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本の感想 2007年03月

『日本沈没 上』, 小松左京
『日本沈没 下』, 小松左京

タイトル 著者
レーベル名 定価(刷年月),個人的評価

『日本沈没 上・下』 小松左京
小学館文庫 本体:各571円(06/01初、06/06,3刷)(同、06/03,2刷)、★★★★☆
 伊豆・鳥島の東北東で一夜にして小島が海中に没した。現場調査に急行した深海潜水艇の操艇者・小野寺俊夫は、地球物理学の権威・田所博士とともに日本海溝の底で起きている深刻な異変に気づく。折から日本各地で大地震や火山の噴火が続発。日本列島に驚くべき事態が起こりつつあるという田所博士の重大な警告を受け、政府も極秘プロジェクトをスタートさせる。小野寺も姿を隠して、計画に参加するが、関東地方を未曾有の大地震が襲い、東京は壊滅状態となってしまう。

 1973年に刊行され、映画化、ドラマ化、劇画化された大ベストセラー作品。2006年に再映画化され、当初から構想のあった第二部が谷甲州さんとの共著として出版された。これを機に読んでみる事にした。

 地震や火山噴火が頻発する日本。近海の異常に気付いた一部の研究者らが極秘の調査を開始する。やがて最悪のシナリオが明らかになってくる……。前半は話の進みが遅くて少し退屈。“日本沈没”というキーワードを登場人物たちが遠回しに言うのがもどかしい。日本沈没までの経過を予想以上に地味に丁寧に描いていく。

 主人公の恋愛ドラマ部分は、当時の映画や小説の影響が色濃くて時代を感じる。それ以外の部分では古さを感じなかった。中盤からは、政治家や要人たちの世界的な政治の駆け引きに引き込まれた。また、地震や火山噴火などの地球物理学による小説として第一級の作品だと思った。登場人物たちの日本に対する想いにも心打たれる。

 下巻の最後は「第一部 完」となっており、既に続きの存在を感じさせる。日本沈没に劣らず日本人のこの後の話に興味がわく。