この男は人殺しです――。仮釈放となった中道隆太を待ち受けていた悪意に満ちた中傷ビラ。いったい誰が何の目的でこんな仕打ちをするのか? 孤独な犯人探しを始めた隆太の前には巨大な“障壁”が立ちはだかった……。殺人を犯した者の“罪と罰”の意味を問う。
NHKでドラマ化され文庫化されたので買ったがドラマは観なかった。殺人を犯してしまった青年が、社会に復帰するまでに待ち受ける様々な困難を描いている。犯罪者の家族が心無い人から受ける仕打ち、被害者やその家族の心の痛み、間違いを犯してしまった事への償い。刑期を終えて社会復帰する者を助ける保護司の存在など、犯罪者の社会復帰の問題に様々な角度からスポットを当てる。
仮釈放の隆太を待っていた中傷ビラ、彼の社会復帰に揺れる家族。更生しようとする彼を誘う昔の悪い仲間たち。中傷ビラの犯人探しのミステリを中心に、彼と家族を巻き込んだ様々な問題が起こっていく。その度に精力的に彼の力になる保護司の言葉が温かい。その助言は普通の生活の中での心の持ち方としても参考になった。
主人公を一方的に良い人として描くのでもなく、犯罪者の更生について様々な面から問題を提議しいて良く出来ている。被害者と加害者の問題は、それぞれ立場や気持ちがあり、簡単に正悪を付けられない問題だと思った。真剣に犯罪者の更生について考えた話にしては、少しドラマチック過ぎる部分はあるけれど、作者がこれらの問題について真面目に描こうとした姿勢は伝わってくる。
|