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12〜15 April, 2001

松柏美術館のハナカイドウ



プロローグ

春を追いかけて奈良へ向かう旅のプランは、半年前から、いつのまにか出来上がっていた。今回の旅のガイド役を引き受けてくれた、なら在住のゆきおさんの紫陽花倶楽部訪問時に、りっちゃんが酔いに任せて「ゆきおさんが鎌倉へ来てくれたんだから、わたしたちは奈良へ行こう! 行ったら、ゆきおさん案内してくれる?」と口を滑らせた(!)のがきっかけだ。

それから、酒席の軽口と思っていた二人をよそに、ゆきおさんの計画はどんどんふくらんで、いつのまにか二人もすっかりその気になってしまった。ゆきおさんの知り合いで、藍染めの師匠でもある元さんも巻き込んで、ネット友4人旅に盛り上がる。数ヶ月にわたる掲示板とメールでのやり取りの末、いよいよ旅が始まった。

いつものとおり、旅好き、計画好きのりっちゃんが京都までのチケットを準備してくれた。宿はゆきおさんが苦労して探してくれた。行楽シーズンに当たって見つけるのがなかなか大変だったようだ。待ち合わせの時間と、別れる時間だけ決めて、あとはすべてゆきおさん任せ。どんなお楽しみが待っているのか、二人ともわくわくしながら、旅に着く。

4月12日

例のごとく、りっちゃんとの旅は4回目だが、時間を有効に使うためにいつも早起きする羽目に・・・(^ ^;)
大船駅で待ち合わせ、下り東海道線に乗車。こんな早朝なのに、思いのほか乗客は多い。ボックス席に座れたので、グレープフルーツジュースとバランスオンを朝食代わりに食べる。小田原で新幹線の乗り換えて、京都へ。
こんな旅立ちははじめてである。これからなにが始まるのか知らずにとにかく合流地点「大和郡山」までの旅だ。

10時半ごろ京都駅着。近鉄に乗り換えて大和郡山へ向かう。

かぼちゃは長年関西に住んでいたけれど、近鉄に乗ったのはあまり記憶にない。奈良には何度も行っているのだから、乗っているはずなのだが・・・ いつも人のお尻にくっついていくのでよく覚えていないのかな・・・(^ ^;)

けれど、新幹線のプラットフォームからは案内標示に従っていくと、簡単にいけてほっとする。
だんだん合流点に近づいてくると、なんだかどきどきしてくる。りっちゃんとひっきりなしにおしゃべりしているのだけれど、心はちょっと上の空気味・・・

電車は市街地を走ったり、田園風景になったり、また、窓から街並みが見えたりしながら進んでいく。城郭が見えたと思ったら大和郡山駅に到着。

どうやって会うのかなと思いながら、荷物を抱えて電車を降り立ち、改札口はどこだときょろきょろすると、改札口より先に見覚えのある顔が見えた。
もんきち翁のお出迎えだった!

最初の目的地は、元さんの家。
駅からすぐの文化センターの裏。HPで見ていた藍染めの暖簾が揺れている。
それまでどきどきしていたのに、なんと、「あ、あの人だ!」と思った瞬間、挨拶する前にはすでに知り合いに会いに来た気分になっていた!

4人で歩いて近くの紺屋町というところに行く。ここは昔は紺屋が集まっていたところで、染めた物を洗う水路が道の真ん中に通っている。この風情のある通りにある、元さんお勧めの店「翁」で昼食。おいしいお弁当に舌鼓を打ちながら、すでに打ち解けておしゃべりが始まっていた。

全員の希望で、まずは松柏美術館へ行く。
小雨が降っていたが、お湿りのおかげで緑は生き生きとして鮮やかに、そしてお庭の花もとてもきれいだった。館内に入る前に、みんな花の写真を撮るのに夢中になるほどきれいに咲いていた。

松柏美術館のページへ飛びます



下の文字をクリックすると花の写真が変わります.

| ハナカイドウ |
| キクモモ(菊桃) |
| トキワマンサク |
| ヒモモ(緋桃) |

中に入って、「上村松園・松篁・淳之展」を見学、鑑賞。つい先日、松篁画伯が長寿を全うしてなくなったばかりである。有名な絵を間近に見るとまた感慨が深い。
松園作の女性像にはりんとした静かなたたずまいに、秘められた意思の強さを感じる。松篁作の動物のなんともいえないやさしい目の表情に、作者の人柄がしのばれるようだ。また、淳之さんの鳥の絵は、見ていると心が静かに落ち着いてくるようだ。

日本画は見ていて吸い込まれるような、静かな雰囲気が好きだ。ずっと見ていたい気持ちを残して外に出る。
もんきちさんは、今回の旅のナヴィゲーターとして、予定をこなすために時間の管理に余念がない。ちょっと気の毒。元さんの車の助手席に陣取って、歩くナヴィゲーターを自認していたけれど、ナヴィする前に元さんが動いていたみたい・・・

車は市街地を抜け、どんどん山の中へ入っていく。霧雨に煙る山の風景がすこしずつ、時間を逆行して行くように、季節が戻っていく感じ。平地ではすでに葉の出かけた桜が、ここでは緑の中にうす桃色の彩りを添えている。カーブを曲がるたびに、「あ、あそこ! ここにも!」ときれいに咲いている桜を見つけては歓声を上げる。

室生寺への道&撮影する元さん


そして到着したのは、かの有名な「女人高野 室生寺」だ。

夕刻が迫っていたが、真っ赤な橋に映える桜と門を見ながら、石の階段をのぼる。金堂の内陣に並ぶ、ご本尊の釈迦如来像をはじめとする仏像は、薄暗い中に神秘的に沈んで、幽玄に見えた。前に並ぶ十二神将像は、運慶作と伝えられているそうだ。古くは朱に塗られていたのだろう、柱や壁に赤い色がかすかに残っている。

石段を上り詰めると、頭上に五重塔がそびえている。解説によると、現存する古建築の五重塔のなかでは最も小さい(16.7メートル)そうだが、前にある急な階段のせいだろう。この塔は、平成10年(1998年)秋に台風で倒れた樹齢600年の杉によって、無残に壊れたニュースが記憶に新しい。その後、わずか2年で修復され、優美な姿で立っている。創建された当時は、ほかのお堂も色鮮やかで、さぞ美しい光景であったろうとしのばれる。

しっとりとした情感のある室生寺だった。

室生寺の残り桜

新生五重塔

石段を上から望む


ここから宿舎に向かう途中にある、長谷寺による。拝観時間が終わっていたので、拝観料を払わずに回廊の途中まで上がる。有名なボタンはまだつぼみが固かった。少し上にあがると、石楠花がきれいに咲いていた。薄暗くなった石段の両脇に、ぽっときれいな淡い桃色の花が咲いているのは、なんともいえずいい感じだった。花が開ききったところは淡い色、まだつぼみの部分は少し色が濃くて、自然の妙だ。

長谷寺の回廊


それから、宿の近くにある大神(おおみかみ)神社による。元さんのお気に入りのようで、一人先さきに歩いていく。りっぱな鳥居と長い参道の脇に並んでいる灯明が、いかにも神社らしい。本殿はとてもりっぱなお社だった。巳の神杉というのがあって、巳の神様なので、卵をお供えするのだそうだ。

大神神社本殿


とうとう日もとっぷり暮れてしまった。そして今晩の宿「大正楼」に到着。ここは桜井、三輪。

今回の旅に、楽しい仕掛けがしてあるということは、少し前から知っていた。ただし、それが何かは秘密だった。なんだろう、と思いながら、今日はもうおしまいだから、明日のことかな・・・と思っていた。すると、なんと、元さんともんきちさんが二人とも一緒に宿で夕食をともにすることだったのだ!!! 

りっちゃんと二人で、今日のことを思い出しながら夕食を取ると思っていたから、ちょっとびっくりだった。でも、おいしいお料理も大勢でにぎやかに食べると、さらにおいしくなるし、お酒も入れば、楽しい宴になるではないか! 何よりの「びっくりパーティー」だった♪♪ d(⌒o⌒)b♪

そしてその夕食たるや、なんと「そうめん尽くし」! 三輪そうめんの本場だから、当然といえば当然なのかもしれないが、洋風あり、和風ありの、10品以上の豪華な料理のすべてにそうめんが入っている。「お見事! 参った!」というほかない。

いつも、料理の写真を撮っているのに、このときはあまりの楽しさに撮影を忘れていたのが悔やまれる(^ ^;)

これが、初対面の人たちの話しとは思えないような、打ち解けた、いや、それ以上に楽しい話題がいろいろ出て、爆笑、爆笑の連続。最後はおなかが痛くなるほどだった。ほんとうに楽しい宴をありがとう!

男性陣お二人が帰ったあと、りっちゃんと二人でお風呂に入ると、心地よい疲れが出て、二人ともいつになく早めに眠りに着いた。

つづく


元さんのHPゆきおさんのHPりっちゃんのHP



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