ONE PIECE THE MOVIE 『オマツリ男爵と秘密の島』


このページについて

これも毎度の事ですがネタバレ満載です。
その割には一回ポッキリ観賞でかなり記憶も曖昧になって、
間違いなど大量にあると思われます;ご容赦くだされ;台詞なんて特に嘘八百です、きっと。

 

総合評価はにちかいということで。

もしもう既に「オマツリ」見てきて 「コレはちょっと・・・」「全然駄目じゃん!」と思われた方には、
やや盲目的な意見を述べている場合もありつつ、気分を害してしまう場合もあります。
ご注意ください。

そしてサイトさまに登録申請させて頂きました。
(アイコンもお借りしてます・・・可愛い・・・!)
おお、何にも無いワタシんとこが登録させて貰うのも、非常に場違いな気がしますけども・・・

素敵な企画でございますので興味あられる方は是非。

 

 

 

 

 

ではまず始めに。



原作「ONE PIECE」は勿論大好きですが、アニメの方は殆ど見ておらず映画版も今まで見た事が無い
ワタクシが何でこの映画を見に行きたい・・と思ったかというと、

・監督が細田守氏


という点で、まず「お?」と思い、何となく個人さんHPやら掲示板やらの感想などを見ていると

チョビヒゲって何だー!!
(ジャンプ巻末コメントでも尾田氏も書いてましたね、チョビヒゲ)

とか、皆さん結構意見も感想も違うのですが、「怖い」とか「子供泣いてた」とかという
それってどうなのよ・・・的感想に、かえって興味を引かれてしまい、ついには女○◎才一世一代の
愛と勇気を振り絞って、見てまいりました。
(しかし小心者なので「わんぴーすおとないちまい」と窓口で宣言する度胸は無かったので
オンライン座席予約で。くう、定価かよ・・・ ここ数年、定価で映画を見た事なんてねえよ!!
)

 

>監督が細田守さん。

知ってる人は知っている、知らない人は勿論知らない、アニメ演出家の細田守さん。

えー私なんぞは『デジモンアドベンチャー』の映画版でその独特の作品っぷりに
とても心動かされた者なのですが、デジモン自体もなあ、ちょっと前の子供かよほどヲタクしか知らないよなあ・・・
『ハウルの動く城』を、監督する予定だったお人らしいです。
結局色々経緯を辿って宮崎さん自ら監督されたそうです。

ま、そんな訳で今回もやはり細田色の強い作品に仕上がっているかと思います。
細田色を説明せよ、と言われれば・・・いや、難しいのですが・・・なんとなく、こう、細田ァ〜て・・・・・(待て)
まあ1番目に付くのは

・中間色
・クニャっとしたキャラクター

でしょうか・・・。ん?これは作画の領域なんですけど・・・まあ、演出の一環って事で。

 

>絵とか動きとか


全編通して、背景がもの凄く美しい。
こんなに頑張って良いの!?元とれんの?!と心配してしまう程です(余計なお世話です)

男爵登場あたりの、お祭りっぷりの素晴らしい遊園地的な町並みが、凄いですよ・・・
思わず今のシーン、止め絵で見せてくれぇ〜と叫びたい。

で、キャラクターの方は、いたってシンプルです。
「(テレビよりも)原作絵に似ている」という感想もあれば、「全然ワンピースの絵じゃないじゃん!デジモンじゃん!」
という意見もありますが、
個人的にはそこまで違和感無く見れたし、原作のあの絵を、いかに動かすかを、研究した感じです。
でもやはり独特です。時々わざと線を乱れさせているのは、個人的にはなんだかイキオイ良くて好きです。
キャラクターの着ている服もとてもおしゃれで可愛いですね〜今回。チョッパーが可愛い・・・きゅんきゅん。

色合いも中間色で、影が無いしハイライトも無い。シンプルです。
かなり背景とは質が違うため、 悪い意味でなく背景から「浮いて」見えます。
通常ならキャラクターを書き込んで、背景はやや抑え目に・・・というのが、わかりやすく「目立たせる」手法かなーと思うんですが
これは逆です。不思議な感じでしたなあ・・・その分動きが凄く目立ってて。

動きもとても凄いし面白かった・・・。くにゃっと柔らかく、しかしスピーディーだった。
先にも述べた様に、私は殆どアニメのワンピースを見ておらず、見ても
「あー原作のあの表現を、アニメとして動かしたら、こうなるんだなー」と単に思うんですが、
(決してそれが悪いという感想ではなく、自分の想像を超えたアニメにしか出来ない良さ、スゴさというのを、実感する機会が少ないという意味です)
今回は、紙媒体では出来ない、アニメならではの良さ、つまり「動き」の持つ面白さとかスゴさとか
スピード感を存分に堪能しました。ゾロなんかとてもカッコ良かった。そしてルフィの伸び具合は面白いが相当気持悪かった(笑)

 

 

>オープニング

物語の始まりは一つの手紙から

もし君が、

海賊の中の
海賊の中の

海賊の中の
海賊ならば

信頼する仲間をつれてこの島に来るがいい

というなかなか印象的な一文から始まり、もう異様に美しい海の風景。
俯瞰の視点で、どこまでも青い海を一筋の線を描いて、滑るように船が走る

・・・という、もうしょっぱなからやられたぜドチクショー!!!!と、痺れました

気分は一気に南の海。バカンス。もうモルジブ風。そして「映画だー!!」映画を見ているんだ!という気分です。
掴みはおっけーです。ホントに美しいんだよ・・・

 

>第一の試練

オマツリ男爵からの手紙と地図を受けて、バカンスの島「オマツリ島」に上陸した麦わら一味。
待ち受けていたのは、頭に「葉っぱ」の生えた無数の部下を引き連れた、オマツリ男爵。
男爵の「『地獄の試練』 受けてみよ〜!!」という挑戦に、
「お前らが負けるわけねえ」by船長
に、うっかりジーンと来ちゃった面子、いつものノリで挑戦を受ける事になります。



最初の試練は『金魚掬い』(ただし超デカ)でした。
ここはチームワークもバッチリ。
私が見に行った時は、サンジの小ネタでやたら客席がウケてました。
うっかり海に落ちたチョッパーを泳げないのに迷わず助けに飛び込む船長(結局サンジが助けてましたが)
描写としては、海の中でルフィがあれだけ動けるのはオカシイかもしれませんが、
もうこれは「仲間の為に頑張る船長ブラボー」という演出ということで。


海の中に沈んだ無数の海賊船があって、
この辺から「何かあるよな」と思わせる展開になってくる訳ですが、
まだまだ冒頭部分は楽しくて、お祭りだ〜東映まんが祭りだ〜という感じです。


私的意見ですが、映画の前宣伝ではこの「お祭りだ〜」という楽しそうな雰囲気だけが全面に出すぎていて、
イマイチ良い宣伝になっていない気がします。タイトルからしてもうちょっと、こう、な!
ジャンプ誌面の宣伝ページなんて見てると、殆ど見る気になれなかったのですよ・・・
もうちょっと後編のシビアっぷりも宣伝してみたら、興味を持つ層もいるかと思うんですが・・・。



>第二の試練



負けを認めないオマツリ男爵はが強引に第二の試練『投げ輪レース』を始めてしまいます。
チョッパーとロビンは、それぞれに何かを感じて島について探ろうとします。
ロビンはこの島に
「この島にしか生息しない花、リリーカーネーション」という花がある事を知り、
チョッパーの前には、男爵の試練を受けずに逃げ出した、4人家族経営の『お茶の間海賊団』が。
そしてルフィの前には謎のチョビヒゲオジサンが登場し、麦わら一味を『チョビヒゲ海賊団』に勧誘です。
勿論あっさり拒否られました。(チーン)


チョビヒゲキター!
と思わず心の中で叫んでしまいましたですよ。
チョビヒゲです。まんまその通り、チョビっとヒゲを生やしている海賊団の船長です。
チョビヒゲ海賊団には決めポーズがあります、鼻の下に指を添えて「チョビヒゲ!!」です。
ま、アレですね、カッコ良いポーズではありませんです、ルフィさんにも大不評、
チョビヒゲ船長が何度か披露してあげても、無視いたしました、綺麗にスルーです、スルー。

・・・まさかコレがあの感動のシーンへと続くとは夢にもおもわなんだよ・・・・!

今回の映画は音楽もかなり良いナア、と思いましたが、ここのルフィとチョビヒゲ船長の追いかけっこの音楽効果が
楽しかったですよ。

もうひとつ重要なのが『お茶の間海賊団』
気弱で貧弱なパパ船長と、子供達です。パパはいつも子供達にカッコ良いところを見せようと弱いながらも頑張っております。

 


>どっちの料理ショー

第二の試練も辛くも勝利したが些細な事から諍いが生まれ、段々と一味は険悪な雰囲気に。
日が暮れても帰ってこないチョッパー、ナミとのいざこざの険悪さに耐え切れなかったウソップ、
「リリーカーネーション」を探しに出かけたロビンが、一人ずつ消えていきます。
異常に気が付いた残る面子も、それぞれに責任を押し付けあい、最後には
「(この島に来る事を決定した)ルフィのせいだ」、という事になります。



まあ、更にこの辺でどんどん不気味さが増して行くんですが、ややダレ所です。
輪投げレースと料理対決ではちょっとダレてしまいました。
映像的には悪くなく、小ネタではクスクス笑ってしまうんですが・・

ケンカをしている描写自体が結構長いので、だからこそダレ所・・・
2コンビのケンカっぷりがズルズルと引っぱられるので、見ていて憂鬱になってしまうし・・・

ナミはレースの途中でナミを置いて逃げた(これもまあ、実際に逃げた訳ではなく罠なのですが)ウソップを
「裏切り者!」と罵り、ウソップは「裏切りはお前の十八番だろ!」と返します。
サンジもルフィに(仲間がバラバラになってしまったのは)「お前のせいだ」と詰め寄ります。

普段の一味なら真剣なシーンでは絶対言わない台詞を、ポカポカ吐いてしまう訳です。
よく見たら、この険悪ムードも、実はオマツリ男爵の何らかの力が働いている訳ですが、
もうちょっと、この「オマツリ男爵の罠のせいである」という所を強調して頂かないと、
ただただ陰険になっていく一味に違和感を感じてしまいました。
この段々と『不協和音』が生じていく理由が、描写としては不十分だったのかなあ・・・と・

ロジャーの話が出たのはビックリですね。ナミがムチゴロウ(男爵の部下)の
「あの嵐の夜の前日に、ゴールド・ロジャーに会った」
という台詞に疑問を感じるシーンがあるのですが、
ただ「ロジャーは20年以上前に処刑された人物である」
という事がわかりやすかったから、小道具として名前が出ただけですけど、上手いなあ、と。

 

 

>第三の試練

もう付き合ってられない、居なくなった仲間を探そうと、 ゾロ、ナミ、サンジはそれぞれに行ってしまいます。
ルフィは一人「おれの仲間を返せ!!」と、男爵にかかって行きますが、
第三の試練「『射的』を開始した男爵は島にいる無数の男爵の部下に、一味を襲わせます。


危ない所を救われチョビヒゲ船長の秘密基地に連れてこられたルフィは、
チョビヒゲ船長もまた、過去に仲間を全て男爵に奪われて一人になってしまった海賊団の船長で、
それ以降、長い間一人で男爵に立ち向かって来た事を知り、そして男爵の狙いも知る事になります。


壮大な八つ当たり大作戦です。結束力の強い海賊団を見ると、妬まずには居られないという・・・・。
冒頭の「もし君が、海賊の中の海賊の中の・・・」と続く文面は船長ただ一人に宛てられた挑戦であり、
実はこれは海賊団の戦いというよりも、船長であるルフィの戦いでした。
という訳で後半は、もう殆ど他のメンバーに良い所は無いです。
辛うじて真相に迫ろうとしたロビンとチョッパー辺りが、ちょっといい感じなだけで・・・。

前半のお祭りバカ騒ぎとは打って変わって、どんどん暗く、重く、孤独なストーリーへ転じていきます。
この辺のギャップがかなり見事・・・。人によっては違和感を感じるのかも。
OPや島に到着した辺りは、空が本当に青くて美しいのに、どんどん日が暮れて夜になって真っ黒になって・・・という風景も、
展開に沿わせていて見事だなあ・・・。



「リリーカーネーション」を目指すロビンの前に、男爵が現れます。
「リリーカーネーションは死と再生の花である」と。

巨大なリリーカーネーション、この形、なんだかサッパリわかりません。
到底花とは言えない、なんとも言い難い形です。何かの象徴なんだろうか・・・
不気味といえば不気味、マヌケといえばマヌケ。
リリーカーネーションのネーミングは、リーンカーネーション?
語源はイマイチわからないんですが、輪廻転生という意味だと思います。
昔タクティクスオウガというゲームには、リーンカーネイトという魔法があったなァ・・・と
古めかしいゲーオタなおもひ出を思い出しました。

 

 

>VS男爵その1


斬られても血も流さない男爵の部下達の前に、一味は一人、一人と捕まります。
仲間の本当の危険を察知したルフィは、「一人で男爵に挑んではいけない」というチョビヒゲ船長の静止を振り切り、
リリーカーネーションの元へ向います。


グッと来たのが、秘密基地を飛び出していくルフィは麦わらを被っていない。
置いて行った訳ではなく、本当に忘れていった様でした。
仲間が一人づつリリーカーネーションに飲まれていく様子を前にした時の、
ルフィの伸ばしっぷりが怖いです。確かに怖いです。ロクロ首です。恐怖で泣きます。
いや、私が見に行った時は、近くのお子様は泣いてませんでしたが、
コーチョクはしてました、多分。
絵的にも怖いのですが、だんだんとルフィが狂気じみて行くのがまた怖いのですよ。

ここでリリーカーネーションに飲まれていく順番が、まあ、だいたいルフィが仲間にしてきた順番の逆ですねえ・・・
チョッパー、ロビンだけ逆で、サンジ、ウソップ、ナミ、ゾロの順番で飲まれて行きます。
チョッパーとロビンが逆になったのは話の都合か、もしかしたら
「仲間にした順番」ではなく「登場した順番」なんだろーか。確かチョッパーより敵としてのロビンの方が
先に登場しているよなあ・・・。


仲間を全員失ったルフィを捕らえて、男爵は問います。
「絶望のままに生きるか、仲間と共に死ぬ事を選ぶか」


答えないルフィに男爵は「やはり死を選ぶのか」と死を与えようとしますが、

答えなかったのは「死を選んだ」のではなく、答える以前に多分ルフィの時間は止まったんだと。
いや、うーん、何にも無くなった、という方がピッタリ来るかなあ・・・。
このときばかりは『海賊王になる』夢も、『シャンクスに再会する』という夢も、
多分何にも無くなったんでは無いでしょうか。結局それこそルフィの「死」だと思いますが・・・

 

 

>VS男爵その2


地下基地に再び匿われたルフィは、力も気力も無くしてしまいますが、
チョッパーに助けられた『お茶の間海賊団』の1番下の女の子、デイジーちゃん(お母さん譲りの、小さな心の声も
聞こえる不思議ちゃん)の、「トナカイさんが貴方の名前を呼んでいる」という言葉に、
そしてチョビヒゲ船長の「お前は一人じゃない」という声に励まされ、再び男爵の下に向います。

秘密基地を出て行く時の、深く麦わらを被って、口元だけ笑顔を見せながら
走って行くルフィがなんか凄く良いナア・・・痺れます。
他のシーンでも要所要所でルフィの表情は目元が見えないんですが、それが凄い良いナア・・・。

この物語ではルフィは嘗て無い程の「弱さ」を見せる訳ですが(負けだし)、それが全然恰好悪くないです。

そして援護するチョビヒゲ船長にも男爵は「お前の仲間はもう居ない」と襲い掛かります

ここでアレですよ、
チョビヒゲです、チョビヒゲキター!!です。
散々
無視してきたチョビヒゲポーズを、(二回目に基地から出て行く時も、さり気無くルフィは無視していると思われる)
チョビヒゲ!ってやるわけですよ、ルフィが。そして『お茶の間海賊団』も。

うおおお〜ん!!思わずチョビヒゲ船長も、ウルウルしますよ!アタイもウルウルしますよ!良かった〜とホッとしましたよ。
チョビヒゲ船長良かったなあ!ルフィも良かったなあ!一人じゃなくて良かったなあ!仲間がいてよかった〜
もうお前アレだ、立派なチョビヒゲ海賊団の船員だ!!(ええ〜!!)
・・・やっぱ戦闘要員かな、それ以外なんも出来ねえよな・・・


ついにリリーカー
ネーションの撃破しますが、そこには仲間の姿は無く、巨大なリリーカーネーションは
無数の「後悔と絶望の矢」になり、一斉にルフィを射抜きます。
実は男爵の肩に生えていた可愛いお花ちゃんこそ、リリーカーネーションの本体であり
(と思ったのだが違ったりして・・・;)
可愛いお花ちゃんはグロテスクな物へ姿を変え、その中には取り込まれた麦わら一味の姿が。

男爵の放つ矢は、あの嵐の夜から今までの、男爵の悲しみと後悔と絶望が具現化した物です。
男爵もまた、ただの悪い奴ではなく、人を妬まずにはいられなかった、絶望の中を生きてきた孤独の人でしたね・・・
海賊時代の男爵は、仲間を愛しなにより大切にしてきた、本当に団結力の強い海賊団だった。
ムチゴロウの元気になった様子とか、それを嬉しそうに見ていた男爵が・・・あかん、泣けるです・・・(号泣)

本体を見せたリリーカーネーションは更にグロテスクです。
おそらくこれまでも奪った海賊たちを、そして男爵の元々の仲間である部下達を飲み込んで、
死ぬ事も老いる事も無い生きる屍へと「再生」してきたんでしょう。
細かい設定は不明ですが、充分にグロテスクで悲しい事です。
ただただ「仲間を失いたくない」「一人は嫌だ」という男爵の想いに、リリーは寄生してきたのでしょう。

まだ皆の声は消えていない、というデイジーの言葉に、無数の弓矢が刺さったままに、
白目を剥いて男爵に向って歩き出すルフィはまたもや怖いです。矢がガッションガッションゆってるのがまた・・・。
ここに限らず全体的にルフィの動きが、滑らかでいて不気味なんですよ、カッコ良いシーンも沢山ありますので、
これはもうホントに動きが凄いよなあ、と。

 

最後の最後にルフィを、そして全てを「助けた」のは、気弱なパパ船長でした。
勇気を振り絞って向ってくるリリーカーネーションの本体に、男爵の弓と矢で
攻撃を仕掛けます。


崩れ落ちるリリーカーネーションから溢れ出す「臓器」達を、必死に掻き集める男爵。
後悔と絶望の矢も消え去り、男爵の「葉っぱ」の生えた部下達は、あっと言う間に
植物へと姿を変えてしまったのでした・・・

「逝かないでくれ」、「一人にしないでくれ」と泣きながらリリーの残骸を集める男爵の姿には、
本当に胸が詰りました・・・
これまでも劇中で散々味あわせてもらってきた「たった一人になった絶望と悲しみ」(ルフィの、チョビヒゲ船長の、そして男爵の)を、
最後にガツンと叩きつけられた・・・。
「臓器」は何なんでしょうね・・・。リリーそのものなのか、リリーが喰らってきた多くの海賊たちの物なのか・・・。

 

 

真っ黒な画面の中、男爵の失われた仲間達の声がします。

「ずっと想ってくれてありがとう」「嬉しかった」と、

「でもあっけなく死んでしまったオレ達を、忘れても良かったんだよ」

「あいつらみたいに新しい仲間を見つけても良かったんだよ」と。


 

 

 

 

 

 

>ものがたりの最後

 

全てが終った後に、倒れているルフィを心配そうに覗き込んでいるのは
チョビヒゲ船長と『お茶の間海賊団』の面々です。
そこに遠くから、麦わら一味がの〜んびりのほほ〜んとやってきます。
「何こんなトコで寝てんだよ」、と。

仲間の声を聞きながら、ルフィはただ目を閉じて、満足そうにいつもの様に「ししし!」と笑うのでした。

めでたしめでたし

 

ってコルァ待てやー!!!!!!、ちょっとツッコミ入れたいこの終幕。

テメエらー!船長の心を知れ!!
と、ちょっとだけ、そう、ちょっとだけ八つ当たりはしたいよな・・・。
観客としては、いつになく「弱いルフィ」を見て、頑張れ頑張れと思って、
よく頑張った、良かったなあ、私は見ていたぞ、君の、そして君の仲間達(この場合、チョビヒゲ船長とお茶の間海賊団)の戦いを!!
と思っているから、余計に、お前ら〜と、ちょっと思っちゃう(笑)

麦わら一味は、この一連をすっかりポッキリすっきり記憶にございません状態だった、というオチ(オチ?)です。
ナミに至っては「何、この島」と言っていたので、最初っから記憶は消えているんだろうか・・・。

でもチョッパーは、再会したデイジーと一緒に大喜びしていたので、スッカリ全員の記憶が消えている訳では無いかと想います。
多分覚えているとするなら、ロビンとチョッパーなんだろう。ロビンも何か覚えているっぽかった気がします。
一味参入は1番日が浅いこの二人が、1番今回の物語に噛んでいた、というのも、ちょっと意味深いですね。



お前ら〜あんまり不甲斐無いと
船長がチョビヒゲ海賊団の船員(戦闘要員)になっちゃうぜ!!(なりません)

このあっさりとした、でも深読みもできちゃうよ・・・という物語の終わりが、結構好きです。
あっさりしすぎてハッピーエンドを実感出来ないんですけどね。男爵の事を思うと胸が痛いし。(まあ相当の悪事働いてますが)
まあ、ルフィにとってはこの結末こそが一番の幸せなので、立派にハッピーエンドなのですが。
最後にひっそり咲いた花は、男爵なのかもしれませんねぇ・・・ホロリ

 

 

 

 

 

 

>今回の映画


この物語の肝は、「誰かを助けて敵を打ち破るルフィ」ではなく、「負けて、誰かに助けられるルフィ」なんだと思いました。
あー珍しいもん見たなあ、まさかこんなモンが、しかもアニメの方で見れるとはなあ・・・という感じです。

ウソップが一人でも戦うと決めたけど怖くて仕方が無かった時に、
ナミがどうしようもなくなって、最後に「助けて」と呟いた時に、
チョッパーが生まれた時から自分の仲間なんて居ないと思った時に、
ビビが最後に全ての希望を失いかけた時に、
最後の最後に「誰か」とか「一人は嫌だ」とか「助けて」っていう叫びに、答えたのがこれまでのルフィだった様に、
(ゾロとサンジも、まあ、そういう場面もあったよーな無かったよーな。奴らは奴らで単体が強いからなあ・・・)
(そして多分ロビンもこの先そういう場面が来るでしょう。来て欲しい)
「誰かに助けてもらう」その立場に、今度はルフィが居たんだなぁ、と。

 

結果的にこれは紛う事無くルフィの物語(そんでもって船長の物語だよなあ、チョビヒゲ船長とか、男爵とか、パパ船長とか)
なので、もしかしたらサンジやゾロ、他のメンバーのファンにはやや物足りなかったりするのかもしれません。
私はチョッパーとルフィえこひいき目なので(勿論他のメンバーも好きなのですが)、キャラ注目視点的にもとても楽しませて頂きました(笑)
ロビンも凄く良かったなあ・・・美しかった・・・真相に迫った割にはあっさりやられてしまいましたが(笑)

それにしてもチョッパーが・・・可愛かったですよ・・・きゅんきゅん。青い子供服みたいなのを着てるのが!
果物を持ったまま街中を歩いて、墓場までたどり着くまでの一連が、段々と不気味さを増していく
ストーリーの中で凄く印象的でした。可愛いし・・・。

で、お子様的にはどーよ、という今回の映画。

確かにちょっと、怖いよなーとか、抽象的過ぎるかな・・・と思わないでもないのですが、
駄目な大人代表としては、それでも見て、子供なりに何かを感じとってくれるんじゃないかなあ・・と思います。

私も小さい時に、『漫画にっぽん昔話』の中でで、相当怖かった話なんかの方が、今でも思い返したりするのですが、
結構そういう解らないなりに何かインパクトを受けた物って、悪い意味で無く心に残っている事もあるんでは無いでしょうか
未来に「昔見たあの映画、ちょっと怖くてあんまり解らなかったけど何か覚えてるなあ・・・」とか思う元子供が居てくれたら
ちょっと嬉しいですね〜

ただし前宣伝的には「お馬鹿大騒ぎ映画」というイメージがどうしてもあったので、
何か「いつものワンピース」を想像して連れて行った親ごさん的には、やや
「何じゃコリャ―!」という気分になったかも・・・

しかし、お子様向け主体の映画を、やはり良い歳こいた大人が行くのは、ちょっとかなり相当勇気が要りましたが、
見に行ってよかったですよ・・・私的にはあのオープニングの海の色を大画面で見れただけでも、定価払っても後悔無かったですよ。
もう公開からだいぶ日も経っていたので、そこまで劇場もいっぱいという感じでは無かったのですが、
やはりお子様が多く、何か割と真剣に見ていたり一緒に笑ってたり、かなりビビっていたりと、
結構そういう雰囲気もよかったです。
流石にギャ―ギャ―騒ぎ出したらトホホ・・・と泣けましたが、周りの声が気にならない(むしろ楽しいかも)映画でした。

 

 

 

>もしも

まあ、今回は無事に大事な仲間を取り戻せたルフィですが、もしもあのまま仲間を失っていたら。

中盤で一度全てを失い、全部がカラッポになってしまったルフィはあの時点で実質的には「死んで」しまっているので、
あのまま生き残ったとしても、恐らく自分を取り戻せなかったと思います。

しかし終盤で、チョビヒゲ船長『お茶の間海賊団』という人々と共に、「一人じゃない」「仲間がいる」という事に気がついた
ルフィは、もしあのまま『麦わら海賊団』の仲間を本当に全て失っていたとして、どんなに悲しみと絶望に沈んだとしても、
いつかは自分を取り戻して、海を渡って行くんじゃないかなあ・・・という感じがします。
主題歌タイトルの様に「夢見る頃を過ぎても」、ルフィは海賊王を目指すんでは無いかなあ・・・と。

今回のストーリーは嫌がおうにも、原作の方で描かれた海賊団同士の船員奪い合いゲームである「デ-ビーバックファイト」
そして今展開している「ウソップ離脱」「ロビン離脱」辺りを意識させます。
意識して作成したとしたらタイミング的には「デービーバックファイト」の方かな、と思うんですが、
この「仲間を失う」という事を、更に重点的に、もう一人二人と言わずばーんと全員行ってみとけ!!というのが、
今回の「もしも」話なんではないでしょか。そこまでしてようやくルフィというキャラを、『(心理的にも)負ける』状況にまで追い込めたんでしょう。
この先、原作の方でも本当に仲間を失う麦わら海賊団というのはありうるかもしれませんが、
全てを一気に失うルフィ、というのは恐らく見る事は無いだろうなあ・・・と。


原作のルフィは良くも悪くもほぼ完成したキャラクターで、(それがワンピースらしさでもありますから)
ルフィが1話で「海賊王になる」と言いきったからには、ジャンプ漫画である限り海賊王になる未来が決まっているし
(連載打ち切りとかよっぽどの方向転換でも無い限りは・・・)
本当の敗北というのも難しい。

それを何とか、ワンピースらしさを失わない出来うる限りのギリギリで、「もしも」話を作ってみよう、というのが、今回の映画だったんでは無いのかな・・と。
充分に今回の話はワンピースらしくない、と思われる方も沢山いるんでないかなーとも思いますし、
実際「異色」ではあると思うのですが、個人的には一つの物語としても、ワンピースの映画としても、

おぉ、凄いもん見せてもらった・・・という気持になりました。



ま、それと同時にこれは一つの物語として完結した物であるのだよな、とも思う訳です。
『グランドライン航海中のある日』を描いている様であって、実際はそうで無いよなあ・・・と。
「架空の一日」と捕らえるのが良いかなあ、という程度には、この物語の前と後では、ルフィの中味が
変わっていてもおかしくない位なんでは無いかと。

本来受け手が共感するタイプのキャラクターでないルフィを、共感できる立場まで引き擦り降ろす事というのは、
尾田氏的にはあまりやりたくない、やろうとは思わない事なのかもしれませんし、この後やってみる事なのかもしれません。
この映画の出来事を経たルフィは間違いなく何らかの大きな心理的成長を果たしただろうと思いますが、
それとはまた別にして、原作の(そしてそれに付随するアニメの)方では今後どうなっていくのか、また楽しみにしたいと思います。

という事で最後に一言申し上げて、閉めたいと思います。




船長ー!好きだーーーーー!!!

 

 

 

 

 

 

 

という訳で鬼のように長い感想になりましたが、これでも頑張って削ってみたつもりです・・・(え)
そのうちまた手を加えて短くしたいなあ、とも思います。
見ていただいた方、お、お疲れ様でした・・・!

 

2005/03/27観賞
2005/04/03 UP

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