勝負
カミューの憂い顔などそう見られるものではない。
青年騎士が常に浮かべている穏やかな微笑は、彼そのものの人柄と印象を周囲に認知させている。それだけに、他の表情――――怒りや哀しみなどは馴染みが薄い。
だが唯一、カミューの多彩な表情を多く見る存在がある。すなわち彼の対を為すように立つもうひとりの青年騎士、マイクロトフ。
今、マイクロトフの自室に訪れたばかりのカミューは、扉を閉めるなりマイクロトフの目を見てその表情を憂いに曇らせた。
「どうしたカミュー」
声をかけたマイクロトフに、無言で応えるとカミューは俯いてその肩をがしっと掴んだ。
「………悔しい」
「カミュー……ぐ!」
強く掴まれた肩の痛みにマイクロトフは思わず呻き声をあげる。だがカミューの表情はひどく儚げな憂い顔だ。
「い、いったい何があったんだカミュー!」
マイクロトフは恋人の五指を肩から引き剥がして、その顔を覗き込んだ。するとカミューは切なげな上目遣いで見返して、そして呟いた。
「あったんだ」
「何が」
「ドゥエガーの『西方異聞録』……」
マイクロトフでさえ知る、歴史上有名な旅行家の名前だった。だがその後に続いた聞きなれない言葉に首を傾げる。そんな男の態度に、カミューは補足するように言葉を繋げた。
「西方諸国の特異文化を綴った歴史書的書物だ。希少価値の高い代物で、だがずっと読みたいと思っていたんだ」
「それがあったのか?」
「ああ……あの陰険軍師の部屋にな!!」
一転怒りにたぎった眼差しが、目の前に立つマイクロトフを突き抜けて、同盟軍居城の上層に座すシュウ軍師を睨みつける。
そのあまりの憤怒にマイクロトフはびくりと怯えて、無意味に分泌された唾液を嚥下した。
「か、カミュー……」
シュウの氷のような眼差しを正面から受けられる者はそういない。
だが、熱血漢と自他共に認める男マイクロトフは、その氷の眼差しを正面から受ける数少ない者のひとりだった。
カミューの憂いを知ってから数刻後、マイクロトフはシュウの自室で彼の机に両手を付き、それを真正面から睨みつけていた。
「なぜ駄目なのですか」
「くどい」
一言、視線を逸らしたシュウは手振りで出て行けと訴えた。だがマイクロトフは尚も食い下がる。
「本の一冊や二冊、読みたいと願う者に貸し出すくらいわけはないでしょうが」
「ただの本ならな」
まったく、とため息をついてシュウは顔を顰める。
「高価なものと聞き及んでおりますが、決して損傷せずお返しすると保証致します!」
「何をもって信用しろというのだ」
話にならんな、とシュウは嘲笑を浮かべる。
「くっ……この騎士の名と誇りをもって信用していただきたい!」
拳を握り締めて生来の大声で迫る男を、シュウはさも鬱陶しげな目で見て鼻で笑った。そしてマイクロトフに聞き取れぬほどの小声で「出来るかそんなもの」と呟く。だが、先程からの貸す、貸さないの応酬にうんざりしてきた軍師は、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。
「分かった。そこまで言うなら私も考えよう」
「本当ですか!」
「ああ、その騎士の名と誇りとやらが信用に足るものだと証明してくれれば、『西方異聞録』を貸してやる」
「証明……ですか」
「そうだ。わたしに分かり易い形で証明すればいい。例えば金だ」
軍師のあけすけな言葉にマイクロトフは顔を顰めた。
「金を担保に貸し出すと言うのですか」
「いや、これは極端な例だったな。つまり、わたしが信用できるものはそう多くない。だが金は別だ。裏切らない」
そして、と軍師はマイクロトフを指差した。
「その金を自在に操れる人物ならば、多少なりとも信用できんこともない」
「金を、操る……?」
「その通り。周知のことだがわたしは以前交易で身を立てていた。そして今も僅かだが続けているんだ」
そしてシュウは立ち上がると、部屋の奥の棚から箱を取り出してきた。
「実際『西方異聞録』も交易で偶然入手したわけだが、先日また面白いものを買い入れた」
箱の蓋を開けて、マイクロトフに見るよう示した。中には何の変哲も無い磁器の壷が収まっている。それをそっと取り出すと、シュウは目線まで持ち上げた。
「いわゆる“しっぱいのつぼ”だ」
なるほど、いびつな形でその色合いも鈍く濁っていて悪い。だが――。
「妙な安定感がありますな」
マイクロトフの素朴な感想に、シュウは的を得たりと頷いた。
「まさに偶然の産物としか言いようの無い品だ。だが何しろ色が悪いのでそこに着眼する者が無い」
手の壷をマイクロトフに渡すと、シュウは再び椅子に座り彼を見上げる。
「作者も不明だが売り手の手腕によっては中々の値がつくと思える。どうだ? それを売って来てみないか?」
「俺がですか」
「他に誰がいる」
机に肘を突くと軍師は短く息を吐き出した。
「仕入れ値は三百だが、これまで最高で千五百で買い取ると言う人物がいた」
「せ……千五百! これが!?」
「ああ」
深く頷いたシュウだが、勿論大嘘である。仕入れ値は百五十で付いた売値は五百が最高だ。それも“しっぱいのつぼ”コレクターと言う奇特な相手こそである。三日後にその人物と会う予定があるが、どうにも気味の悪い人物で、出来れば二度と会いたくないし、壷自体が売っても売らなくても構わない代物だった。しかし――――。
「だが、もう少し高値で売れても良いと思わんか? 例えば三千」
軍師はにやりと密かにほくそ笑む。
「そうだな。もしそれを三千以上で売り払うことが出来れば『西方異聞録』を貸そう」
「さんぜん……」
かなりの無理難題と言える。
そもそも交易の腕でシュウに敵う者はまず居ないし、最高売値の六倍で売れなどと、素人のマイクロトフに出来るわけが無い。
だがシュウにしてみれば本を貸すつもりなど毛頭無いのだ。それによしんば三千以上で売れたとすれば、それがすなわち貸出代となる。
「無論、他の者の手を借りてはならんし、友人知人に売っても認めん。あくまで交易として自身の腕で第三者に売ることが条件だ」
完全なる意地悪だった。いや、本人には意地悪をしている自覚は無いかもしれない。そもそも根が意地の悪いシュウなのだ。だが、マイクロトフはそんな軍師の言葉を真っ直ぐ受け止める男だった。
「それはつまり……交易の手腕が軍師殿より上回れば信用していただける、そう言うことですか」
「そんなところだ」
「分かりました! このマイクロトフ、必ずやこの壷を三千以上で売って参りましょう! この騎士の名と誇りにかけて!!」
そしてカミューに本を、と拳を固めて勇ましく部屋を辞して行った。後に残された軍師がそんな男の後姿を見て、大声と単純さに辟易したのは当人意外知らないことだった。
そして壷を持って現れたマイクロトフから、事の次第を聞いたカミューが目眩を感じてよろよろと座りこんだのは、それから直ぐ後のことだった。
額に手を当ててカミューは緩く首を振るう。
「あの……軍師……」
素人目にもその壷は明かな失敗作だ。もしかすると売値が千五百など出鱈目かもしれない。いや出鱈目だろう。哀しいかな軍師の真意を正確に読み取ってしまった元赤騎士団長は、乾いた笑いを漏らした。
結局貸すつもりは無いのだと、再確認させられたようなものである。
だが、そんな軍師相手に達成不可能な条件付きとはいえ「貸す」とまで言わせた恋人の誠意は嬉しいものだった。
「しかし、わたしがあれほど頼みこんでも駄目だったのだが。おまえはすごいなマイクロトフ」
微笑みかけるとマイクロトフはうむ、と力強く頷く。
「何事も熱意を持って当たれば何とかなるものだ」
そして壷を箱に入れると、それを脇に抱える。
「待っていろカミュー。絶対におまえに本を読ませてやるからな」
意気込む男にカミューは「え?」と目を見開いた。
「売る……つもりなのか?」
「当然だろう」
何を言うんだカミュー、とマイクロトフはグッと拳を握る。
「この壷の売買には、本の貸し借りもそうだが、俺の騎士としての名と誇りがかかっているのだぞ。必ず売ると言ったからには売る!」
そう、もし壷が売れなければマイクロトフの騎士の名と誇りは信用と共に失墜するのだ。例え周囲が止む無しと思っても、出来なければ騎士の名がすたるとこの男は思うのだろう。
「マイクロトフ……」
カミューは泣きたくなった。
確かに『西方異聞録』は喉から手が出るほど読みたい。しかし、かと言って軍師に良い様に操られるマイクロトフの姿など決して見たくは無かった。愚痴なんて言うものではないと、ほとほと思い知ったカミューである。
「済まないマイクロトフ。わたしが考え無しだった」
「カミュー?」
「本など良いんだ。おまえの気持ちを知っただけで、わたしはもう充分だから。だからマイクロトフその壷は……」
「諦めるなカミュー! これは言うなれば軍師殿との交易勝負! 途中で止めては騎士の名折れだ!!」
「………」
カミューはあうあうと喘いだ。
こうなったマイクロトフはもう止められない。本来なら騎士道を持ち出して止めるべきところが、その騎士道が彼をばく進させているのだ。
カミューはグッと顎を引く。
「分かった。応援しようマイクロトフ。何がなんでも三千ポッチで壷を売ってくれ」
「ああ勿論だとも」
しかし、とカミューは顎に手をかけ考え込む。
「“しっぱいのつぼ”は確かコボルトの村で取り引きをしていたと思うが……」
「待ってくれカミュー。誰の手も借りてはならない条件なのだ。済まないがおまえの助言は聞けない」
「ああ、そうだったな……」
だが唯一取り引きのあるコボルト村でも“しっぱいのつぼ”は高くて三百と少しだったとカミューは記憶を手繰る。それを交易に不慣れなこの男が、どうやってその十倍の値で売るというのだろうか。
カミューは恐る恐る聞いてみた。
「マイクロトフ。その壷の買い手だが――――あてはあるのか?」
「それが全く無い」
やはり。
恋人の即答にガックリと肩を落とすカミューだったが、当のマイクロトフは何やら熱意に燃えている。
「しかし、探せばどこかにこれを三千ポッチで買いたいという人物が居るはずだ。安定感だけは見事なのだからな」
でも色が悪すぎるよ、とは言えないカミューだった。
さて、それからまた数刻後。今度はゴードンが頭を抱えていた。
珍しい顔がやってきたと思ったら“しっぱいのつぼ”を三千ポッチで買わないかと、色の悪い壷を見せられたのである。
「無理ですよ旦那。どう勉強させてもらったってウチじゃぁ百五十が限度だ」
「しかし軍師殿は三百で仕入れたとおっしゃっていたぞ」
「あー、そりゃあ、まあ……うーん」
本来なら百ポッチでも欲しくない品だ。それを三千で売れとは軍師の人の悪さは並大抵ではない。
「とにかくウチでは無理だ。余所へ持ってった方が良い」
「そうか――手間取らせて済まなかった」
大きな肩を落として項垂れる騎士があまりに不憫で、ゴードンは「まぁまぁ」と頷く。
「健闘を祈りますよ。なぁに交易ってのは何が起こるか分からんもんだ。ひょっとすると三千よりもっと高値で売れるかもしれねぇ」
「ああ。ありがとう」
マイクロトフはゴードンの気休めに生真面目に礼を告げて同盟軍の交易所を後にする。その広い背中を見送る者は多かったが、ゴードンの「まぁ無理だな」と言う呟きに賛同する者も多かった。
それからマイクロトフは壷を持って各地の交易所へと赴いた。だがゴードンの呟き通り色の悪い“しっぱいのつぼ”が三千ポッチで売れるはずも無く、ついた売値もコボルト村での三百三十ポッチが最高で、実際シュウの本来の最高売値五百ポッチにさえ到達できていなかった。
最後に赴いたロッカクの里の交易所から、同盟軍居城に帰り着いたマイクロトフは、もう一度最後の望みを託して、ゴードンの元へ行こうとしていた。
何があっても諦めないその姿勢は賞賛に値するが、往生際が悪いと言えば悪すぎる。
しかし、今回に限ってその往生際の悪さが功を奏した。
交易所へと暗い顔で歩くそんな元青騎士団長を、とある人物が見咎めたのである。
「マイクロトフさんじゃない。どうしたの? 暗い顔しちゃって」
「ニナ殿」
マイクロトフは、協力攻撃で馴染みのあるフリックに始終ついて回っているこの少女と面識があった。立ち止まって彼女に向き直ると、軽く会釈をする。ニナも傍らまで近付くとかなりの身長差のある相手を、くいっと顎を上げて見た。そして、ん? と首を傾げる。
「いつもはシャキっとしてるのに今日はなんだか萎れてるわね。何かあったの?」
「そう、見えますか」
「うんうん。すごく暗いわ!……って、それ何?」
マイクロトフの手の箱に気付いて、興味深げにそれを指差した。
「もしかしてそれが原因?」
「良く分かりますな」
そしてマイクロトフはその場で箱の蓋を開けて中を見せた。
「これを三千ポッチで売らねばならないのです」
「“おおきいつぼ”……じゃないわね」
「“しっぱいのつぼ”です」
そしてマイクロトフはこれまで、何人かに説明したようにニナにも事情を説明した。もう何度もしたのでその説明も滞り無く簡潔だ。口下手な騎士の常に無い分かり易い説明に、少女も深く頷いた。だが、それでも聞き終えた時には「それは……」と言葉を濁す。
「ちょっと無謀なんじゃない? ただの“しっぱいのつぼ”なんでしょ?」
「ですが、どうしても売らねばならないのです」
重いため息と共に吐き出された言葉は、青年騎士の疲労を正確に少女に伝えた。それが、ニナにとある事を思い付かせる。
「それにしてもシュウさんてば酷いわね。カミューさんが本を傷付けるとでも言うのかしら」
無言で頷くマイクロトフに、少女は深い同情を覚えた。
「そうねぇ……ようし! マイクロトフさん、あたしに任せて!」
グッと拳を握りポーズを決めるニナ。だがそれをマイクロトフは慌てて止めた。
「待って下さい。他の方の手を借りてはならないのです」
「分かってるわよ。さっき教えてくれたじゃない。勿論知人にも売っちゃいけないんでしょ。了解了解。さ、行きましょ」
と、少女はさっさと歩き出す。それをマイクロトフは困惑しつつ追い掛ける。
「ニナ殿、いったい何処へ」
すると少女は振り返ってにやりと笑った。
「交易所よ。これから行くつもりだったんでしょ?」
交易所に着くと、その入り口でニナは内部をキョロキョロと見まわした。そしてとある女性に視線を向けるとパァッと顔を輝かせた。
「居た居た! マイクロトフさんこっちよ」
小声で呼び寄せられて、マイクロトフは少女の背後につく。そして彼女の視線の先を見た。
「ニナ殿?」
「今度はゴードンさんじゃなくって、あそこに居る女性にね、これまでの事情を話して壷を見せてみなさいよ。これだけなら手助けにもならないでしょ。それじゃあね」
頑張ってね、とニナは呆気ないほどさっさと立ち去ってしまった。
取り残されたマイクロトフは、今のは手を借りた事になるのだろうかと迷った。だが交易所内にいる人物に語りかけろと言われた程度で助言になるのだろうか。
「ならん、か」
呟いてマイクロトフは素直に壷を持って、視線の先の女性へと歩み寄っていった。
果たしてマイクロトフは壷を三千ポッチで売ることが出来たのか。結果は良好。くだんの“しっぱいのつぼ”はなんと五千ポッチで売れた。
言葉も無い軍師を前に、誰よりも困惑を隠せないマイクロトフは、それでも五千ポッチを突き付けて『西方異聞録』を借り求めた。
「これで、信用していただけるだろう」
だが軍師は『西方異聞録』を男の手に渡す前に、これだけはと確認の為に問い掛ける。
「いったい何処の誰が買った?」
「この城の交易所で出会った、サウスウィンドウの女性です」
そしてマイクロトフは、ニナと別れた後の事を思い出した。
まず「失礼」と声をかけると、女性は「あっ!」と短く叫んだ。だが直ぐに「ほほほ」と微笑むと「何のご用かしら?」と首を傾げたので、マイクロトフは壷を見せて事情を語ったのだ。
心なしか説明の間に女性の目がぎらぎらと鋭くなった様な気がしたが、ひと通り説明を終えた後で女性が五千で買うと言った時には、そんな些細な事など思考の彼方に吹っ飛んだ。
そして半ば奪われる様に、金と引き換えに壷を持って行かれたときには、マイクロトフはそれが夢ではなかったのかと自らを疑ったほどだった。
だがともかく売れた事は確かだ。その足で軍師の部屋へとやって来たのである。
「ともかく三千以上の五千ポッチで売れたのです。文句はありますまいな」
「ああ」
頷き『西方異聞録』を男に渡すシュウだった。そしてマイクロトフが出ていくと一声唸った。
儲かったのは嬉しい。だが、酷く悔しいのは否めない。
シュウでさえ五百ポッチだったものを、あの堅物騎士が十倍の五千ポッチで売ってきたのだ。交易のプロを自称する軍師は、胸に行き場のない悔しさを抱えて、手許の金を見詰めた。
さて、最後に驚いたのはカミューである。
初めは恋人の手に握られた古書に目を輝かせたのだが、直ぐにそれまでの事情を思い出し表情を曇らせた。そしてマイクロトフの口から語られた出来事を聞いて、抱いた懸念に眉を寄せたのだ。
「マイクロトフ……その買い手のレディだが、確かにサウスウィンドウの者だと言ったのか?」
「ああ。知っているのか?」
瞬いて顔を覗きこんでくる男に、カミューは「うん」と頷いた。
「もしそのレディがわたしの知る事と関わりあるのならば……五千ポッチで壷が売れたのにも得心がいく」
なによりニナの介入がカミューの懸念を深めた。
「恐らく壷の売値の殆どが付加価値だろう」
「付加価値?」
頷いて、カミューは遣る瀬無く微笑んだ。そしてそっと手を伸ばして『西方異聞録』を受け取る。
「素直に喜んで良いのか……?」
「カミュー?」
この『西方異聞録』を巡って起きた出来事の渦中にあった壷。それがあの“しっぱいのつぼ”に付けられた付加価値だ。サウスウィンドウの女性は、あの壷をカミューかマイクロトフの信奉者に更なる高値で売りつけるに違いない。
カミューは知っていた。
ニナが、フリックの触れたカップをレストランのウェイトレスから買い入れているのを。
他にもマイクロトフやカミュー自身が使ったフォークやナイフがそのまま、商品となって流れているのを。
正確なルートは知らないが、一度サウスウィンドウに集められているらしいその、品々。
知った時にはかなり衝撃を受けたものだが、落ちついて考えてみると、そんな少女たちの気持ちも分からないでもなかったので、カミューはその事実を告発せず密かに胸にしまっている。
だが――――。
「いや……嬉しいよマイクロトフ。ありがたく読ませてもらおう」
俯いて謝辞を述べるカミューに、マイクロトフは頑張った甲斐があったと自らを胸中で褒め称えた。
あの陰険な軍師を交易で負かすことも出来た。
なによりカミューを喜ばせることが出来た。
「良かったなカミュー」
ただ一人、達成感に満足するマイクロトフだった。
END
交易勝負……??
難しかったですよぅ ましろ様(泣)
『軍師と勝負するマイクロトフ。勝敗、青氏の勝ち』
なんとかリクエスト内容クリアできているでしょうか
途中でオチが読めたかと思いますがっ
楽しんでいただけたら幸いです
2000/03/22
暁幻想別館 Precious Simplism