最奥の羞恥図
いくら堪えても仙次の手捌きは確実に楓を頂点に追い上げている。既に全身が桜色にほんのり染まり、妖しい汗を泌ませ、心に染み入る溜息を付き始めた楓が官能の芯に消しようにも消せない炎が燃え上がっているのを確認した仙次は道具箱から大小二本の張り形を取り出した。
「へえー、その細いのは尻の穴に使うのかい。面白そうじゃないか、私にやらせておくれよ」
興味津々といった表情でしゃしゃり出て来た菊乃は仙次からそれを受け取ると木枕に載せ上げられ逃げも隠れもできない楓の双腎の前にがっちりと腰を降ろした。
「さあ、覚悟しといで思いきり恥じを掻かせてやるよ」
菊乃がそのおぞましい道具を操ると悟った楓は慌て気味に泣き濡れた瞳を見開き、新乃助から口を離すと喜色の笑みをたたえている菊乃を見た。
「き、菊乃様、どうかそればかりは御容赦ください。楓が惨めすぎます」
菊乃の手でこれ以上の辱めは受けたくないという楓の心からの叫びだった。しかし、楓が取り乱せば取り乱すほど愉快になる菊乃がそんな哀願に耳を貸すはずはない。
「私の手で恥じを掻きたくないのかい。笑わせるんじゃないよ。この菊乃姐さんに恥じを掻かせたんだ。そのお返しはたっぷりとしてやらなくちゃね」
「今まで十分お怨はお返し致しました。ですからこれ以上私を辱めるのだけは…」
「まったく往生際の悪い女だよ。私の肌をおもちゃにした女を一生許すわけには行かないのさ」
「ひー」
二の語を言わさず菊乃は責め具を楓の肛門に深々と突き立てた。楓は首を大きくのけぞらせ、その喉からは壊れた笛のような悲鳴が迸る。
「楓もとんでもない女の恨みを買ったものだ。あはは」
秀吉はおかしくてたまらぬといった風情で大口を開けて笑っている。楓には悲しみに打ちひしがれている場合ではなかった。仙次が羞恥の源泉に張り形を含ませ、楓をどうにもならない状態に追い込み始めたからだ。
「さあ、姐さん。儂が押したらそっちは引く、儂が引いたらそっちは押すだ。うまく呼吸を合わせてやってくれよ」
「ああ、わかったよ」
楓の時折痙攣する汗に湿った太腿に片手を絡ませた菊乃は目を異常にギラつかせ、声をうわずらせるのであった。
眉を寄せ、必死にこの屈辱と戦う楓ではあったが固く閉じあわされた唇から洩れる溜息はいつしか甘美なものに変わりつつあった。仙次の操る張り形の動きに揺さぷられ、いつしかその双臀は妖しく動き始め、楓は菊乃の手にする張り形が胎内で擦れあい異様な快感が駆け登ってきたのに慄然とし、身体の動きを止めようと歯を食いしばる。
しかし、一度火の付いた官能の炎は消せるわけもなく、楓は女の業のようなものを呪いながら最奥の羞恥を晒すべく観念の瞼を閉じた。
その時、不意に仙次は張り形から手を離し、菊乃が遮二無二楓の胎内を抉り始めた。
「まだ気をやるのは早いだろう。今しばらく楽しませてやる」
せせら笑った仙次は楓の乳房を揉みあげている新乃助の攻撃も中断させる。
責めを中断され、やるせない刺激を与え続けられている楓は縄に締め上げられている乳房を自ら揺さぶるほど悔しがっていた。
「どうだ楓、蛇の生殺しは辛いだろう」
勝ち誇ったように笑う菊乃はここぞとばかり楓の肛門に突き刺した張り形を激しく操作し楓のやるせない思いを増幅させている。
楓の身悶えが徐々に納まり、身体の炎が鎮静に向い始めたと見て取った仙次は再び攻撃を再開し、楓は新乃助に口を吸われ、完全に淫鬼三人の手玉に取られてしまう。
狂惜しく双臀をうねり舞らせながら快楽を貪欲にむさぼろうとした楓は再び仙次が手を引く気配につんざくような悲鳴を上げた。
「ああ、止めないで、後生でございます」
「あはは、やっぱり淫乱な女だねあんなことまで口走ってるよ」
木枕の上で揺れ動く尻たぶを叩いて喜ぶ菊乃の罵りも泣き叫ぶ楓には通じない、一途に頂点を究めることを哀願している哀れな楓であった。
「ああ、何卒、お願いでございます」
あまりにも激しい楓の肉欲を懇願する変貌した姿に秀吉は盃を干すのも忘れたように魂を居抜かれたままその汗みどろの肉体を凝視する。
頃はよしと仙次は腰を上げ、苦しげな喘ぎ声を吐く楓の顔のそばに坐り込むとその狂おしく揺れる頭を自分の胡座に組んだ足の上に載せあげた。
「気がやりたいか、楓」
仙次の言葉に縋り付くように楓は泣き濡れた瞳を開いた。
「はい。お願いでございます」
「ならば秀吉様に伺ってみろ。お許しが出たなら思いを遂げさせてやる」
自らの口からあからさまな要求をすることなぞ女の身からすれば途方もない恥辱のはずだった。しかし、楓はそれを口にしないかぎりこの身を焼くような苦しみから逃れる術はなかった。
仙次に呼び寄せられた秀吉が近くに座ると息も切れそうな楓は喘ぎながら許しを乞うのだった。
「秀吉様。楓に気を行かせてくださいまし。お願いでございます」
女の誇りをかなぐり捨てたように一匹の雌と化した楓の哀れな、そして耽美な姿に秀吉は胸の疼きを覚えた。しかし、あの時の自分の誇りを傷付けた償いにはまだまだ程遠いいとこの成り上がり者の大将は思っていた。
「そちの犯した数々の罪から比べればまだまだ苦しみが足りんようじゃ。今しばらくその肉の舞を見させてくれ」
「ああ、そんな。何でも致しますから何卒」
何でもするといった楓の言葉に秀吉の目が妖しく蠢いた。
「何でもするといったな。では三年前そちのおかげで笑い者にされた一物をしゃぶり抜いてくれるか。さすればそちの願いを叶えてやろう」
秀吉の破廉恥な要求さえ、楓にとっては嵐のなかでようやっと見つけた小舟のような存在だった。楓は縋り付くような視線で秀吉を見上げた。
「よ、喜んでお慰め申し上げます」
秀吉が立ち上がり袴を脱ぎ始めると菊乃がからかいの言葉を掛ける。
「いいんですか殿様。噛み切られても知りませんよ」
「お、おどかすな。でも、このことはここにいる者だけの秘密じゃぞ」
おどけたように笑った秀吉が褌まで解くと仙次と入れ替わりに楓の頭をその股間に収め腰を降ろした。
「さあ、今や天下びとと成る秀吉の一物をしゃぶらせてやる」
いきり立つ醜悪な肉塊をその端正な頬に押し付けられた楓は嫌な顔をも見せず男の妖気に甘えるようなしぐささえ見せその相変らず矮小な物をすっぽりと口に含んだ。
くなくなと顔を動かし秀吉を有頂天にさせている楓のいじらしい姿に仙次は満足すると、じらしにじらし続けた楓の身体に留めを刺すべく小刻みに肉の震えを伝える張り形に手を添えた。
言語に絶する同時責めの辱めを受けながら口には秀吉を咥えこむという酸鼻な姿の楓ではあったが、その頭のなかは悔しさも恥ずかしさもなかった。あるのは一刻も早く頂点にたどり着き肉の喜びに浸る解放感を味わいたい、ただそれだけであった。
ぴったりと呼吸を合わせ胎内に入れ替わりに押し付けられる大小の張り形と急調子で揉み上げられる乳房の感触に楓が遂に待ちに待った時を迎えたのは間も無くだった。
その瞬間、楓は腰骨から背中にかけて目も眩むような快感が突き抜け、吊り上げられている太腿が自分の意志とは無関係に痙攣した。そして、狂ったように舞う舌の動きに秀吉が敗れたと知った楓は二番目の波に押し潰されたように失神したのであった。
「ああ、落城だよ。思い知ったか」
小躍りせぬばかりにはしゃぐ菊乃の叫びも桃源郷をさ迷う楓には届かない。責め上げられた身体を痙攣させ、半開きにした唇から舌を覗かせる。完全に淫鬼たちの軍門に下った楓は余韻を楽しむかのようにうっとりと目を閉ざしていた。
菊乃の折檻
「何時まで寝てるんだよ」
菊乃に乳房を揺さぶられ楓は現実に引き戻されて慌て気味に目を開いた。
既に秀吉、新乃助の姿はなく、高々と吊り上げられていた両足も下に降ろされている。
大きく拡げられた太腿はそのまま羞恥をあからさまに晒していたが、どこからか運びこまれた戸板が部屋の中央に据えられ、先程まで楓の両足を吊り上げられていた滑車には白い紐が不気味に垂れ下がっていた。
「これからがお前さんの折檻だよ。覚悟しといで」
楽しそうに笑う菊乃に頬を突かれた楓はまだ疲れ切ったこの身を責め苛む菊乃達にうんざりとした思いが渦巻いていた。実際この時の楓は羞恥の恐怖にはある程度立ち向かうだけの糞度胸を身に着けていた。しかし、淫鬼たちの考えることは楓を奈落の底に引きずり落すほどの戦慄すべきものだった。
「昨日の恨みを骨身に応えるほどたっぷりと返してやるよ。二度と逃げる気が起こらないほど恐ろしいものだよ」
菊乃が笑いながら話すとさすがの楓も不気味に揺れる白い紐に恐怖を覚えオロオロと口を開いた。
「身体が疲れております。これ以上の責苦は御容赦くださいませ」
「冗談言っちゃ困るよ、今まではお前さんを楽しませてやったんだ。折檻にも何にもならないじゃないか。やっぱりひーひー苦しんで貰わなくっちゃ」
菊乃が邪険に楓の要求を跳ね付け、その優美な乳首を抓んで楽しんでいると食事を終えた仙次と小平太が戻ってきた。
「おお、気が付いたか楓。秀吉様は大層ご満足なされたようだ。近いうちにまたお立寄りになるとのことだ。さて、これから昨日、逃亡を働き菊乃に怪我を負わせた楓の折檻を始めるが依存はないな」
頬を硬化させ、押し黙ったままの楓に代わって菊乃が返事をした。
「あれだけのことをしたんだ。何をされても文句は言えないよ。そうだろ楓」
菊乃に乳首を抓り上げられ痛さに顔をしかめた楓はうなずくしかなかった。ここに楓を極限にまで追い込む陰惨で淫靡な折檻の幕は切って降ろされたのであった。
震える肉芽
楓は両足を開かされたまま戸板の上に移され、両腕を縛った縄は解かれたもののすぐさま別の縄を使ってその優美な肉体は少しの身動きもできぬほど大の字に固定された。
さらに腰の下に木枕をあてがわれた楓は今まで味わったことのない恐怖に全身を小刻みに痙攣させる。
「怖がってるのかい。以外に可愛いね。さあ、どうするか教えてやろう」
楽しそうに笑いながら菊乃は楓の強張った顔を覗き込むほど近付いてきた。
「お前さん。剥き身にされたおさねに誓って私に逆らわないと誓ったはずだよ。忘れちゃいないだろうね。だから、そのおさねを懲らしめてやるのさ」
菊乃の言葉を聞くうちに楓の顔からは血の気が引き、みるみる表情が蒼ざめてくる。
それを目にした菊乃は有頂天になり説明を続けた。
「おさねを目いっぱい抉り出し、ひいひい言わせてやるのさ。愉快だろう。でもまんざら悪い気分のものではないはずさ、いい気持ちに成るはずだよ。有難く思いな」
菊乃が自慢げにかざす白い紐を目にした楓はあまりの戦慄に頬を震わせた。
「ああ、恐ろしい。お許しくださいませ」
泣きながら哀願を始めた楓の頬を菊乃が激しく平手打ちにした。
「甘ったれるんじゃないよ。それとも片足を切り落とされたほうが良かったのかい」
菊乃にどやしつけられ諦めたように咽び泣きを始めた楓を目にした仙次は楓の腰の辺りにしゃがみ込むと若草のように生え揃い始めた繊毛を掻き分け始めた。
「おお、これだ、これが折檻する楓のおさねだ」
秘裂を極限にまで押し広げその上辺に恥ずかしそうに息付く楓の肉芽を発見した仙次はそれを菊乃に見せつけ高笑いをする。
「いつ見てもお前さんのこれって可愛いね、いじめられるのを待ち切れないみたいに震えているよ。まったく」
勝ち誇ったように菊乃にそれを爪で弾かれた楓は歯の隙間から息を洩らし、眉を寄せ痛みを必死に堪えている。今まで、何度か受けた陰核責め、その度に魂を絞り上げられる恐怖にのたうった楓は頬を蒼ざめさせる。そんな楓の表情を横目に見た菊乃はさらに楓を痛ぶるべくむんずとばかりそれを掴みあげた。
「あ、あああ」
丹念に表皮を剥きあげた菊乃がそれをいきなり口に含むと楓は顔を真っ赤にして鋭い悲鳴の声を放った。
「何を慌てているんだい。気持いいはずだろう」
笑って取り合わない菊乃が歯でその先端を軽く挟みつけ舌先で転がし始めるという悪どい痛ぶりにあって楓はその部分から甘い刺激が込上がってきたのを感じ首を激しく左右に振り、何とか気分を紛らそうとする。
しかし、女体の悲しさで心で拒否しても身体は反応を見せてしまう。
楓が甘い鳴咽の声を洩らしながら屈辱に耐え始めると菊乃は満足そうに口を離した。
「おや、私の口技で感じちまったのかい。でも、悪い気分じゃないだろう」
菊乃に揶揄され、楓のすすり泣きは一瞬止んだ。しかし、惨めな気分に追い込まれた楓の目尻からは新たな涙が溢れ出すのであった。
「さあ、姐さん。この根本をしっかり抑えつけてくれ」
仙次の指示により菊乃が唾液で濡れそぼっている楓の陰核を指で抑えると仙次は袂から小さな木片を取り出しその先端をきつく挟みつけた。
「俺が思いきり抉り出すからその中程に糸を巻き付けてくれ」
額に汗する仙次が押し潰さんばかりに孤み上げたそれを上方に持ち上げると楓は脳天にまで響くような痛みがそこから走った。
「うぐっ」
しかし、楓は唇を噛み締めその痛みに必死に堪えていた。取り乱す姿を見せることによってここに居並ぶ悪鬼たちの歓心を買ってしまうことを楓は身に染む程思い知らされていたからだ。
「さあ、早く糸を巻き付けるのだ」
仙次の指示で目を血走らせた菊乃が上から垂れ下がる紐を手にとって楓の最も神経が鋭敏な箇所を入念に縛りつけてゆく。
糸を二重三重に巻き付けがっちりと締め付けた菊乃が上気した顔を上げると仙次はようやっと指先の力を抜きほっとしたように顔を見合わせる。
糸に締め上げられ逃げも隠れもできなくなった楓の陰核は表皮を極限にまで剥き上げられ微妙な痙攣さえ見せ始めている。
菊乃はワクワクする思いで痛みと甘い痺れに顔をしかめて耐えている楓の顔の近くに寄った。
「いよいよだよ。悔しいだろう。何とか言って御覧よ」
菊乃に火照った頬を突付かれ、挑発されちらっと憎悪の篭った視線を走らせた楓ではあったがすぐに顔を歪めこの途方もない屈辱の姿に悲しみの涙を流し始めた。
「よし、ゆっくり吊り上げろ」
頃はよしと見た仙次が声を掛けると小平太が滑車を通じて楓のその部分を締め付けている紐に繋がっている縄を力一杯引き始めた。
それまで死ぬほどの冷淡さを装っていた楓ではあったがその部分が千切れんばかりの痛烈な痛みに全身を硬直させつんざくような悲鳴を上げた。
「大袈裟だね。少しは恥じを知りなよ」
菊乃に乳房を揺さぶれ笑われた楓ではあったが小平太が再び紐を引き絞り始めると前にもまさるほどの悲鳴を上げなければならなかった。
楓の陰核が宙に浮き立ち完全に秘裂の中から抉り出されると仙次は小平太に縄止めを
させた。
「まあ、恐ろしく淫な姿だね。女の私だって恥ずかしくなっちまうよ」
菊乃に火照った頬を突かれた楓はついに身体を引き裂く痛みに耐えかね憎い菊乃に詫びを入れるのだった、
「き、菊乃様。二度と逃げません。ですから後生でございます。このおぞましい糸をはずしてくださいまし」
涙で哀願する楓の頬を菊乃の平手打ちが襲った。
「まだ、詫びを入れるのは早いよ。仕上げがあるんだよ」
痛烈な痛みに身を焼き、詫びを入れるのも拒否された楓は苦しみとも悲しみとも形容しがたい涙を流して汚辱の淵に沈むのであった。
「小平太さん。例のものそろそろ出来てる頃だよ。取ってきておくれ」
小平太は意味ありげな笑いを浮かべ苦悶に悶える白い肉体を横目に立ち上がった。
漆責め
小平太が出来たばかりの漆の入った丼を持って戻ってくると菊乃は楓の陰核を筆で痛ぶり、疲労の極にある楓を責め続けていた。そんなことをされても頭のなかが乱れに乱れている汗みどろの楓は悲鳴を上げる気力さえ失っている。辛そうに眉を寄せ半開きにした唇から苦しげな息を洩らすだけであった、
「もう、ぐうの音も出ないだろう。まいったか」
楓を責め苛む事に喜色の笑みを浮かべる菊乃は肩を叩かれようやっと小平太が戻ってきた事に気が付いた。
「姐さん。漆が出来上がりましたよ。冷ましてから塗り付けてやりましょう」
「いい匂だろ、楓。もうすぐこれでおまえさんの小憎らしいおさねを漆付にしてやるよ」
異様な匂に我に返った楓は菊乃がこれみよがしに見せつける丼から湯気が立ち上っているのを目にして顔を引きつらせた。
「そ、そんな」
楓の驚愕の表情を目にした菊乃は勝ち誇ったように語り始める。
「漆を塗り付けられればおまえさんのおさねは四六時中締付けられるんだよ。嬉しいんじゃないかい。おまえさんが心底、私に詫をいれて2度と盾つかないと誓うまでそのままにしといてやるよ」
「ああ、そんな恐ろしい。いくらでも詫をいれますから。何卒」
菊乃は楓の頬を力一杯殴り付け最後まで言わせない。
「甘えるんじゃないよ。だいたい2年前の恨みだってまだ返していないのにさ。本当に苦しむのはこれからだよ」
菊乃にぴしゃりと跳付けられた楓は悔しげに目を伏せた。しかし、身体の中心を襲う灼熱の感覚は容赦なく楓を締つけてゆく。
漆の丼の上に手をかざした菊乃はそれが既に熱が冷め始めているのに気が付き、筆を使ってその楓を苦しめる液体を攪拌し始めた。
「そろそろ掛かるかね。少し熱いけど我慢するんだよ」
菊乃がそのおぞましい液体を筆にたっぷりと浸らせ、楓の無残に吊り上げられている陰核に迫るとそれまで死んだように身動きしなかった楓が激しく身悶え始めた、
「ああ、お許しくださいませ。嫌、嫌にございます」、
泣きながら訴え双臀を激しく揺さぶった楓は自らの動きが却って自分の中芯を締あげることに気付き身動きを止めた。そして、独り言のように哀訴の言葉を繰り返すだけの楓をホクホクした思いで眺めていた菊乃は筆を持ち直した。
「暴れちゃ余計痛くなるよ。仙次さんこの女の尻をしっかり抑えていておくれ」
仙次が楓の腰の上にのし掛かるようにして身動きを封じると菊乃は筆の穂先を楓の吊られた陰核に近付けた。
「ギャー」
その瞬間、楓の口からは化鳥のような叫びが洩れ、全身が激しく痙攣した。
「うるさいよ、小平太さん。その女の口を封じておしまい。舌を噛んじまうかもしれないからね」
口を覆われた楓はその部分を撫で廻す筆の動きに刺激を受けるだけでなく染み込んでくるような熱さとも戦わなければならなかった。
菊乃は楓の陰核の根元にたっぷりと漆を塗り付けると額の汗を拭って筆を降ろした。
「ここで一休みだ。小平太さん。猿轡を外してやっとくれ」
猿轡を外された楓は熱に浮かされたように荒い呼吸を繰り返し半開きにした唇から舌を覗かせていた。
「どうだ楓、まいったか」
楓を極限にまで追い詰めた菊乃は勝ち誇ったように楓の黒髪を掴み上げゴシゴシ揺さぶった。
「ああ、お許しください」
もはやかぼそい声で許しを乞うだけの楓の姿に遂に自分の軍門に下らせたと確信した菊乃は満足げな笑みを口元に浮かべた。
しかし、こんなものでは恨みを晴らしたことにはなるまいと菊乃はさらなる闘志を漲らせるのであった。
「最初の漆が固まったら次を塗るからね、仙次さん。乳を揉んで楓の気分をほぐしてやっとくれ」
仙次の無骨な指が汗に塗れた乳房に掛かると楓は悲しげな溜息を一つ吐いて涙に咽ぶのであった。
ここに居並ぶ淫鬼に完全に屈服させられた楓は自らの人生を呪い、死を意識するようになっていた。
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