悪魔の計画
翌朝、洋輔はいつものようにパソコンに向かっていた。一昨日、収録した由香里の猥褻なビデオを一日掛かって編集し、ファイル交換ソフトを使ってインターネットの海に漂流させているのだ。
「見てご覧、これでお前もポルノスターだぜ」
そばに傅いている由香里を引き寄せるとディスプレイを覗かせた。
『衝撃、一七歳由香里の真実』と題されたそのビデオには次々にリクエストが入りダウンロードが始まっている。由香里はそれを見ても何の感情も見せなかった。少女は全てを諦めてしまっていた。
もちろん顔には修正が施され誰か見分けは付かないようになっている。モニターの中で猥褻な姿態を取る女は自分ではないと由香里は自分に言い聞かせていた。
「腹が空いただろう。飲ませてやるよ」
由香里を床に戻した洋輔はブリーフを押し下げると下半身を露出した。由香里は吸い寄せられるようにそれを口に含む。毎朝の日課だった。もう、汚いとも辛いとも思う気持ちは薄れていた。それより洋輔に奉仕することに喜びさえ覚えている由香里であった。
身に着けているのは男物の大きめなTシャツ一枚の由香里は必死に舌と唇を使って洋輔に奉仕している。そんな由香里を見下ろしながら洋輔はこの少女を身も心も奴隷に貶めたことに満足を覚えていた。
洋輔が果てることによって由香里の汚辱の奉仕は終った。吐き出すことは許されていない。全てを胃の中に収めるよう厳しく言われている。由香里が喉を鳴らして全てを飲み込むと洋輔は再び由香里を抱き上げて優しく口付けをした。
「よく、やった。上手だったよ」
由香里はこの一瞬がとても嬉しかった。主人である洋輔の優しい扱いに安らぎと安堵を覚える由香里であった。
部屋のインターフォンが鳴ると由香里の身体がビクッと震えたのを洋輔は見逃さなかった。
「あいつらだな。しっかり相手するんだぜ」
洋輔の身体から離れた由香里は暗い気持ちで床に座り込んだ。洋輔の同級生の一哉と裕司が訪れたのだ。二人には食事をさせて貰う代わりに抱かれなければならなかった。一哉の執拗な責めに由香里は行為が終わるたびに途方もない疲労感を味わうのが苦痛だった。
程なくして、一哉と裕司が現れた。二人ともコンビ二のレジ袋を手に下げていた。
「食いな」
二人はレジ袋を由香里の前に置くと洋輔に近づいた。
「昨日はドジ踏んじまった。邪魔が入ったんだ」
一哉が吐き捨てるように言うとタバコに火を付けた。
「また、やったのか?そのうち捕まるぜ」
洋輔は二人が強姦を繰り返しているのを知って苦虫を潰したような表情を浮かべた。
「それがちよっとまずい奴に見つかっちまったんだ」
「誰に?」
「音楽の橘に見つかっちまったんだ」
「何、それはまずいな。お前たちは音楽を選択してないから顔は覚えてないだろうが学校で顔を合わせたらアウトだな」
洋輔は舌打ちをして二人を見た。一哉も裕司もがっくりとしたように首を垂れていた。
「何とかしてくれよ」
裕司が洋輔に哀願した。二人が強姦で捕まっても洋輔にとってはさほど影響はなかった。しかし、この部屋でやっていることが二人の口から警察に知られることは洋輔にとっては自分の価値を損なうことになりかねなかった。洋輔はミチルが和美を強姦してくれと哀願していた事を思い出した。顔も身体も抜群の女教師を調教して奴隷にする。洋輔の心の中に悪魔の計画が芽生えた一瞬であった。
「しょうがねえな。もう一人奴隷を増やすか」
「やるのか先公を?」
「ああ、あいつにはミチルも恨みを抱いているそうだ。教師を奴隷にするなんて愉快じゃないか」
「それもそうだな。で、どうやって?」
新しいゲームを目の前にした子供のような笑顔を見せた一哉の問い掛けに答えず洋輔は立ち上がるとコンビに弁当を食べている由香里の前に座った。
「お前の担任は橘だよな?」
由香里は顔を上げて怯えたような表情で頷いた。
「電話番号は知ってるな?」
「携帯のメモリーに入ってる」
「よし、橘をおびき出せ。いいな」
由香里は凍りついたような表情で洋輔を見た。女教師を自分と同じような目に遭わせようとする洋輔を信じられない気持ちだった。しかし、由香里に拒否は有り得なかった。
「明日だ」
洋輔がそう言うと一哉は一瞬で表情を曇らせ不満そうな顔をした。それを目にした洋輔はすかさず口を開く。
「先公がお前たちのことを知っていたら今ごろは警察が自宅に行っている。そんな時に騒ぎを起こせば真っ先に疑われてしまう。だから今日のところは様子見だ」
「仕方ねえな」
一哉は洋輔にある意味見捨てられた事に腹を立てるとその鬱憤を由香里にぶつけるのだった。
「さっさと食え。抱いてやるぜ」
頭を小突かれた由香里は慌てて箸を使い出した。
一息つく間も与えられず由香里は一哉によって納戸部屋に連れ込まれていった。
残された裕司は溜息を付いて腰を下ろすと洋輔は笑顔を見せた。
「お前たちのことを見捨てたわけじゃないぜ。ただ、余計なリスクは侵したくないんだ」
裕司はこっくりと頷くとぽつりと呟くように口を開いた。
「俺はやりたくなかったんだ。一哉の奴が言い出したら利かなくって...」
「ここに来れば好きなだけ由香里とやれるじゃねえか?そんな危険を冒さなくたっていい」
「そうだよな。もうしないよ」
「もう一人増えるぜ」
洋輔は笑みを浮かべるとパソコンのディスプレイに目を落した。
罠
和美はゆっくりと惰眠を貪っていた。夏休みがあるから教師という職業を選らんだといっても過言ではない和美はゆっくりとした気分が続く夏が好きだった。一昨日の夜、公園で強姦されそうになった少女を助けた和美は昨日は警察の事情聴取と現場検証につき合わされ不愉快な思いをしていた。それだけに今日はゆっくりと眠っていたい所だった。
不意に電話のベルが鳴った。時計を見ると九時を廻ったばかりだった。誰なのこんな朝早く。和美は不機嫌な表情を浮かべて受話器を取った。切迫したような若い女の声が流れてきた。
「大津由香里です」
「あら、由香里さん。どうしたの?」
電話は彼女が担任をしている由香里からだった。少し陰のある生徒で和美はろくに会話を交わした記憶が無い。
「先生にご相談したいことがあるので会って戴けないでしょうか?」
「ええ、何の話なの?」
和美はあまり気乗りしなかった。夏休みは学校のことなど忘れてゆっくりとしていたのが彼女の本音だった。
「家の事でお話があるのです」
「いいわ。どこで会うの」
少し考えて和美は返事をした。由香里は学校の近くの公園を指定してきた。和美は一時間後に約束して電話を切った。
電話切ってから和美はノートパソコンを立ち上げて由香里のデータを覗いて見た。父親は一流家電メーカー勤務の課長。母親も健在。別に問題なさそうに思えた。
とにかく和美は由香里に会うために身支度を始めた。
由香里と約束した公園は子供たちが多く、とても落ち着いて話せる状況では無かった。こんな暑い日に朝から子供たちの嬌声を聞かされて和美は公園のベンチに座ってうんざりとした気分になっていた。
由香里は約束に五分遅れて現われた。
「すいません。遅れてしまって」
Tシャツにジーンズという軽装で現れた由香里を見て和美は驚いた。頬がこけ、痩せている。それに顔色も悪かった。
「どうしたの?由香里さん。何があったの?」
「せ、先生」
由香里はいきなり和美に抱き付くと声を上げて泣き始める。
「ここでは話し辛いわ。どこかに行きましょう」
子供の親達の視線が気になって和美は公園を出る事にした。しかし、一向に泣き止まない由香里を連れてどこへ行っても人目に付く和美は途方に暮れて公園を出た。
「先生」
不意に若い男の声がして振り向くと三年生の内村洋輔が佇んでいた。
洋輔は音楽を選択しており、成績も優秀でこれといった問題もない生徒として教師の中でも評判なのは和美も知っていた。
「どうしたんですか?」
洋輔は怪訝な顔をして近づいて泣きじゃくる由香里を見つめた。
「私の生徒なの。何か相談があるらしく会ったのだけどいきなり泣かれて...」
和美は困り果てたような表情を浮かべて洋輔を見た。
「へぇー、二年生なんだ。それは困りましたね。僕の勉強部屋がすぐ近くにあります。そこで話を聞いたらどうですか?僕は出かけてますから」
「そんな、悪いわ」
「気にする事はありません。すぐ近くですから」
洋輔は返事を待たずに和美の背を押して歩き始めた。
洋輔の言葉どおり、その瀟洒なマンションは公園の近くにあった。
エントランスを抜け、エレベーターに乗るとき由香里が震えているのに和美は気がついた。しかし、さして気にもとめずに和美は導かれるままに洋輔の部屋に案内された。
「ここです。一時間したら帰ってきます」
洋輔はドアを開けると二人を中に押し込み鍵を掛けてニンマリと笑った。部屋の中には一哉と祐司が隠れている。和美の拉致はほぼ成功したも同然だった。
室内に入った和美はその乱雑ぶり思わず尻込みした。空気が淀んでいる。散らかり放題の室内にはタバコの吸殻が積まれた灰皿やビールの空き缶が転がっていた。
「凄い所ね」
それでも中へ進もうと和美は由香里の背に手を掛けた。しかし、由香里はブルブルと震え足を出そうとしない。
「どうしたの?中に入りましょう」
突然、由香里は床に跪くと顔を覆って泣き始めた。
「許して、先生。私にはどうすることも出来ないの」
「何を言っているの?そあ、起ちなさい」
和美が由香里の腕を取ったとき、二人の男が姿を現した。
「お待ちしてましたよ。先生」
一哉の声を聞いて和美ははっとなった。あの公園で少女を襲った男がそこにいたのだ。
「俺たちの顔を覚えられては面倒なことになるのでここに来て頂きました」
一哉が一歩前に踏み出すと和美は後退した。罠に嵌った事に気が付いた和美はここから逃げる算段を考えていたのだ。
「先生は気が付いてないでしょうけど俺たちは御堂学園の生徒なんです」
「な、なんですって」
和美は衝撃のあまり口を抑えた。
「だから先生が学校で俺たちを見かければあの時のことを思い出してしまうでしょう」
和美は後退して遂にドアを背にするところまで追い詰められた。
「私をどうするつもりなの」
「それはこれらからゆっくりとご相談しましょう」
和美の引きつった表情を楽しむように一哉は余裕たっぷりに話した。
突然、和美は身を翻すとドアノブに手を掛け押し開こうとした。しかし、洋輔が外からドアを抑えて和美の突破を防いでいた。
「往生際が悪いぜ」
一哉は和美の襟首を掴んでその場に引き倒した。
「離しなさい。離して」
一哉の手の中で和美が暴れていると洋輔がドアを開いて中に入って来た。和美は柳眉を吊り上げ洋輔を睨み付ける。
「内村君、私を騙したのね」
「そうです。こいつ等とは親友なもんで警察に捕まえさせる訳には行かないんですよ」
和美は一哉に押え付けられたまま居間まで連れ戻され、床に投げ出された。
「先生。紹介します。一哉と裕司です。二人は音楽の授業を受けていないので知らないでしょう」
「う、内村君。優等生のあなたが何故、こんな真似をするの?ご両親が聞いたら驚かれるわ」
「でしょうね。僕は勉強が良く出来るだけです。やってることは不良と変りませんよ」
洋輔は和美を見下ろして笑っている。和美は泣きじゃくったままの由香里に気が付いた。
「由香里さん。私を騙したのね」
「由香里を責めるのは酷です。由香里は僕の奴隷なんですから」
代わって答えた洋輔は由香里を立ち上がらせた。
「いつも通りになるんだ」
洋輔に言われた由香里はジーンズをゆっくりとした手つきで脱ぎ始めた。
和美は由香里がその下に何も身に着けていないことに驚きの表情を浮かべた。
「驚きましたか?由香里はこに居るときはいつでもこの姿です。いつ、男に抱かれてもいいようにね」
由香里は首を深く垂れたまま涙を流している。和美は由香里が受け続けた陵辱を考えると胸が詰まる思いだった。しかし、今は自分の身に迫る危険の方が先だった。
「私をどうするつもりなの?」
「先生にも奴隷になって貰います」
洋輔の言葉に和美は思わず凍りついた。
「ば、馬鹿なこと言わないで」
「馬鹿じゃありませんよ。先生。そうなれば俺たちは安心して学校に行けますから」
一哉は気色ばむ和美の肩を掴んでにんまりと笑った。
いきなり和美は立ち上がると一哉の腕を掴み、思い切り捻り上げた。一哉は痛みに顔を歪め、床に膝を付いてしまう。
「な、何をするんだ。痛てえじゃないか」
苦痛を訴える一哉を無視して和美は更にその腕を捻り上げた。
「このままじゃ、折れるわよ。内村くん、由香里さんを離しなさい」
このままの状況では脱出は不可能と判断した和美は由香里に助けを呼びに行かせる事を考えたのだ。しかし、洋輔は由香里を離さなかった。
「先生。悪足掻きは止めて下さい。一哉の腕が折れたって何ヶ月かすれば治ります。しかし、この件が警察沙汰になれば僕たちは一生負い目を見なければならない」
洋輔はポケットからナイフを取り出すとがっしりと掴まえた由香里の胸にそれを押し当てた。
「警察には言わないからこれ以上罪を重ねないで」
和美の必死の訴えも洋輔には通じない。Tシャツに隠れた由香里の乳房に刃先を徐々に食い込ませてゆく。由香里の表情も恐怖に凍り付いている。和美はこの連中が自分の脅しに屈しないことに唇を噛むしかなかった。
「酷い人たちね。勝手にするが言いわ」
和美は捻り上げていた一哉の腕を離すと不貞腐れたように下を向いた。この場は彼らの言いなりになるしかないと諦めに似た心境になった和美であった。一哉は捻り上げられた腕を抱えて蹲ったままだったが立ち上がると和美の頬を激しく叩いた。
「畜生、馬鹿にしやがって」
頬を抑えた和美は一哉を睨み付けながらも反撃に出たくなる自分を必死に堪えていた。
「待て。手荒なことをするな。先生のストリップを見物しようじゃないか」
「えっ」
一哉は思いも掛けないことを言われてはっとした顔付きになったがやがて納得したように洋輔の隣に立ち隠微な笑みを浮かべて恐怖に頬を引きつらせている和美を見た。
「さあ、先生。暴れた罰だ。そこで着ているものを全て脱ぐんだ」
一哉に宣告された和美は信じられないといった顔付きになって若き悪魔のたち顔を見回した。