タイトル |
著者 |
レーベル名 |
定価(刷年月),個人的評価 |
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『神の熱い眠り 〈ワーシング年代記1〉』 |
オースン・スコット・カード |
ハヤカワ文庫SF |
本体:680円(95/5)、★★★★☆ |
"The Worthing Saga" の長編部分を本書<ワーシング年代記1>として、短編を<ワーシング年代記2>として翻訳している。
人類の末裔が他の恒星系に植民し繁栄した時代。ある朝、村を守っていた力が失われ、伝説の人ジェイスン・ワーシングが現れた。不思議な力を持つワーシングは一万年以上にわたるワーシングの世界の歴史を明らかにする。
ワーシングは悲しみ、苦しみを背負っていて、そのままだと「エンダーのゲーム」の続編のように重ぐるしい話になってしまうところを、歴史にしてしまう事と、記録者の少年を入れることで救っている。ぎりぎりで宗教っぽさが嫌みにならずにすんでいてほっとする。話の魅力と語りのうまさが発揮された素晴らしい作品。
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『キャピトルの物語 〈ワーシング年代記2〉』 |
オースン・スコット・カード |
ハヤカワ文庫SF |
本体:544円(95/8)、★★★☆☆ |
<ワーシング年代記1> と同じ歴史をもとにした短編集で<1>の中で既に語られた逸話も取り上げられている。長編を読んでワーシングの全歴史を知ってしまった後では、個々のエピソードではスケールが小さく感じられた。短編のほうが先に書かれていて、もとの版では一冊だったというのもうなずける。
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『ジェットエンジンに取り憑かれた男』 |
前田孝則 |
講談社文庫 |
本体:641円(92/6)、★★★☆☆ |
日本でのジェットエンジン開発の歴史を語る。第二次世界大戦の末にすでに日本でジェットエンジンが開発されていた。しかし、12分間のテスト飛行をしたのみで終戦を迎え、その後の7年間の航空関係の研究禁止で他国に大きな技術差をつけられてしまったそうだ。その後は部品の製造やエンジン整備から再出発していく。そのあたりは、何かで読んだ日本IBMの歩みにも似ている。ジェットエンジンという事で軍事に関係が深く、軍関係の記述が多くあり興味がそがれた。
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『普及版 日本文学全集 第一集』 |
清水義範 |
集英社文庫 |
本体:447円(96/2)、★★★☆☆ |
「普及版 世界文学全集 第T期・第U期」と「普及版 日本文学全集 第一集・第二集」まである。
ともに、古典文学のパロディ集になっている。この日本文学の第一集では「古事記」、「源氏物語」、「方丈記」など9編が取り上げられている。「世界文学…」よりは読んだ事がなくても、楽しめる内容だと思った。「源氏物語」に魅せられた女教師の授業風景だとか、「平家物語」の解説が、いつもまにか現代社会への不満になっていたりと解りやすい。教科書で少しだけ知ってる他は、元の本を全然読んでないので、比較しようがない。
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『マウント・ドラゴン 上・下』 |
プレストン&チャイルド |
扶桑社ミステリー |
本体:610円・629円(98/5)、★★★★☆ |
いやな上司と単調な仕事に嫌気がさしていたカーソンに、最重要機密の実験への移動が届く。何も知らされずに赴いた研究施設 "マウント・ドラゴン" では、驚くべき研究が行われていた。
良く出来たB級映画という感じで、押えるところをきちんと押えてエンターテインメントに徹している。研究所の創設者のスコープスの偽善ぶりや、彼と対立するかつての共同研究者レバイン教授の存在が話を盛り上げている。
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『さらば、わが青春の『少年ジャンプ』』 |
西村繁男 |
幻冬舎文庫 |
本体:600円(H9/11)、★★★☆☆ |
長期に渡って「少年ジャンプ」編集長を勤めた西村繁男さんの "ジャンプの歴史" 。懐かしい漫画家・原作者の名前がたくさん出て来る。現在も活躍中の人もいるので、"懐かしい" は失礼だけど、少年漫画を読まなくなったので懐かしい。本書は少年漫画の頂点に立っていた時代の「少年ジャンプ」の話なので、ほぼ漫画の歴史としてその時代を感じる事ができる。また、上司への不満、臨時雇用者の組合との対立、上司と部下の間の調停、後継者の育成など、会社員の物語としての一面もある。この本に影響されて土田世紀さんは「編集王」という漫画を描いたと思うのだが、実際はどうだろう。
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『8(エイト)上・下』 |
キャサリン・ネヴィル |
文春文庫 |
本体:各705円(98/9)、★★★☆☆ |
すごく読みたかった本なので期待しすぎた。悪い訳ではないけど、良くもない。「モングラン・サービス」というチェス・セットに古来からの秘密が隠されていた。それを手に入れようと命懸けで争っている人々がいた。現代のコンピューター技術者の女性の話と、フランス革命前後の話で「モングラン・サービス」の謎に近づいていく。上巻ではじっくりと話のお膳立てをして下巻に、と思っていたら、下巻での展開も遅い。話の中で凄い秘密だと言い過ぎて最後に失望させられた。チェスという題材を使った謎はなかなか良かったが、錬金術で説明する段階で、魅力が減った。錬金術はやはり化学でしかないと思う。それに、主人公側が対立する側より正義だと感じられないのも残念だ。
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『覆面作家の愛の歌』 |
北村 薫 |
角川文庫 |
本体:514円(H10/5)、★★★☆☆ |
"覆面作家シリーズ" 連作短編集の2冊目。北村さんも好きだけどイラストの高野文子さんも好きなので、ほんとにいい本だなと思う。大富豪のお嬢さんで美少女のミステリー作家・新妻千秋は、屋敷ではおしとやかだが外に出ると人が変わって態度がでかくなる。彼女が天才的な推理力で事件を解決する。彼女の破天荒な性格、編集者とその刑事の兄とかのコミカルなキャラクターで突っ走った一冊目より、事件関係者の心理に触れる繊細な内容になって安定感を感じる。逆にこのシリーズ独特の雰囲気が減って1冊目が好きな人には残念かも。
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