祐子の衝撃
祐子は出迎えに来た由里によって栗山の泊まる部屋に連れ込まれていた。
素っ裸の上、後手縛りにされている祐子は椅子に座らされていたがその膝頭は寒さではない震えが時折、起こっていた。
栗山に会わされると聞かされていた祐子は昨日から我慢していた欲求を解消できると思っていたのに栗山の姿は無く、イライラしていた。
祐子はここに捕われて連日、陰惨な調教を受け、ある程度の覚悟は固めていたのだ。だから一刻も早く、栗山に会いたかったのだ。
「やあ、待たせちゃって済まなかったね」
栗山が額の汗を拭き拭き現れたのを目にして祐子はほっとした思いを得たのも事実だった。
「今日は僕たちの結婚式だよ。いいね」
栗山に頭ごなしに言われた祐子は悔しそうに頷いた。もう、栗山の申し出を断る気力は祐子には残っていない。彼に縋るしかこの地獄を逃れる術はないと祐子は思っていた。
「よし、じゃあ、まずこれを書いて貰おう。君は離婚しないと僕と結婚できないからね」
栗山は離婚届の用紙を祐子に突きつけた。祐子はそれを見て涙が溢れそうになる。しかし、そんな事より差し迫った欲求の方が先だった。
しかし、そんな事を知ってか知らずか栗山は祐子の膨れ上がった腹部を見て驚いた顔をした。
「なにか苦しそうだけど、どうしたんだ？このお腹の張りは、なんだ？」
栗山に無遠慮に腹部を撫で上げられた祐子は思わずブルッと全身を震わせ恨めしそうな目で栗山を見上げるのだった。
「トイレに行きたいのよ。あなたが来るまで行かせて貰えなかったの」
「トイレに行って、どうしたいんだい？はっきり言わなきゃ分からないぞ。言わないならそのままでもいいけれど、この俺に頼みたいことがあるのなら、君の口からはっきりと言うことだな」
頬を赤らめて訴える自分を言葉でいたぶり尽す栗山の所業に祐子は衝撃を受ける。全身から嫌悪感を発する栗山の顔を見るのも嫌になった祐子は顔を背けたまま口を開いた。
「ウンチがしたいのよ。もう、苦しいのよ」
遂にその言葉を吐いた祐子に満足感を覚えた栗山は両腕の拘束を解いた。
すぐさま立ち上がろうとする祐子の肩を栗山が掴んだ。
「まだ゛、トイレに行かせるわけには行かない。俺との結婚式が終わるまで駄目だ」
「お願い。行かせて、あなたが見ていても構わないから」
栗山の性癖を知り尽くしている祐子は涙を浮かべて両手を合わせて懇願した。しかし、栗山は首を縦に振らなかった。
「駄目だ。僕の言うとおりにして貰おう。まずは離婚届を書け」
テーブルの上に離婚届の用紙とボールペンを置いた栗山を見て祐子は嗚咽の声を洩らし始めた。生理の欲求を盾に自分に従わせようとする悪魔の栗山の行為に祐子の心は憤怒で溢れていた。しかし、強い口調で栗山を詰ることは出来なかった。
「早く書かないといつまで経ってもトイレに行かせてもらえないぞ」
栗山に肩を突付かれた祐子はしゃくりあげながらペンを手に取り、離婚届を書き始めるのであった。
ようやっと離婚届を書き上げた祐子の前に栗山は便箋と封筒を差し出した。
「今度は君の夫に手紙を書きたまえ。文面は考えてある」
栗山はプリントされた用紙を祐子の前に差し出した。
それを目にした祐子は新たな涙が溢れて来て、両手で顔を覆って泣き崩れてしまった。
その用紙には次のように書かれていた。
『お元気にお過ごしでしょうか？私には愛する人が新たに出来ました。このままあなたとの生活を続けていては失礼だと思い、礼儀もわきまえず失踪した次第です。離婚届を同封いたしました。役所に提出して下さい。私の我儘を許してください。そして、忘れて下さい。祐子』
栗山は敢えて良美のことには触れていなかった。良美の事を書けば二人の失踪に関連があることを自ら明かしてしまうことになる。ここはあくまでも祐子の自由意志と思わせる必要があった。
「あ、ああ」
涙に咽んでいた祐子は突き上げて来る便意の苦痛に思わず悲鳴を放った。
「さあ、書きたまえ」
再び、ペンを握らされた祐子はその虚飾に満ちた文面を書き写し始める。しかし、涙が便箋の上に落ちるたびに書き直しを命じられ、祐子がその短い文章を書くのに一時間近くを消費してしまった。
「そろそろ、宜しいかしら」
化粧道具を持った由里と恵子が現れた。栗山は二人に祐子のメイクを頼んでいたのだ。
「いやー、ちよっと待ってくれ。もう一枚書いてもらう書類がある」
祐子が宛名を書いた封筒に手紙と離婚届を入れながら栗山は言った。
栗山が取り出したのは婚姻届であった。
「これはまだ出せないけど一応、署名を貰っておくよ」
祐子はもう心理的に疲れ果てていた。差し出された書類に目を通しもせずにペンを走らせる祐子は栗山の悪どい計画によってそれを当然のように受け入れていた。
「よし、これで事前の手続きは全て終わった。メイクに掛かってくれ」
栗山の言葉で由里と恵子は祐子の髪の毛を梳かし始めた。
「可哀想にまだトイレに行かせて貰ってないのね」
小刻みに震える祐子の太股を目にした由里は笑いを浮かべながら祐子の髪を梳いている。祐子は空虚な瞳を見開いたまま前方を見つめていた。
悪魔の結婚式
純白のウェディングドレスを身に着けた祐子がアトリエに由里に背を押されて入ってきた。もう、彼女の便意は頂点に達しており、全身、汗に塗れ、歩くのも大儀そうな祐子は肩で息をして歯を食い縛っていた。何とか式の終わりまで耐えればトイレが許されるものと祐子は思っていた。
バージンロードに女奴隷が跪いて祐子を迎えた。由里はその一人一人に挨拶をさせ祐子に焦らしに焦らしている。
「この人は美加子、二十六歳ね。奥さんに年が一番、近い奴隷ね」
由里は名前と年令だけを紹介しているだけだが祐子にとってはそれさえも苦痛だった。一刻も早く、栗山が待っている中央に辿り着き、式を済ませたい祐子だった。
祐子の後からは素っ裸の良美が後手に括られ、恵子に縄尻を取られ、続いていた。パンティ一枚の差とはいえ、多くの目の前に晒された良美は大きな身体を折り曲げ、羞恥に悶える様を見せながら引き立てられてゆく。
白のタキシードを身に着けた栗山の隣にようやっと祐子が並んで立つと結婚式の準備が整った。
ついさっき着いたばかりの大野も由希と並んでこの異様な結婚式に参列している。由希は栗山に贈られたベージュ色のパンティを身に付けただけの姿で大野の隣でがっくりと首を項垂れている。
神父のような姿をした三枝は一つ咳払いをすると二人の前に進み出た。
祐子の全身汗に塗れ、純白のウェディングドレスが身体にへばりついている状況を目にした三枝はニヤリとした笑みを浮かべると口を開いた。
「これより、栗山和夫、佐山祐子の結婚式を執り行う。新婦、何か苦しそうだが、大丈夫ですか？」
「あの・・・トイレへ」
祐子が口篭りながらその事を告げようとすると介添人宜しく、背後にへばりついている恵子が尻を抓り上げ耳に口を寄せた。
「余計な事を言うと良美をこの場で廻しちゃうよ」
良美のことを引き合いに出されると祐子もそれ以上は言えなかった。
「な、何でも有りません」
祐子の言葉を聞いた三枝は式を続行する。
「汝、栗山和夫は佐山祐子を妻とし、生涯変わらぬ愛を誓うか？」
「誓います」
栗山の声がアトリエの中に響き渡った。
「汝、佐山祐子は栗山和夫を夫とし、生涯変わらぬ愛を誓うか？」
「誓います」
祐子のやけくそのような大きな声が響いた。とにかく、一刻も早く、式を終わりたい祐子は悪魔の神父の問い掛けに全て従うつもりだった。
「汝、佐山祐子は大便をする時は必ず夫の前でする事を誓うか？」
由里と恵子がくすくすと笑い始めた質問にも祐子は躊躇無く承諾した。
三枝は意地悪い質問を何個かすると二人の顔を今一度、見つめた。
「これで二人が夫婦となったことを認めます。ここで誓いのキスをするところだが新郎はどこにキスがお望みかな？」
「それはここの屋敷で連日、練習してきたというここにお願いします」
栗山は悪戯っぽい顔になって自らの股間を指差すので由里と恵子はゲラゲラと笑い始めてしまった。
「よろしい、新婦、新郎はフェラチオをお望みのようだやって差し上げなさい」
三枝に言われた祐子だったがさすがに大勢の目の前ではと躊躇いの色を浮かべた。しかし、それをしない限りは式は終わらないと知っている祐子はもう限界に達している身で膝立ちの姿勢を取った。
「あっ」
祐子は姿勢を変えたため、その先端が排出口から顔を出したことに気が付き、苦悶の表情見せて、身体を捻った。
もう、駄目だ。立ち上がったら止めることはおそらく不可能だ。そんな事を思いながらも祐子は震える指を使って栗山のジッパーを引き下ろすと、力ない一物を露出させた。
汗がへばりついている頬を蒼白にさせた祐子の耳に恵子が口を寄せた。
それを聞いた祐子の顔が一瞬、曇った。しかし、祐子は彼らの言いなりになるしかなかった。
「あなた、末永く、祐子を可愛がって下さい」
涙の溜まった目で栗山に訴えた祐子は手を添えた一物に唇を寄せるのであった。
必死に舌を動かし、自分を愛撫している祐子を目にして栗山は勝利感に酔っていた。かつて二人が付き合っていた頃、潔癖症の祐子は栗山が懇願してもフェラチオを頑なに拒否していたのだ。それが今は自ら進んで自分の肉棒を咥え込み、必死に愛撫を続けている。そして、祐子の身体は別の苦しみにも苛まれている。栗山は心の底から湧き上がってくる笑いを堪えるのに必死であった。
それは祐子にとっては途方も無く長い時間だった。もう、暴発寸前まで昂っている便意に心臓を締め付けられながら男を舌で愛撫する。こんな残酷な状況があるであろうか？とにかく一刻も早く、この苦しみから解放されたい祐子は遮二無二、舌を蠕動させ、顔を前後に揺さぶった。
（往って、早く、往って）
凄惨な愛撫を続ける祐子を目にしても悪魔の心を持つ栗山はわざと興奮を抑えるために頭の中でさっき見てきたパーティー会場での子豚の丸焼きを思い出していた。栗山が材料を買い込み、塩野に頼んで作らせた特別な料理だった。食欲に気を逸らせる事で一秒でも放出を遅らせようとする栗山の姑息な作戦だった。
祐子は必死だった。ある程度の興奮は示しているものの栗山のそれは中々その気配を見せなかった。汗が目に入って、視界が閉ざされても祐子はそれを拭うこともせずに隠微な舌使いを続けている。
（お願い！早く、早く、出して）
心の中で叫んだ祐子は両手を使って栗山の垂れ袋まで優しく愛撫するという大胆な行動を見せるようになった。
新たな刺激は栗山の官能を大きく刺激し、一気に土俵際に追い詰められる。
大きく息を吸い込んだ栗山は溜まりに溜まっていた欲望を解放した。
その瞬間、祐子は栗山を陥落させたことで感涙に咽んでいた。しかし、彼女は何のために栗山を一刻も早く欲望を放出させなければならなかったかを一瞬、忘れていた。
（あっ、いけない）
思い出したときはもう遅かった。緊張が緩んだ下半身に彼女の内なる欲望は一斉攻撃を掛け始めたのだ。
（もう、駄目）
祐子は栗山の迸りを受けながら自らも放出を開始したのだ。長期間に渡って溜め込まれたそれは異様な固さを持って、祐子の肛門を通過している。その苦しさに涙を流しながら栗山の欲望をしゃぶり尽くした祐子は床の上にばったりと倒れこむと泣き声を上げ始める。
「どうした？大丈夫か」
「さ、触らないで」
事情察した栗山が手を差し伸べても祐子はそれを払いのけると ヒステリックな声を上げ、泣き続けている。
「何か、臭いわね」
由里が傍らに身を屈めて鼻をひく付かせると祐子の泣き声は更に激しくなった。
祐子は無常な排便を続けながら何か罪を犯したような気分に陥って泣き続けている。
してやったりと満足の笑みを浮かべた栗山はとめどなく泣き続ける祐子の肩に手を掛けると有無を言わせず上体を引き起こしてその泣き濡れた顔を覗きこんだ。
「我慢できなかったのか？仕方ないな」
優しく声を掛けてきた栗山に祐子は前後の見境無く、抱きつくとその胸に顔を埋めて号泣の声を放つ。大失態を犯した、自分を慰めてくれる栗山を祐子はとても心強い存在に思えたのだ。
「あなた、ごめんなさい」
詫びを入れながら栗山の胸で涙を流し続ける祐子にはかつて抱いていた嫌悪も恨みも無かった。この男に頼るしか今の自分には残されていないという悲しい諦めにも似た感情に突き動かされている祐子であった。
「さあ、気持悪いだろうから、脱がしてやろう」
慟哭が収まった頃に栗山がウェディングドレスの裾を跳ね上げても祐子は呆然とした表情を浮かべているだけであった。
「うわー、随分、出したんだね」
パンティを剥がした栗山はその内部にこびりついた粘着物を見て素っ頓狂な声を上げた。その声を聞いた祐子の顔色は一気に燃え上がり、再び、シクシクと泣き始める。
「でも、嬉しいよ。祐子がこんな恥ずかしい姿を僕に見せてくれたんだからね」
栗山は刺す様な臭気も気にならないのか濡れタオルを使って祐子の崩壊の後始末を始めている。祐子は全てが終わったという諦めきった気分の中に埋没していた。栗山の仕掛けたあくどい罠に嵌った祐子は身も心も順応させられてゆく自分を感じながらもそれに対する抵抗感は微塵も感じなかった。あるのは生理的欲望を解放した爽快感と栗山の言いなりになるしかないという諦観であった。