屋形船

1599年7月、時代は再び変わろうとしていた。前年、太閤秀吉は死去し、天下の趨勢は混沌した気配が漂い始めていだ。
秀吉の残した牙城、大坂城で権力を奮っているのは秀吉の世継ぎを生んだ側室の淀君だった。
淀君は幼名を茶々といい、織田信長の妹、市姫を母に浅井長政を父に持つ戦乱を生き抜いた姫だった。二度も落城の憂き目に遭いながら、その敵方として君臨した秀吉の側室となった茶々姫は世継ぎ秀頼を産んだことから秀吉の死後、その権勢を奮い始めた。

その日、お忍びで女中一人と歌舞伎見物に出かけた淀君は屋形船に揺られて帰途についていた。女中が今日の歌舞伎の事をあれやこれや語のるを淀君は煩そうに思っている。
淀君の脳裏を占めるのは不穏な動きを見せている徳川家康の事であった。
石田三成の報告によれば家康は多くの武将たちに文を送り、懐柔策を講じているらしい。淀君は秀吉の家臣の一人に過ぎなかった家康が天下を窺うことに義憤を感じていたのだ。

実際、信長の後を継ぎ天下を統一し、朝鮮にまで出兵した豊臣家を揺さぶる行動は謀反といっても良いほどの憤りを淀君は感じていた。
隙あらば家康暗殺をと三成を急かすのだったが三成は首を縦に振らないのだ。

突然、激しい水音が聞こえた。
「何じゃ、何があったのだ」
女中が屋形船の戸口を開くと黒装束姿の全身ずぶ濡れの女が短刀を構えて踊り込んで来た。
「太閤殿下の側室、淀殿でございますね。お命、頂きます」
「何奴、無礼者」
女中が懐刀を構え、打ち掛かったがその女はいともたやすくそれを跳ね除け、女中を突き倒した。
「お覚悟を」

女は頭巾をしているため、目しか淀君には見えなかった。その燃えるような目を弾き飛ばすように淀君は懐刀を構えた。何度も戦乱の炎を掻い潜っている淀君は度胸だけは身につけていた。
「私を襲うなど身の程知らず。返り討ちにしてくれる」
狭い屋形船の中で両者の視線に火花が散った。
「お前は何者じゃ、名を名乗れ」
間合いを詰めて来る女に恐れをなした淀君は悲鳴じみた叫びを放った。しかし、女はそれに答えず短刀を繰り出した。すんでのところでそれを避けた淀君だったが横転し、懐刀を取り落としてしまう。

「な、何が欲しい。金か」
死の恐怖に淀君は怯えきった表情で女を見上げる。
「命だけじゃ」
女が短く言い放ち短刀を構えたとき、激しい水音ともに褌一つの若い男が刀を手に踊り込んで来た。
「待て、女を襲うとは不貞の輩、見過ごすわけにはいかぬ」
その男は長身で異様に肌が黒かった。
「仇討ちを邪魔だてするな」
女の激しい声を無視して男は刀を振りかざした。

女はその一太刀を短刀で受け止めたがその勢いで腰を崩してしまう。
「む、無念」
女は蝋燭を打ち倒し、船に火を放つと川の中に身を躍らせた。
「火を消すのじゃ」
燃え移った火を見て淀君は狂喜じみた声を上げる。男は桶に川の水を掬うと落ち着いて火を消した。

仁助

大坂城の船着き場でただならぬ淀君の屋形船の気配に驚いて大坂守護代草間勘平が駆け付けると淀君は怒りに顔を真っ赤に染めていた。
「何事でございますか」
「襲われたのじゃ。後、一歩で殺されるところをこの剣士に助けて貰ったのじゃ。堀の警備が手ぬるすぎる。賊は黒装束の女、この堀割りの近くに居る筈、全身濡れ鼠じゃ、即刻捕らえろ」
勘平が弾かれたように走り出すと淀君は柔和な顔になり若者の方を向き直った。

「その姿では帰るに帰れまい。私の家に立ち寄って行くがよかろう」
淀君に言われて褌一枚の若者は始めてその姿に気がつきにっこり笑った。
淀君は大坂城下の下屋敷の一つに若者を案内した。風呂に入れてもらって浴衣を与えられ、座敷に通された若者はさっきの女が豪奢な着物に身を包んで自分を待っていたのに驚いた。

「さあ、何も無いが食べるがよかろう」
並べられた豪華な料理を前にして若者はさらに呆気に取られている。
「お前、名は何と申す」
「仁助と言います」
飯を頬張りながら若者は答えた。その食いっぷりがあまりに激しいので淀君は笑いを堪えるのに困っていた。
「私の名は淀じゃ」
不意に仁助の箸が止まり、淀君の顔をまじまじと見つめる。
「淀君様なのか」
「そうじゃ」

仁助は慌てて平伏した。淀君の権勢は大坂中に轟いておりその名を知らぬ者はいなかったのだ。
「失礼致しました」
仁助が立ち上がろうとするのを淀君は制した。
「何を慌てておる。私はもっと仁王丸と話がしたい。命の恩人だから」
「しかし、拙者と身分が余りに違いまする」
「気にすることはない。私も弟がおった。生きていればそちのような若者になっていたと思うと不憫なのじゃ」
淀君は信長に処刑された万福丸の事を思い出して目元を拭った。
「仁助は幾つなのじゃ」
再び箸を持った仁王丸に淀君は尋ねた。
「19か二十歳かと思われます」
「何だ。年も判らぬのか」
「私は捨て子だったようで、父も母も覚えておらんのです」
「まあ」
淀君は仁助の不憫な生い立ちに同情するような声を放った。

「寺で五歳まで育って、それから大坂の絹問屋に貰われました。しかし、その家も先年火事で焼け、今は行く当ての無い浪人暮らしにございます」
「剣はどこで覚えたのじゃ」
「絹問屋に奉公していた時に道場に通っておりました」
「ならば今では住む家もないのじゃな」
「はい、用心棒稼業をやってる。その日暮らしです」
「判った。中座するがそちは食べているが良い」
淀君が中座すると仁助はその食欲を遺憾なく発揮して卓の上に並べられた料理を次々に平らげ始める。

淀君が家臣の一人を連れて戻ってきた頃には仁助は料理をあらかた食い尽くしていた。「この男は加倉元直といって、豊臣家では剣の指南役じゃ。お主をこの男に預ける。見事な剣の使い手になってこの豊臣家に尽くしてはくれまいか」
仁助は淀君と加倉の顔を見比べた。そして、平伏した。
「お願い致します。願っても無い事にございます」
「今夜も寝るところがないのだろうから、さっそく来るがよい」
その日から、仁助は加倉の元で剣の修業をすることになった。

桔梗

大坂、毛利家下屋敷、毛利家の大坂元締め役、浅野義忠を前に素っ裸の女が後ろ手に床柱に縛り付けられうな垂れていた。女は年の頃は32,3歳、むっちりとした太腿、まろやかな乳房、申し訳程度にその部分を覆う繊毛とまだまだ男心を疼かす身体つきをその場に晒している。さほど長くない髪の毛を後ろに束ねたその顔も優美ではあったがその頬を蒼ざめて唇を震わせていた。

浅野義忠は失態を犯した女をいつもこのようにしていたぶっている。お陰で女中も長くは続かない。しかし、今日の女は逃げられぬ理由がある。浅野は思う存分その性癖を発揮して女を痛め付けているのだ。
「桔梗。そちの失敗は極めて重大じゃ。殿様の沙汰を待つまでも無く打ち首じゃ」
桔梗と呼ばれたその女は涙を溜めた目を見開いて浅野を見つめた。
「今一度、今一度、その機会をお与え下さいませ」
浅野は扇を桔梗の顎の下にこじ入れると無理やり上を向かせ、自分の顔を凝視させる。
「歴戦の女間者も相手が女だと手先が鈍るのか、この淫乱な身体が役に立たないからな」

嗜虐の心に酔いながら浅野は桔梗を言葉でいたぶり始めた。
「このままでは儂の顔も丸潰れじゃ。死罪に決まっていたそちの身柄を引き取ったのもそちの才能を見込んだからよ」
いつしか乳房を揉まれ始めた桔梗は嫌悪感に身体を震わしている。
浅野も獣欲の疼きを覚えると桔梗を丸太から引き離し、しゃがませると自分の胸に抱きこんだ。
「次が最後の機会だ。十日以内に仕留めるのだぞ。今度は失敗したら生きて帰っては来れぬぞ」
浅野に言われた桔梗は大きく頷いた。その姿に満足した浅野は桔梗を仰臥させるとその上に覆い被さった。やがて、女の啜り泣きと肉を打つ淫らな音が聞こえ始めた。
桔梗は目を閉じて屈辱の時を耐えようとしていた。

楓を自害させた後、菊乃を捕らえた桔梗は山間にあった明智の残党たちに散々嬲りぬかせた後、殺害した。楓の恨みを少しは晴らした桔梗は普通の女になろうとそこを抜け各地を放浪した。
しかし、兵藤で受けた間者としての訓練と明智に匿われたときに身に付けた剣術修業のお陰で各地の大名に重宝がられその本心と裏腹にその能力を高く評価される事になる。

毛利家に召抱えられた桔梗は主に各大名の情報収集する任を与えられた。
24歳で任を解かれ、毛利家配下の柴喜太郎と祝言を上げ、一男、一女を設けた桔梗はようやっと普通の女としての幸せを実感するようになった。しかし、秀吉の朝鮮出兵で柴が戦死すると桔梗の運命は暗転する。

次の夫はお家の金を預かる立場を利用して公金を横領すると逐電してしまった。桔梗はその公金を弁済するように迫られ、耐えられず逃走しようとするが捕らわれてしまう。
その頃、毛利家にも難儀が降りかかっていた。毛利家の若君が大坂城の花見で淀君自慢の桜の枝を折るという狼藉を働き、淀君の怒りを買い、若君の処刑か課徴金の拠出を求めてきたのだ。どちらにしてもお家の大事と年賦で課徴金の支払いに応じたのだがお家の財政は火の車となってしまったのだ。

浅野が淀君暗殺を提案、実行者に逃亡の罪で死罪に任ぜられた桔梗を指名したのだ。
元々は毛利家との縁も薄い桔梗で実行役にはうってつけの存在である。桔梗も楓の仇討ちにもなると決意を固め大坂に赴いたのであった。
それがとんでもない邪魔が入り、宿願が果たせなかった。後一歩のところまで淀君を追い詰めた桔梗は無念でならなかった。

淀君の狼狽

淀君を襲った賊は三日経っても発見される事はなかった。石田三成を呼び寄せた淀君は明らかに狼狽していた。
「徳川の間者に間違いない。先手を打たれたのよ。家康はわらわを亡き者にすれば秀頼を家臣として仕えさせるつもりじゃ。あー憎い」
「お方様、そうは断定できぬと思います。お方様とて人に恨みを買う事はあるでしょう」「ええい、そんな事はどうでも良い」
淀はいまいましそうに扇を投げ放つと三成の間近に膝を折った。
「家康を暗殺する手筈は整っているのか」
「はは、駿河に喇叭を放ち、探らせておりますが中々はかどりませぬ」
「たわけ者、このままでは豊臣縁故の武将まで離れていってしまうぞ」
淀君は悔しそうに歯軋りすると平伏している三成を見た。罵倒はしたが秀頼が成人するまではこの三成だけが淀のたよりであったからだ。

その日、秀頼を連れて淀君は加倉の屋敷を訪れた。仁助は剣術の稽古を終え、道場の掃除をしているところだった。
「お方様、若君様。ご機嫌麗しゅうございます」
二人の姿を見て、仁助は笑顔を見せた。
「加倉の住み心地はどうじゃ」
「はい、大変良くして戴いております。飯がたらふく食えるのが何よりです」
「あははは」
この若者に会うと淀君は希望が湧いてくる。秀頼の家臣として重要な逸材ではないかと思うほどであった。

「そちは色が黒いが異人の血が流れておるのか」
仁助は肌が黒いとこだけが異質な感じがする淀君だった。端正な鼻筋、締まった顎、涼しい目元、後はどれをとっても類まれなる美形な仁助だった。
「いいえ、存じませぬ」
明るく答えた仁助は遊び盛りの秀頼と戯れ始めた。

それを目を細めて見ていた淀君は加倉を呼び寄せた。加倉は弟子という者を取っておらず言わば仁王丸が一番弟子だった。
「元直、そなたあの仁助の筋はどうじゃ」」
「はっ、礼儀も正しく、剣の筋も目を瞠らせるものがあります」
「そうかではそちは仁王丸の養父にならんか?」
「有難きお言葉。私にも息子がおりませぬゆえ。仁助に父も母もいないのなら私がその代わりとなろうと思っておりました」
「仁助などという名前、寺の住職が面白がって付けた名じゃ。立派な名前を付けてやるのじゃ」
「加倉元正ではいかがでしょうか」
「いや、秀正が良い。太閤様のお名前から一文字拝借しよう」
こうして仁助は加倉秀正となり武将への道を歩き始める事になった。

襲撃

翌々日、淀君は京都の久遠寺で開かれる茶会のために城を出た。
警備の者が数十人つく物々しい行列には元直、秀正も同道しており、淀君の周到さが窺われた。
久遠寺に着いての茶会の席に元直、秀正も同席して周囲を注意深く見回していた。
つつがなく茶会も終わり、一同は帰路に着いた。

異変は大坂でも一番人通りの多い偲び橋の上で起こった。荷馬車が横転して橋を塞いでいるのだ。淀君は待たされるのが大嫌いなので何人もの警護の連中が手を貸すために前方に向かった。その時、疾風の如き素早さで後方から黒装束の女が走ってきたのを秀正は見逃さなかった。女は輿の手前で大きく刀を抜き放ち、御簾越しに淀君を突き刺そうとしていた。

秀正の刀が煌いたが跳躍した女はそれを躱すと深々と御簾を突き刺した。
しかし、女は身体が伸びきってしまっていたため逃走するのは不可能だった。すぐさま捕らえられ縄が掛けられる。
あの女だ。頭巾を剥がされ不貞腐れたような面持ちを見せた女の横顔に秀正はあの屋形船に現れた女だと直感した。

「お方様」
秀正が御簾を上げると淀君は白刃を見てブルブル震えていた。
「ひ、秀正」
恐怖に打ち震える淀君を抱き締めると秀正はやさしく肩を撫で回した。
母の存在を知らない秀正は淀君に母の匂いを感じていた。

桔梗は加倉元直の屋敷に運ばれて詮議される事になった。加倉の屋敷には道場に併設して罪人を一時的に収容する牢もあったからだ。
裸にされ後ろ手にかっちり縛り上げられ、自害を防ぐために猿轡を噛まされた桔梗はその牢に収容されていた。
無念だった。討ちかかる瞬間に警護の武士に刀で払われたため、二の太刀を浴びせる事も出来ず、桔梗は捕らわれの身となってしまったのだった。こうなった以上、毛利家との関わり合いをひたかくし、自害するしか桔梗には道は無かった。

「女、出て来い。詮議する」
草間勘平に声を掛けられ桔梗は褌一枚の裸身を屈ませて牢から出た。
身の毛もよだつ拷問具の群れの中に桔梗は丸太を背に縛り付けられた。
そこには加倉元直、そして、二度に亘って桔梗の襲撃を阻止した秀正が待ち構えていた。
「褌を身に着けて居るとは恐れ入った」
元直は唇を歪めて笑い、卑猥な視線をその見事な裸体に這わせるのであった。
勘平に猿轡を解かれると桔梗は大きく息を付いた。男達の中で裸にされている恥ずかしさ、悔しさは桔梗をやるせない思いにさせ、首をうな垂れていた。

「女、名は何と申す」
桔梗は何も答えなかった。
「ふーん。答えぬのか、ならば嫌でも吐かせてみるか」
勘平の顔に妖しい笑みが浮かび始めていた。
「何か判ったか」
淀君が不意に姿を現した。桔梗は一瞬その姿を目にし、討ち洩らした悔しさに顔を歪めるのである。

「名も名乗りませぬ故、判りかねます」
勘平が言うと淀君はその裸体を嘗めまわすように見つめた。しかし、自分を襲った女には憎しみしか覚えなかった。
「女、恥ずかしいか」
秀正が髪の毛を掴んで悔しそうに歪ませている女の顔を引き起こすと淀君はその顔をまじまじと覗き込んだ。
やがて、淀君の顔はやにわに綻んでくる。
「この女の名は承知しておる」
「はっ、ご存知なのでありますか」
勘平は驚いたような声を出す。

「この女の名は桔梗じゃ。わが母の従者の娘よ」
淀君はそこまで言うと驚いている一同に退席を促した。
「この女と二人だけで話をしたい」

桔梗対淀

男たちが消えると淀君は椅子を持って来て桔梗の前に座った。
「久しぶりだ。桔梗。余燐寺以来だからかれこれ16、7年になる。わらわを恨んでおったのだろう。楓を死に追い込んだのだからな」
「お、お恨みしておりました」
「しかし、今回のそちの行動とは無関係であろう。誰の命令で私を襲ったのだ」
「すべて私怨にてございます」
淀君が立ち上り、無防備に晒されている桔梗の乳首を抓むと桔梗はその身をブルっと震わせた。

「ならばもっと前にわらわを襲うはず。菊乃がかどわかされたとき私は秀吉様に庇護を求めるしかなかったのだからな」
桔梗は口を真一文字で何も語らなかった。淀君は乳首を押し潰さんばかりにその指に力を込めた。
「楓は泣きながらわらわに詫びを入れた。桔梗も姉と同じ思いに遭いたいのか」
「し、舌を噛みまする」
「そうか、舌を噛むか。お前の兄の新乃助はまだ生きておる」
「兄じゃが?」
桔梗は一瞬我が耳を疑った。死に行く楓に生きている事は聞かされていたが、まさかこの時代のうねりの中で生き抜いているとは思っても見なかったのである。

「わらわの按摩師として仕えておる。お前が舌を噛み切ろうものなら新乃助は殺す。しかし、桔梗が誰の命令でわらわを襲ったかは口にしなくて良い。わらわの楽しみが減ってしまうからな」
淀君の妖しい笑みを見て、桔梗は背筋が凍りつく思いに見舞われた。
「楓が捕らわれた時、わらわは土蔵の中を盗み見て身体が火照るのを感じた。美しい女を苛めたかった。泣き喚かせたかった。それが今宵からはお前の身体を嬲りぬける」
淀君は桔梗の強張らせたままの頬を優しくなで付けた。

「この頬に涙を滴らせ、お前は私に跪き許しを請うのだ」
淀君は自分の言葉に酔いながら笑いを浮かべると桔梗の乳房を揉み始める。
眉を寄せてその感触を堪えている桔梗はこれからの事を思い、心を慄かせていた。母と姉に続いて羞恥地獄に落ちる自分の悲しい運命を思っていたのだ。
「それにしてもわらわより年上の癖して良い身体だ。羨ましい限りじゃ」
桔梗の身体から離れてその肉体を改めて見返した淀君は溜息をついた。

「お前、子供はおるのか」
「二人おります」
「とても居るようには思えぬ。新乃助を連れてくる待っていよ」
淀君は楽しそうに笑うと牢屋から出て行った。
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