[ Episode2 ] 10年先のラブストーリー

私は17歳の時に初めて両思いの恋人が出来ました。
私は男子校に通っていて、おまけに部活命の剣道少年だったので高校に入ってからまともに女の子と話しをした事がありませんでした。2年の冬に他校の友人のカイズラから『おまえに会わせたい子がおる!』と言われて取りあえず会ってみる事にしました。
約束の日が来て、待ち合わせの駅に行きました。カイズラが言うには女の子の方は俺の後輩だが、おまえの事を知っとるで、向こうから声をかけてくるは、あとは宜しくやってくれというものだった。
それって本当に紹介か?と思ったが・・・。

駅でうろうろしていると、一人の女の子が声をかけてきました。
『アーサーさんですか、私ケイコっていいます。今日は来てくれてありがとうございます。』

確かそんな風に言ったと思うが、はきはきしてとっても明るくて可愛らしい感じの子だった。
その日は映画を見て、喫茶店に行ってその後バスで帰る彼女の為に二人でバス停でバスを待っていた。

今まで紹介とかしてもらっても女の子とは何を話したらいいのか分らない私だったが、何故かケイコとは自然に会話ができた。そこで何で私の事を知っていたのか聞いてみました。
ケイコは言いました。『カイズラ先輩から何も聞いてないですか?・・・』
私『うん、聞いてないよ!女の子紹介するから駅に来てくれって・・・』

その時バスが来て彼女は帰っていきました。
私は今日の事がいったい何だったのかよく分らないまま家に帰り、カイズラに電話しました。

どうもこういう事だったらしいです。
何ヶ月か前に私とカイズラが一緒にいるのを見かけたケイコが同じ高校のバレー部の先輩であるカイズラに『あの人なんていう人、彼女とかいるの?』と聞いてきて、おせっかいなカイズラは紹介する事になったという事らしいです。

私自身もそうとは知らなかったので、すぐに電話番号を聞いてケイコに電話しました。
そして再度春休みにデートの約束をして、その時に付き合って下さいと私の方から改めて彼女に交際を申し込みました。

私は、初めて恋人ができたという気持ちで非常に浮かれていました。

また、ケイコとは割と家が近かった(バスで10分、自転車で20分ぐらい)ので
彼女はよく家に遊びに来ました。私も彼女の家に行ったりしました。何をやっていたかは覚えてないんだけど、一緒に勉強したり、話しをしたりする事が多かったと思います。

5月の私の誕生日が近づいたある日、私は彼女にあるお願いをしました。
彼女は少し考えさせて欲しいと言いましたが、次の週会った時、いいよと言ってくれました。

そして5月の私の誕生日に彼女は私に女の子の一番大事なものをくれました。
もちろんお互い初めての経験です。

しばらくの間は楽しい日々が続きましたが

付き合いが進むにつれてだんだん相手の嫌な部分が見えてきたりしてナーナ―になってきました。
夏休みも2回ぐらいしか会いませんでした。

9月のある日、彼女から電話がありました。
『別れて欲しい』
突然で驚きました。確かに最近あまり遊んでいなかったし、会ってもすぐにHを求めたり、そんな私に嫌気がさしていたのかと思うと、そう言われても不思議ではありませんでした。

私は『別に、わかったわ』と訳の分らない事を言って電話を切りました。

その電話がある少し前に、彼女の学校で合唱コンクールがあって、合唱する曲に、オフコースの『夏の日』という歌にきまったから、もし暇があったらCDを借りてきて欲しいと頼まれていました。
彼女用と自分用にダビングして、まだ彼女に渡していませんでしたので、その夜、原付に乗って彼女の家に行きました。すでにもう電気は消えていたので、彼女の自転車のかごの中に封筒に入れたテープを入れておきました。

きっと連絡してくれるだろう。そう思いましたが・・・

彼女からは何の連絡もありませんでした。
私は完全に振られました。何日も経ってから実感がわいてきました。悲しくて悔しくて、胸の奥の方が痛かった記憶があります。

それから2ヶ月後、私達の学校でも文化祭があり、他校の女子生徒が遊びに来たりして、非常に楽しかった記憶があります。その頃にはケイコの事を少しづつですが忘れかけていたように思います。

そして私はその文化祭で知り合った2歳年下の女の子、カズミと付き合う事になりました。

やがて冬休みになり、正月(1/2、1/3、1/4)に友達4人でスキーに行きました。
スキーから帰ると母親が言いました。『ケイコさんから電話があったよ!』
私は何かの間違いじゃないかと思い、そのままほかっておきました。
すると今度は、友人のカイズラから電話があって
『ケイコ冬休みにスキーに行ったんだって、それでおまえにお土産買ってきたで渡したいって言っとるけど、どうする?』

私は『いらない』と答えました。
何だよ今さら、俺の事振っといてお土産もなにもないだろう、いいかげんにしてくれ!
そんな気持ちで一杯でした。と同時にざまみろと思いました。今度は俺が振ってやった。

その時はそんな風に思いましたが、ケイコの事が不憫に思えてなりませんでした。
今から考えるとその時の私の判断はまちがっていました。
そして、それが全ての後悔の始まりになろうとは私自身も思いませんでした。

やがて冬が終わり私は内定をもらっていた会社に就職しました。
新しい恋人もでき(奈緒)幸せ一杯のはずでしたが・・・。

何故かいつも思い出すのはケイコの事ばかりでした。通勤の電車の中や、ごはん食べている時や
奈緒と一緒にいてもケイコが私の心から離れませんでした。

何でこんなにケイコの事ばかり思い出すんだろう?

色んな人に相談しました。上司や同僚はもちろん、会社の研修で一緒になった人や友人や・・・。

その結果、何となく結論が出ました。
それは、ケイコが私にとって初めての女性だった事ではないかという所に落ち着きました。
ケイコが身も心も全て私に与えてくれた最初の人だったからではないか、もしもその彼女が他の誰かと付き合ってそいつに抱かれるような事になるのが嫌だからケイコが気になるのではないか?

人それぞれだと思うけど、他の人も初めての人に対してはそういう気持ちになった事があるそうです。

確かにケイコが誰か他の男に抱かれる姿を想像したらを気が狂いそうになりました。
やっぱりケイコじゃなきゃだめだ、私は強くそう思いました。

奈緒とは遠距離恋愛だったので、あまり会えないし先にも書いたようにケイコの事が気になって、今の気持ちのまま奈緒と付き合っているのは奈緒に悪いし、何よりも私自身、自分の気持ちに嘘をついているのはいけないと思い、奈緒とは別れる事にしました。
私は本当の事を奈緒には言いませんでした。ただ、もう会えないと言いました。
電話の向こうで奈緒は泣いていました。

私はケイコに電話しました。

『久しぶり、受験勉強とか頑張ってる?』とかそんな会話だったと思います。
最後に私は聞きました。『また、会ってくれる?』
ケイコは少し考えてから言いました『ごめん・・・、好きな人がいる』

私はハンマーで頭をなぐられたようで・・・。

その頃、はやっていてよく聞いていた曲で 『TUBE』 の『10年先のラブストーリー 最後は君と・・・』
というのがありました。

その曲を聴いて私は決心しました。
『10年ぐらい待ってやるさ』

でも私の心の中で流れているのは以前ケイコに別れを告げられた夜、ケイコに渡しに行ったテープの中に入っているオフコースの曲ばかりでした。
19歳の秋でした。

それから、半年に一度位の割合でケイコから手紙が来るようになりました。
ケイコは手紙好きで付き合っている頃もよく手紙をくれました。
特に大した事は書いてないんだけど、手紙がくるととても嬉しかった記憶があります。

短大に合格した事、短大のバレー部の部活が厳しくてもうやめたいと言っていた事、ボロアパートで一人暮らしで大変な事、バイトの事・・・

月日が流れ、彼女は短大を3年で卒業し
(留年した訳ではなく、介護福祉士の資格を取る為1年余分に行った)
就職も決まり地元に帰って来る事になりました。

私はケイコに就職のお祝いで何かしてやりたかったが、自分が企画するのは照れくさかったので、友人のカイズラにケイコの就職祝いの幹事をお願いした。
カイズラには自分の気持ちを全て打ち明けた。長い付き合いなので、その辺は彼も分ってくれた。

そして当日、ケイコの就職祝いの会が終わると、皆で二次会に行こうと話しをしだしたが
ケイコはちょっと用があるからとそそくさと店を出て行ってしまいました。

私は今日の日の為に考えてきた言葉をケイコにどうしても聞いてもらいたくて、店を出てケイコの後を追いました。丁度車が駐車場から出る所で、ケイコをつかまえる事ができました。

私は思いの全てを伝えました。『もう一度付き合って欲しい』
ケイコは言いました『今、彼氏はいないけど、気になる人がいて・・・』

またも私は振られました。

それから数ヶ月、私の胸は痛みから開放されませんでした。
その後も何人かの女性と出会いましたが、ケイコ以上の人には巡りあえませんでした。

そして24歳の時にケイコを忘れるほど素敵な女性と出会い、完全にケイコは私の心から消えました。


時は流れ・・・
私は29歳になり、結婚が決まりかけていたある日、暇にまかせて買い物に行きました。
某デパートの立体駐車場に車を置いて駐車場から出ようとしたら駐車場に入ろうとした女性とぶつかりそうになりました。

ケイコでした。

一瞬誰か分らなかったけど、すぐにケイコだと分りました。
以前とは雰囲気が変わり、南果歩さんを少し若くしたような感じでした。
『やぁ、久しぶり!』

私達は少し立ち話をしていましたが、なんか話しが長くなりそうだったので、喫茶店に入りました。

色々話しました。
今はある老人ホームで介護福祉士として、現場の主任になってバリバリ働いている事、大きな車を運転しておじいちゃんやおばあちゃんを迎えに行ったりしている事、一人暮らしをしている事、5年ぐらい付き合っていた恋人と別れてしまった事、今は一人でいる事・・・など。

でも、何故か私は結婚が決まりそうだとは言えませんでした。

あれから10年の月日が流れケイコも27歳、お互い色んな経験をつんで大人の男と女になった事を私は実感しました。
そして、ケイコと話していて、忘れていたケイコへの想いに火がつきそうになりました。

今の私だったら、ケイコの目尻にうっすらとでき始めたしわさえも愛せそうでした。

店を出た後、私達は車を止めてある駐車場が同じだったので、駐車場まで一緒に行きました。
私が自分の車の所まで行くと、ケイコもついてきました。『車、何乗ってるのかな〜』

私は思いました。何でついてくるんだろう。もしかして、もしかして・・・

私は思わず、ケイコに『君の部屋に行ってもいいか』と言いそうになりましたが、婚約者の顔が頭に浮かんで言葉が出ませんでした。もしそう言ったら、今のケイコなら 100% OKしてくれるだろうと思いました。
恐らくケイコもそう言って欲しかったに違いありません。

もう一度だけ、ケイコの雪のような白い肌を抱きしめる事ができたら・・・
もう一度だけ・・・。


結局私は最後にこう言いました。『じゃあね!』
ケイコも言いました『うん、じゃあね』

それ以来ケイコとは会っていませんが、テレビのCMや、ラジオなどからオフコースの曲が流れてくると何をしてても絶対ケイコの事を思い出します。

10年先のラブストーリーは現実のものにはなりませんでしたが、私はこれでよかったと思っています。


今の私なら、もし今度ケイコに会っても自信を持って言えそうです。
『もうすぐ父親になるんだ〜』 って・・・。



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