読んだ月別、ジャンル別のインデックスがあります。
■■本の感想タイトル・インデックス■■

本の感想 2005年10月

『暗闇 ホラーセレクション』, 尾之上浩司 監修

タイトル 著者
レーベル名 定価(刷年月),個人的評価

『暗闇 ホラーセレクション』 尾之上浩司 監修
中央公論社C・NOVELS 本体:900円(04/06初)、★★★★☆
 誰もが怖いと感じる究極の要素“闇”。「死」や「無」に通じる、何があるのか分からない真っ暗な空間“闇”。本書はそんな「暗闇」をテーマに据え、選りすぐりの作家たちが独自に「暗闇」を解釈し、恐ろしい物語を紡いだアンソロジーである。巻末にはアンソロジーをテーマにした井上雅彦と尾之上浩司の対談を収録。

「闇仕事」(井上雅彦)
窃盗団が農家の収穫を奪う事件が続発。郁男は家族を守るためにある人物に連絡をとった。
ラストがすっきりと理解できなかったけれど、テーマに合った暗闇の不気味な雰囲気が良かった。

「紛失癖」(花田一三六)
小さな頃から物をよく失くした健人。受験勉強中に消しゴムが失くなった事から…。
SFっぽいコミカルな話。ラストは意外だったが、この話に相応しかったかは疑問。

「ダンシング・イン・ザ・ダーク」(奥田哲也)
大統領が処刑され、私は秘密警察から新政府の警察に移り、現在は猟奇的な連続殺人事件を追っている。
こういう設定のシリーズ物ってあるよなあ。典型的で大掛かりな設定に退いてしまった。

「ブラインドタッチ」(山下定)
オフィスで一人残業する男。彼の意識に関係なく、手はキーボードを素早く叩き続けた。
設定は面白いと思ったが、能力の限界などに矛盾があるのが気になった。

「棲息域」(宝珠なつめ)
いじめられ廃工場に行かされた彩子。その闇に潜む何かに助けられ、その何かとの交流が始った。
良くあるパターンかも知れないが、きっちり書けていて楽しめた。

「おごおご」(友成純一)
バリ島に旅行に来た竜彦と伸子。魔物が徘徊する正月には外に出てはいけないと忠告されたが…。
凄まじいラストには圧倒させられた。

「戦場にて」(菊地秀行)
出世頭と言われた包助が村の者二十余名を刺殺した。信長は包助から理由を聞き出そうとする。
短くて、ストーリーを楽しむ程ではないが、流石にまとまっている。


 以上の7作品を収録。巻末の対談はたくさんのホラーアンソロジーの書名が並び、ホラーアンソロジーの歴史を概観することが出来る。4編収録の『モンスターズ1970』(中央公論社C・NOVELS)から一転して、総ページ数はほぼ同じままの7編収録なので、一編一編が短すぎる感じがした。