パンツ1枚で大勢の男たちとともに、おれは訳も分からずに「レース」を走りはじめた。――人の言葉を発する犬のコンちゃんとともに、奇妙な生き物や訳ありの人間から逃れ、不条理でへんてこりんな世界からの脱出を試みる。管理化された世界の不気味さがじわじわと伝わる近未来不思議冒険物語。
男たちがパンツ1枚で逃げ出すところから始まり、訳も分からないまま主人公ひとりの逃走になっていく。何も考えずに書き始めたかと思うような話だが、「くわすです」など、片言の言葉を話す犬の登場などで、だんだんと面白くなっていった。荒廃した近未来を舞台にした『アド・バード』や『水域』などの一連の作品と共通の世界のようだ。
言葉を話す犬や筏の男など、様々な未知の動物や不思議な人間が、逃げている主人公と関わって行く。どんな世界の生物にも、それぞれの生き方があると言った感じが、椎名さんの世界観として貫かれている。
主人公がパンツ1枚で走っている謎など、この世界の事が読み進むうちに明らかになっていくが、ラストの展開はやや唐突だった。これからと言うとこで終わっていて、続きを読みたくなる。
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