ジョン・グリシャムの本を読み解くために

ジョン・グリシャム(John Grisham)の作品は、リーガル・サスペンス[ Legal Suspense ]と呼ばれ独自の世界を構築しています。
もちろん司法制度を知らなくても面白いのですが米国司法制度を知ればもっと楽しめると思いませんか? まあ、それは言い訳で、管理人の知りたがり癖が出て調べたのが本音です。
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ジョン・グリシャム(John Grisham)の作品は、「オーナの書斎」にあります。こちらからどうぞ。
アメリカ合衆国民事訴訟制度についてはこちらです。
[ RUNAWAY JURY ]を10倍楽しむために、「米国におけるタバコ訴訟」を調べて掲載しました。こちらです。
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●アメリカ合衆国の司法制度

アメリカはもともと51の州が集まった集合体なので基本的には州単位の制度と州をまたがり連邦に対して効力を持つ制度の2通りが存在します。
州の制度はこの連邦制度に抵触しない範囲で州独自の司法制度を持つことができます。

●連邦司法制度と州司法制度

連邦裁判所の構成

おおきくは以下の3つの裁判所で構成されています。
(1)最高裁判所 SUPREME COURT
  頭文字をとってSCOTUSとも呼ばれます。Washington D.C.にあります。他の裁判所が議会により創設されるのに対して合衆国憲法によってその創設が定められています。
(2)控訴裁判所 Appellate Court
   12 Regional Circuit Courts of Appellate.12地区控訴巡回裁判所
   1 US Court of Appellate for the Federal Circuit. 1ヶ所 連邦巡回裁判所向け控訴裁判所
(3)審理裁判所 Trial Court.
  役割に応じて以下の種類の裁判所があります。
(a)US District Courts米国地方裁判所
民事通常事件、刑事事件の第1審、及び破産裁判所からの控訴事件を担当します。全米に94の管轄地区が設置されています(94 judicial districts)
(b)国際通商裁判所(US Court of International Trade)
全米で1カ所。関税及び貿易に関する民事事件を担当
(c)連邦請求裁判所(US Court of Federal Claims)
全米で1カ所。憲法、連邦法、契約に基づく請求、公務員の給与、連邦犯罪で不当に有罪判決を受けたものへの損害賠償請求など合衆国を被告とする裁判を担当
(d)破産裁判所
破産関連事件を取り扱う。専属的管轄権を有する。連邦地裁の1部門として位置づけられており、91カ所ある。
(e)その他
   Military Courts (Trial and Appellate) 軍事裁判所
   Court of Veterans Appeals 退役軍人の為の控訴裁判所
   US Tax Court 米国租税裁判所

州裁判所の構成
  州裁判所も連邦裁判所と同様の3審制をとっていますが控訴裁判所がなく直接に州最高裁判所が控訴を処理する2審制をとっている州もあります。

管轄権
 連邦問題(合衆国の憲法、法律、または、条約の下で発生する民事訴訟事件)のうち、海事事件、破産事件、特許権及び著作権に関する事件、連邦公務員の職務上の過失または不法行為による損害賠償訴訟、他国の外交官を被告とする訴訟並びに連邦刑罰法規に違反する刑事事件等は連邦裁判所の専属管轄になります。

競合管轄
 連邦問題事件のうち、上記を除いた事件、異なる州の市民間の民事訴訟で訴額が一定金額を超える事件は、州裁判所も管轄権を持ち、連邦裁判所との競合管轄となります。

裁判官と裁判官以外の職員

  • 連邦裁判所の裁判官
    憲法第3条(Article 3 Court)で、最高裁判所、控訴裁判所、地方裁判所及び国際通商裁判所の裁判官は大統領により指名され、上院の助言と承認で任命されます。
  • 州裁判所の裁判官
    選挙、知事が諮問委員会の推薦により指名、州民の審査による、など裁判官の任命方法は一律ではありません。
  • その他、シニアジャッジ(Senior Judge)と呼ばれる、裁判官を任意に引退後、一定の条件下で働く非常勤の裁判官も存在します。
  • 裁判官以外の職員
    • 裁判所により任命される職員:
      事務官Clerk、記録官Court Reporterがそうです。
    • 各裁判官により任命される職員:
      裁判官秘書Secretary、廷吏Bailiff、調査官Law Clerkなどです。
●刑事訴訟と民事訴訟(The Criminal Justice System and Civil Claim)
犯罪を裁く制度としては、「The Criminal Justice System」と呼ばれる犯罪司法制度があります。
民事上の問題は、「Civil Justice System」と呼ばれる制度があります。
●刑事訴訟制度(The Criminal Justice System)

★★代表的な刑事訴訟はおおよそ次のような順番で運用されます。
■犯罪(Crime)の着手
刑事訴訟プロセスの最初の段階は、「犯罪を犯す」ということです。犯すということは別の言い方をすれば法に抵触する行為をするということです。
ちなみに米国では、年間に路上犯罪の30〜50%を警察は発見しているという評価があるそうです。

■捜査(Investigation)
理想的には、捜査することで警察は、「誰がその犯罪を犯したのか」を究明します。

■逮捕(Arrest)
容疑者を留置し、告訴する過程で逮捕が行われます。

■書類送検あるいは逮捕手続き(Booking)
容疑者に対して管理レコードを作成します。

■冒頭手続き(Initial Appearance)
冒頭手続きで、容疑者に対する容疑が陳述され、容疑者の権利が示されます。
容疑者は、この際、保釈金を支払い(post bail)、釈放されるか、判事の判断により、逃走の危険か社会に危険を及ぼすと判断されると予防的留置(preventive detention)がなされます。

■予審(preliminary hearing)ないし起訴陪審あるいは大陪審(grand jury)
おおよそ半分の州では予審が開かれ当該案件を審理するに十分な証拠があるかどうかが決定されます。逆に言うとここで審理を進めることができるのか否かが判断されるわけです。
連邦司法制度で処理すべき案件の場合("capital or infamous cases")、大陪審(Grand Jury)が開かれ、容疑者の罪状に対し告訴するに十分な証拠があるかどうか審議されます。

大陪審(Grand Jury)は本来合衆国憲法の第5修正条項で指定されている事項ですが最高裁判所は州裁判所には無関係であり、結果として廃止できるとの裁定を下しています。

■罪状認否手続き(Arraignment)
最初に判事により、状況と告発状が容疑者に対し朗読されます。この際、容疑者は、容疑を認める(a plea of guilty)か無実を主張するか(not guilty)か、争わない(nob contendere,no contest)を選択すること(権利)ができます。

■審判((Trial)
独立宣言、米国憲法の第3修正条項、連邦最高裁判所の決定の中で、審判に対する権利が示されていますが、犯罪(Trial)を犯したときに審判に期待するアメリカ人はほんの少数をいわれています。
90%以上の被告がさっさと罪を認め(plead guilty)、それにより審判を回避しているのが現状です。

■判決(Sentencing)
判決により、法的に当該罪状に対し、どのような罰が施行されるかが宣言されます。

■控訴(Appeal)
有罪判決を受けた被告は、法律上の問題、たとえば、審理上正当な手続きがなされなかったとか、憲法上の権利を考慮したときにプロセスのいくつかの点で問題がありと認識する時は、控訴ができます。

■懲罰(Corrections)
懲罰的措置が刑事制裁として裁判所によりなされる。

■釈放ないし出所(Release)
ひとたび刑が満了すると個人はプロセスの最終段階として司法制度上のシステムから解放されます。

●クラスアクション(Class Action)集団訴訟
クラスアクションとは、民事訴訟(civil case)の一種であり、多数の原告に関して共通の請求が提起されることに特徴があります。
原告は全原告を代表する代表者を選択し、全原告の為に訴訟行為を行なわせることができます。
集団訴訟が提起されると内容と原告団は告知されます。
集団訴訟の結果、和解する事もできるし、結果が満足されない場合は他の結果をさらに追求していくこともできます。製造物責任(Products liability)における集団訴訟などがその代表例であり、アスベスト訴訟が頻繁に事例として紹介されます。
米国における陪審員制度

■歴史
陪審裁判の起源はマグナ・カルタに遡ると言われています。
イギリス,フランス,ドイツなどヨーロッパ各国で行われ,アメリカには植民地時代を経て受け継がれ,1791年制定の合衆国憲法修正6条では刑事事件について,陪審による裁判を受ける権利を基本的権利として保障するまでになってます。当該権利は,合衆国連邦のみならず,州でも同様です。

■陪審員(juror:陪審員個人)の選出
陪審員は,各郡ごとの選挙登録名簿,身分証明書や自動車免許証の名簿から無作為抽出される。学生であろうと,弁護士であろうと一切関係ありません。

■陪審員(jury:陪審団)は何をするのか
陪審制度では,法律問題の判断は、職業裁判官が行い,「事実の存否の判断」のみ陪審員が判断します。
当事者の主張と証拠調べの後、通常,担当裁判官は「陪審員への説示(jury instruction)」を行い,その事件に適用する法律を説明します。

■陪審員の評決
その後,陪審員は別室に入って評決について討議します。陪審員の評決は陪審員全員の意見が一致したときに評決できます。逆に、陪審員の間で意見が分かれ、まとめることができない場合,再審理(new trial)となります。
陪審員は、陪審長(foreman)を選出し議論を収束させます。

●パラリーガル(Paralegal)
パラリーガルとは、弁護士の法律業務の補助業務を弁護士の監督下で行う「準法律家」を指します。
医師に対する「看護士」、歯科医に対する「歯科衛生士」や「歯科技工士」と同様の位置づけです。
訴訟社会であるアメリカでは、弁護士と秘書の中間で活躍しており、今やコンピュータ・プログラマーを抑えて、アメリカで最も急成長している職種ということです。
法律事務所はもちろん、裁判所、企業、金融機関、保険会社、政府などの各組織において、パラリーガルが活躍しています。全米で、約19万人のパラリーガルがいるとされています。


参 考
http://library.law.olemiss.edu/ ミシシッピ大学のライブラリサイト
http://www.uscourts.gov/outreach/index.html  US COURTのページ
 アメリカ民事訴訟制度
 アメリカ民事手続法アメリカ法ベーシックス
 アメリカ法入門basic university library
 英米法総論 上英米法叢書 1
 英米法総論 下英米法叢書 2
 現代アメリカの司法
 アメリカ民事訴訟法入門
■ ジョン・グリシャムを読み解くための参考書籍一覧
 アメリカ人のみた日本の検察制度―日米の比較考察
本書は,日本の検察官たちが彼らの権力をどのように行使しているかをアメリカ人研究者が分析した英語による最初の書物。
日本の検察制度の欠点だけでなく,日本ならではの良さも,公平に指摘されている。さらに,現場を実証的に描いており,捜査,訴追,審理の流れを追い,下された判断の内容を描いている。日本を知ることで同時にアメリカを知る。逆もまたしかり。
 米国の巨額PL訴訟を解剖する―クラスアクションの脅威とその対策
自動車、パソコン、ファイアストン事件…。米国で相次ぐPL訴訟・クラスアクションの脅威とその教訓、日本企業における現代的リスクマネジメントの可能性を説く。
 アメリカ市民の法律入門
米国法についての概説書。法律になじみのない方でも自動車事故や医療ミスなどの事例をもとに米国法を概説。
職業裁判官によってではなく、市民によってのみ刑罰が科せられるデュー・プロセスについても言及。
 O.J.シンプソンはなぜ無罪になったか―誤解されるアメリカ陪審制度
「シンプソン裁判」でロサンゼルス上級裁判所陪審は、殺人罪に問われていたO.J.シンプソン被告に無罪の評決を下した。
陪審がシンプソンを無罪にした理由は日本の新聞が報道したとおりかを検証する。
 アメリカ民事訴訟法入門
アメリカ以外に住む読者に、アメリカの民事訴訟を説明する入門書。訴訟制度のみならずアメリカの法文化全般を支える歴史的・制度的背景を概観したうえで、大陸法と比較しながら合衆国独自の民事訴訟の仕組みを解説していく。
 グレイゾーン―O.J.シンプソン裁判で読むアメリカ
刑事裁判では無罪、民事訴訟では莫大な賠償金を課せられたフットボール界の元スーパースター、O.J.シンプソン。
この「灰色の評決」は何を意味するのか。この裁判に見る"アメリカ"を考える。
 ばかげた裁判に殺されかけた男―正義の国アメリカの司法制度が生んだ最悪の冤罪事件
暴力的な取調べで3件もの殺人を「自白」させられ、終身刑に処せられたマイケル。彼の前に現れたベッキーは、独学で法律を勉強し、ついに無罪を勝ち取った。28年間獄につながれた男と、その闘いを支えた深い愛の記録。
 英米法辞典 Ver.3.2
英米法の理解に必須の言葉および法律関係の文献によく使われる一般的な言葉を、13000項目収録しました。
東京大学出版会からライセンス提供を受け、システムソフトが開発・販売するオリジナル企画の辞典です。この辞典には高機能検索ソフト「システムソフト電子辞典」の最新バージョンを収録しています。
 英米法総論 上英米法叢書 1
 英米法総論 下英米法叢書 2
 アメリカの刑事司法―ワシントン州キング郡を基点として
裁判官、検察官、弁護士、被告人へのインタビューや裁判傍聴をもとに、アメリカの刑事司法の「ありのままの姿」を伝え、被害者援護、精神障害者犯罪、薬害事件など、日本が抱える刑事司法をめぐる問題に具体的示唆を与える。
 アメリカ少額裁判所―弁護士に頼らない訴訟入門
思いがけず巻きこまれた小さな紛争…アメリカの普通の人びとは、こんな時法延でどのように解決してゆくのだろうか。身近な事例をもとに、アメリカ人の「法意識」を探る。
 くたばれ!アメリカ弁護士―ジョークで知る爆笑訴訟社会
日本人初のネームドパートナー、アメリカ特許弁護士として、法廷内外で奮闘する著者が見た、笑うに笑えぬ訴訟ライフ。弁護士関係の数々のジョークを紹介し、アメリカ文化やその思想を考える。