狂宴

布団の上に仰臥させられた淀君は左右に男たちが寝そべりその優美な裸身を弄られるのを美しい眉を寄せ堪えていた。
榊原康正は家康の隣に座って酒を呑んでいたが井伊直正と松平忠義が淀君に纏いついている。四本の腕の愛撫に淀君の官能は否が応でも昂ぶりを見せ始め、その内心とは裏腹に身体は甘い反応を見せ始めた。

康正は家康の耳に口を寄せる。
「この女は淀様ではございませんか?」
「いかにも、豊臣家を取り潰さんがために儂に尽くしておるのよ」
家康は別に隠し立て無く康正に言った。既に淀君を虐げている男達には家康たちの会話は耳に入らのほどその愛戯に没頭している。

「これは愉快にございます。我々に難儀難題を押し付けた淀様には並々ならぬ恨みがございます」
康正は低く笑って、その悶え始めた裸身に目を凝らすのであった。
「ふふふ、女狐め、堪え切れなくなって自分から腰を振り出しおった」
家康は狂乱の態を見せ始めた淀君を見て旨そうに酒を口に運ぶ。

家康の目には忠義の上に抱きとめられ、一物を打ち込まれた淀君が官能味溢れる双臀を左右に打ち振って悶える様が映じている。その貪欲な食らいつきぶりは康正も目を瞠るものがあった。
忠義に抱きとめられ、後ろ手に縛られた裸身を官能の炎に燃やされている淀君は忠義に求められるまま口を合わせた。自棄になった淀君は差し入れてきたその舌を強く吸い上げると一気に自らも頂点へ駆け上がってしまう。

小さく呻いて、腰をうねらせた淀君の激しさに追い落とされるように忠義も自失してしまう。
がくがくと腰を震わせている淀君の狂態ぶりは老将の康正をも興奮させてしまったようだ。
「儂も仲間に入れてもらおう」
立ち上がって着物を脱いだ康正は直正に抱きとめられている淀君の髪を掴み上げた。
「儂のものをしゃぶり抜け」
もう淀君には気位もなければ恥ずかしさもなかった。追い詰められ、切羽詰った状況の中で繰り出される汚辱の数々を自らの快感に変えこの苦境を乗り切ろうとしていたのだ。

直正に刺し貫かれたままの裸身をのたうたせている淀君は康正の力無く垂れている一物を口に含むと遮二無二愛撫し始めた。
二人の男に同時に凌辱されるという辱めを受けている淀君を見ながら家康は旨そうに酒を口に運んだ。
「忠義。あの女の味はどうじゃった」
「はい。食いつきぶりも誠に見事で痺れました」
一息ついて酒の肴を口にしている忠義の一物は早くも力を漲らせ始めている。その目は激しい身悶えを見せる淀君に釘付けにされていた。
ようやっと直正を自失に追い込んだ淀君は休む間もなく、康正に楔を打ち込まれようとしていた。

家康が満足した三人の武将を送り出し、広間に戻ってみると淀君は疲れきった身体を布団に横たえ、啜り泣いていた。
「ほら、まだ儂が残っておる」
顔を起こさせた家康に淀君は泣き濡れた目を向けた。
「お城に返して下さいまし」
「裸のままで良いのか?」
家康が難題を持ち出しても淀君は心に決めていた。この屋敷にいては厠さえまともに行けぬ事に淀君は閉口していたのだ。

「厭いませぬ。お城に返して下さいまし」
はっきりいった淀君の目に挑戦的な色を感じた家康は大きく頷いた。
「よし。儂のものを口でしゃぶり抜け、さすれば城へ送り届けてやろうぞ」
家康がおのが一物を晒すと淀君は何の抵抗もなくそれにしゃぶり付いた。
「ふふふ、いい気持ちじゃ」
淀君の甘い口吻を受けながら家康はその艶やかな髪を撫で回した。

「儂はお前のために腹を切った奴等が不憫でならのぬじゃ。石田も大谷も安国寺も皆、優秀な武将じゃ、秀吉公に良く仕えた優れた者たちよ。お前は何故、野心が強いのじゃ。寺にでも行き秀吉公の御霊を弔っておればいいものを政に口出しするとはな。儂はそれが許せなかったのよ。今後は二度とあのような真似をするのではないぞ」
家康に諭されたように言われた淀君は口に含んだものを上下させて頷いて見せる。
その愛らしい姿に家康もいくらか復讐の炎が収まって来たのを感じていた。

裸行列

それから半刻後、家康の屋敷から家康と小姓二人に囲まれた淀君が明けきれぬ大坂城内を歩いていた。乱れ髪を頬に貼り付かせ、首をうな垂れる素っ裸の淀君は後ろ手に括られ、素足で砂利道を踏み、本丸へ向かっていた。
秋の夜風が素肌に当たっても淀君は寒さを感じない、この屈辱を耐えれば寝所に戻れる。その一念でこの罪人のような仕打を黙々と受けている淀君であった。

本丸の門衛が裸の女が家康に縄尻を取られてきた事に驚いたような表情をして出迎えた。
「徳川家康である。この女は大坂の町で淀様を語り、悪事を働いた不届き者じゃ。我らが詮議した後、淀様にお引渡しをする」
家康が髪を掴み上げた女の顔を見た門衛はその表情が淀君そっくりなのに納得し、一同を通した。

「どうじゃ、うまくいったであろう」
家康が笑みを浮かべて暗い陰影を作る悩ましく盛り上がった双臀の亀裂を撫で上げると淀君は月明かりに照らされた全身をブルッと震わせて立ち止まった。
「こんな場所でご無体の真似はお止めください」
涙を湛えた瞳で訴える淀君に奮い付きたくなるほどの色気を感じた家康はその光沢のある背を押した。
「わかった。行け」

堀に掛かる橋を渡ると本丸の建物は目の前であった。
本丸の玄関番が異様な一団を見付けて駆け寄ってきた。
「徳川家康である。草間殿を呼んで欲しい」
「はっ」
玄関番は全裸の女が引き立てられてきたことに興奮して脱兎の如く駆け出した。

程なく、眠い目を擦りながら草間勘平が寝巻き姿のまま現れた。
「これこれは家康殿、この夜更けに何用でございますか?」
「実は我が配下の者が大坂の町で淀様の名を名乗る不逞の輩を捕まえたので少々きつい詮議をした後、こちらにひきたてたのだ」
家康に頭をこじ上げられた淀君は悔しそうな顔をして、呆気に取られている勘平を見た。

「淀様にご判断を仰ぎ、そちらで処置して戴きたい」
「あい、判りました」
勘平に淀君の縄尻を引き渡した家康は意気揚々と引き上げていった。
「朝まで牢舎に入って貰う」
縄尻を引いた勘平に淀君は顔をはっきりと向けた。

「わらわじゃ、淀じゃ。早く、寝所に案内せよ」
勘平はまじまじと唇を震わせている女の顔を覗き込んだ。
「お方様。何故、このような目に」
「なにも聞いてはならぬ、とにかくこのまま、寝所に」
淀君に再び囁くように言われた勘平はこれは一大事と思ったが騒ぎ立ててはならぬと極めて冷静に振舞う事にした。

「おい、この女の足を拭いてやれ」
玄関に淀君を引き入れた勘平に言われた若い玄関番は目の前にある悩ましい繊毛に好奇な目を向けながら丹念に淀君の足の裏を拭い始めた。

勘平に縄尻を引かれた淀君は長い廊下を歩いてようやっと寝所に辿り着いた。
「家康様にこのような目に遭わされたのでございますか?」
縄を解きながら勘平に聞かれた淀君は厳しい声を出した。
「その事については聞いてはならぬ。また、誰にも話してはならぬ」
「相判りました」
淀君に言われた勘平はそれ以上の詮索はせず、引き下がった。
ようやっと屈辱から解放され、布団の中に潜り込んだ淀君は声を殺して泣きじゃくるだけであった。

家康出立

三日目も淀君を嬲りぬいた家康は淀君に別れの挨拶を告げるために大坂城本丸を訪れた。
「今回は戦勝の宴といい、その後の逗留といい、豊臣家と淀様にはえらい迷惑を掛けた。家康、礼を言うぞ」
「何のおもてなしも出来ずに失礼致しました」
「いやいや、とても満足したぞ」
家康の高笑いを聞いた淀君の顔が一瞬、強張った。しかし、その顔はすぐに悲しい色を帯び始める。

「それでは約束通り、加倉秀正とその妹、葵はこちらで引き取らせて頂く。良いな」
家康は以前とは打って変わって淀君を見下したような口調で語っている。淀君もそれを当然のように受け入れている。両者の立場は完全に逆転してしまっていた。
「よしなにお取り計らいの程、お願い致します」
「うむ。ではまた。寄らせて貰う。その時はまた楽しませてくれ」

意味ありげに笑った家康を送り出した淀君は秀頼の居室に逃げるように駆け込むとその幼い当主を抱き締め、声を上げて泣き崩れるのであった。
三成を失い、秀正を奪われた淀君に取ってたった一人の拠り所はこの幼い秀頼しかいなかったのである。
ひとしきり泣くと淀君は家康への憤辱に居ても立ってもいられなくなった。

鬼のような形相になった淀君は居室に立ち戻ると草間勘平と加倉元直を呼び付けた。
「新座を庭に引き立てよ」
自分の身体を弄んだ新座にその怒りの矛先は向けられたのだ。

家康から葵を奥女中として貰い受けたいと申し出が合った時、新座は喜んでそれに応じるように葵に勧めた。新座はいつ暴発するか判らない淀君の逆鱗を考えて父を残してゆく事に躊躇していた葵を説得したのだった。
新座の懸念は正に的中した。徳川家中が引き上げたとたんに淀君の呼び出しを受けた新座は本丸の庭に引き立てられた。

「新座。そちは妖しげな手管を使っておなごの身を責め苛む事を生業としておるな。誠に不届き千番。打ち首に致す」
突然の宣告に新座は慌てふためいた。
「そ、そのような事、全てお方様の命によってしたことにございます。私にとっては身に覚えも無い事にございます」
「ええい、黙れ黙れ。直正、ただちに首を跳ねよ」

狂ったように処刑を催促する淀君を止められるものはいない。哀れな新座は与力達に身動きを封じられてその場に晒される。
「お、お許しを、お許しを」
哀願しても淀君は許さなかった。元直の刀が一閃すると新座、いや新乃助は三十八歳の悲惨な生涯を閉じた。
庭まで降り立ってその首級を鞠のように蹴飛ばした淀君は恨みを晴らした気分になって狂気じみた笑い声を上げるのであった。

桔梗同行

その年も押し詰まった頃、桔梗は突然家康の来訪を受けた。既に秀正を召抱え、葵を奥女中に取り立てて貰った事を知っている桔梗は家康に手厚く礼を述べるのであった。
「此度は甥の秀正、姪の葵を家康様のご厚情により徳川家中の片隅に立てて戴き感謝の言葉もございません。桔梗この通り御礼申し上げます」
「気にすることはない。儂の思うがままにしただけよ。さあ、堅苦しい挨拶は抜きじゃ、酌せよ」
平伏したままの桔梗を隣に呼び寄せた家康は盃を差し出した。

桔梗に注がれた酒を旨そうに干した家康は戦の自慢話から話し出した。
「儂の作戦は周到じゃった。小早川が裏切ると敵は総崩れ、一気に勝負は付いた。三成も首を跳ねてやった。あははは」
「大坂の女狐は首にしなかったのでございますね」
桔梗はそれが残念でならなかった。淀君は自分を辱しめただけではなく死の直前まで追い詰めた憎い女だった。

「ああ、しかし、鼻っ柱は根元まで折ってやったぞ。裸にして縛り上げて、配下の武将や小姓達に嬲らせてやった」
「まぁ、小姓達にまで」
桔梗は淀君がそんな目に遭った事に驚いたが痛快な気分になった事も事実だった。
「千姫の輿入れを実現させる事に必死になっていて儂の言う事も良く聞いた。これから大坂に行くたびに弄ぶつもりだ」
それを聞いた桔梗は真剣な顔になると家康の前に平伏した。

「桔梗も是非、同道させて下さいまし。積もりに積もった恨みをあの女の肌に返したいと思います」
「ふふふ、それは面白い。年が変わったら大坂に行く、その時、同道させようぞ」
「あ、有難うございます」
喜びに身を震わせる桔梗を見て、家康は面白い余興が増えると妖しい笑みを浮かべていた。

1561年1月12日、新年の行事を慌しくこなした家康は西に向け500人近くの近待を従えて出発した。
伊勢神宮参拝の後、京に入り、帝に謁見した家康は1月下旬に大坂城に入った。
大坂城の屋敷に入った一日目に淀君は現れなかった。怒った家康は翌日、本丸の居室まで出向いて淀君を叱責する。

「何で約束を守らないのだ。儂を甘く見ると後が怖いぞ」
「申し訳ありませぬ。身体の具合が良くなかったものですから」
「言い訳無用」
平伏している淀君の頬を突付いた家康は意地悪い笑みを浮かべた。
「なんなら、この場で裸にして屋敷まで引き立てられたいか?」
「そればかりは何卒」
「良いか今夜来なかったら千姫の輿入れは無しじゃ。明後日の朝まで帰れぬと思え」

家康の怒りが殊のほか激しいので淀君は身の縮む思いをしていた。
「か、必ず参ります」
家康は唾を吐きかけると淀君の居室を後にした。

淀君の驚愕

雪が降り始めた中、淀君はお偲び姿で家康の屋敷を訪れた。
出迎えた小姓達は淀君を牢舎に案内した。
「ここで裸になって家康様をお待ち下さい」
素直に全裸になった淀君は小姓に腕を取られ後ろ手に縛り上げられ、丸太に繋ぎ止められた。
「家康様は間もなくいらっしゃいます。お待ち下さい」

小姓達は淀君の衣類を一纏めにして持ち去ってしまった。
大きな火鉢があるとはいえ、雪が降る夜に全裸にされている淀君は寒さが身に沁みた。
足音が響いて三人の人影が牢舎の中に入ってきた。家康、桔梗、秀正の三人である。

「おお、やってきたな。今夜はお前に恨みを持つ女を連れて来てやった」
そういって家康が横に退くと紺の小袖を粋に着こなした女が現れた。
「久しぶりでございますね。淀様」
松明に照らされたその女の顔を見て淀君は慌て気味に視線を逸らした。
「何を慌ててるんだい。この女狐め」
桔梗はいきなりピシャリと淀君の頬を平手打ちにすると凄みのある表情をして淀君の全身を見つめた。

「結構、綺麗な身体をしてるじゃないか。私の顔をご覧よ」
今一度、頬を叩かれた淀君は気弱な視線を桔梗に向けた。淀君の顔は恐怖に引きつっている。落下無残な辱しめを加え、死の淵まで追い詰めた女が目の前にいるのだ。その恨みは淀君には想像も付かない深いものがあった。
「何度、淀様に頬を叩かれたか覚えちゃいないよ。今日は骨の随まで私の恨みを返してやるから覚悟することだね」

桔梗に乳房を抓られた淀君は家康の方を向いた。
「こ、この女に嬲らせるのはご容赦ください。淀、恐ろしゅうございます」
「ふざけるんじゃないよ」
桔梗が縄に締め上げられた乳首を思い切り抓った。
「あっ」
小さく悲鳴を上げた淀君は桔梗に顎を掴まれ、恐怖に歪んだ顔を覗き込まれる。

「私の恨みを晴らさなきゃ、豊臣家はお取り潰しになっちまうよ」
「桔梗の言う通りだ。この女の責め苦を受けて、桔梗の恨みを晴らさぬ限り千姫の輿入れはないぞ」
あまりの恐ろしさに淀君は腰を震わし、失禁してしまった。
「あら、まあ。うふふ」
淀君の無様な姿に桔梗は小さな笑い声を上げるのだった。

淀君はそんな事に恥ずかしさを感じている余裕は無かった。桔梗に与えた苦しみ、悲しみを承知しているだけに淀君の恐怖は一層募る事になる。
「気持ちが悪いでしょう。お方様、お掃除してさしあげます」
皮肉帯びた物言いをした桔梗が濡れ手拭いを持って屈めると淀君は悔しそうに目を閉じた。しかし、その膝頭は屈辱にブルブル震えている。

股間の付け根から太腿、そして足首までを念入りに拭き取った桔梗は立ち上がって、首をうな垂れたままの淀君の肩を叩いた。
「綺麗にしてやったんだ。一言、挨拶はないのかい」
「あ、有難うございました」
淀君は顔を背けたまま礼を言ったが桔梗はそれに腹を立てた。

「人の目をちゃんと見て挨拶しないか?」
汚れた手拭いを淀君の顔に押し付けた桔梗はそれで鼻と口を覆い続ける。顔を激しくひねってそれを避けようとする淀君であったが桔梗はそれを許さず力を込めて押し付けた。
抵抗を諦めた淀君が動きを止め、涙を流し始めると桔梗は満足したように力を抜いた。

桔梗は憎しみの篭った目で屈辱の涙を流しつづける淀君の全裸像を眺めていたがその股間に色濃く密生する叢に目を付けた。
「生意気だね。こんなに黒々と生やしてさ。剃り上げてやるよ」
それに桔梗が手を触れさせてくると淀君は大袈裟な悲鳴を放った。
「なんだい、触られたくらいで」
再び、頬を張られた淀君は苦しげに眉を寄せて桔梗を見た。

「そ、それだけはご容赦を」
涙に潤んだ目を開いて必死に哀願する淀君を桔梗は鼻で笑う。
「ふん、私のそれをいとも簡単に剃り上げた癖になんだい。笑わせるんじゃないよ」
桔梗に無遠慮に叩きつけられた淀君は悔しさに涙を滲ませた瞼を閉ざした。
「私に剃られるのが辛いようだね。暴れられて肌に傷でもつけちゃ嫌だから。秀正、剃り上げておやり」
桔梗は秀正に命ずると空樽の上に家康と並んで座り酒を呑み始めた。
次頁へ