野原のえみさんにいただいたコギツネ獄ツナ●

標的61を読んだ後に、日記でコギツネコンコンな獄ツナを語っていたら、
こんなにかわいくて魅力的なコギツネたちをのえさんが描いてくれました!
のえさんのサイトではステキな会話つきでアップされてます、必見!!
のえさん、ホントありがとうございます! コギツネ獄ツナにひたれて幸せでした!


こんな愛しい仔ギツネ獄ツナを見たら書かずにはいられませんでした。
で、そっこー書いて(↓)、今度はたからからのえさんへプレゼントしました!









+++ボンゴレコギツネのかくれんぼ+++


 ボンゴレ山のコギツネたちはみんな仲良しです。
 毎日みんなで日が暮れるまで遊びまわります。
 今日はみんなでかくれんぼ。
 茂みに頭を突っ込んでじっとしているコギツネに、また別の元気のよいコギツネが飛びつきました。
「ツナさーん! 見つけました! 起きてください、さぁ、みんなのとこに戻りますよ」
「ん…んー……、ふぁー、……ぁ、ハル?」
 茂みに頭を突っ込んでうたたねしていたツナは、ぐっ、っと身体の筋を伸ばし、大きなあくびをしてから身を起こして、声をかけてきた相手ハルを見ました。
「ハル、おまえなにやっちゃってんだ」
 ハルは伏せの姿勢で、地面を大きな尻尾でバシバシ叩いています。
「ツ、ツナさん! 今の可愛い仕草は何ですか! そんなことして篭絡しようとしても見逃しませんから。ルールはルールです、ツナさんも明日の鬼の候補ですよ」
 おまえ真剣に意味わかんないよとツナは首を傾げますが、ハルは甘い野苺を食べたときのようにうっとりとした表情で「その仕草もかわいいです」と言います。
 なんか『あの仔』に似てるなぁとツナは思いました。
「ほかの仔達もみんな見つけましたから、ハル以外のみんなでじゃんけんして明日の鬼を決めて今日は解散ですよ。みんな広場で待ってます」
 ハルはどうやってみんなを見つけたか、順々にツナに話して聞かせました。
 本当は一番最初にツナを見つけていたけれど、気持ちよさそうに眠っていたから後回しにしたのだと聞かされて、ツナは少なからずショックを受けました。
 ちゃんと隠れていたつもりなのに、茂みから飛び出た金色の毛並みの尻尾ですぐに分かったといわれてしまえばなおさらです。
「あれ? そういえば、みんなって……今日は獄寺君も見つかったの?」
「ゴメンナサイ。ハル、獄寺さんは最初から数に入れてないです。獄寺さんの隠れ方容赦ないじゃないですか。あの人の身体能力使って本気で隠れられたら、ビアンキさんぐらいにしか見つけられないです」
 どうしたものだろう、と苦笑いを浮かべつつツナは考えさせられます。
 幼い頃、今もまだ幼いですがもっと幼い頃、逃げ出し隠れた獄寺を見つけるのは彼の姉であるビアンキの役目でしたが、今ではそのビアンキにも彼を見つけることができないことをツナは知っています。
 そう、優秀な銀狐である獄寺はいつもぜったいに誰にも見つけられないのです。ツナ以外の誰にも。
 誰にでも真っ先に見つけられてしまうツナとは正反対でした。
「獄寺さんて、かくれんぼ楽しいんでしょうか。あ、でも、いつもかくれんぼやりたいっていうのは獄寺さんですよねぇ」
「獄寺君なりに楽しいんじゃないかな。今、結局獄寺君はまだ隠れたままなんだよね?」
「空が赤くなったら時間切れですから、もうちょっとしたら獄寺さんも自分から広場に出てくると思いますよ」
「あ……オレ、ここで抜けちゃっていいかな? 明日の鬼、オレでいいから」
 ツナは口篭もりながら告げました。それを見て、ハルが笑います。
「ハル、本当は獄寺さんがかくれんぼ好きな理由、分かる気がします。鬼はまた明日あらためて獄寺さんも含めてみんなでじゃんけんして決めましょうね」
 年頃の女の仔特有の、少し大人びた表情でまた少し笑みを深めたハルは、返答に詰まってしまったツナに「だから、ツナさんが時間切れまでにちゃんと見つけてくださいね」と残して駆け出していきました。



 黄色い小さな花が咲く原っぱにやってきたツナは、甘い優しい香りに目を細めました。
 昨日見に来たときはまだつぼみの方が目立つくらいでしたが、今日はもうたくさんの花が咲いています。この場所で『明日になったら咲くかなぁ』と尋ねたツナに、賢いあの仔は『一番良い状態になりますよ』と教えてくれたのです。そのとおりになっています。
 やっぱり獄寺君はすごいなぁとツナは思いました。
 黄色い花の間に見え隠れする、花よりも美しい銀の毛並みを見つけて、ツナはにっこりと微笑みます。
「獄寺君、見ーつけた!」
 ツナはえいっとジャンプして、隣へと飛びこもうとしたのですが、それより先に獄寺に飛びつかれて、お花畑の中にひっくり返ってしまいました。
「十代目ーっ、待ってました!」
 獄寺はツナにからだをすりよせてきます。
 鬼はオレじゃないよとか、見つけたって言葉はフェイントかもしれないんだから自分から出てきちゃダメだよとか、でもやっぱり待っててくれたと言うならゴメンねと謝るべきかも、とかいろんなことを考えて、いろんな言葉が喉もとまで出掛かっていましたが、どれもこの場にふさわしくない気がして、ツナはすべての言葉の代わりに獄寺の頬をなめました。
 一瞬ぴたりと動きをとめた獄寺は目をみはってツナを見つめ、けれどすぐに嬉しそうに笑って頬をなめ返してきます。
 頬だけではなく鼻先や目元までなめられたり、薄い耳もなめられ、甘く優しくそしてすぎるほど慎重に歯を立てられたりもして、ツナはとてもドキドキしました。
 緊張しながら、ツナもなるべく同じ仕草で獄寺にお返しをします。
 くすぐったさに照れながら笑って、お互いに飽きもせずにお花畑でゴロゴロしながら、じゃれあい続けました。
「獄寺君の身体、花の移り香ですごく良い匂いがするよ」
「十代目の方が良い匂いですよ」
「そんなはずないよ、オレがいたのは草の茂みだよ?」
「オレは十代目の匂いが好きです」
 それは獄寺がいつもツナに告げる言葉でした。
 もう何度だって言われているのに、ツナは自分の尻尾を抱きしめてうつむいてしまいます。恥ずかしくてたまらないのです。年は変わらないのにツナより一足先にコギツネの域を脱し始めた、雄と仔の境界にいる獄寺は意識してしまえば直視できないほどに魅力的でした。そんな獄寺に見つめられてそんな風に言われてしまうと、いつだってツナは尻尾の先までじんとしびれるような奇妙な感覚に悩まされることになるのです。
「しっぽ、触っても良いですか?」
「だ、ダメ! 絶対だめ」
 ツナは慌てて首を振って、自分の尻尾をぎゅっと抱えなおしました。こんなときに獄寺に尻尾に触られたりしたら、身体の力がくたりと抜けてしまいます。
「毛並みだって、色も手触りも十代目は素晴らしいですよ」
 獄寺はツナの尻尾に触れる代わりに、その尻尾を抱きしめているツナの腕にキスをしました。
 ドキリとさせられながらもツナは反発してしまいます。なぜなら、そういう獄寺の毛並みは素晴らしすぎるからです。獄寺は特別な一族の生まれで、身体能力にも優れていますが何より美しい銀の毛並みが特徴的です。彼の姉をはじめ同じ血統のキツネたちは白に近い銀でしたが、獄寺は少し色濃い灰がまざった銀です。それは彼が混血なためなのですが、彼だけのその力強い色がツナにはより魅力的に見えました。
 一方ツナはうんとさかのぼれば辛うじて初代ボスの血を引いてはいるのですが、キツネにしては明るい、色素も薄い色をしています。ツナはそんな自分の毛を砂ぼこりをかぶったキツネ色だと思っては悲しくなるのでした。
「素晴らしいなんて嘘だ。誰もそんなこと言わないよ」
「別に良いじゃないですか。第一、オレ以外に十代目の毛並みは手触りがいいなんて言う奴がいたら、生かしちゃおけません。十代目の素晴らしさはオレがよく分かってますよ、右腕ですから」
「まぁーた、獄寺君はそういう調子の良いことばっかり言うんだから」
 真剣に告げる獄寺に対して、もうツナの反発心は消えていました。獄寺のこんな言動に何度救われたことでしょう。ツナは獄寺が居てよかったと思いました。とても感謝していました。
 けれど今度は気恥ずかしくなってしまったので、ツナは笑って茶化すように答えました。
 本気なんですけどね、としょんぼりした表情で獄寺は目を伏せます。
 そんなこと、本当はツナにも分かっているのです。分かってて言ってしまうのは意地悪なのかもしれません。
 とっても強い雄なのに、ツナのひとことに一喜一憂する獄寺。
 それを見て、可愛いなぁと考える自分は、実は相当性格が悪いのかもしれないとツナはちらりと思いました。
 いろいろ、ツナはちゃんと知っています。
 獄寺が本気だなんてことは、それこそ十分過ぎるほどに。
 そろそろつがいの相手を見つけろと同血統の者からせっつかれはじめた獄寺が、言い寄ってくる美しい女の仔たちをことごとく無視している理由も。
 親が進める、銀狐の、特に血の濃い相手との縁談を跳ね除けてしまっているという事実も。
 つがいを取らずにすむ唯一の条件は、ボスの右腕として生きることなのですが、それを理由にツナに最終的な決断を迫ることを決して獄寺はしません。
 それが獄寺の、ツナを想う気持ちの強さなのです。
 お互いに特別な感情を抱いているツナと獄寺がパートナーとして互いを選ぶことは、いろんな意味を含みます。
 まだ、他にもたくさんツナが気付いていることはあります。
 お互いの気持ちなんて分かっているのに。
 触れ合い方がじゃれあいの範疇にぎりぎり収まっているのだって、同じく獄寺の優しさなのだということも。
 抱きしめてくる腕に、息苦しさを感じさせられるほどに力がこもり過ぎている、そんなときは決まって獄寺が申し訳なさそうな顔をしていることも。
 触れる手の指先が、ときどきほんの少し震えていることも。
「獄寺君、今日獄寺君の巣に行ってもいい?」
「え? あ、はい! もちろんです!」
 ぱっと顔を上げた獄寺はほれぼれとするほど明るい笑顔を見せました。
 けれど、その笑顔はすぐにまた曇ります。
「でも、なんもないっすよ。分かってたらなにか用意したんですけど」
「そんなのいらないよ。獄寺君と、寝心地の良い枕があれば十分だよ」
 そう言って、ツナが獄寺の胸を手でぽんぽんと叩けば。
 次の瞬間、ツナの身体はふわりと宙に浮いていました。腰を掴む獄寺の手によって。
「それなら大丈夫です! どっちも十代目専用でいつでも空けてありますからっ!」
 獄寺は全身で嬉しいと主張するように、ツナの身体を持ち上げたまま、見つめ合ったまま、その場でくるくると回ります。お花畑で。
 正直、ツナは、ちょっぴり引き気味に『うわー、これとんでもなく恥ずかしいんだけど…』とか思ってしまうのですが。
 やがて目を回してその場にしゃがみこむようになっても、ツナを落としたりはせずしっかりと抱きしめたままで幸せそうに笑っている獄寺を見て、結局嬉しくなってしまい同じように笑い返すのでした。
 身体に、頭に黄色い花びらをつけたまま、花の匂いの中でキスをすると、めまいとは違った感覚で頭がくらくらとしました。
 それがとても気持ちよかったので獄寺とツナはその感覚を確かめるようにもう一度キスをして、それから少し暗くなり始めた森を、獄寺の巣に向かって歩き出しました。
 普段なら、夜道では物陰から何か飛び出してこないかとビクビクしてしまうツナですが、今は気になりません。隣の獄寺に夢中になっていましたから。