずにこちらのペースで話が出来る筈だ。 (よっし、完璧!) しかし、龍麻の思惑はすぐに、見事に外れることになる―――
「いっけーーっ!」 「でやあぁぁっっ」 この日は、いつもと少し勝手が違っていた。 常ならば、大体に置いて小蒔が葵の傍らにおり、醍醐がそれを庇う形で護り、京一と龍麻が先陣を切る。 しかし、今日は少々様子が異なっていた。 何故か、京一が葵の傍にぴったりと引っ付いているのだ。しかも何やら剣呑な雰囲気を漂わせて。 小蒔が近寄ろうとしても、変な勢いで傍に寄せようとしないのだ。それは醍醐も同じ事で、龍麻に至っては、視線を向けただけできつい眼差しが飛んでくる。 「なんか、今日の京一おかしくない?」 「確かに、少し気が立ってるようだな」 そんなことを言いながらも、小蒔と醍醐は組んで動いている。それが結構楽しそうで、一人置いていかれた形の龍麻は余計に寂しさが募る。 (さっきの…怒ってるのか?) 逃げ出した直後に、舞い戻って有無を言わさず旧校舎へ引っ張り出したのだから、怒っている可能性はある。 しかし、それだけならば何故、葵にべったり引っ付いているのか。 おまけに、龍麻に牽制を掛けるような仕草まで見せて。 理由は解らないが、京一の態度がそんな調子では、龍麻の思惑など果たせるはずもなかった。
旧校舎は、フロアを下りれば配置が変わる。 次に下りた階では、葵の近くにやたらと大きな鬼が居た。何階かごとに現れる、通常の雑魚よりも強い相手だ。葵の近くに下りた龍麻は、自然、葵を庇う形で拳を振るうことになる。 「葵、こっちへ!」 葵を庇う形で割り込み、鬼の脇を突いて気を逸らす。葵が引いたのを見計らって龍麻の放った巫炎は、確実に鬼を塵へと変えた。 「大丈夫か?」 「ええ、ありがとう、龍麻」 気遣う龍麻に笑顔を向けた葵は、ふとその細い眉を顰めて龍麻の頬に手を伸ばした。 「血が出てるわ。…じっとしてて?」 何か言う間もなく、触れた葵の指から、暖かな力が流れ込んでくる。本人がその存在すら気づいてなかった龍麻の頬の傷は、葵の『力』で綺麗に消え失せていた。ただ、浅く切った為か出血はかなり多い。それを手で拭って、龍麻は葵に微笑んだ。 「サンキュ、葵」 「痕…残らなくて良かったわ」 葵はそう言って笑うと、小さく首を傾げた。 「けれど、みんなとは離れてしまったわね」 龍麻達が居るのとは丁度反対側に、京一達が固まって戦っている。 敵と対峙している時の京一は、本当に綺麗だと龍麻は思う。身体に満ちる闘気、どんな時でも不敵さを失わない強い意志を宿した眼差し、鋭さと優美さを併せ持つ木刀の鮮やかな動き――― いつも傍らに在るそれを、たまには離れて見るのもいいかと思ってしまうくらい、それは鮮やかに龍麻の目を奪う。 (やっぱ、あいつ格好いいよな…) 思わず見惚れた龍麻だったが、ふと傍らに視線を向けて気づく。 葵が、同じように京一を見ている。 少し目を細めた眩しさを堪えるようなその眼差しが、龍麻の中の何かに引っ掛かった。 「………葵?」 思わず声を掛けると、葵がはっとしたように振り向く。 「なに?」 いつもの葵と変わらない、穏やかな声。 しかし、ほんの少しだけ、いつもと違う表情。 不意に、龍麻は気づいた。 (もしかして、葵は…) 龍麻の中に浮かんだ疑問を読み取ったかのように、葵は穏やかに笑った。 「不謹慎かもしれないけれど…ああいう時の京一君、本当に格好いいわよね?」 その言葉に、龍麻の心臓が早鐘を打ち始める。 「葵……」 今まで思いつきもしなかったが、京一と葵はそれこそ三年越しの付き合いだ。もし、葵が京一のことを想っているとすれば…… そこまで考えて、不意に足元が砂地になったかのような不安定さを覚えて龍麻は俯く。 しかし、いくら馴染みの場所だと言っても、やはり戦場には違いないこの場所で、その一瞬は命取りになる。 「龍麻っ!」 悲鳴の様な声に我に返った龍麻が顔を上げた時、既に人形は眼前に迫っていた。 (やば…いっ!) 呪詛を食らうのを覚悟の上で、葵を庇うように身を晒した龍麻だったが、その直前、龍麻の目の前で人形は粉々に砕け散った。 「ひーちゃんっ!」 砕けた欠片の向こうから、京一が駆け寄ってくる。 「無事か?!」 「ああ…うん、ありがとう」 「何、ぼーっとしてるんだよっ!こんなとこで気ィ抜くな!」 殆ど怒声に近い声で噛み付く京一に、龍麻はだた、視線を下げることしか出来なかった。 「―――ごめん」 絞り出すような謝罪に、京一の言葉もそこで止まる。
京一の言う通りだった。 戦いの場で、気を抜くことは即、死を意味しかねない場で他のことに気を取られるなんて。 それは情けないを通り越して致命的だ。
「いや…大丈夫だったらいいけどよ」 気の抜けたような京一の返事にも、頷きしか返せない自分が酷く惨めで、龍麻はきつく唇を噛みしめた。
「今日は、ここまでにしておくか?」 「そだね、お腹空いたよ〜」 「ふふふっ、小蒔ったら」 「当然、この後はラーメン行くよね?」 「お前、いっつもそればっかだな…」 「なんだよ、京一は行かないっての?んじゃ、ボクらだけで行こうよ、ね、ひーちゃん」 「ああ、いいな」 「誰もそんなこた言ってねーだろっ!」 「まあ、結構遅くなってしまったからな。俺も実はさっきから腹が鳴ってる。行くだろう?龍麻」 「確かに、お腹は減ったな」 「じゃ、行きましょうか?」 旧校舎から出て、小蒔らと他愛もない会話を交わしながらも、京一はそっと龍麻を窺っていた。 話しかけられれば反応はするが、その対応はどこか上の空だ。それは間違いなくさっきの出来事からで、醍醐や小蒔もそれを察している。話しかければ答えるが、それがどこか上滑りしているのが隠せないようでは重症だ。 それを証明するかのように、校門まで出た時、龍麻は足を止めて、 「ごめん、鞄忘れた。取ってくるから、先に行っててくれ」 そのまま返事を待たずに行ってしまう背を見て、小蒔がわざとらしい溜息を吐いた。 「京一のせいだぞ!」 「んだよ、俺は間違ったことは言ってねぇ!」 そう言い返しながらも、京一自身も落ち着かなかった。言ったことは事実だが、葵と共に居る龍麻にちょっとばかり焦って怒鳴ったのも事実だったからである。 「確かに、それはそうだが…少し様子がおかしいのも確かだな」 醍醐が首を捻ると、葵も眉を寄せる。 「あの様子では、一人だと心配だわ…」 その言葉に、京一はさっさと舌打ちと共に踵を返した。 「先、行っててくれ」 「え?ちょっと、京一!一人で行くなっ!」 小蒔の言葉など聞かない振りで、京一は既に見えなくなった龍麻の背を追って駆けだした。 取り残されたかたちの三人は、互いに顔を見合わせた。 「どうする…?」 「先に行っておくといっても、な…」 醍醐らとて、龍麻の変調は気になる。それを投げてラーメンを楽しむ…とはいきにくかった。 「じゃあ、こうしたらどうかしら?」 戸惑った風の醍醐と小蒔に、葵がにっこりと笑って口を開いた。
旧校舎の端にあたる教室に、地下への入り口はある。潜る時にはいつも、その教室のロッカーに鞄を放り込んでおくのが常だった。その教室の扉に手を掛けたところで、京一は龍麻に追いついた。 「ひーちゃんっ!」 しかし、怒鳴る京一の声にも全く龍麻は動じなかった。 「どした?先に行っててくれていい、つったろ?」 「お前を一人に出来るかよ」 「…さっきみたいな馬鹿は、もうやらないよ」 「だぁっ、そういう事じゃなくって!」 言いかけて、京一は改めて龍麻の様子がおかしいのに気づく。 龍麻は、まともに京一の顔を見ようとはしないのだ。 「ひーちゃん?」 「なに?ああ、ここにあった。……鞄あったし、出ようか?」 何気ない風を装いながらも視線を下げている龍麻に、京一はかっとなる。 「ちょっと…こっち、向けよっ!」 「……っ!」 伸ばした手を思い切り払われて、一瞬京一は唖然とした。 そこまで激しい拒絶を受ける理由がわからない。 しかし、それで引き下がれる筈もなく、京一は怒りに任せて再び龍麻の手を掴んだ。 「なに、怒ってるんだよっ!俺は…」 言い募ろうとした京一だったが、無理矢理向かせた龍麻の顔に浮かぶ苦しそうな表情に、それ以上言葉を紡げずに黙り込む。反対に龍麻は、堰を切ったかのように喋りだした。 「わかってる。わかってるけど、駄目なんだよっ!お前の顔見ただけで頭に血が上って逃げたくなったり、馬鹿みたく嫉妬してみたり、果ては戦闘中に呆けるなんて絶対自分でもおかしいと思うし止めたいんだけど、どうにもできない!みっともなくて情けなくって、自己嫌悪ばりばりで…それもこれも全部お前のせいだっっ!なのになんで、こんなとこまで来るんだよっ!」 殆ど喧嘩腰に喚き散らす龍麻の言葉が頭に染みてくるに従って、京一の頬には隠しきれない笑みが浮かぶ。 (これって、もしかしなくても…) 「へへへッ、ひーちゃん―――」 空いた片方の腕を掴んで、京一は堪えきれずに頬を寄せた。龍麻の言葉が頭の中をぐるぐると回ってそれだけでぶっ飛びそうになる理性を、今度はなんとか押しとどめる。笑み崩れた京一の顔を見たのか、興奮していた龍麻がぴたりと静かになった。 「今のって、告白って奴だよな?」 一瞬呆けた龍麻の顔が、次の瞬間音を立てるかのような勢いで真っ赤に染まる。 「ば、ちょ、な、何言って……」 まともに言葉にならない龍麻に、京一は笑って頬を寄せた。 近づきすぎるとまた暴走してしまうから、理性を保てるぎりぎりの範囲で、言葉を紡ぐ。 「ひーちゃんが、好きだ」 「……っ」 「こないだは、言いそびれたけど、よ。ひーちゃん…龍麻が好きだ。…多分ずっと、好きだった。俺、馬鹿だから気が付かなかったけどさ。言うの、遅くなっちまったけど…間にあったよな?」 その問いに、龍麻は真っ赤になって唇を噛んでいる。 「ひーちゃん?」 「けど…俺、みっともなくて…」 龍麻の言葉の意味が分からずに、京一は首を傾げる。 「みっともない?」 「…お前の顔見ただけで、頭白くなって、まともに話も出来なくなって…さっきもあんなに…みっともないだろ、そーゆーの」 俯いてぼそぼそと喋る龍麻に、京一はこみ上げる衝動を堪えるのに多大な努力をしなければならなかった。 「ひーちゃん、そりゃ一緒だって」 「……?」 「俺も、ひーちゃんの顔見ただけでヤバいってこと。抱きしめて、キスして、押し倒したくなる」 「お、押し倒すってっ…」 直接的な京一の物言いに、龍麻が絶句する。 「現に今も、かなりヤバいんですけど?」 そう言って腰を引き寄せれば、龍麻は狼狽えたように目を伏せる。 けれど、伝わってくる熱は、同じ。それが嬉しくて京一は笑った。 「けど、その前に…返事、聞きてェよ」 耳まで赤く染まった龍麻が、ゆっくりと口を開く。 「俺も…」 「ひーちゃん?」 「俺も、京一が好きだ」 ようやく貰った答えに、京一は我慢を放棄する。 「好きだ、龍麻―――」 その言葉と共に分け合った吐息は、今までのどれよりも熱かった。じきに上がる熱を堪えきれずに、自然口づけは激しいものになる。 じきに立っていられなくなった龍麻を追うように、京一もその場に座り込んだ。 けれど、足りない。 身体の奥底から突き上げてくるような衝動は、もうキス一つでは収まらない。 「京一?」 「わりィ、もう限界」 切羽詰まった声に、一瞬龍麻がぴくりと身を引く。 「…京一」 「駄目か?」 そう尋ねれば、龍麻はやっと聞き取れる程の小声で答えた。 「聞くな、そんなの。俺も…一緒だし」 「ひーちゃん…」 許しを得た京一の指がシャツをたくし上げて肌に触れる。その熱さに、京一に溺れかけたその時――― ふと頭を過ぎった異質な感覚に、京一は眉を寄せた。 (なンか…忘れてる、ような…) 京一の思考が止まったその一瞬。 「ひーちゃん?京一?なにしてんの?遅いよッ!」 聞こえてきた威勢の良い声に、二人は飛び上がるようにして離れた。直後、がらりと教室の扉が開かれる。 「…何してんの?そんなとこで」 小蒔が訝るのも無理はなく、京一と龍麻は埃だらけの旧校舎の床に直接座り込んでいる。おまけに龍麻の学ランは、シャツのボタンまで外れて半分はだけられている。
奇妙な沈黙がその場を支配したのは一瞬。
そしてそれを破ったのは葵だった。
「龍麻…血が付いてるわ。どこか、怪我をしているんじゃない?」 「え…」 葵が差したのは、龍麻のシャツに擦れたように残る、血の跡。 「え?ひーちゃん怪我してたの?だから様子がおかしかったんだ?」 「龍麻、もしかして俺達に心配をかけまいとしてたんじゃないだろうな?水くさいぞ」 「え、べ、別に俺は…」 「結構飛んでるよ?ちゃんと手当てした方がいいって!」 「怪我じゃないよ、大丈夫だから…」 しどろもどろになっている龍麻を横目に、京一はぎりりと歯ぎしりして葵を睨んだ。 (そりゃ、見事なフォローだったけど、よ…) あの、一瞬の硬直した空気が、見事にかき消えたのは葵の一言のお陰だ。それは感謝する。感謝はするが、それとこれとは別物だ。 葵に良いところを邪魔されるのは、三回目。 仏の顔も三度まで―――これ以上は我慢できない。 しかし。 「美里…」 京一の少々物騒な視線にも、全く動じることなく葵はにこりと笑う。 「なあに?」 その笑みに一瞬気を削がれた京一の背後から、龍麻の切羽詰まった声が響く。 「大丈夫だからっ、小蒔、服を剥ぐのはやめてくれって…っ!」 「ひーちゃんの大丈夫ほど当てにならないものはないよっ!ほら、葵も何か言ってやってよ!」 「小蒔ったら―――」 葵が笑みを浮かべて小蒔の方へ足を踏み出したその一瞬、すれ違い様、京一の耳に小さな囁きが落とされる。 「あんまり余裕がなさすぎても、駄目だと思うわ?」 「……?」 京一に聞き返す暇を与えず、葵はそのまま困り果てている龍麻の元へ行ってしまう。 残された京一は、葵の真意を測りかねて首を傾げる。 (…アイツ、龍麻の事が好き…なんだよな?なんであんな…) 言葉には嫌みが無く、本当にこちらを思いやってのもののようだった。京一に『恋敵』宣言までしておきながら、何故あんな…京一を応援しているとも取れる言葉を告げるのだろう。 しかし、京一が考えに沈めたのも一瞬だった。悲鳴じみてきた龍麻の声が、京一を現実に引き戻したのだ。 我に返って見れば、小蒔が今にも龍麻の学ランを奪い取りそうになっている。幾ら何でもあれは……自分ですらまだ脱がせていないのに、見過ごすことは出来ない。 「ひーちゃんっ!」 京一は龍麻を救出すべく、小蒔との間に割って入っていった。
「ったく、つまんないよね、もうちょっとだったのに!」 王華への道すがら、小蒔は不満そうに唇を尖らせている。その視線の先には、二人して先に歩いて行ってしまった京一と龍麻の姿がある。もう少し、というところで、京一に龍麻を浚われたのが、小蒔にはよほど面白くなかったらしい。 当初の目的を忘れている小蒔に、葵は苦笑して声を掛けた。 「小蒔…」 「わかってるよッ!けど、ひーちゃんが取り乱すなんて滅多にないから、つい…」 えへへと笑う小蒔に、悪気はまるでない。 「桜井…あまり龍麻を虐めるなよ」 一応咎める醍醐の声にも力はなく、小蒔は肩を竦めただけでその言葉に懲りた風はなかった。 「京一が来なければ絶対いけてたのに!けど、ホントに、あの二人って仲が良いよね…」 「そう、ね…」 葵はくすりと笑って、 「ちょっと、妬けるわよね?」 親友の意外な言葉に、小蒔は目を丸くし、醍醐は絶句する。 「あ、葵?京一の馬鹿のことなんか、気にしなくてもいいんだからね!ひーちゃんが京一と一緒なのはいつものことで…」 「あら小蒔、そういう意味じゃないわ」 「じゃ、じゃあ…」 「あんまり仲が良いから、ちょっとだけ、そんなことを思っただけ」 狼狽えている親友と、それに困ったように目を寄せている醍醐を尻目に、葵は胸の裡でそっと呟いた。 (本当に、どっちに嫉妬してるのかしら…ね) 葵は、京一のことが気に掛かっている。傍らの親友は知らないことだが。 けれどそれは、龍麻が転校してくるまでは自分の中にあることすら知らなかった感情で。 そうして、京一と同じように龍麻が気に掛かるのもまた、葵の中では真実だった。 その二人が惹かれ合っているのを、自分は喜んでいるのか悲しんでいるのか―――教師の訪れを遠回しに教えてみたり、逆にわざと邪魔をするような行為に走ってみたり。葵自身にもよくわからなかった。 一つだけはっきりしているのは、やっぱりあの二人が好きだという変わらない真実だけ。 「さ、行きましょう?」 にこりと笑う葵は、まだ狼狽している小蒔達を余所に、ほんの少しだけ足を速めた。 目の前で、いつもよりほんの少し肩を寄せている二人に追いつく為に。
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