外。
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かすかな衣擦れの音と、するりと忍び込んできた冷気に眼が覚めた。 薄く眼を開くと、シーツの白とそれよりも仄かに色味を内包したような滑らかな白い腕が目の前にあった。 隣で寝ていた彼が身を乗り出すようにして、寝台の頭にある窓から外を見ているのだった。 肩も露わなその格好も気にせず、じっと外を眺めるその姿は、寒さを嫌う彼らしいものとはとてもいえない。 また、夜明けも浅いこんな時間に眼をさますことも。
不意に小さく笑みを浮かべた彼は、顔をこちらに向ける。 思わず眼を瞑り、寝たふりをするのは訳あってのことではなかった。 不自然ではない程度に呼吸を緩めてみるのも反射的だ。 寝たふりに気づいた様子もない彼は、毛布の端を押さえながらゆっくり身体を布団に滑り込ませていく。 髪が枕を打つ柔らかい音とともに、胸元にひんやりとした肌が触れる。 暫くすると動く気配がして、鼻筋を指先がなぞる。 少し温もったその体温に、身じろぎをしてみせると、額を胸に擦り付けてくる。 甘えるような仕草とさらりと肌をくすぐる髪がくすぐったくて、小さく微笑んだ。 やがて体温が溶け合うころには、穏やかな寝息が伝わってくる。 ぴったりと額をくっつけたまま、すぐに彼は眠ってしまったようだ。
眠りをこよなく愛する彼が、自分より早く眼を覚ますのは雪が降る日だ。 湿った空気も、それでいて雨音のしない、きんと冷たい朝には必ず雪が降っている。 故郷をこんな遠く離れた南の地でも、雪は降るものなのか。 そんなことを薄れゆく意識の端で感じながら、また幸せなぬくもりに身をゆだねた。
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